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中野 拓夢(阪神)遊撃手のルーキー回顧へ







中野 拓夢(24歳・三菱自動車岡崎)遊撃 171/69 右/左 (日大山形-東北福祉大出身) 
 




 「守備は即戦力」





ショートの守備はまさにプロ級といった小気味の良い動きを魅せる 中野 拓夢 。俊足・巧打の選手でもあり、社会人らしい生命力溢れる遊撃手なのだ。


走塁面:☆☆☆★ 3.5

 一塁までの到達タイムは、左打席から3.95~4.10秒ぐらいと、まずまずの脚力。東北福祉大時代は、毎シーズン5個前後の盗塁を決めていたように、絶対的な脚力ではないが、適度に動ける脚力があるのは間違いない。

守備面:☆☆☆☆ 4.0

 打球への反応が良く、ニ遊間の選手らしくスピード感と細かい動きができるのが魅力。地肩は強肩というほどではないが、深いところからでも送球が乱れないのは好感が持てる。またバウンドが目の前で変わっても、とっさに反応できる反射神経の良さもあり、守備範囲の広さだけでなく、球際でのプレーも上手い。間違いなくプロでも、ニ遊間で勝負できる守備力があるだろう。さらに経験を積めば、小坂誠 (ロッテ)のような名手に育っても不思議ではない。


(打撃内容)

 上からコンパクトに叩いて来るスイングで、チームでは2番打者を担っていた。昨秋の日本選手権やアジアウインターリーグなどでは、3番打者として活躍していた。残念ながら今年の都市対抗では、当たりはみな悪くなかったが4打数0安打で終わっている。

<構え> ☆☆☆☆ 4.0

 前の足を引いて、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスと取れていて、特に構えに固さなども感じられない。

<仕掛け> 早め

投手の重心が沈む時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、対応力を重視したアベレージヒッターに多く見られる仕掛けです。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を引き上げ回し込み、ベース側に踏み出すインステップを採用。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でもスピードの変化には幅広く対応。ベース側に踏み出すように、外角への意識が強いのだと思います。

 踏み込んだ前の足も、インパクトの際にしっかり止まってブレません。しかし左の巧打者タイプがベース側に踏み込むと、どうしても一歩目のスタートが遅れて率が残り難い傾向があります。できれば、真っ直ぐ踏み出すぐらいの方が良いのではないかと感じます。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力み無くボールを呼び込めています。バットの振り出しは、上から振り下ろしインサイドアウト。そのため当てるのは上手いのですが、プロレベルの投手の球をはじきか返せるかは微妙でしょう。ある程度バットのしなりを活かせるようなスイングじゃないと、厳しいのではないかと。

 そのぶん内角の球に対しては、インステップでも上から腕をたたんで上手くさばけます。あとボールを呼び込む際に、バットの先が、かなり投手側に倒れるのでバットの出のスムーズさに欠けるところがあります。それでもインパクトの際には、ヘッドが立って広い面でボールを捉えられます。それだけフェアゾーンにボールが飛びやすく、最後までしっかり振り切れます。

<軸> ☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げはあるものの、目線はそれほど激しく動いていません。身体の開きも我慢でき、軸足にも粘りが感じられ軸も安定しています。

(打撃のまとめ)

 インサイドアウトのスイング軌道のため、ミート力自体は高いです。問題は、上記にも記したようにしなりを活かしたスイングではないので、プロの強く速い速球に何処まで対応できるのかといった不安はあります。また左の巧打者タイプの割にインステップして踏み込むので、一歩目のスタートが遅れ気味になり率が残り難いのではないかという疑問も残ります。又バットの先が投手側に傾き過ぎる分、バットがスムーズに出にくいなど、打撃には気になる点が残ります。


(最後に)

 どちらかというと打撃型のニ遊間タイプが多い阪神の中では、守備的ウエートの大きな彼が加わることには意味があるのではないのでしょうか。特にプロでもショートを守れる守備力がある選手は貴重なので、重宝される存在になれる可能性があります。

 ゲーム感覚も良いですし、喰らいつく姿勢も感じられる選手。ドラフト6位での入団を考えれば、美味しい買い物になる可能性は充分あります。打撃が少し弱いかなという思いはありますが、充分に指名レベルのある選手ではないのでしょうか。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2020年 都市対抗)










