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松本 竜也(22歳・HONDA鈴鹿)投手 178/87 右/右 (智弁学園出身) | |
昨年のシーズン前に、高卒3年目で解禁になる 松本 竜也 が、中日の上位候補にリストアップされているという記事が出た。そんなに良くなっているのか? と注目してみたが、指名も微妙な内容だった。実際にこの年はドラフト指名されることなく残留し、人々の注目度も薄まった4年目の今年、カープから5位でひっそりと指名された。 (投球内容) 非常にオーソドックスな、癖のないフォームから投げ込む正統派です。あまり派手さのあるタイプではないのですが、たしかに昨年に比べ、球速や投球内容が良化していました。都市対抗本戦でも、三菱重工EAST戦のリリーフで登板し、無失点で試合を締めました。 ストレート 145キロ前後~140キロ台後半 ☆☆☆★ 3.5 フォームに威圧感がないので、特にストレートに凄みは感じられません。それでも球速は、コンスタントに145キロ前後~後半を記録しており、トラックマンの回転数も安定して2500回転前後を叩き出すなど、空振りの取れる真っ直ぐを投げていました。そのため、思いのほか各打者も空振りをしていたように見えます。一概に回転数だけでは良さは計れませんが、2500回転というのはトラックマンにおいて質の良い真っすぐの目安なので、その前後の回転数を安定して投げられていたのは確かです。またそういった球を、両サイドに散らすことが出来ていました。気になるのは、全体的に球筋が高かった点でしょうか。 変化球 カット・カーブ・チェンジアップ・フォークなど ☆☆☆ 3.0 右打者外角に、カットボールを集められる制球力があります。左打者には、外角にチェンジアップを集めてきます。その他に緩いカーブやフォークのような球もありますが、まだ絶対的な球種はありません。現状は、カットボールとチェンジアップで、しっかりカウントを整えることができるといったところでしょうか。 その他 牽制はそれなりに鋭く、走者を刺してやろうという勢いを感じます。また、クィックも1.05~1.15秒ぐらいとまずまず。フィールディングも丁寧ですし、淡々とボールを両サイドに散らせて来る感じで、特に「間」を意識したりとか、微妙な出し入れで勝負する投球術はないように感じます。 (投球のまとめ) 昨年見た時よりも、安定して球速が3~5キロぐらいは速くなっている感じで、その点は確かな成長が感じられます。変化球でしっかりカウントを整えることができ、多彩な球種も織り交ぜ的を絞らせません。気になるのは、全体的に球筋が高い点でしょうか? トラックマンの回数は優れていますが、そこまで空振りを誘える真っ直ぐかと言われると、NPBの打者相手にはどうなのだろう?といった感じは受けました。 (投球フォーム) 今度は、フォームの観点から今後の可能性について考えてみたい。セットポジションから、勢い良く足を引き上げてきます。軸足一本で立った時に、膝から上がピンと伸びてしまって直立気味に立っているのはツッコミやすいので気になります。 <広がる可能性> ☆☆ 2.0 お尻はバッテリーライン上に落ちてしまっていて、身体を捻り出すスペースは確保できていません。そのためカーブやフォークといった球種を投げるのには、身体を捻り出すスペースが足りません。また「着地」までの地面の捉えが早く、身体を捻り出す時間も足りないです。 こうなると、曲がりの大きな変化球よりも球速のある小さな変化で投球を広げてゆくことになるのではないのでしょうか。そんな中、いかに空振りを取れるような球を見出し行けるかが課題となりそうです。 <ボールの支配> ☆☆★ 2.5 グラブは最後後ろで解けてしまって、外に逃げようとする遠心力を充分に抑え込めていません。そのため軸はブレやすく、両サイドのコントロールも狂いが生じてしまいがち。また足の甲の地面の捉えも浮いてしまい、浮き上がろうとする力も抑えられていません。したがって、力を入れて投げるとボールが上吊りやすくなります。 それでも「球持ち」は比較的良く、前でボールを放すことで指先まで力が伝えられます。これにより、細かい制球力こそありませんが、大崩れしないで済んでいるのかもしれません。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻が落とせないために、カーブやフォークといった球種を投げると窮屈になり肘に負担がかかりやすいのが気になります。