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森木 大智(阪神))投手のルーキー回顧へ







森木 大智(高知3年)投手 184/82 右/右  





「余力はビッグ3で一番」 





 まだ余力を残しているという意味では、同じ高校ビッグ3と評された 小園健太(市立和歌山ーDeNA1位)や風間球打(ノースアジア大明桜-ソフトバンク1位)以上に、秘めたる能力を残しているのではないかと思われる 森木 大智 。惜しくも明徳義塾の前に甲子園を逃したが、彼の最後の夏はいかなるものだったのか? 振り返ってみたい。


ストレート 145~151キロ ☆☆☆☆ 4.0

 春季大会の時と、夏の大会の球速は大きくは変わっていなかったように見えます。それでも無理に力を入れなくても140キロ台後半を連発できるスピード能力は確か。その球を、両サイドに投げ分けるコントロールもあります。最後の明徳戦こそ、8イニングで7四死球を出したものの、それまでの2試合・12回2/3イニングでは、僅か2四死球なので、制球に不安があるタイプではありません

 球速の割に合わされやすいフォームや空振りが奪えない球質が気になった春ですが、夏の大会ではあまりその点も気にならなくなってきました。そのため球質という意味では、春よりもワンランク引き上がっていたのかもしれません。

変化球 カットボール・スライダー・スピリットなど ☆☆☆★ 3.5

 春は縦に割れるカーブを多く使っていたのですが、明德戦では130キロ台のカットボールでカウントをととえていました。その他に、横滑りするスライダーも織り交ぜ、右打者外角低めに集める投球を得意にしています。またスピリット系の沈む球も結構織り交ぜてきていたのですが、大事な場面で後逸したりと、まだその精度・落差という意味では発展途上な感じはします。そのため将来的には、もっとこういった球をもっと使って来るピッチングスタイルになってくるかもしれません。

その他

 クィックは、1.05~1.15秒ぐらいとまずまずで、早く投げるときは0.9秒台の高速クィックを使う時もあります。牽制はそれほど鋭いものは見られませんが、上手いタイミングで入れてきます。フィールディングの動きも、けして悪く有りません。元々、野手としての才能も非常に高いものを持っている選手なので。

(投球のまとめ)

 左打者の内角を厳しく攻めたりできる実戦力もあるのですが、エラー絡みミスで失点が重なってしまったのは残念な最後となってしまいました。そういった意味では、ちょっとまだ不完全燃焼みたいなところもあり、プロのしっかり止めてくれる捕手がついたり、ディフェンス力の高い守備陣をバックにできれば、もっと大胆な投球も期待できるかもしれません。それほど繊細な制球力や微妙な投球術の駆け引きはできませんが、投球の基礎的な部分は身につけていると観て良いでしょう。


(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から、今後の可能性・将来性について考えてみます。セットポジションから足を引き上げる勢いや高さがあり、「間」をじっくりというよりも少しリリーフタイプの勢いのある入りです。特に軸足の膝に余裕は感じないのですが、バランス良く立てています。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側への落としには甘さは残しますが、カーブやフォークが投げられないということは無さそうです。また「着地」までの地面の捉えも、春よりも粘っこさが感じられるようになりました。したがって身体を捻り出す時間もある程度確保でき、曲がりの大きな変化球の習得も期待できるようになってきました。

<ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで身体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力は内に抑え込めています。したがって軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすそう。また足の甲の地面のへの捉えは深く、むしろ膝小僧まで土が着いてしまうほどなので、動作の深さの割にボールが低めに集まり難かったりと、効果が薄いのかもしれません。それでも前でボールも放せており、リリースもそれなりに我慢できています。したがって、大きく制球を乱すフォームではないと考えられます。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻はある程度落としているので、カーブやフォークを投げても無理は少ないかと。ただし、こういった球種への依存度が増すと、肘への負担は注意しないと行けないでしょう。

 また腕の送り出しを観ていると、肩への負担も少なそう。それほど力投派でもないので、疲労も溜まり難いのではないかと。そのため、故障のリスクも比較的低いフォームだと考えられます。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りはそれなりに作れるようになって合わされやすさは薄らいだように見えますが、ボールの出どころはまだ並ぐらい。まだまだ嫌らしい、捉え難いといったほどではありません。

