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古賀 悠斗(西武)捕手のルーキー回顧へ







古賀 悠斗(中央大4年)捕手 173/85 右/右 (福岡大大濠出身) 
 




 「頭ひとつ抜けているのか?」





 4年春のシーズンでは、打率.341厘・3本塁打で、課題であった打撃でも存在感を示した 古賀 悠斗 。彼のあと追う存在の捕手が、打撃重視型だったり、ディフェンス型だったり、ポテンシャルは高いけれど少し時間はかかりそうな素材型だったりする今年。比較的早くプロのレベルに順応し、攻守でバランスが取れているという意味では、頭ひとつ抜けた存在だった。しかし、この秋は打撃で絶不調に陥り、他の捕手との距離が急激に縮まりつつある。改めてじっくりみることで、彼が抜けた存在であるのか考えてみたい


(ディフェンス面)

 福岡大大濠時代は、他のポジションからコンバートされ、丁寧にプレーしている印象でした。しかし今は、かなり経験や実績を重ねることで、良い意味では余裕があり、悪い意味では少し雑になり熟れてしまった感は否めません。好投手・三浦 銀二(現法大)の好投を導くような、テンポの良いボール回しからもセンスが感じられました。しかし今は、そういったテンポの良さもなくなり、のんびりプレーしてしまっている印象は否めません。プレースタイルからすれば、高校時代の方が好感が持てました。

 ミットを投手にしっかり示し、グラブを下げることなく捕球します。特にフレーミングを駆使するとかそういった感じはしないのですが、ワンバウンドするような球には瞬時に下からミットを出すなど、しっかり捕るということはできています。座ったまま投手に返球するのは構わないのですがが、それならばテンポ良くボールまわしをして、相手に考えさせる時間を無くさせたり、投手を気持ち良く投げさせることをもっと意識すべきではないのだろうか?

 元々圧倒的な地肩の強さというよりも、捕ってから素早く無駄のない動きでタイムを叩き出すタイプ。地肩自体は 中の上 ぐらいも、素早く正確に二塁ベース付近に集めて高い阻止率を誇ります。そのため1.8秒~1.8秒台中盤ぐらいでまとめられることが多く、走者を刺すといった能力はプロに混ぜても上位ランクに位置づけられるようになるのではないのでしょうか。リードに関しては、あまり意図が伝わって来ないなど、まだまだこれからかなといった感じは致します。止める・投げる ということには秀でており、あとは相手打者の意図を見抜く洞察力や、味方の投手の気持ちや変化を察する観察力など、そういった部分でもう少し深く物事を追求して欲しい気はします。それでもディフェンス面では、アマチュアでは上位クラスでありプロの基準を満たすだけのものは持っているように感じます。


(打撃内容)

 秋の開幕戦でも、右方向に打ち返したり、内角の球をうまくさばいてヒットにするなど良い滑り出しでした。しかし、その後全く打てなくなり、現在はボールが見えていない状況。元々対応力はそれほど高くはないのですが、内角寄りの球をうまくさばき、長打につなげるのが上手い選手です。高校通算50本塁打以上を放ったように、そういった球をスタンドに叩き込めるパンチ力は秘めています。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは高めに幾分捕手側に引いて構えます。腰は深く据わってどっしり感があるが、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスとしてはそれなりといった感じ。気になるのは、打席で力が入り過ぎて力みが感じられるところだろうか。

<仕掛け> 遅すぎ

 投手がリリースを迎える直前あたりに始動する、「遅すぎる仕掛け」を採用。ここまで遅いと、プロレベルの投手の球速やキレに対し、日本人の筋力やヘッドスピードだと対応するのは難しい。動作は同じでも、投手の重心が前に移動する段階で動き出すような、ワンテンポ早い始動を心がけたらどうだろうか?

<足の運び> ☆☆☆ 3.0

 投手の重心が下がりきったところで一度ベース側につま先立ちし、本格的に動き出すのはリリース直前。小さくステップして、真っ直ぐ踏み出してくる。始動~着地までの「間」が短いので、狙い球を絞りその球を逃さないことが求められる。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプかと。

 真っ直ぐ踏み出した足は、なんとか地面捉えて我慢をしているものの、基本的に逃げてゆく球や低めの球は得意ではないのだろうか。それでも高めや甘めの外角球ぐらいならば、右方向にも飛ばすことはできている。しかし元来は、引っ張って巻き込むのを好む傾向が強そう。特に内角寄り球をさばくのはうまく、そういった球をスタンドインできるパンチ力を秘めている。

<リストワーク> ☆☆☆ 3.0

 あらかじめ捕手方向にグリップを引いているので、始動が遅すぎても速い球に対応できる。しかし捕手方向にあらかじめバットを引いていると、力みが生じやすくリストワークに遊びがなくなり柔軟な打撃がし難くなってしまう弊害もある。

