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北山 亘基(日ハム)投手のルーキー回顧へ







北山 亘基(京都産業大4年)投手 182/80 (京都成章出身) 





 「安定はしている」





 関西屈指の先発型投手として注目されていた 北山 亘基 。蓋をあけてみれば、ドラフト8位でなんとか本会議での指名に滑り込んだ形。前評判の割に低評価に終わったのはなぜか? 今回は考えてみる。


(投球内容)

 春は、
4勝3敗 防 1.52、秋は 2勝4敗 防 2.12 という成績だったものの、内容的にはそれほど春と秋で大きな差はなかったのではないかといった数字に。

ストレート 常時140キロ~中盤 ☆☆☆ 3.0

 春見たときは、球速表示こそ145キロ前後~150キロぐらい出ていたものの、球速表示ほどのボールの勢いや球威を感じさせる球ではなかった。しかしこの秋も、目測で見た印象では常時140キロ前半~速い球で140キロ台中盤ぐらいなのでは?といった印象。少なくてもそのぐらいにしか感じさせない球質であり、打者としてはそれほど苦にはならないのではないのだろうか。

 むしろ、春みたときは高めに抜ける球が目立ったものの、この秋は立ち上がりから真ん中近辺の高さで両サイドに散っていた印象。この選手の真っ直ぐを評価する場合、むしろ球速やキレなどではなく、この安定したコマンドの方を評価すべきではないかと。特に春よりも、制球を重視して投げていたのかもしれない。

変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5

 右打者にはスライダーでしっかりカウントを整えることができ、同様に左打者にもチェンジアップを中心にカウントを整えることができる。また時々緩いカーブを織り交ぜてアクセントをつけたり、縦の変化球で空振りを誘うこともある。特に絶対的な球種があるわけではないのだが、多彩な球で相手の的を絞らせないのが持ち味。総じて、変化球のコマンド・キレは悪くない。プロでリリーフなどをやるようになれば、縦の変化球を多く織り交ぜて来るスタイルになるのかもしれない。

その他

 あまり牽制などは観られないが、クィックは0.9~1.0秒ぐらいと素早い。また、ベースカバーなどの入りも早く、フィールディング等も悪く無さそうだ。

(投球のまとめ)

 球速表示は出るものの、そこまでのボールの勢いや凄みは感じられない。そのため打者としては、苦になるほどのボールではないのだろう。それでも真っ直ぐを魅せておきながらの、多彩な変化球を織り交ぜ相手に的を絞らせない投球はできている。また安定した制球力もあり、精神的にもムラが少なそうなタイプで、ゲームメイクできる先発型といった印象は受ける。プロのローテーションに入れるほどの力量があるかは微妙だが、一年目から先発争いを演じられる力量はあるのではないのだろうか。むしろこういったタイプは、プロ入り後リリーフを生業にすることが多い。


(成績から考える)

春の寸評では、フォーム分析をしました。今回は、最終学年での成績から、その傾向を考えてみましょう。

4年春 7試合 4勝3敗 59回1/3 37安 11四死 69三 防 1.52(7位)
4年秋 7試合 2勝4敗 51回   37安  6四死 42三 防 2.12(8位)


1、被安打は投球回数の70%以下 △

 春のリーグ戦の被安打が 62.4%、秋のリーグ戦では 72.5% 。若干秋の数字は落ちているものの、悪い内容ではない。ただし、地方リーグの選手だけに、70%以下で圧倒するような絶対的な内容は示したかった。そういった意味では、プロの打者相手だと微妙な内容なのかもしれない。

2、四死球は投球回数の 1/3以下に ◎

 春の四死球率は 18.5% で、秋は 11.8% と向上している。立ち上がりを中心にボールが上吊る傾向が観られた春に比べると、この秋は立ち上がりから球筋が安定したように思える。むしろ春よりも、コントロールを重視して取り組んできたのかもしれない。少なくても、制球を乱して試合を壊すような危うさはないとみて良いだろう。

