20ky-11


 




井上 朋也(ソフトバンク)内野手のルーキー回顧へ







井上 朋也(花咲徳栄3年)三塁 181/88 右/右 
 



 「アピールできなかったが」

               





 大会屈指の強打者として挑んだ、甲子園の交流大会。しかし結果としては、2四死球を含むサードゴロとサードフライに終わって、充分なアピールができなかった 井上 朋也 。果たしてドラフト会議では、どのぐらいの順位になるのだろうか?


走塁面:☆☆★ 2.5

 残念ながら、この交流大会では参考になるタイムは計測できず。昨年測ったときには、右打席から4.4秒前後。これを左打者に換算すると 4.15秒 前後と平均的。1年春から公式戦に出ているが、試合での盗塁はほとんど観られない。ある程度動ける身体能力はあるものの、走力でアピールするとかそういったタイプではなさそうだ。

守備面:☆☆☆ 3.0

 右翼手として無難に守っていた昨夏だったが、新チーム以後は三塁にコンバート。今回の試合では、難しいサードゴロをさばき、素早くサードに返球するなど動きの良さが目立った。多少キャッチングにぎこちなさが感じられるが、守備範囲や打球への反応はまずまずで許容範囲だろう。肩も基準レベルは満たして、プロでしっかり鍛えればサードを任せられる人材だと評価した球団も少なくなかったのでは? ただし外野手の時でもそうなのだが、しっかり型を作って送球できないので、スローイングの精度という意味では不安を残している。その辺修正可能なのかどうかも含めて、各球団の評価は別れるかもしれません。





(打撃内容)

 ボールを引きつけて叩くというよりも、前で拾うタイプの打者です。先輩の 野村 佑希(日ハム)内野手が生粋の飛ばし屋だったのに比べると、こちらは確実性と長打力をバランス良く兼ね備えた、中距離・ポイントゲッターに感じます。

<構え> ☆☆☆ 3.0

 少しクローズ気味に立ち、グリップは高めに添えた強打者スタイル。腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスとしては、平均的な構えではないのでしょうか。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下る時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。確実性を重視した始動であり、アベレージヒッターに多く観られるスタイルです。ただしこの選手、この始動のタイミングを打席の中で変えて来る珍しいタイプ。意図的に変えてやっているとすれば、引き出しが多いことになります。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を引き上げて、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間は取れているので、速球でも変化球でもスピードの変化には対応しやすそう。ただし、それほどうまくタイミングを合わせていう感じではないので、そこまで対応力が高いかは微妙です。それでも始動のタイミングを変えたりしてくるので、いろいろな引き出しを持っている可能性があります。

昨年は必ずベース側に踏み出していたのですが、この夏は真っ直ぐ踏み出すオーソドックススタイルに。これは、内角でも外角でもさばきたいという意志の現れかもしれません。甲子園ではやや引っ張りにかかっていましたが、踏み込んだ前の足はしっかり止まり逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができます。したがって右方向にも、きっちり打ち返すことができます。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形は自然に作れており、それでいて速い球に立ち遅れないで作れていました。バットの振り出しも、昨年はちょっと遠回り出ていた軌道を、だいぶ内から出せるようになってきた気がします。内角寄りの球に対しても、肘をたたんで対さばけるようになってきました。

 インパクトの際にもバットの先端であるヘッドの下がりは少なく、広い面でボールを捉えられています。そのため打ち損じは少ないのですが、さほど打球に角度をつけて飛ばすタイプではないのかも。それでも前を大きくとり拾えるので、ボールが変化する前に飛ばすことができます。西武のおかわり君やソフトバンクの松田選手のような、アプローチをしてきます。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 昨夏までは、結構自分からボールを追ってしまい目線が動きがちでした。そのへんは、だいぶ小さくなったように思えます。身体の開きも我慢できていましたし、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて安定感は感じます。

(打撃のまとめ)

 甲子園やその後の埼玉大会では、やや調子を落としていたのではないのでしょうか。いろいろ打撃の欠点を改善したり、いろいろなアプローチができる引き出しの多さは感じられます。ただし先輩の  野村 佑希 のような圧倒的な長打力という武器がないので、総合力で勝負するタイプなのかなと。そういった意味では、野村 ほどの高い順位でのプロ入りにはならないのではないかとみています。


(最後に)

 右打ちの三塁手という、非常に人気になりそうなポジションの代表格。守備や肩なども許容範囲であることを実証し、結果は残せなかったものの、一定の評価は維持できたのではないかと。ドラフト指名となると、上位というよりは3位・4位などの中位クラスなのかなと感じます。しかし将来の三塁手が欲しいという球団が、2位ぐらいまで繰り上げて来る可能性がないとは言えません。甲子園での結果は物足りませんでしたが、いろいろ引き出しのある選手で、プロ入り後短期間で二軍レベルならば順応できるかもしれません。同じような打撃をしていた選手には、黒川 史陽(智弁和歌山-楽天2位)などがいて存在感を示せています。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2020年夏 甲子園交流大会)