 またバットの振り出しを観ていても、外角の球をさばくのには少し遠回り出てくる感じ。それほどバットの先端であるヘッドは下がらないでボールは拾えているが、確実性は高くないスイング軌道。しれでもインパクト後は、大きな弧を描き最後まで振れている。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが小さく、目線の上下動が少ないところが良いところ。錯覚を起こすことなく、球筋を追うことができている。身体の開きはなんとか我慢しつつ、軸足の安定感は並ぐらい。内モモの筋肉は発達しており、強烈な打球を生み出す原動力になっている。

(打撃のまとめ)

 メカニズム的には、打てるタイミングやコースが限られていて、けして確実性の高い打ち方ではありません。そのため、たまにうまく巻き込めた時に長打を放ったりすることはあっても、高い打率を残すタイプではない。プロでの未来像は、2割3~5分 ぐらいだけれども、年間通してレギュラーとして起用したら、10本ぐらいの本塁打を放つ意外性を持った捕手といった感じになるのではないのでしょうか。その分、ディフェンス面で、しっかり守れることが求められます。


(最後に)

 今年のアマチュア捕手の中では、攻守にバランスが取れている貴重な存在ではあるのは間違い有りません。しかし他の捕手と比べ頭ひとつリードしているとは思いますが、例年の上位捕手と比べ特別な存在ではないように思います。そのためドラフトとしては、ハズレ1位~2位前後ぐらいだと春の内容では観ていましたが、2位から場合によっては3位ぐらいまで残ってしまうかもしれません。ちょっと、貴重な1位枠を使うほどの絶対的な存在ではないように感じました。


蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級)


(2021年 秋季リーグ戦)










古賀 悠斗(福岡大大濠3年)捕手 175/73 右/右 
 




 「だいぶ捕手らしくなってきた」





 2年秋に捕手に転向し、神宮大会では強肩・強打の捕手としてプロからも注目されるようになっていた 古賀 悠斗 。秋までは、肩が強い、良いところで打つ という部分では優れていたが、ひと冬越えてだいぶ捕手としてのプレーが板についてきた。


(ディフェンス面)

 捕手経験が浅いからこそ、丁寧にプレーしようという姿勢が感じられます。それほどミットをしっかり示したりはしないのですが、低めの球を捕りにゆくときには素早くミットが下から出てきます。ボールの押し込み等に強さは感じられませんが、総じてキャッチングに雑なところは見られません。また投手への返球も、ちゃんと1球1球立って投手に返しますし、テンポの良いリードを心がけていても、そういった部分が雑にならないところは良いところ。

 リードに関してはまだまだ勉強が必要ですが、筋は悪く無さそう。二塁までのスローイングは、1.9秒前後を記録。捕ってからも速いですし、九州の捕手らしく地肩も強い。そして、制球も安定しています。プロの指導者がつけば、まだまだ資質を伸ばせるでしょう。ことディフェンスに関しては、充分プロを意識できる素材です。


(打撃内容)

 センター方向中心に鋭くはじき返しますが、時にはスタンドインできるパンチ力を秘めます。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 少しクロス気味に立ち、グリップは高めに添えます。腰の据わり具合、全体のバランスとしては良いのですが、両眼で前を見据える姿勢には癖があります。打球をセンターから右方向と割り切っているのであれば、これでもありだと思います。

<仕掛け> 遅め

 一度ベース側につま先立ちし、投手の重心が前に移動する段階で動き出す「遅めの仕掛け」を採用。ボールできるだけ引きつけてから動き出す、長距離打者に多く観られる仕掛けです。ただし彼のプレーを観ている限りは、長距離打者という感じはしません。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を軽く上げて、ベース側に踏み出すインステップを採用。始動~着地までの「間」はないのですが、狙い球を絞ってその球を逃さない打撃が求められます。ベース側に踏み出すように、外角への意識が強いよう。踏み出した足元はブレないので、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができます。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、始動の遅さを補うことができています。バットの振り出すは、インパクトまで少し遠回り。それでもポイントを後ろにして、センターから右方向への打撃を重視しているようです。ボールを捉えるときは、バットの先端が下がらず、広い面でインパクト。打ち損じの少ない、確実性のあるスイングができています。

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げは静かで、目線の上下動が少ないのが特徴。身体の開きも我慢でき、軸足も地面からまっすぐ伸びてキレイに回転できています。調子の波も、比較的少ないタイプではないのでしょうか。

(打撃のまとめ)

 物凄く長打力があるとか、コンタクトする能力が図抜けているという凄みは感じられません。しかし捕手だということを考えると、一定の打力はあり高校からドラフト指名されるレベルには、あるのではないのでしょうか。プロの環境になれれば、チームの下位打線ならば、仕事を果たす可能性を秘めています。


(最後に)

 攻守に凄みこそ感じられないので、上位指名云々という素材ではないでしょう。しかし捕手経験が浅い割には、しっかり基本ができていること。打撃・地肩などの素材も許容範囲内であり、総合力で高校からのプロ入りを意識できる素材だと思います。特に身体能力にかまけて粗っぽい捕手が多い九州の球児では珍しく、雑なところが見られないところは好感。期待して、今後も見守って行きたい選手でした。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2017年 選抜)