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花田 侑樹(巨人)投手のルーキー回顧へ







花田 侑樹(広島新庄3年)投手 182/75 右/左 
 




 「不調が伝えられていたけれど」





 夏の広島県大会では、不調が伝えられていた 花田 侑樹 。しかし、この夏の甲子園では、選抜の時よりも成長を実感させてくれる内容だった。


(投球内容)

 この夏の広島大会では、3試合に登板して 16回 12安 12四死 14三 防 3.94 と、四死球が多くピリッとしなかった。しかし甲子園では、6回 5安 1四死 4三 0失点 と、復調を印象づける内容だった。

ストレート 140~MAX144キロ ☆☆☆ 3.0

 キレが良く空振りは誘えたものの、球威に物足りなさが残った選抜。しかし、この夏は球速は大きく変わらなくても、打者手元までの球威・強さが増してきていました。またその真っ直ぐを、左打者の内角を厳しく突いたりと、コントロールも悪くありませんでした。春よりもワンランク、球威や攻めの厳しさは磨かれていたように思えます。

変化球 カットボール・スライダー・フォークなど ☆☆☆★ 3.5

 左打者の内角低めに、カットボールやスライダーを集めて攻めてきます。またその他にも緩いカーブやチェンジアップ、それに縦に沈むフォークなどもあります。まだ縦の変化などを、見極められて振ってもらえないことも多いのだが。

その他

 牽制も適度に鋭く、結構入れてきて走者を威嚇します。クィックも、1.00秒台~1.05秒ぐらいとまずまず。フィー不ディングも落ち着いて処理できていますが、一塁へ下からトスして投げていることからも、近い距離への送球には不安があるのかもしれません。

(投球のまとめ)

 春よりワンランク、ボールに強さが出てきて好い感じに。打者の内角を厳しく攻められる制球力に、度胸もあります。縦の変化球にはまだ課題を残しますが、そういった球があるというだけでも、打者としては的が絞り難くなります。まだ、投げる「間」を変えたりとかはしませんが、初回からでも内角を突いける姿勢やコントロールにも好感が持てます。


(投球フォーム)

 ワインドアップから、ジワ~とした感じでゆっくり入ってゆくフォーム。動き初めてからは、足を勢い良く引き上げ、高さはそれなり。軸足の膝にはあまり余裕はないものの、バランスは適度にとれた立ち方となっている。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側への落としには甘さは残すが、カーブやフォークが投げられないというほどではないだろう。ただし、ブレーキや落差が鈍くなる可能性はある。

 「着地」までの地面の捉えもそこそこで、体を捻り出す時間もそれなり。いろいろな球は投げられるが、武器になるほどの大きな変化の球を習得できるのかは微妙ではないのだろうか。

<ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込めています。それだけ軸はブレ難く、両サイドへの制球も安定しやすい。足の甲でも地面をとらえられており、浮き上がろうとする力を抑えることができている。「球持ち」は並なので、もう少しボールを押し込めるようになると、低めへの球も増えそうだ。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻の落としには甘さは残すが、カーブやフォークを投げられないほどではない。またこういった球種の頻度が多くならなければ、肘への負担にもナーバスになることもないだろう。腕の送り出しを見ても、肩への負担も少なそう。それほど力投派でもないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの地面の捉えも平均的で、ボールの出どころも並ぐらい。打者としては、それほど苦になるフォームではないだろう。それだけ、投げミス許されない。

 腕は適度に振れているので、打者は吊られやすい。しかし、ボールの出どころがそれほど隠せているわけではないので、縦の変化を見極められてしまうことも少なくなさそうだ。ボールへの体重の乗せも、まだ発展途上といった感じ。このへんもウェートをもっと付けるだけでなく、「球持ち」を長くして体重がしっかり乗れるまで我慢できるようしたい。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、全てが平均的で突出したものがない。そのかわり、特別悪いというものもない。制球を司る動作は良く、故障のリスクもさほど高いとは言えない。しいて言えば、将来的に武器になるほどの球を見出だせるかといった部分だろうか。春から微妙には変わっているが、まだまだ発展途上なのは変わらない。


(最後に)

 選抜で見た時も、筋が好い投手で将来楽しみだと感じました。その印象は、この夏を経ても損なわれていません。春よりも甲子園での内容は良化していますし、プロで順調にステップアップして行ける土台があるとみます。高い順位での評価できませんが、本会議で指名されたのも納得のところです。上手く育てば、将来ローテーション投手に育っても、不思議ではないのではないのでしょうか。この内容ならば、 を付けることができそうです。


蔵の評価: (下位指名級)


(2021年夏 甲子園)









花田 侑樹(広島新庄3年)投手 182/75 右/左 





 「筋がいい」





 選抜での大きな収穫のひとつに、この 花田 侑樹 の成長があった。事前にドラフト候補として注目していたわけではなかったので、これは選抜でも数少ない嬉しい誤算といなった。そして彼から感じられるのは、投手としてのセンスの良さが滲み出ているということだった。


(投球内容)

 ワインドアップで振りかぶり、スッと足を引き上げて投げ込んできます。緒戦の上田西戦では、7回1/3イニングを投げて無失点。続く智弁学園線では、3イニングを投げて4失点を喰らい甲子園を跡にしました。ちなみにタイプとしては、野村 祐輔(カープ)投手に良く似たタイプだと感じます。