特に、こういった球種を結構使ってくるので。しかし、腕の送り出しを見ていると、角度はありますが無理は感じられません。また、それほど力投派ではないので、疲労は溜め難いのではないのでしょうか。フォームとしては、肩よりも肘への負担が懸念されます。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りがないので、打者としては イチ・ニ・サンで合わされやすいのではないのでしょうか。それでフォームも直線的なため、ボールの出どころもそれほど隠せているわけではありません。しかし、予測よりも回転の良いボールが来るギャップで、合わされるのを防げているのかもしれません。 腕は適度に振れていますが、ボールが直線的で見やすく打者は吊られないかもしれません。また、縦の変化も見極められて手を出してもらえない恐れがあります。足の甲が地面から浮いてしまっているものの、前には体重が乗っていってるようには見える。こうういう場合は、下半身のエネルギー伝達が遮断されてしまっているので、上半身や腕の振りでキレを生み出して空振りを誘うことになります。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に「着地」までの粘りに課題があります。故障のリスクは肘への負担が気になり、将来的に武器になる球を習得できるかは不安です。また、制球を司る動作にも課題があるものの、こちらはフォームが直線的なので軸がブレがある程度のところで済んで、さらに「球持ち」の良さで動作の割にそこまでは制球が乱れないで済んでいるのかもしれません。 (最後に) 確かに球速は3~5キロ程度安定して速くなっており、昨年指名漏れしても今年指名された理由はうなずけるところ。実際の投球を見ている限り ☆ を付けても良いかなとも思ったのですが、フォームに不安な要素が多く、指名リストから外すことにしました。果たして、トラックマンの回転数は非凡な選手だけに、それがプロでの成績にどのように反映されるのか? 個人的には、興味の深い選手ではあります。それでも投球内容は、昨年よりもだいぶ良くなっていたのは間違いなさそうです。 (2021年 都市対抗) |
松本 竜也(21歳・HONDA鈴鹿)投手 178/86 右/右 (智弁学園出身) | |
1月に行われた中日のスカウト会議において、1位候補の1人として名前があげられた 松本 竜也 。社会人では、入社一年目の日本選手権・三菱重工名古屋戦で先発。2年目の昨年は、都市対抗や日本選手権など大舞台の登板はなく終わった。飛躍の年となる、3年目の投球が注目される。 (投球内容) ノーワインドアップから、バランスの取れたフォームから投げ込んでくる。残念ながら確認したのは、入社一年目の秋の日本選手権の模様から。 ストレーと 常時140キロ前後~MAX143キロ ☆☆☆ 3.0 球速としては、常時140キロ前後~中盤ぐらいまでと驚くほどのものはない。両サイドに散らせするタイプだが、低めへにも伸びのあるボールを決められるところが良いところ。ただし時々、シュート回転して中に甘く入ってくることがあり、その球を痛打される場面も多かった。この試合では、2回1/3イニングを投げて7安打を浴びて降板した。2年目の公式戦の成績では、8回2/3イニングで8安打。四死球は3個と、まだアバウトなところを改善しきれてはいなそう。1年目の名古屋戦を見る限りは、まだまだ社会人レベル相手になると投球が苦しそうとの印象は残った。 変化球 カーブ・スライダー・フォークなど ☆☆★ 2.5 この名古屋戦の投球を見る限りは、変化球はスライダーとカーブが中心で、ほとんどフォークらしい球は観られず。19年度の公式戦の成績を見る限り、8回2/3で6奪三振と1イニングあたり0.7個。それほど、三振をバシバシ奪うようなピッチングスタイルは変わっていなそうだった。 その他 クィックは、1.1~1.2秒ぐらいと平均的。牽制は、適度に刺しにゆく鋭いものが観られるなど悪くない。フィールディングも、丁寧にボールを扱おうという姿勢は感じられる。細かい駆け引きや制球力はないが、気持ちの強そうな顔つきであり、淡々とコース・低めに集めて打ち損じを誘うタイプかと。 (投球のまとめ) 高校時代から凄みのある素材ではなかったが、適度なまとまりと質の良いボールを集めていた好投手。