3,奪三振は1イニングあたり0.8個以上 ○

 春は 1.16個 だったのに対し、秋は 0.82個 と数字は落ちている。それでも先発投手の基準である 0.8個以上は奪えており、多彩なコンビネーションで相手の裏をかく投球はできていたのではないのだろうか。

4,防御率は1点台 △

 春は 1.52 と基準を満たしていたが、秋は 2.12 と基準を下回った。またこの投手にあまり凄みが感じられないのは、規定投球回数に達していなかった1年生の時のを除くと、防御率0点台の圧倒的なシーズンがないということ。

(成績からわかること)

 実際の投球を観ているのと同様に、数字の上でも圧倒的といえる数字ではない。しかし安定感はあり、先発タイプでもあり1年目からローテーション争いを演じられる完成度はあるのではないかと。ただし、プロの先発を任されるほどの圧倒的なものがあるかは数字の上でも微妙な印象を受けた。


(最後に)

 ドラフト8位での入団を考えれば、一年目から一軍投手陣を刺激しうる存在である意味は大きいのでは? ただし、現時点での内容だと、キャンプ・オープン戦ではそれなりに注目されても、開幕して結果を残すまでの絶対的な力があるかは微妙なところ。あとは、今の土台でプラスアルファをプロ入り後身につけて行けるか? あるいは、出力を上げて投げたリリーフ時にどのようなパフォーマンスを魅せられるかではないのだろうか。

 そういった意味では、大崩れしない安定感はあるものの、現時点では微妙な能力の選手といった印象は否めない。その突き抜けられない現状を考えると、評価は春よりワンランク落としたあたりが、評価としても妥当なのかもしれないし、このぐらいの評価に留まったのも必然だったのかもしれない。


蔵の評価: (下位指名級)


(2021年秋 秋季リーグ戦) 










北山 亘基(京都産業大4年)投手 182/80 右/右 (京都成章出身) 





 「安定感取り戻す」





 関西屈指の本格派として君臨する 北山 亘基 が、調子を取り戻した。昨春のリーグ戦は、コロナで中止。秋は、防御率 3.41 と安定感に欠いた。しかしこの春は、5/16現在で 防御率 1.20 と、持ち味の安定感を取り戻してきている。秋のドラフト会議に向けて、指名が現実味を帯びてきた。


(投球内容)

 5/16現在 今シーズン は、52回1/3イニングを投げて62奪三振と、投球回数を上回る奪三振を奪えている。投球回数を上回る奪三振を奪ったのは、1年秋と2年春のシーズン以来の出来となっている。右のスリークォーターで、典型的な先発タイプの好投手だ。

ストレート 145キロ前後~MAX151キロ ☆☆☆★ 3.5

 肘をしっかり立てて投げられないフォームなので、ボールが高めに抜けてしまいそうに見える。確かに立ち上がりなどを中心にそういった球も見られるのだが、総じては真ん中近辺の高さには集められてくる。球速は、けして力を入れなくても145キロ前後~150キロ級のボールを先発しても投げられており、安定して速い球速を刻める能力がある。逆に球速ほどに自己主張するような迫力はなく、変化球とのコンビネーションで活きるタイプではないのだろうか? ストライクゾーンに安定して集められるコントロールはあるが、ストライクゾーンの枠の中では結構アバウトで甘い球も少なくはない。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ・スプリットなど ☆☆☆★ 3.5

 小さく横滑りする、カットボールのようなスライダーでカウントを整えてくる。時々、カーブやチェンジアップを織り交ぜ変化を付ける。そして追い込むと縦に沈むスプリットもあり、この球で空振りを奪えることができている。何が凄いという球があるわけではないが、多彩で的が絞り難いのではないのだろうか。

その他

 クィックは、0.9~1.0秒ぐらいと高速。ベースカバーなども遅れることなく、そういったことはしっかりこなせているように見えた。

(投球のまとめ)

 精神的にも安定しており、冷静に相手と対峙できているよう見えます。的を絞らせない多彩がありますが、時々甘い球があって、痛打を浴びるときにがあります。球速はありますが、甘い球を相手が打ち損じしてくれるような嫌らしさや球威はあまり感じられません。大崩れはしませんが、相手を完璧に抑え込むといったタイプではないように見えます。プロで言えば、5回・6回を、2~3点しながらも試合をつくれる、そういったタイプではないかと。そのため、リリーフで相手をねじ伏せるよりも、典型的な先発タイプのように思えます。





