20ky-1





来田 涼斗(オリックス)外野手のルーキー回顧へ







来田 涼斗(明石商3年)中堅 180/85 右/左 





 「打撃能力は間違いない」





 この夏の甲子園交流試合では、セカンドへの内野安打一本で終わるなどアピールできなかった 来田 涼斗 。身体も明らかにゴツくなっていたが、力みからか? 本来の力を示せないで終わってしまった。しかしこの試合の内容云々で、この選手の評価が左右されるものではないのだろう。


走塁面:☆☆☆★ 3.5

 一塁までの塁間を、左打席から4.0秒強ぐらい。このタイムは、プロの左打者としては 中の上 ぐらいの脚力になる。ただし三塁打などのベースランニングは早く、次の塁を狙いにゆく姿勢なども良く、プロで走力を磨けばアピールできる領域まで到達してもおかしくはない。しかし現状は、そこまで突出して早いというほどではない。

守備:☆☆★ 2.5

 脚力はあるので、守備範囲自体が狭いわけではなさそうだ。しかし打球勘が悪くて、観ていて危なっかしいことも多い。また返球も雑で、中継にしっかり送球しないなど独りよがりのプレーをすることも多い。地肩も自体は 中の上 レベルはあるものの、スローイングの形が悪いなど、精度に関しても不安が残る。

 身体能力の高いアスリート系のイメージが強いが、走力も肩もプロに混ぜてしまうとA級といったほどではない。まして盗塁技術や守備力ということに関しては、これからの意識次第といった感じで、現状はむしろ不安が残るレベルで三拍子揃った選手とは言い難い。まして体型がゴツくなっている分、以前ほどアスリート的な感じも薄れてきている。


(打撃内容)

 基本的に引っ張る打球が多く、変化球を長打するのが得意なタイプとの印象が強いです。しかし夏の交流戦では、力みからか引っ掛ける打球が多かったのは気になりました。

<構え> ☆☆☆☆ 4.0

 前の足を引いて、グリップは平均的。背筋を伸ばしながらも腰の据わりも良く、両眼で前を見据える姿勢は並でも、全体のバランスはまずまず。ただし昨年あたりに比べると、身体がゴツくなったせいなのか? 柔軟性が薄れて構えが硬くなったようにも見えました。

<仕掛け> 早め

 追い込まれるまでは、投手の重心が下がり始める時に動き出す「早めの仕掛け」を採用。追い込まれると、ステップを小さくして始動を遅くする傾向があります。普段は、対応力重視の打者だと言えるのではないのでしょうか。

<足の運び> ☆☆☆☆ 4.0

 足を引き上げて回し込み、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」は取れているので、速球でも変化球でもスピードの変化には幅広く対応しやすい。踏み出しも、コースによっていろいろ使い分けることができます。

 踏み込んだ前の足もしっかり止まっているので、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくができます。ただし内角の球をさばく時でも足元が閉じたままなので、壁は崩れませんが窮屈なスイングになりがちです。それでもコースに寄って踏み出す位置を変えられるので、スペースを確保するのは下手ではありません。そのため反応する時間的余裕のある、内角への変化球を引っ張るのは上手いと言えます。課題は、胸元の速球でしょうか。またタイミングをずらされても、つま先だけを地面につけておきながらカカトを下ろすタイミングを調整できるなど、瞬時にタイミングを調整できる器用さがある点は非凡です。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 あらかじめ打撃の準備である「トップ」の位置に近いところにグリップを添えているので、速い球には立ち遅れ難いです。ただし最初からバットを引いているので、どうしても力が入りやすくリストワークの柔軟性が損なわれているのは気になります。

 バットの振り出しは、内角の場合上から振り下ろして来るインサイドアウトで出せてきます。それでいて外角球には、バットのしなりを生かしたスイングもでき、コースに寄ってスイングを使い分けられます。脇を閉めてスイングできるので、足元を閉じて開きを解放しなくても、ある程度内角球をさばけるスイングです。

 またフルスイングが魅力なのですが、広い面でボールを捉えるというよりも、ボール下にバットを潜らせ打球に角度を付けて飛ばすことができるので、長打が生まれやすいという特徴もあります。ミート力がありながら、捉えた打球は遠くに飛ばせるという特殊能力の持ち主です。

<軸> ☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げ静かで、目線の上下動は少なめ。身体の開きも我慢でき、軸足にも安定感があります。また軸足の内モモの筋肉も発達しており、強烈な打球を生み出す原動力になっています。

(打撃のまとめ)

