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居谷 匠真(ソフトバンク)捕手の個別寸評へ







居谷 匠真(明豊3年)捕手 177/77 右/右 
 




「難しい・・・」 





 ソフトバンクの九州担当スカウトである 岩井 隆之氏。他球団がノーマークの逸材を見出すスカウトとして知られ、ハム在籍時には中島 卓也(日ハム)などを担当したスカウトだった。そんな彼は、ソフトバンクに移籍してからも、毎年のように育成枠などで隠れた逸材を見出していいる。そして今年は、この 居谷 匠真 が、それだった。なるほどその意図が理解できる選手も多いのだが、この選手の指名を理解するのは、なかなか難しいと思った。


(ディフェンス面)

 最終学年では背番号2を付けていたものの、甲子園での交流戦では代打での1打席の出場に留まった。そのためディフェンスを確認できたのは、前年の明治神宮大会での模様だった。投手に対し、ジェスチャーなどを織り交ぜ対話しながら導いてくる。ミットを投手に示したあとに、一度地面に着けてしまう癖がある。そのためどうしても、ワンバウンド処理など次の動作への移行が遅れやすい。それでも低めの球に対しては下からミットを出したり、打球への反応はそれなりといった感じ。ボールの押し込み等キャッチングには、特に特別目を惹くところはなかった。また構えたところから大きくハズレるような球だと、全身で止めにゆこうというよりは腕を伸ばして捕ろうとするなど、少し雑なのではないかと思える部分もある。

 どちらかというと、座ったまま素早く返球するなどテンポを重視したスタイル。けして投手の心理を察したりとか相手打者の微妙な変化に注意を払うようなきめ細やかさがある選手には見えなかった。またスローイングも2.0秒前後であり、送球の精度・地肩の強さなども平凡で、ことディフェンス面でプロに入るほどの魅力は個人的には感じられなかった。そのへんは、甲子園での交流戦でもマスクを任されなかったことにも関係しているのではないかと思えてしまう。





(打撃内容)

 神宮大会では、ライト方向に上手いヒットを放ったものの、凄みみたいなものを感じる打者ではなかった。3年夏の交流戦では、代打でショートゴロに終わっている。2年秋の大分大会や九州大会では、共に5割以上と打ちまくったのは確か。しかし打順は下位で、特に目立つ存在ではなかったと記憶している。打撃のフォーム分析は、3年夏の交流戦の模様を参考にさせてもらった。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 ほぼ両足を揃えたスクエアスタンスで、前の足のカカトを浮かして構えます。グリップの高さは平均的でしたが、最終学年ではやや投手側にバットを傾けて構えるようになっていました。腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスとまずまずといった感じでしょうか。さすがに一年近く経って、体つきはだいぶ立派になってきていました。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下がり始めてから始動する、「早めの仕掛け」を採用。対応力を重視した、アベレージヒッターに多くみられる仕掛けです。神宮大会の時に見た時は、「平均的な仕掛け」あたりに見えたので、若干始動を早めるようになったのかもしれません。あるいは、それほどそのへんは考えてプレーしていない可能性もあります。

<足の運び>
 ☆☆☆★ 3.5

 足をあげてまわしこみ、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でもそれなりに対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプかと。

 神宮大会の時は、足元が早く地面から離れてしまうのが気になっていました。しかしこの夏は、なんとかインパクトの際にも足元が止まるようになってきた感じがします。そのへんは、この一年で成長の証かもしれません。

<リストワーク> 
☆☆☆ 3.0

 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、速い球に立ち遅れる心配はありません。秋までは結構上から振り下ろすスタイルだったのですが、この夏は幾分グリップを下げてから振ってくる感じになり多少遠回りにバットが出るようになっていました。このへんは、バットのしなりを活かして飛ばす、木製バットを意識してそうしたのでしょうか?

 インパクトの際には、バットの先端であるヘッドは下がらず広い面でボールを捉えることができています。それだけフェアゾーンに、ボールが飛びやすくはなっています。ただしスイングを見ていると、長打で魅了するというよりも、はじき返す打撃のように感じます。

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 頭の動きは小さめで、目線の上下動は少なめ。それだけ錯覚を起こすことなく、球筋を追うことができます。足元のブレも抑えられるようになり、逃げてゆく球や低めの球にも食らいついてゆけるしぶとさがあります。軸足の内モモにも、強さと粘りが感じられます。

(打撃のまとめ)

 打撃に関しては、狭間大暉、布施心海 といったチームメイトの陰に隠れがちだったものの、対応力には独特のものがあり面白いかもというものを感じさせてくれる選手ではあります。しかし、けして長打で魅了するとか足が速いとかいう選手ではないので、高校からプロに入るほどの魅力を何処に感じたのかには、私にはよくわかりませんでした。


(最後に)

 岩井スカウト曰く「強肩・強打の捕手で、将来は正捕手を狙える」というお話でしたが、正直私にはその良さが充分には理解できていません。毎年岩井スカウトが見出す選手をみていると、なるほどなと思える選手が多いのですが、今回はちょっと私にはよくわかりませんでした。果たして彼が、どのような結果をもたらすのか個人的には大変を持って見守って行きたいと思います。


(2020年夏 甲子園交流戦)