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長谷川 信哉(西武)外野手のルーキー回顧へ







長谷川 信哉(敦賀気比3年)右翼 183/80 右/右 
 




 「身体能力が魅力?」





 プロ志望・合同練習会にも出場していた 長谷川 信哉 。しかし指名されるまで全くノーマークで、どんな選手なのか思い出すことができなかった。改めて映像を見直して、この選手について考えてみたい。


(守備・走塁面)

 地肩だけでいえば、同じ合同練習会に出場しライトを守っていた 漁府 輝羽(おかやま山陽)の方が目立っていました。しかしこの長谷川選手の送球は、派手さはないのですが実に正確で丁寧。中継の選手への返球・ホームへのコントロールなども含めて、中の上 クラスの地肩でも実戦的な印象を受けました。転がって来るゴロを2つほど連続で捕りそこなうミスはありましたが、むしろ身体能力よりも、かなり考えてプレーしているところに好感が持てました。

 走塁に関しては、一塁までの到達タイムは計測できず。50メートル5秒8という脚力の持ち主らしく、夏の福井大会では5試合で4盗塁を記録しています。ちなみに合同練習会でも盗塁を決めていましたが、圧倒的に速いというよりも、際どいプレーでしたがベイス際でうまくタッチを避けるなどの瞬時の上手さが光りました。

 守備でも走塁でも、地肩が凄いとか走力が圧倒的というよりも、上手さが光る選手。それだけ日頃から深く、プレーに対し向き合っているのではないかと感じます。





(打撃内容)

 3年夏の福井大会では、15打数6安打・2本・3点 打率.400厘 として、4番打者の役割を果たしました。ただ打席を見る限り、長距離打者というよりも、センターから右方向に打ち返す実戦的なタイプなのかなといった印象を受けました。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 前の足を軽く引いて、グリップは高めに捕手側に少し引いて構えます。構えた時に、バットを投手側にかなり倒しているので、どうしてもボール打ちにゆく時に遅れる構え方なのは気になります。腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスとしては、まずまずの構えだと言えるのではないのでしょうか。

<仕掛け>> 早すぎ

 投手の重心が下がり始める前から動き出す、「早すぎる仕掛け」を採用。投手が重心を下げ始める前だと、打者の動きをみて投げるタイミングを変えることができるので、タイミングを狂わされる危険性が高まる打ち方です。より早く動き出すことで、どんな球にも対応しようという意図は感じられるのですが・・・。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足をしっかり引き上げて、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」は充分取れているので、速球でも変化球でもスピードの変化には幅広く対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたい万能型です。少し早めに腰が開きはじめるのは、観ていて気になりました。

 それでも踏み出した足元はインパクトの際にブレずに我慢できているので、逃げてゆく球や低めの球にもある程度は食らいつくことができます。合同練習会では、詰まりながらショートの横を抜けるセンター前のヒットを放っていました。それでも2本塁打した長打力が何処にあるのかは、ちょっと気になります。

<リストワーク> ☆☆★ 2.5

 あらかじめ「トップ」に近い位置までグリップを引いて構えているのですが、その後を見ているとしっかり「トップ」を作れないまま振り出しているのがわかります。しっかりした準備の形が作れないので、消化不良のスイングになりやすいのではないかと。

 またバットを投手側に倒して構えているので、どうしてもバットの先端であるヘッドの動きが大きくなったり遠回りに出て来るので、ロスが感じられます。けしてインパクトの際に、大きくバットの先端であるヘッドが下がっているわけではないのですが。少しその遅れ気味のインパクトが、センターから右方向への打球が多い要因なのかもしれません。これを、何処まで意図的にやっているのかは不明です。

 基本的に最後までしっかり振り切る感じのスイングで、ボールに角度をつけて飛ばすといった感じではありません。あくまでも、センターからライト方向にはじき返す感じの打者といった印象を受けています。たまに、緩い球でも引っ張って長打を飛ばしているのでしょうか?

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げがある割には、目線の上下動は大きい過ぎることはない。腰が早めに逃げつつも足元が止まっているので、ある程度のところまでで開きを抑えることはできている。少し気になるのは、足元が窮屈な感じで軸足の位置がスイングの際に後ろに動いているからスイングしていること。右方向への打撃を促すために意図的にやっているのならばよいのだが、これだと内角のさばきは窮屈だろうなといった印象は持ってしまう。

(打撃のまとめ)

 始動が早すぎるので、投手の重心が下がり始めてからでもといった感じはする。これ自体を変えるのは、それほど難しい問題ではないように思える。下半身の動きは悪くないが、上半身の動きに課題が多い。ここを改善して行けるのかが、一つ大きなポイントになるのではないのだろうか。


(最後に)

 めっぽう足が速いとか肩が強いというよりも、高い身体能力をより活かすための術を常に考えてプレーしている節がある。打撃に関しては癖のあるスイングであるので、これを何処まで意図してやっているのか?といった部分。大雑把な選手が多い西武に、あえて深く物事を追求しそうな、こういった野手を加えてきたことは興味深い。果たして、チームの体質や指導にマッチするのか? 新たな化学反応を起こすのか、密かに注目したい指名ではあります。ただし、 を付けるといったほどの魅力は感じられなかったので育成枠が妥当であり、実験的な指名なのではないかと捉えています。


(2020年 西日本合同練習会)