 瞬時にタイミングを調整できてしまう天性の才能と、コースによって複数のスイングや踏み出しを使い分ける技術があります。少し結果に焦って、力みが観られるのは気になりますが、打者としての才能はA級だと言えるでしょう。プロでも、異彩を放てる可能性があります。


(最後に)

 イケイケの性格は、まさにアマよりもプロで光る素材だと言えるでしょう。しかし粗っぽい素材というよりは、卓越した才能と技術に裏打ちされた強打者です。肩・走力もある素材ですが、むしろプロでは打撃偏重の打者になるのではないのか?といった気もしています。そのためポジションも、レフトあたりが適正なのかもしれません。三拍子揃った選手という期待を抱くのには疑問を持ちますが、打撃を評価するという感じで見るのであればアリなのではないのでしょうか。そのため上位指名となるとちょっと厳しいかなという気はしますが、中位(3位~5位)ぐらいでの指名になるのではないかとみています。またチームの空気を一変させてくれるスター候補として、上位で指名する球団が出てきても不思議はない存在です。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級) 



(2020年夏 甲子園交流戦)









 来田 涼斗(明石商2年)中堅 180/82 右/左
 




 「打撃の潜在能力は高い」





 体格・守備・走塁 の能力からして、柳田悠岐(ソフトバンク)2世 と言われているものの、そこまでスケールは大きくはないのではないかと考えていた 来田 涼斗 。しかしこと打撃に関しては、かなりの資質を秘めているのではないかと改めて思った。今回は、その理由について説明してみたい。


走塁面:☆☆☆★ 3.5

 一塁までの到達タイムは、左打席から 4.05秒前後で到達する。これは、プロに入る左打者としては平均から若干早い程度と驚くタイムではない。実際3度の甲子園で9試合ほど出場しているが、盗塁を決めたのは僅かに1個。そのため、積極的に盗塁を仕掛けて来るタイプではないことがわかる。

 しかし外野を抜けた時のベースラニングなどは速く、潜在的な走力はこの数字よりあるのではないかと。またランナー二塁の場面で大きなレフトフライが上がると、いち早く二塁ベースに戻りタッチアップで三塁を陥れるなど、とっさの機転もきいて走塁には光るものがあった。プロで本気で足を活かそうと思ったら、さらに秘めたる走力が引き出されるかもしれない。

守備面:☆☆☆ 3.0

 この脚力を活かし、守備範囲はまずまず。しかし打球勘が悪いのか? 結構危なっかしい場面を何度も目撃した。1年夏に最初に甲子園に出てきた時がレフトだったように、けして守備が上手い選手ではない。肩は基準以上で、中の上 ~ 上の下 ぐらいの強さはありそうなのだが、結構スローイングの形が悪かったり、送球自体が雑だったりと、そのへんは気になる材料。プロのように多くの試合をこなすようになると、結構ポカをしでかしたりする場面が多いのではないかと懸念する。


(打撃内容)

 2年生になり、かなり体つきが分厚くなって力強くなってきた感じがする。今回じっくり観戦して、この選手の最大の特徴は、やはり打撃にあるのだと改めて実感することになる。

<構え> ☆☆☆☆★ 4.5

 前の足を軽く引いて、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスも程よく、打席の中では高い集中力が感じられる。それでいて力みみたいものは感じられなく、いかに打ちそうな雰囲気を漂わす大物感がある。

<仕掛け> 早め

 追い込まれるまでは、投手の重心が下がり始めた時に動き出す「早めの仕掛け」を採用。典型的な対応力重視の、アベレージヒッターに多く見られる仕掛けです。追い込まれるとノーステップに切り替え、リリース直前に動き出す「遅すぎる仕掛け」に切り替える。アクションを小さくすることで、対応しようという意図が伝わってくる。

<足の運び> ☆☆☆☆ 4.0

 追い込まれるまでは、足をしっかり引き上げまわし込み踏み込んできます。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でもスピードの変化には対応しやすいはずです。踏み込みは、アウトステップで踏み込む時もあればベース側にインステップする時もあれば、真っ直ぐ踏み出すことにあり、コースによって踏み込みを変えて来る自在生があります。

 今回見ていて驚いたのは、緩い球が来て早めに地面捉えてしまっても、つま先で立ったままボールが来るのを待てていたこと。瞬時にそういった打撃ができ、緩い球にも再度カカトを下ろすことでシンクロしタイミングを取り直すところに、彼の打撃の非凡さを感じました。踏み込んだ足元も、インパクトの際にブレないで止まっており、開きを我慢できています。

<リストワーク> ☆☆☆☆ 4.0

 あらかじめ「トップ」に近いところにはグリップがあるのですが、それでも自然体でバットを軽く引いて打撃の準備である「トップ」の形を作れています。速い球には立ち遅れ難いですし、それでいて力みもなく振れていて良いと思います。

