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大勢(巨人)投手のルーキー回顧へ







翁田 大勢(関西国際大)投手 181/80 右/右 (西脇工出身) 





 「ブルペンでしか観られなかったけれど」





 春先のプロ・アマ交流戦でも活躍し、最終学年での飛躍が期待されていた 翁田 大勢 。しかし春のリーグ戦では、コロナの影響でリーグ戦に1試合(ワンアウトも取れず)しか登板できず。秋もスカウトやマスコミが彼の勇姿を確認できるようになったのは、10月に入ってからという状況だった。したがってドラフト雑誌に彼のことを取り上げられる機会が少なかったのは、致し方ない状況だろう。特に下級生までの実績も乏しく、最近の様子もわからなかったので。ただし下級生の頃からのパフォーマンスからでも、ボールに威力は突出しており、ドラフト候補であることは一致した意見だった。


(投球内容)

 サイドに近いスリークォーターで、柔らかい腕が身体に巻き付いて来る感じのフォームです。大学の先輩でもある、益田 直也 を強く意識したスタイルのようだが、むしろ腕をムチのように使える分、益田以上に打者としては真っ直ぐは合わせ難いかもしれない。

ストレート 145キロ前後~MAX150キロ以上 ☆☆☆☆ 4.0

 生で実戦での投球を確認できなかったのは悔やまれるが、映像を見る限り普段は145キロ前後と少し力を落として投げている印象。それでも要所では、150キロを越えてゆくような威力のある真っ直ぐを投げ込んできます。南港球場の屋内ブルペンでも、明らかに彼のボール音の響きが、他の選手とはズシッと違っていました。ボールは、適度な勢いがありながら球威も感じさせる球質で少しシュート回転する傾向があります。そのため空振りもある程度は奪えるでしょうし、詰まらせることも可能ではないかと。

 ただし、この秋の成績をみると、44イニングで29四死球とコントロールに難があることがわかります。アマレベルで65.9%の四死球ですから、よりストライクゾーンが狭く強打者の多いプロの世界では、コントロールの粗さは顕著になる可能性があります。

変化球 スライダー・フォークなど ☆☆★ 2.5

 映像を見ている限り、スライダーやフォークを時々織り交ぜてきています。ただし、これだけ四死球が多いというのは、カウントを悪くした時に安心してストライクをとれるほどの変化球がないのかもしれません。44イニングで50奪三振と投球回数を上回っていますが、これだけの真っ直ぐを投げる割には、1イニングあたりの奪三振は 1.14個 とそこまで突出しておりません。映像を見ていても、三振を奪っているのは力を入れた真っ直ぐが中心であり、フォークの精度には課題を残します。

(投球のまとめ)

 突出した真っすぐの威力は確かで、44回を投げて27安打と被安打率は 61.4% というのは地方リーグでも評価できる数字。しかし、やはり制球の粗さとこれといった変化球がないように見えるのは、気になる材料ではあるように思えます。位置づけ的には、昨年の巨人の1位指名である 平内 龍太(亜大)よりも、さらに危うい素材のようには思えます。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から技術的にプロでどうなのか? 検証してみます。普段は、ゆったりとノーワインドアップから投げ込んできます。足を引き上げる勢いは静かで、高さも並ぐらい。軸足一本で立ったときも、それほど膝には余裕がなくバランスとしては少し直立気味です。こういった立ち方をしている選手は、膝に余計な力が入りやすく制球に不安がある投手が多いです。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 かつての巨人の大エース・斎藤 雅樹 投手のように、お尻をしっかり一塁側に落として投げるサイド・スリークォーター系のフォームです。そのためカーブやフォークといった球種を投げるのには無理はありません。ただし、腕の振りが下がって出てくるので、その変化は乏しいといえるでしょう。

 「着地」までの地面の捉えを見ていると、平均的な感じがします。それだけ身体を捻り出す時間も並で、将来的にも武器になる変化球を習得できるかには疑問が残ります。球速のある小さな変化で、ピッチングの幅を広げてゆくことが求められます。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで身体の近くに留められており、外に逃げようとする遠心力は内に抑えられています。それだけ軸はブレ難いように見えますが、腕の振りが良すぎるのか? ボールが暴れる印象はあります。

足の甲の地面の捉えも適度に着けているので、ボールが高めに抜けるということは少ないように見えました。リリースも前で放せているので球持ちも悪くないように見えますが、ボールが制御できていないのは不思議なくらいです。力の入れ加減・抜き加減を覚えれば、根本的な土台は悪くないと思うのですが ・・・ 。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻は落とせているので、カーブやフォークを使っても無理は感じられません。ただしサイドに近いフォーム故に、独特の負担は肘に出やすいフォームではあると思われます。

 また腕の角度にも無理はないので、肩への負担も少ないのでは? 力投派なのでそれなりに疲労は溜めやすいとは思うものの、普段は力を落として投げることもしているので、そこまで故障のリスクは感じられません。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出どころはやや早い傾向にあります。そのため、アマレベルでも押し込んでいた球が捉えられたり粘られたり、ボールになる変化球を見極められる恐れはあります。彼の最大の良さは、身体に巻き付くような腕の振りにあります。そのため「着地」が並でボールの出やすいフォームの割には、タイミングが合わされやすいとか振ってもらえないという恐れがこれにより軽減されるかもしれませんが。

 ボールにもしっかり体重を乗せてからリリースできているので、ストレートの勢い・質という意味では、今年の候補の中でも屈指のレベルにあるのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」に特に課題を抱えています。制球を司る動作の割に、コントロールに課題があるのも気になります。故障のリスクが低いのも明るい材料だと思いますが、武器になる変化球の習得に苦労しそうで、伸び悩むリスクは高いと考えられます。


(最後に)

 ボールの勢い・球速は、確かに1位指名したくなるのもわかるほど。しかしながら、制球力・武器になる変化球の習得などに課題があり、個人的にはかなりリスクの高い素材ではないかとみています。投球がしっかり確認できなかったので具体的な評価はできませんが、個人的には ☆☆(中位指名級) ~ 良くてもも ☆☆☆ (上位指名級) ぐらいの評価に留まったのではないかと思っています。昨年の 平内龍太(亜大)以上に、巨人はリスキーな素材に手を出したなといった印象は持ちました。先発で活躍して欲しいという意向ですが、一年目から活躍するとすればリリーフからではないかとみています。


(2021年 秋季リーグ戦)