四死球で自滅するようなタイプではないものの、時々甘く入ったりとアバウトな部分も残っている。3年目を迎え、全体のレベルが引き上がって来ると、一気に上位候補へと浮上してきても不思議ではない。実際に地元球団が1位候補にあげていることを考えると、そのへんも期待できる水準まで引き上がってきているのかもしれない。ただし1年目の秋の投球を見る限りは、まだまだ若さへの期待という意味での抜擢だったようには見えた。 (投球フォーム) 今度はフォームの観点から、どの程度実戦的なのか観てみたい。参考元は、2年目春先の投球フォームを参考にさせて頂いた。ノーワインドアップから足を引き上げる勢いや高さは並も、軸足一本で立った時に膝が伸び切らず余裕があるのは良いところ。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 お尻はバッテリーライン上に残りがちなので、身体を捻り出すスペースは充分とは言えない。そのためカーブやフォークといった、ひねり出して投げる球種の変化はイマイチといった感じがする。 しかし前に足を逃し、「着地」までの粘りはそれなり。身体を捻り出す時間はある程度確保できるので、カーブやフォークといった球種以外の変化は、悪くないフォームにはなりそう。ただし、武器になる変化球の習得とまでゆくかは微妙だろう。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは内に最後まで抱えられており、外に逃げようとする遠心力は抑え込めている。そのため、両サイドへの投げわけはしやすい。足の甲の地面への捉えが浮いてしまっていたものの、「球持ち」が良くボールを押し込むことで浮き上がろうとする力を制御できていた。また2年目のフォームをみると、浮いていた足が短い時間ではあるが地面を捉えられるようになっているなど、改善の跡は観られる。フォームの土台的には、コントロールのブレ難い形はできている。リリースが安定するようになれば、コントロールは大崩れしない投球になると考えられる。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻が落とせないフォームの割に、カーブやフォークは使ってくる。それでも頻度としてはそこまでではないんどえ、肘に負担がかかるといったほどではないのかもしれないが。 腕の送り出しを見る限り、肩への負担は少なそう。けして力投派でもないので、疲労も溜めやすいというタイプでは無さそうだった。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 けして「着地」までの粘りが悪いとは思わないが、フォームが直線的な上にボールの出どころが早めに見えてしまうので苦になく甘くない球でも打たれてしまうことが多い。それでも一年目に比べると、だいぶボールの出どころも隠れるようにはなってきているのだが。 腕は適度に振れており勢いは感じられるものの、ボールが見やすいので球筋が読まれやすく空振りを誘い難いのかもしれない。そのためフォークなども、早めに見極められてしまう危険性がある。ボールには体重を乗せてからリリースできているようにみえるものの、足の甲が浮いてしまってい下半身のエネルギー伝達が不十分。しかし2年目には、そこら辺も改善されつつあったように見えた。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」に良さがあるものの、やや「開き」が早くボールが見やすかったり、足の甲が浮いてしまって「体重移動」の部分で課題を抱えていた。しかし2年目のフォームをみる限り、そのへんは改善されつつあるのではないのだろうか。 制球を司る動作や故障のリスクなど少ないのは好感が持てるが、将来的に武器になるような変化球を習得できるのかは微妙。そんな中で、いかに自分の投球スタイルを確立して行けるのかがポイントになりそう。 (最後に) 昨年の投球を確認できていないので、どの程度実戦で課題が改善されているのかはわからない。ただし2年目春のフォームを見る限り、課題にも謙虚に取り組んできた跡は観られる。この時期から1位候補にも上がるぐらいだから、出力が上がるなり投球が実戦的になるなり、改善の跡がみられるのだろう。社会人でも指折りの注目株であり、ぜひ確認してみたい1人であるのは間違いない。 (2018年 日本選手権) |