 特に追い込まれるまでは、かなり強振してフルスイングしてきます。しかし追い込まれると、コンパクトなスイングに切り替え対応することを心がけるなど、打撃を切り替える自在性もあります。内角の球に対しては、脇をしっかり閉じてうまくたたんでさばけます。外角の球に対しては、けしてインサイドアウトにはならずバットのしなりを活かしたスイングができているので、打球は遠くまで伸びてゆきます。それでいて振り出しからインパクトまで、遠回りはならずに出てきています。

<軸> ☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げは静かで、目線の上下動は小さいのが特徴。身体の開きも我慢でき、軸足も粘り強く使えています。少々外角の球や低めの球をさばく際に、体勢を前に突っ込ませて軸足の形が崩れるのですが、あえてそういう球に対し身体をぶつけるようにしてエネルギーを伝えようとしているかもしれません。手打ちのように見えて、意外に打球がそれでも飛んでゆきます。

(打撃のまとめ)

 追い込まれる前と追い込まれてからでは、始動のタイミングを変えたり動作をコンパクトにして対応するなど切り替えてきます。またコースによっては、踏み込む場所を変えて対応。また内角の際にはしっかり脇を閉じてインサイドアウト、外角の球に対してはバットのしなりを活かしたスイングをするなど、スイングの種類や対応の仕方が複数あり、非常に引き出しの多さを感じます。高校生で、なかなか瞬時にこういったことができる選手はいませんし、技術的な引き出しを持っている選手はいません。そういった意味では、打撃に関してはかなりの潜在能力を秘めていると言えるのではないのでしょうか。また素材としては、ボールを見極める眼の良さも光ります。


(最後に)

 走力や守備に関しては、言われているほど三拍子揃っているわけでは無さそうだということ。しかし打撃の能力は本物で、この点では高く評価して良いのではないかと思います。このへんが、最終学年で何処まで研ぎ澄まされて行くのか注目されます。

 全てのプレーに出し惜しみなくプレーしていた 藤原恭大(大阪桐蔭-ロッテ1位)とは対象的に、こちらは肩・走力自体はあるものの、意識や技術の点ではまだまだ。プレースタイルも、かなり真逆のところにいる選手だと思います。しかし秘めたる能力はかなりのものがありそうで、打撃での潜在能力は藤原よりかなり上なのではないかと。

 いずれにしても大物感漂う選手であり、こういった選手がプロでプレーをするのだろうなという気にさせてくれる選手です。マインド的にも前向きでゲームを楽しめるタイプでしょうから、入る球団によってはグングン伸びて行くのではないのでしょうか? 逆に回りの首脳陣や環境次第では、この個性が裏目に出ることもあるかもしれませんね。上位指名候補の野手として、この一年間大いに楽しませてくれそうです。


(2019年夏 甲子園)











 まるでソフトバンクの 柳田 悠岐 ばりのフルスイングに特徴がある 来田 涼斗(2年)中堅手の振り出しの好さも健在だった。タイムリーヒットや犠牲フライなど、この試合でも存在感を示した。昨夏よりも、一回り身体が大きくなって筋肉が付いてきた。ただし178センチぐらいの体格で、187センチの破格な体格から高い身体能力を誇っていた柳田に比べると、スケール点では見劣りする。また昨夏に計測したときは、一塁到達タイムが4.1秒前後と並だった(もっと速いタイムは出せそう)ことを考えると、そこまで身体能力が突出しているのかは見極めてゆきたいポイント。それでも、高校からプロ入りしそうなマインドと才能の持つ主であることは間違いない。

(2019年 選抜)



 中学時代は大阪桐蔭などからも勧誘された経歴の持ち主で、その所作には大物感漂う。まさに 柳田悠岐(ソフトバンク)を彷彿とさせるようなフルスイングがモットーで、それでいて当て勘・ボールを見極める眼などにも確かなものがある。一塁までの塁間4.1秒ぐらいだったが、もっと速いタイムも出せそう。左翼手としての動きも悪くなく、新チーム以後はセンターなどを任されるのではないのだろうか? 最後レフト前へのゴロをはじいてしまい、それが勝ち越し点に繋がってしまった。この苦い経験が、今後の野球への取り組みに生かされて欲しい。2年後は何処までの選手に育っているかは想像できないが、相当の大器なのは間違いない。数多くの打者が「柳田二世」と評されてきた、彼こそ本物ではないかとはじめて思わせてくれる選手だった。

(2018年夏 甲子園)