 腕は適度に振れていて勢いはありますが、まだ打者が思わず吊られるほどはないかと。また、ボールにしっかり体重を乗せてからリリースできているかと言われると、この点は不十分というか発展途上な感じはします。特に膝小僧に土が着いてしまうほど重心が沈んできているので、後ろに体重が残ってしまい前にしっかり乗って行っていません。この辺は、理想的な重心の沈み込みとステップの幅を見つけることが求められそうです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」に物足りないものがあるだけでなく、各動作にもうワンランク上の粘りを求めたいところです。制球を司る動作や故障のリスクが低いのは良いので、あとはいかに武器になる変化球を習得できるかにかかっています。多彩な球種を操るだけの土台や器用さは持ち合わせているので。


(最後に)

 中学時代から世代を引っ張ってきた存在でしたが、最後の夏までに強豪校相手に力で圧倒するほどの凄みまでは身につけることができませんでした。実際技術的にも、まだまだ発展途上といった感じで、いかにプロで足りない部分を伸ばして行けるかに懸かっています。

 しかしそこは、プロで投手育成には秀でている阪神だけに、比較的短期間で見違えるほどにできるかもしれません。投球の基礎的な部分はできているので、2年目の途中から3年目ぐらいには一軍に顔を出せるようになるかもしれません。近い将来、阪神の屋台骨を支える存在になりうる可能性は、かなり高い有望株だとみています。そんな選手が、外れ1位にまで残っていたのは、ラッキーだったのではないのでしょうか。ただし、春からの劇的な成長は観られなかったので、評価は春から据え置きにしたいと考えます。それでも冒頭にも書いたように、プロ入り後劇的に変わるとすれば、ビッグ3の中でこの 森木 大智 ではないかとみています。ぜひ、球界を代表投手へと昇りつめて欲しいものです。


蔵の評価:☆☆☆☆ (1位指名級)


(2021年夏 高知大会)



 








 森木 大智(高知2年)投手 184/87 右/右 
 




 「無理していない」





 下級生までの 森木 大智 は、その能力の割にピリッとしないことが多かった。しかしこの春は、高い水準で安定している。そして、無理に速い球を投げようとしなくても、150キロ前後の速球をコーナーに投げ分けてくる。


(投球内容)

 春の四国大会準決勝・聖カタリナ学園戦では、7回1/3イニングを投げて 5安打 2四死球・8奪三振 で1失点。決勝の明徳義塾戦では、最終回に登板し150キロ台を連発し、最速で154キロまで到達した。

ストレート 常時140キロ台後半~MAX154キロ ☆☆☆★ 3.5

 無理に力を入れなくても140キロ台後半を先発で刻むことができ、リリーフで登板した試合では150キロ台を連発していました。ボールが球威型で空振りが取れないため、打者として詰まらされることはあっても、球速ほど空振りを誘われることは少なそう。そのため、リリーフで150キロ台を連発してくるような時で無ければ、ボール自体に見栄えはしません。むしろ、しっかり内外角に安定して集められるコントロールを評価すべきで、詰まらせて打ち取るのが持ち味だと言えます。

変化球 カーブ・スライダー・スプリットなど ☆☆☆★ 3.5

 縦に割れるカーブを多く使ってきて、同じような軌道で少し球速が増すスライダーがあります。この球のブレーキが良く、球速差も激しいことから有効に作用します。まだ未完成ながらスプリットのような沈む球も持っており、夏に抜けて縦の変化にも磨きをかけてきているのではないのでしょうか。とりあえず、しっかり変化球でもカウントを整えられることは大きいです。

その他

 クィックは、1.05~1.1秒ぐらいとまずまずで、牽制も適度に良いタイミングで投げ込んできます。特別投球にセンスとかは感じられないのですが、余力があり安定したピッチングができるので精神面の不安定さや技術の未熟さは感じられませんでした。打者としても非凡なものを持っており、ひょっとすると投手では伸び悩み野手で大成するかもと思わせてくれるものはあります。

(投球のまとめ)

 リミッターを外して凄い球を投げ込んでくるというよりも、安定して力のあるボールをコースに投げ分けてきます。まだ秘めたる能力はこんなものではないのかもという含みも感じられますし、夏に向けてリミッターが解除されるのか? あるいは、縦の変化球に磨きがかかるのかは大変興味深いものがあります。そういったものが観られるようだと、ドラフトの目玉に躍り出る可能性があります。


(投球フォーム)

