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二俣 翔一(広島)捕手のルーキー回顧へ







 二俣 翔一(磐田東3年)捕手 180/76 右/右





 「育成まで残ったね」





 攻守のバランスが取れていて、今年の高校生捕手の中では、いの一番で指名されるのではないかと思っていた 二俣 翔一 。しかし蓋を開けてみれば、育成会議まで指名されなかったのには正直驚いた。


(ディフェンス面)

 ボールまわしもよく、テンポの良いリードを心がけます。投手にも細かく指示を出すなど、俺について来い的なキャッチャー。ミットを投手に示し、グラブを下げるような癖もありません。ワンバウンド処理の反応も良く、カバーリングなども怠らずフットワークの良い動ける捕手との印象を受けました。

 気になる点をあげるとすれば、少々キャッチングが雑というか粗っぽい一面があること。このへんは生粋の捕手というよりも、もともと内野手だったというのもあるのかもしれません。それだけに投手の気持ちや打者の微妙な心理を察するというよりも、どんどん投げ込んで来いというタイプな気がします。もう一つは、自慢のスローイングの部分です。確かに地肩も非常に強いですし、ピタッとハマれば1.8秒台中盤前後の素晴らしいボールが二塁に突き刺さります。ただし観ていると、しっかり型が作れないまま投げるので、実戦におけるコントロールに関しては不安が残りました。

 肉体的資質は間違いなくプロ級だと感じましたが、捕手としての適正や送球の精度といった意味での不安が、育成まで残った大きな要因だったのかもしれません。


(打撃内容)

 チームでは1番を務めるように、動ける攻撃な打者です。特に、ヘッドスピードの鋭さには目を見張るものがありました。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 前の足を少し引いて、グリップの高さは平均的。腰の据わりも良く、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスとしては並ぐらいでしょうか。

<仕掛け> 早すぎ

 投手の重心が下がり始める前に動き出してしまうので、まだこの段階だと投手が投げるタイミングを狂わせることが可能です。そのためタイミングが上手く取れず、崩されてしまうことがあるのは正直気になりました。できれば投手が体重を沈むはじめてからでも、始動は遅くないと思います。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を引き上げ回し込み、ベース側に踏み込むインステップを採用。始動~着地までの「間」は取れているので、速球でも変化球でもスピードの変化には対応しやすい。また踏み込んで来るので、外角への意識が強いのではないかと。

 気になるのは先程も触れたが、早く始動しすぎて踏み込みが早すぎて、下半身がロックされた形で上半身だけで打ちに行ってしまうことがあること。そしてもう一つは、踏み込んだ足元が早く地面から離れるので、基本引っ張って巻き込みたいタイプなのかと。逃げてゆく球や低めの球への対応が課題であり、それでも外角でも高めの球に対しては払うようにして右中間に大きなのを飛ばすことができていた。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 あらかじめ打撃の準備である「トップ」の位置にグリップを引いているので、速い球に立ち遅れる心配はありません。しかしリストワークには遊びがない分、柔軟性に欠けるきらいはあります。

 バットの振り出しには大きなロスはなく、癖のないスイング軌道です。インパクトの際にもヘッドは下がりませんし、タイミングさえ合えば広い面でボールが捉えられます。特に右方向にバットを払う時には、結構フォロースルーを使ってグリップが最後高い位置まで上がっているので、打球が大きく伸びるのではないのでしょうか。

<軸> ☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げはありますが、目線は大きくは動いていません。インパクトの際に足元が早く地面から離れるので、開きが我慢できない一面があります。また地面を捉えるのが早すぎると、身体がツッコミがちになるので注意したいところ。軸足の内モモの筋肉は発達しており、強烈な打球を生み出す原動力になっています。

(打撃のまとめ)

 甘い球をスパンと振り抜く潔さと、それを可能にするヘッドスピードの速さは目を惹きます。その一方で始動が早すぎるが故に、タイミングが崩されたり、身体が突っ込む要因を作っているようにも思えます。また上半身の強い振りに、下半身が負けてしまっているので、そのへんのバランスが取れたフォームを作ってゆくことが求められます。しかし根本的な打撃の資質は、かなり高い選手ではないかと感じます。


(最後に)

 捕手としてのきめ細やかさや、スローイングの形の問題など課題も少なくありません。むしろ攻撃的なプレースタイルは、他のポジションで活きる可能性があります。投手としても140キロ台を連発できる強肩・俊足・反応の良いフットワークなどをみると、サードや外野手あたりならば、充分こなせるのではないかと。

 そのため将来の正捕手かと言われると疑問は残りますが、他のポジションで才能が開花する可能性は捨てきれないと思います。いずれにしても全国的にみて、こうれだけ攻守のバランスが取れている捕手は貴重であり、個人的には充分に本会議で指名されるだけの力はあったと評価します。高校生捕手で本会議で指名されたのは、打撃が高く評価されていた 牧原 巧汰(日大藤沢・SB3位) と 中川 拓真(豊橋中央・オリックス5位) ぐらいであり、もともとそういった需要が少なかったからかもしれません。タイプ的には、中村奨成(広陵-広島1位)に近い選手ではないのでしょうか。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2020年夏 静岡大会)