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川瀬 航作(24歳・日本製鉄広畑)投手寸評へ







川瀬 航作(22歳・日本製鉄広畑)投手 182/87 右/右 (米子松蔭-京都学園大出身) 
 




「アンダーのようなサイド」 





 まるで下手投げの投手のように重心を沈ませながら、腕は真横から出てくる特殊なフォームである 川瀬 航作 。京都学園大時代からドラフト候補として注目されてきた存在で、社会人一年目もルーキーながら都市対抗初戦のマウンドを任されるなど期待高さが伺われる。再び指名解禁を迎える今年、どのような投球を魅せてくれるのか注目したい。


(投球内容)

ノーワインドアップから、大きく反動を付けて投げ込んでくるサイドスロー。

ストレート 常時145キロ前後~MAX148キロ 
☆☆☆★ 3.5

 都市対抗のJFE西日本戦では、立ち上がりに左打者が並び、外角高めに抜けてしまうボールが多く失点していました。しかし2回以降は立ち直り、左打者の外角低めへと球が集まり出します。右打者には投げやすいのか? 荒れ球ながらボールを両サイドに散らすことができていました。

 基本的に荒れ球なのと、左打者外角の逆クロス・右打者内角への球ナチュラルシュートして少し沈むようなクセ球になります。低めに決まりだすだと、この球を引っ掛ける打者も少なくありません。

変化球 スライダー・カーブ・スプリットなど 
☆☆☆ 3.0

 右打者外角いっぱいに小さく決まるスライダーにブレーキがあり、この球はこの選手の大いなる武器。他にも110キロ台の少し球速が落ちるカーブでもカウントを稼げます。左打者外角への球がクセ球的な速球なのか微妙に沈むスプリットかの判別は難しいのですが、130キロ台で小さく沈む球もあるようです。左打者には狙って空振りを誘える球がなく苦しむ傾向があり、あくまでもスプリットも引っ掛けるさせるためのものとなっています。右打者には、サイド特有のスライダーのキレでしっかり決め球になっているのですが。ちなみにこのスライダー、左打者の外角にも決められ、カウントを稼ぐのには使えていました。

その他

 クィックは1.05秒前後とまずまず素早く投げ込め、牽制も鋭いものを入れてきます。変則ではあるのですが、容易に盗塁を許すということは無さそうです。細かい駆け引きをするタイプではなく、ポンポンと投げ込み左打者にはクセ球で引っ掛けさせたり、右打者の外角にズバッと決めて三振を奪うといった投球パターンになっています。

(投球のまとめ)

 立ち上がりを上手く乗り越えられると、ポンポンとテンポ良く自分のペースに乗ってきます。荒れ球とクセ球に加え、サイドハンドという独特の球筋を活かし、打者としては結構厄介な投手に感じられる個性派ではないのでしょうか。大学時代よりもワンランク球威・球速を増してきているので、2年目の今年はアピール次第で指名圏内に入ってきても不思議ではありません。


(投球フォーム)

 では技術的にはプロで通用するものがあるのか? フォームを分析して考えてみましょう。非常に反動を付けて投げて来るモーションで、一度アンダースローのように前に大きく倒れ込むのですが、そこからサイドに持って来ると特殊な構造をしています。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 身体を前に倒して来る感じのフォームなので、どうしてもお尻は一塁側には落ちません。身体を捻り出すスペースが足りないので、カーブやフォークといった球種には適さない投げ方ではあります。しかし実際の投球では、カーブを織り交ぜたりスプリットを結構使ってきます。

 「着地」までの粘りはそこそこで、身体を捻り出す時間は並ぐらい。武器にするような変化球の習得は厳しいかもしれませんが、実際の投球ではサイドの腕の振りを活かしスライダーという武器があります。そのスライダーを武器にできない左打者相手への投球が課題となります。

<球の行方> 
☆☆☆★ 3.5

 腕が身体から遠回りに出てきてブンと振って来るフォームなのでコントロールが定まり難いタイプなのですが、グラブを内に抱えられ、足の甲での地面の捉えもできることで暴れる身体をある程度抑え込むことができています。そのためアバウトではあるのですが、全くストライクが入らないで苦しむノーコンというほどではありません。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻が落とせない割にカーブを結構使ってきたり、握りが浅いとはいえスプリットを使って来るなど肘への負担は少なくないのではないのでしょうか。それでもサイド故に肩への負担は少なく見えますが、腕が外旋してブンと肩で投げてくるので、この点でも不安が残ります。また一度大きく重心を下げてから引き上げてサイドにしているので、通常のフォームでは負担のかからないところに負荷が懸かっている恐れはあります。ある程度間隔を開けて投げれば大丈夫でしょうが、リリーフなどで登板過多になった時にどう出るかは不安です。

<実戦的な術> 
☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りが平均的で、さらにボールの出どころが見やすいので左打者には対応されやすい欠点があります。それを手元で動くクセ球や荒れる配球、さらにサイド独特の球筋で補うといった特殊なタイプです。

 腕は振れているとは思うのですが、身体に巻き付くような粘っこさはありません。フォームの構造上、体重をグッと乗せて投げているわけではないので、球威よりはキレと芯をズラす動く球で勝負するタイプなのでしょう。

(フォームのまとめ)

 単純に上手投げの理論が当てはまるわけではないのですが、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、いずれも粘りが欲しい気がします。ただしそういったところとは別のところで、勝負しているピッチングスタイルという気もします。

 制球を司る動作はともかく、故障のリスクに懐疑的なのと将来的に投球の幅を広げて行けるかは微妙といった感じでしょうか。実戦派というよりは、個性的なスタイルで自分独自のスタイルを確立できるかに懸かっています。


(最後に)

 大学時代に比べると、ワンランク球速は上がっているように見えます。こういったタイプの投手を欲している球団があれば、需要が合致する可能性はありますが、毎年そういった需要があるとは限らないので、大学時代同様に指名漏れという可能性も捨てきれません。そのためにも、大学時代とは一味違うのだということをスカウトに印象づけられるかに懸かっているのではないのでしょうか。そういった変化に注視して、今後も見守って行きたい選手でした。


(2019年 都市対抗)










 足を大きく引き上げて腕も遠回り出てくる感じの、独特のフォームをしているサイドハンド。球速は140キロ前後と驚くほどではないのだが、足が結構タイミングを取るのに邪魔で、ボールも荒れ球で的が絞りにくい。

 それでいて身体近くで小さく曲がるスライダーのキレがあり、高速で小さく沈むスプリットも厄介。大学からプロといったタイプでないと思うが、打者としては嫌な投手なのではないのだろうか。社会人などで、さらに球威・球速が増して来ると面白い存在になりそうだが、ひょっとしたらこの嫌らしさを高く買う球団があってもおかしくはない。

(2018年 大学選手権)

 サイドから140キロ前後(MAX144キロ)のボールを投げ込み、スライダー・シンカー系のボールを織り交ぜてくる。こちらも今春のリーグ戦で、6勝0敗 防御率 0.98 の好成績を残し安定し、特に右打者にも左打者にも内角を厳しく突く投球に特徴。実戦派のサイドとして、来年の候補に上がってくるかもしれない。

(2017年 大学選手権)