 今度はフォームの観点から、今後の可能性について考えてみたい。セットポジションで投げ込み、足を引き上げる勢いや高さはまずまず。それほど軸足の膝には余裕を感じられないものの、バランスの良い立ち方は惚れ惚れします。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を地面に伸ばしがちなので、お尻の一塁側への落としには甘さを残します。そのため、身体を捻り出すスペースは充分とは言えません。故に、カーブやフォークが投げられないことはないものの、やや変化が不十分になる可能性があります。しかし現時点では、カーブに関しては非常に良いブレーキの効いた球を投げられているので、悲観するほどのことはないのかもしれません。

 「着地」までの地面の捉えもまずまずで、身体を捻り出す時間はそれなりに確保。武器になるほどの変化球を修得できるのかは微妙ですが、多彩な球種を操れる土壌はあるように感じます。将来的に、決め手不足で苦しむ可能性もありますが・・・。

<ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることはできています。そのため軸がブレ難く、両サイドへの投げ訳は安定しやすいのでは。また足の甲でも地面を捉えているので、浮き上がろうする力も抑えることができています。したがってボールが高めに抜けるということもなく、球筋も高めに集まりやすいということもありません。

 「球持ち」も前で放せており、指先まで力を伝えることはできています。そのため、制球で苦しむといったタイプではないように感じます。これだけの球速を誇りながら、制球に不安がないというのは貴重です。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さが残るものの、カーブやフォークを投げるのに無理があるというほどではありません。しかし、そういった球を多く使ってくる投手なので、肘への負担が少ないとは言えないでしょう。

 腕の送り出しには無理は感じられず、肩への負担も感じません。けして力投派でもないので、疲労を溜めやすいということも無さそうです。監督さんが、下級生の頃から負荷をかけすぎないようにやってきたので、そういった消耗は少ないのではないのでしょうか。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」の粘りはそこそこで、それほど合わせやすいといった感じではありません。またボールの出どころも並ぐらいで、特に見やすいということは無さそうです。むしろストレートが苦になく合わせられてしまうのは、打者の手元まで伸びて来ない球質にあると言えるのではないのでしょうか。

 気になるのは、投げ終わったあと身体に腕が絡んで来るような粘りや腕の振りに鋭さがあまりないこと。変化球の時に腕の振りがゆるくなるということはありませんが、打者の空振りを誘えるかには疑問が残ります。また「球持ち」は悪くないように見えるものの、前への体重の乗り具合は発展途上な気がします。そのへんが、打者の手元までの勢い・球質に影響を与えているのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、まだ「開き」と「体重移動」に改善の余地があるように感じられます。それでも、秋に比べると「開き」は若干遅くなった気はします。制球を司る動作に優れ、故障のリスクも少ないフォーム。あとは、いかに武器になる決め球を修得できるかが気になります。フォーム全般としては、ほとんど秋とは変わってはいなかったのではないのでしょうか。彼の投球の軸である、ストレートの質をいかに高めて行けるかが肝になりそうです。


(最後に)

 まだ決め手に欠けてピリッとしないところは残りますが、大きく崩れるような不安定なところはありません。これだけの球威・球速を誇りながらも、制球が安定して狙ったところに球を集められるところは非凡ではないのでしょうか。「世代NO.1」と中学時代から言われてきた素材だけに、精神面でも安定しているところは評価できます。秘めたるものがどこにあるのか掴みきれないところはあるのですが、夏の大会でさらにパフォーマンスを高めてくるようだと1位で競合する可能性も充分あります。ボールの質やピッチングスタイルなどを観ていると、寺原 隼人(日南学園)の高校時代を、彷彿とさせるものがあるような気がします。春の時点で、1位指名が意識できる内容でした。


蔵の評価:☆☆☆☆ (1位指名級)


(2021年 春季四国大会)









森木 大智(高知2年)投手 184/87 右/右 
 




「この選手が目玉」 





 これまで才能はあるものの、いまいちピリッとしないイメージが強かった 森木 大智 。しかし、最上級生としてあがったマウンドでは、明らかにその存在感・投球内容は異彩を放っていた。21年度のドラフトは、この男を中心にまわってゆくのではないのだろうか。


(投球内容)

 「スーパー中学生」として注目されてきた森木だが、これまで無理をさすることなく慎重に育ててきた感があった。しかし、新チームでは、1番・投手として出場。まさに、チームの大黒柱として絶対的な存在として君臨する。

ストレート 常時140キロ台後半~150キロ台前半 
☆☆☆☆ 4.0

 けして無理をしなくても、先発でコンスタントに150キロ前後の真っ直ぐを投げ込んでくる。ボールとしては、けして手元でグ~ンと伸びて空振りを誘うというよりも、球威で詰まらせる球質。それでも力のある球が、ストライクゾーンにポンポンと決まる。コントロールが不安定だとか、投球の危うさは存在しない。