ストレート 130キロ台後半~MAX144キロ ☆☆☆ 3.0

 緒戦の上田西戦では、立ち上がりからストレートでガンガン押してくる内容でした。球速もコンスタントに140キロ台を記録し、真っ直ぐが来るとわかっていながらも、上田西の各打者は面白いように空振りを繰り返していました。小さめのテイクバックでタイミングが図り難いのと、スピンと効いた真っすぐのキレが光りました。ただし、高校からプロとなると球威という意味ではやや物足りないものもあったのは確か。球質には優れているものの、プロ仕様の真っ直ぐとは少し違っているように見えます。

 上田西戦では、打者の外角に中心にボールを集め無四球で乗り越えます。疲れが残っていのか?智弁学園戦では、3イニングで2四死球と、ややコントロールも甘くなっていたのかもしれません。四死球で自滅するような危うさはないのですが、内角や低めに集めて来るというよりも、安定して外角で出し入れするタイプではないのでしょうか。

変化球 スライダー・カットボール・チェンジアップ・フォークなど ☆☆☆★ 3.5

 右打者の外角のボールゾーンに切れ込むカットボールやスライダーなどの出し入れが持ち味。その他にも小さく沈むチェンジアップや縦に鋭く落ちるフォークなども織り交ぜてきます。選抜では、10回1/3イニングで10奪三振と、ある程度変化球でも三振が取れてた内容でした。

その他

 クィックは1.05秒前後でまずまずで、牽制も適度に織り交ぜてきます。フィールディングも、落ち着いて冷静に処理できていました。物凄く動きが良いとかいうことはないのですが、無難にそれぞれのことができています。

(投球のまとめ)

 ボールの質も良いし、投手としての投球術やフォームのセンスも良さそうだし、素直に肉付けして行ければ楽しみだといった素材ではあるように思える。その反面、ボールがキレ型で球威に欠け、何か大学タイプだよねと感じる部分もある。本人の志望が何処にあるのかはわからないのだけれども、プロでも進学でもどっちでもありかなと感じさせる選手だった。


(投球フォーム)

 ワインドアップから、足をスッと勢い良く引き上げます。軸足一本で立った時に、膝には余裕は感じないのですが、全体のバランスとしては適度に取れています。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻は比較的高い位置でピンと伸ばされており、お尻の一塁側へのの落としはある程度できています。カーブやフォークを投げるのには無理は感じませんが、武器のなるほどのブレーキや落差ある球まで身につけられるかは微妙です。

 また「着地」までの地面の捉えも、足を適度に前に逃がすことができています。そのため、身体を捻り出す時間も確保でき、カーブやフォークだけでなく多彩な球種を操れる土台を感じます。上記にも書いたように、武器にするほどの球種を身につけられるかは微妙です。

<ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで身体の近くで抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑え込めています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすいかと。また足の甲でも地面を捉えることができており、浮き上がろうする力も抑えられています。したがってボールも高めには集まり難く、「球持ち」も前で放せており抜け球は少ないように感じます。

 まだ低めに集められるほどボールを押し込めていないので、今後そういった粘りが出てくると、もっと粘っこい投球も期待できるかもしれません。見ている感じでは、指先の感覚も良さそうには見えますし、大きく制球を乱すタイプではなさそうです。

<故障のリスク> ☆☆☆☆★ 4.5

 お尻を適度に落とせているので、身体を捻り出すスペースが確保できています。故に、カーブやフォークを投げても窮屈になり難く、肘への負担は少ないのではないかと。

 腕の送り出しを見ていても、肩への負担は感じません。元来、けして力投派でもないので、疲労を溜めやすいフォームではないように見えます。ただし、まだ筋力が弱そうで、執拗以上に速い球を投げようとか無理をすると、故障につながるかもしれません。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りを適度に作れている上に、小さめのテイクバックも相まって、打者としてはタイミングが取りやすいということはないのではないかと。しかし「開き」自体は早いので、良いコースに投げた球が打ち返されたり、縦の変化を見極められてしまう危険性はあります。

 腕は適度に振れて勢いはあるのですが、「開き」の早いことで空振りは誘い難いかもしれません。それでもボールが見えてから到達する感覚が通常のイメージよりキレてくるので、そのことにより高めの真っ直ぐで空振りが奪えている可能性はあります。ボールへの体重の乗せ具合も悪くないようには感じますが、まだウエート不足などもありボールに球威が感じられません

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」に課題があり「体重移動」に良くなる余地があるように感じられました。制球を司る動作も良く故障のリスクも少なく、将来的にも多彩な球種を操れる土台もあります。フォームとしてはまだ発展途上だとは思いますが、素直に筋力・体力がついてくれば良くなって行けるフォームだと言えます。


(最後に)

 選抜の内容を見る限りは、本会議での指名はボーダーラインかなといった気がします。志望届けを提出すれば、育成指名も含めれば指名の可能性は充分ありそうですが、それほどプロ志向が強くなければ有力大学に進んで、4年後を目指すという選択もありだと思います。土台の良い選手なので、上手くプロでもパワーアップを図れれば、3年目ぐらいには順位に関係なくローテーション投手に育っても不思議ではないかなと見ていますが、どうでしょうか?  を付けるか付けないかは悩むところで、夏までにボールの強さが増してこられれば、本会議での指名も濃厚になってくるのではないのでしょうか。


蔵の評価:追跡級!


(2021年 選抜大会)