(投球フォーム)

 セットポジションから、スッと足を引き上げてきます。軸足一本で立った時に、膝から上がピンと伸び切ってしまい、トの字 になるような直立した立ち方になっているのは気になります。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 サイドスローのように、前に少し身体を倒して重心を沈ませてきます。そのため、お尻はバッテリーライン上に落ちてしまい、身体を捻り出すスペースは充分確保できません。こうなると、カーブやフォークを投げるのには窮屈になったりするのは気になるところです。それでもブレーキのあるカーブやスプリットは投げられているので、変化にはあまり影響していないことがわかりますが。

 前に倒れ込む感じのフォームの割には、着地までの地面の捉えは早すぎることはありません。そのため、適度に身体を捻り出す時間は確保できています。武器になるような変化球は修得できるかは微妙ですが、適度にキレのある変化は期待できるのではないのでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで身体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力は内に留めることができています。したがって軸はブレ難く、両サイドのコントロールを中心に大きく乱すことは無さそう。足の甲でも地面を捉えていて浮き上がろうとする力は抑えられているのですが、膝小僧が地面に着いてしまうほどなので、その効果は薄いのではないかと感じます。

 またスリークォーター気味の腕の振りで、肘をしっかり立てて投げられいない部分があり、ボールが抜けやすい傾向もありそうです。「球持ち」で抜けるのを抑えつつ、指先の感覚も悪くはないようには見えます。それでも繊細なコントロールがあるわけではなく、ストライクゾーンの枠の中では結構アバウトで甘い球も少なくありません。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻が落とせない割に、カーブやスプリットも適度に使ってきます。そのため窮屈にはなりやすく、肘への負担がないとは言えません。それでも頻度はそれほど多くないことや、縦の変化も握りの浅いスプリットなので、悲観するほどではないのかもしれません。

 腕の送り出しを見ても、肩への負担はあまり感じられません。けして力投派でもないので、疲労も溜め難いのではないのでしょうか。

<実戦的な術> ☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りは適度に作れており、けしてタイミングが合わせやすいわけではないように感じます。しかし、ボールはやや見やすい傾向にあり、コースを突いたような甘くない球を打ち返されたり、縦の変化を見極められてしまうことも多いかもしれません。

 それ以上に気になるのが、投げ終わったあとに腕が身体にあまり絡んでこない。腕の振りにあまり、鋭さが感じられないこと。特に腕が緩むとかいうことはないと思いますが、打者はあまり吊られ難いのかなと。またボールにしっかり体重を乗せてからリリースできているように見えるのですが、少し体重が三塁側に流れるのか? 投げ終わったあとの地面の蹴り上げが乏しく、打者の手元までグッと迫ってくるような球威や勢いがあまり観られないように感じました。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」によるボールのみやすさと「体重移動」による勢いや球威という点で物足りなさを感じます。制球を司る動作は悪くなく、故障のリスクも高くは無さそう。武器になるほど変化球の修得は微妙ですが、多彩な球種を操れる土台は持っていると思うのですが ・・・ 。実戦派に見えるのですが、そこまで実戦派といったフォームでもないように感じました。


(最後に)

 タイプ的には、大学の先輩である 平野 佳寿(オリックス~マリナーズ)みたいな感じですが、どちらかというと 光原 逸裕(オリックス~ロッテ)に近いタイプかもしれません。今年の大学生の中では、数少ない先発タイプの右投手といった感じはします。しかし、まだ絶対的なものはないので、そこまで活躍できるのかと言われれば微妙でしょう。ただし、プロでさらにストレートなどに磨きがかかれば、ローテーション投手としてまわって行ける。そういった可能性も秘めているのではないのでしょうか。ドラフト的には、中位(3位~5位)から下位指名ぐらいにはなると思いますが、そのぐらいの評価でもプロ入りを決断するのか注目されます。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2021年 春季リーグ戦)