変化球 カーブなど 
☆☆☆★ 3.5

 秋の岡豊戦では、変化球は110キロ台のカーブだかスライダーしか投げていませんでした。ただし、この球のブレーキが良く、150キロ前後の真っ直ぐを魅せられてからだと、並の高校生ではタイミングが合いません。他にも球種が以前にはあったと記憶しますが、この球で充分抑えられると踏んだのかもしれません。このカーブには、空振りを奪えるだけのキレ・威力がありました。

その他

 クィックも1.1秒前後で、牽制もまずまず上手いです。下級生の時は滅多に投げず、ヘッドスピードの速さが光った打者としての才能が光っていました。この試合でも1番打者として出場し、いきなり右中間スタンドに叩き込みポテンシャルの違いを魅せつけました。

(投球のまとめ)

 野球選手としての器が、今年のドラフト候補の中では頭ひとつ抜けている気がします。秋の時点でこのレベルですから、順調に一冬越えてきたら、どんなになっているのだろうという期待が持てます。コントロール・フォーム・変化球、投手としてのセンスなど全てで一定レベル以上にあり、現時点では無事最終学年を過ごして欲しいと願わずにはいられません。


(投球フォーム)

 ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。足を高い位置まで引き上げ、軸足一本で立ったときも惚れ惚れするものがあります。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻の一塁側への落としには甘さは残します。そういった意味では、カーブやフォークをなげられないことはないものの、変化が鈍る可能性があります。しかし、110キロ台の変化球がカーブならば、そのへんも大きな問題ではないのかもしれません。

 「着地」までの地面の捉えには、適度な粘りが感じられます。そのため、身体を捻り出す時間はある程度確保できています。武器になるほどの変化球が習得できるかは微妙なところですが、そういった器用さや手の大きさも、持ち合わせているのではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。したがって両コーナーへの投げ訳は、しやすいのではないのだろうか。また足の甲の地面への捉えは、まだ少し浅い感じに。それでも力みのないフォームなので、ボールが高めに抜けたり、高めにしか集まらないといったことはなさそう。「球持ち」もまずまずで前で放せており、ある程度指先でもボールが制御できているのではないのだろうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻の落としには甘さは残すものの、悲観するほどではない。カーブを多めに使ってくるものの、フォームに窮屈さは感じないので肘への負担はそれほどでもないのでは?

 腕の送り出しをみても、上から叩けている割に送り出しに無理がない。また力投派でもないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか?

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りも適度に作れており、「イチ・ニ~の・サン」の「ニ~の」粘りは適度に作れてタイミングが合われやすいということは無さそう。むしろボールの出どころが少し見やすそうな感じで、球筋がいち早く読まれて打者に見極められてしまう恐れはある。

 腕は強く振れており勢いはあるのだが、上記で記したように開きが早めなことで空振りを誘い難いのはあるのかもしれない。ボールにもある程度体重を乗せてからリリースできて力を伝えられているが、さらにこの冬の間に股関節の柔軟性と下半身の強化に励めば、さらにグッと前に乗るような球も投げ込める可能性を秘めている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」が若干早い感じなのと全体の動作にももうワンランク上の粘りが出てくると面白い。制球を司る動作や故障のリスクに関しては良いフォームだと思うが、将来的に武器になる変化球が習得できるかは微妙。ただし手の大きさや野球センスからも、それをモノにできる可能性は秘めているとみる。現状は、中の上 ぐらいの部分が多く、これがさらに今後鍛錬で磨かれてくると技術的にも手がつけられなくなるのではないのだろうか。


(最後に)

 これまで大事に育てられてきたのもあり、投球内容にも起用法も物足りなさを感じていました。しかし、秋の高知大会の登板を見る限り、充実期を迎えつつあります。四国大会の初戦で破れてしまったように、持っている力を安定して出せるかとか、全国レベルの強豪校にも通用するだけの技術を身につけられるかが、今後の課題ではないかと思います。しかしすでに相当なレベルまで来ており、今後の成長次第では21年度で頭一つ抜けた存在になりえる大器です。


(2020年 秋季高知大会)









森木 大智(高知1年)投手 184/86 右/右 
 




 「確かにモノが違う」





 2021年世代を引っ張る存在である 森木 大智 は、確かにモノの違いを感じさせる大器。秋こそ背番号3を付けて登板は控えていたが、1年夏の高知大会では早くも背番号1を付けて片鱗を魅せていた。


