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松井 友飛(楽天)投手のルーキー回顧へ






松井 友飛(金沢学院大4年)投手 189/85 右/右 (穴水出身) 
 




「クィックでもダイナミック」 





 足を大きく振って投げる、ダイナミックなフォームに特徴がある 松井 友飛 。こういった投手は得てして、クィックになると動作に特徴が無くなりがちだが、この松井はクィックでもダイナミックなフォームを維持できる稀な投手なのだ。


(投球内容)

この秋の投球を二度ほど見ましたが、ガンガン真っ直ぐを中心に押してくるタイプです。

ストレート 常時145キロ前後~MAX149キロ ☆☆☆★ 3.5

 球速は常時145キロ前後は出ていそうで、この日の最速は149キロだったそうです。下級生のときに神宮で投げた時は、140キロ前後だったことを考えると、かなり出力は上がっているのは間違いないでしょう。ボールの勢いは確かにあるのですが、真っ直ぐで空振りをビシバシ奪うような球質ではないように見えます。そのへんは、普段のリーグ戦でも投球回数よりも奪三振が少ないことからも伺えます。また真っ直ぐ自身も結構バラツくので、さほどコントロールがあるわけではありません

変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5

 スライダーである程度カウントを整えることができるのと、なんだかチェンジアップだかフォーク系の球に、打者が腰砕けになっているのは印象的でした。やはりあの真っ直ぐを魅せられてからの変化球は、かなり効果的だということでしょう。今後、チェンジアップだかフォーク系の球が、どのぐらい磨かれるかには興味があります。

その他

 牽制は鋭いのですが、ややモーションが大きめ。クィックは、1.05秒ぐらいと、モーションは大きいそうに見えるものの、タイム的には基準以上です。ダイナミックなフォームを損なわずに、これだけのタイムで投げ込めることの意味は大きいかと。

(投球のまとめ)

 荒削りな地方リーグのロマン型といった域は脱していませんが、順調に伸びてきました。上位でとかいうのはまだ厳しいと思いますが、今後の伸び代・素材としての魅力という意味では、中位(3位~5位)ぐらいにランクして来る球団が出てくるかもしれません。ロマンあふれる右腕が少ない今年の大学・社会人を考えると、興味深い一人ではないのでしょうか。


(投球フォーム)

 ノーワインドアップから、反動をつけて足を引き上げる勢いや高さは感じられます。そういった最初から高い出力を引き出して来るので、先発よりもリリーフタイプといった感じはします。軸足の膝には余裕がなく少し力みがちなのは気になるものの、足を身体の近くに抱えて上げて、バランスを保って立つことはできています。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を地面に伸ばしがちなので、お尻の一塁側への落としには甘さを残します。カーブやフォークが投げられないことはないと思いますが、ブレーキや落差が鈍る可能性があります。

 また「着地」までの地面の捉えは、適度に前に足を逃がすことで身体を捻り出す時間を確保。そのため、良い変化球を身につけられる可能性は感じます。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブを抱えられず、後ろで解けてしまっています。こうなると外に逃げようとする軸がブレやすく、両サイドのコントロールを中心に乱れやすくなります。しかし、足の甲での地面の捉えはできているので、浮き上がろうとする力が抑えられています。「球持ち」も悪くはないので、高低よりもサイドの制球に不安があるタイプではないのでしょうか。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻の落としに甘さは残すものの、カーブやフォークを投げられないほどでは無さそう。それも現状は、これらの球を投げることも少ないので悲観するほどではないのでは。また腕の送り出しも、極端というほどではないので肩への負担もそこまででは無さそう。むしろ全身を使った力投派なので、疲労を溜めやすくそこから故障に繋がらないのかが心配です。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りもそれなりで、ボールの出どころも適度には隠せています。そのためそれほど合わされやすくもないでしょうし、ボールが見やすいわけでもあありません。

 それでいて腕は強く振れているので、打者は勢いで吊られやすい。ボールにも適度に体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで力のある球が投げられています。ただし、投げ終わったあと一塁側に身体が流れてしまっています。これは、作り出したエネルギーをダイレクトに指先に伝えきれていないので、ここが修正されるともっと打者の手元まで生きた球がゆくようになるのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点はありませんし、まだ良くなる余地も残されています。グラブを抱えられないことでの制球の乱れや、力投派ゆえの故障への可能性には不安が残ります。それでも、将来的に何か良い変化球も修得して、リリーフとして活躍できる可能性は秘めているのではないのでしょうか。


(最後に)

 一軍で通用する戦力になるためには、数年かかるかもしれません。しかしダイナミックなフォームから繰り出すボールの迫力や良い変化球を修得できる可能性という意味では面白い素材ではないかと。評価的には5位前後ぐらいではないかと思いますが、興味深い素材ではないのでしょうか。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2021年 秋季リーグ戦)