井上 朋也(花咲徳栄2年)右翼 181/82 右/右 
 




 「対応力が高い」





 
2学年上でプロ入りした 野村 佑希(日ハム)が飛ばし屋という感じのスラッガーだったのに比べると、この 井上 朋也 は、対応力の高いポイントゲッターとの印象が強い。そのぶん野村に感じた粗さみたいなものは、井上 からは感じられない。


走塁面:☆☆★ 2.5

 一塁までの到達タイムは、右打席から4.4秒前後。これを左打者に換算すると 4.15秒 前後と平均的。1年春から公式戦に出ているが、試合での盗塁はほとんど観られない。ある程度動ける身体能力はあるものの、走力でアピールするとかそういったタイプではないのだろう。

守備面:☆☆☆ 3.0

 物凄く守備範囲が広いとか、キャッチングが上手いとかそういった感じはしない。しかし落下点までの入りなどを観ていると、無難に守っている。ライトからの返球を観ていると、かなり肩は強いとみて良いだろう。テイクバックが小さくしっかりトップを決めて投げられないので、長い距離の送球の際にコントロールはどうなのだろうという疑問は残るのだが。最終学年ではサードとして試合に出場するかもしれないので、その辺を無難にこなす技量があればさらに評価が高まるのではないのだろうか。





(打撃内容)

 基本的に、右に左にセンターへとどの方向にはじき返すことができる広角打者。右方向への打球も多いが、打球が上がるのはレフト方向に引っ張った時という印象だが、どうだろうか?

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 下級生の時ほどではないが、若干クローズ気味に打席に立ちます。グリップを非常に高い位置に添えて、上から振り下ろして来るスタイル。腰の据わり、全体のバランスとしては並だが、両眼で前を見据える姿勢は悪くない。クローズ気味に構える選手の割には、前がしっかり見据えられるので身体も柔らかいのではないのだろうか。

<仕掛け> 自在

 とにかく打つタイミングを、自在に変えて来る非常に珍しい選手。早めに動き出すときもあれば、平均的なときもあれば、リリース直前の時もある。試合の中で、相手に合いそうなタイミングに自在に変えているフシがある。こういった始動の仕方を、色々持っているはほとんど記憶がない。追い込まれるとノーステップにして、始動を極めて遅く選手はいても、追い込まれる前からいろいろ変えてくる選手は珍しいのである。何処まで考えて、それを行っているのか訊いてみたい。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 始動のタイミングで足の上げ方も変わってくるのだが、共通するのはベース側にインステップしてくる傾向が強いこと。そのため、外角への意識が強いことが伺われる。踏み込んだ前の足もしっかり止まっており、逃げて行く球や低めの球にも食らいつくことができる。2年夏の明石商業戦でも、外角低めの球をうまく右方向へとはじき返しヒットにしていた。

<リストワーク> ☆☆☆ 3.0

 打撃の準備である「トップ」の形は、早めに作れている。そのため速い球にも、立ち遅れ難い。ただしスイング軌道は、少し遠回りにバットがでてくるので、ポイントが後ろ気味に。打球も、センターから右方向への打球が多くなる。よほど読んで引っ張ってやろうという意識がない時は、引っ張れないのではないのだろうか。そのため引っ張って本塁打している球は、球速の足りないストレートか中間球の変化球ではないかと推測する。

 それほどスイングの弧を大きくとるとか、フォロースルーを使ってボールを運ぶ印象はない。そのため上手く巻き込めないと、打球は上がり難いのではないかと思えてくる。打球に角度をつけるというよりは、強烈な打球が特徴な気がする。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 結構頭が動き、自分からボールを追いかけてしまう傾向が見られる。そのため身体が突っ込まないように、常に注意が必要。それでも身体の開きは抑えられており、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて軸回転ではスイングできている。

(打撃のまとめ)

 タイミングのとり方を複数持っていて、合わせる技術はかなり高いのではないのだろうか。気になるのは、バットがやや遠くをまわってくるので、どうしてもポイントが後ろになりがちだということ。しかし上半身の振りに対し下半身は受け止められているので、その点は評価できる。内角のさばきはあまり得意ではなく、真ん中~外角の球をいかに打ち損じないで打てるかではないのだろうか。


(最後に)

 先輩の野村佑希(日ハム)が粗っぽい長距離砲ならば、こちらは対応力の高いポイントゲッター。野村よりも、走力・守備力とのバランスが取れており、その点では安心して指名しやすいタイプではある。守備でも、プロでも鍛えればライトあたりを任される素材だろう。あとは、サードの適正がどの程度なのか見てみたい。

 ただし野村のような明確なタイプというよりも、総合力で評価される傾向が強い。プロでの活躍の確率はこの井上の方が高そうだが、指名順位としては野村より低くなる可能性は高いと現時点でみる。3年時に打撃で圧倒的な内容を示しつつ、サードあたりを無難に務められれば野村並の評価にも至るかもしれないが。そのため求められるハードルは、かなり高いのではないのだろうか。この二人の関係性は、安田尚憲(ロッテ)と小深田大地 の履正社の先輩・後輩との関係とも良く似ている気がするのだ。いずれにしても、高校からのプロ入りを意識できる素材であるのは間違いないだろう。


(2019年夏 甲子園)