(投球内容)

物凄い剛球を投げ込むという感じではないが、確かな球速と変化球を織り交ぜてくる本格派。

ストレート 常時145キロ前後 
☆☆☆★ 3.5

 1年の夏の時点で、コンスタントに145キロ前後を連発できるスピード能力は高い。ボールの勢い・球威も悪くなくないものの、まだ球筋はバラついていて、けして完成されているといった感じではない。またこの時点では、全国レベルの強豪校に対し、力でねじ伏せられるといった絶対的な領域にまでは到達していない感じだった。

変化球 カーブ・スライダー・スプリットなど 
☆☆☆ 3.0

 110キロ台のカーブに、120キロ台のスライダー。それにスプリットのような、縦に沈む変化球も持っている。あまりスライダーは使って来ない感じで、110キロ台のカーブでカウントを整えて来る。縦の変化も落差はあったものの、使う頻度は現時点では少ない。そのため、この球を投げておけば大丈夫といった絶対的な変化球は見当たらない。

その他

 クィックは1.05秒前後でまずまずで、牽制も鋭い。フィールディングの動きも良く、秋は背番号3で打者として活躍。野球センスやマウンドさばきの良さは感じられたが、それほど「間」を使っての投球や微妙な出し入れをするような巧みな投球術は観られなかった。

(投球のまとめ)

 確かに1年生としては破格の内容だし、素材としても完成されているといった感じでもない。それだけ伸び代も残されていて、非常に大事に育てられている印象がある。しかし現時点の能力だと、全国の強豪校レベルを圧倒するほどの力はなく、それはすなわち、全国レベルの強豪校である明徳を圧倒して甲子園に出てこられるかと言われると、そこまでの力はないように思われる。恐らく起用が本格化するのは、2年秋の新チーム以降であり、彼の真価が問われるのはその後だとうことではないのだろうか。





(投球フォーム)

 セットポジションから、スッと足を勢いよく高く引き上げてきます。軸足一本で立った時にも膝に余計な力みが感じられず、バランス良く立てているのは投手としての筋の良さを感じさせます。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は適度に一塁側に落とせてはいるものの、まだ甘さは残している感じがする。そのためカーブやフォークを投げるのに無理は感じられないが、キレや落差という意味では絶対的なものがないのも頷けてしまう。

 また「着地」までの粘りも平均的で、身体を捻り出す時間も並。これも、今後武器になるほどの変化球を習得できるのかと言われると微妙といった感じがする。そのためにも、もう少し地面を捉えるまでの時間を稼ぎたい。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑え込むことができている。したがって軸はブレ難く、両サイドへの投げ分けもしやすいのではないのだろうか。足の甲でも地面を捉えており、浮き上がろうとする力を抑え込めている。「球持ち」も悪くなく、低めに集められる土台はできている。あとは下が安定してリリースが定まって来ると、コントロールも定まって来るのではないのだろうか。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻は適度に落とせているので、カーブやスプリットなどは使って来るものの負担は少ないと考えられる。そのためよほど多投しなければ、肘への負担は少ないのではないのだろうか。

 腕の送り出しを観ていても、けして無理は感じられない。そのため肩への負担も少なそうだし、それほど力投派でもないので疲労も溜め難いのではないのだろうか。


<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出どころも並ぐらい。そういった意味では、特に合わされやすいわけではないが苦になるほどのフォームでもない。

 腕は強く振れていて勢いがあるので、空振りは適度に誘いやすい。しかしボールにしっかり体重を乗せてからリリースできているかと言われれば、まだそこまでは我慢できていない。そのため球速はあるものの、打者を圧倒するような凄みのあるボールは投げられていない。


(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点は見当たらない。ただしどの動作も平均的であり、フォーム全体にもっと粘りが出てきて欲しい。故障のリスクは少なめで、制球を司る動作も悪くない。しかし武器になるほどの変化球を習得できるかと言われれば、現状はフォームが改善されて来ないと厳しいのではないのだろうか。


(最後に)

 現状は、1年生としては破格なものの、ドラフト候補としては絶対的なレベルにはないといった感じがする。また筋力的にも技術的にも発展途上の段階であり、更に良くなって行ける余地は残されている。逆にこのまま最終学年でもあまり変わらないようだと、素材は好いもののドラフトで上位指名確実かと言われれば微妙だろうということ。いかに来夏までに、凄みを増して来るのか? そこに、全ては懸かっている。


(2019年夏 高知大会)