中野 拓夢(23歳・三菱自動車岡崎)遊撃 172/67 右/左 (日大山形-東北福祉大出身) 
 




 「気にしたことがなかった」





 東北福祉大時代は、名前こそ記憶にあるがプレーを気にしたことがなかった 中野 拓夢。12月に行われたアジアウィンターリーグでは、打率.371厘の好成績を残しドラフト戦線でも注目される存在になった。


(守備・走塁面)

 一塁までの到達タイムは、左打席から4.1秒前後とドラフト候補としては平凡なタイム。しかし昨年の公式戦の成績では、123打数で5盗塁を記録するなど、もう少し速いタイムでの駆け抜けも期待できるのではないのだろうか。福祉大時代には、3年春に6盗塁を記録。しかしそれ以外のシーズンでは4盗塁以下であり、走力を全面に出すというほどではないようだ。

 遊撃手としては、細かいステップが刻め軽快な印象を受けた。スピード感もあって守備範囲も広そうで、強肩というほどではないがスローイングは安定している。いずれにしてもプロレベルでも、ニ遊間候補として勝負して行ける守備力はありそうだった。今年は生でみて、プロのショートとして勝負して行けるレベルにあるのか見極めて行きたい。

 現状は、走力も守備も、中の上 ぐらいなのかなといったイメージで、プロ入りを実現するためには打力が大きな鍵を握るのではないのだろうか。


(打撃内容)

 都市対抗の時には、2番・遊撃手として出場。日本選手権では、3番打者として出場していました。アジアウインターリーグでも、主に3番打者として活躍するなど、打力にも一定の評価があることが伺えます。フォームは、都市対抗の時のものを参考にしてみました。

<構え> 
☆☆☆☆ 4.0

 前の足を引いた左オープンスタンスで、バットのグリップを余らせ短く持ち平均的な高さに添えています。腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢も良く、全体のバランスの取れた良い構えではないのでしょうか。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が沈み始める前に、ベース側につま先立ちして構えます。しかし本格的に動き出すのは、投手の重心が沈み始めてからという、「早めの仕掛け」を採用。ベース側につま先立ちする選手は始動が極めて遅い選手が多いのですが、この選手にはそういった傾向が観られません。そのため、アベレージヒッターに多く観られる仕掛けだと言えます。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を軽く上げて、ベース側に踏み出すインステップを採用。始動~着地までの「間」は取れていて、速球でも変化球でもスピードの変化には対応しやすいはず。ベース側に踏み出すように、外角への意識が強いタイプかと。

 それでもバットを短く持ち、内角への球を引っ張ることも少なくない。ひょっとすると外角に弱さがあり、それを克服するためにインステップさせているのかもしれない。踏み出した前の足は我慢して止まっており、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができている。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力み無くボールを呼び込めている。バットの振り出しは、上から振り下ろすインサイドアウトのスイング軌道。特に内角寄りの球をさばくのにはロスがなく、インステップでも甘めの内角球ならば対応できるのではないのだろうか。

 一方でバットを短く持っているのも相まって、バットのしなりを生かしたスイングではない。そういった意味で、プロレベルの球を打ち返すにはどうなのか?という不安は残るものの、インステップでしっかり踏み込むことで外国人投手相手でも結果を残せて魅せた。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げは大きくはないものの、目線の上下動は並ぐらいか。身体の開きは我慢できており、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて安定している。打撃の調子の波は、比較的小さなタイプではないかと考えられる。

(打撃のまとめ)

 特にタイミングのとり方に非凡なものは感じられなかったものの、スイング軌道にも無駄がなく、それを支える下半身も悪くなかった。しいて言えばインステップとはいえ、バットのしなりを活かせないスイングがプロで通用するのか?という疑問で不安が残る部分はある。また打撃でも、特別スケールなり魅力溢れる素材というよりは、あくまでも実戦的で完成度の高いタイプというのが、プロの目からみて魅力を何処まで感じるだろうか?


(最後に)

 打撃の完成度の高さは感じられるが、守備で何処まで魅力を感じるだろうか? イメージ的にはアマの好選手タイプであり、プレーを研ぎ澄ませてプロで通用するレベルまで引き上げられるか? 社会人2年目の今年、図抜けた存在感を示しプロを唸らせて欲しい。


(2019年 都市対抗)