20kp-7
笠島 尚樹(敦賀気比3年)投手 178/78 右/右 | |
2年夏の甲子園で、下級生ながら伸びのあるボールと140キロ台のボールを投げ込み注目された 笠島 尚樹 。しかし、最後の夏はボールも走らず、自慢のコントロールも抜け球が多かった。それでも夏の福井大会決勝戦・福井工大福井戦では、その才能の片鱗を感じさせる内容だった。 (投球内容) サイドに近いスリークォーターで、決勝戦までは本来のできとは程遠い内容でした。それでも決勝戦では、8イニングを投げ4安打・4三振ながら1四死球・無失点と、試合をまとめることができていました。 ストレート 常時140キロ前後 ☆☆☆ 3.0 2年夏の甲子園では、指先までかかったリリースから140キロ台中盤の伸びのある球で空振りが奪えていました。しかしこの夏は、140キロ前後と物足りなくボールの質もかなり平凡になっていました。それでも投げミスはしまいと、決勝戦では丹念にコースを突く投球が目立ちました。決勝までは、抜け球や指にかかり過ぎる球が多いなど、リリースが定まらなかった印象でした。元来この投手は、右打者の外角一杯。左打者の内角を立ち上がりから投げ込める制球力があります。 変化球 カットボール・スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0 彼の武器は、右打者外角で微妙に出し入れできる120キロ台後半のカットボールになります。この球は、曲がりこそ小さいのですが打者の手元でキュッと変化するので速球との見極め困難。速球同様に、高いコマンド力を持っています。さらに、もう少し緩い110キロ台のスライダーを、たまに投げてきます。またこのタイプにしては、まだチェンジアップの曲がり・精度共に低いように感じられます。元来コースを丹念に集める投手であり、ストレートがかなり走らないと空振りは多く取れないタイプなのかもしれません。 その他 クィックは、1.0~1.1秒ぐらいとまずまず。ランナーを出しても牽制は観られないのですが、フィールディングの動きは素早くまずまずと言えるでしょう。ランナーが出ても落ち着いていて、気持ちが揺らがない精神力の強さも評価できます。 (投球のまとめ) 高校生にして、非常に高い制球力とコースを出し入れできる高い投球術を持っています。元来は、非常に打者の手元まで伸びのある140キロ台中盤の速球を投げ込める選手ですし、順調だったならば育成枠での指名などはなかったのではないかと思います。イメージ的には、微妙な出し入れで安定したピッチングを魅せる 平良 拳太郎(北山-巨人-DeNA)などに近いタイプの、実戦型の投手だと言えるのではないのでしょうか。 (投球フォーム) この一年で、フォームになにか変化があったのか? 考えてみましょう。足を勢い良くグイッと引き上げる感じで、思ったよりもリリーフタイプなのだなと感じました。軸足一本で立った時に膝には余裕がないのですが、引き上げた足を二塁側に多少向けることで適度にバランス良く立てています。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 サイドにハンドに近いフォームで、前に少し倒れ込むように重心を沈めてきます。そのため、お尻はバッテリーライン上に残ってしまいます。したがって、身体を捻り出すスペースは確保できず、カーブやフォークといった球種を投げるのには適さないフォームです。 しかし、着地までの地面の捉えには適度に粘りがあり、身体を捻り出す時間はある程度確保。キレや曲がりの大きな変化球の習得も期待できますが、基本はカットボールのような小さく動く球を中心に組み足られています。そのため、変化球で打者の空振りを誘うというよりは、芯をズラして打ち損じを誘うタイプだと考えられます。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは内にしっかり抱えられているわけではないのですが、最後まで身体の近くにあります。そのため外に逃げようとする遠心力は抑え込めており、軸がブレ難く両サイドへのコントロールは安定しやすいと考えられます。 足の甲の地面への押しつけは浅いのですが、重心自体は低く沈んでいるので、ボールが上吊ることは少ないです。しかし、この夏は抜け球が多く制御できないことが多かったのは、このせいかもしれません。「球持ち」自体はまずまずで、指先でしっかりボールに力を伝えることができています。そのため、繊細なコントロールも可能なのでしょう。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻が落とせないフォームではあるのですが、カーブやフォークといった球種はあまり投げません。そのため、窮屈になる機会は少なく、肘への負担は少ないのではないかと。ただし、サイドは上手投げに比べると肘への負担は大きいと言われています。 また腕の送り出しには無理は感じられず、肩への負担は少ないのではないかとみています。けして力投派でもないので、疲労も溜め難いと考えられます。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りは適度に作れており、ボールの出どころも平均的でしょうか。サイド故にボールが見やすいとか合わされやすいということは、この投手の場合あまりないのではないのでしょうか。 腕の振りは適度に良いので、打者の空振りは誘いやすいはず。ボールへの体重の乗せも、フォームの構造上難しいのですが、悪くはないようは見えます。ただもっとグッと前に乗って来るようなフォームになると、打者の手元まで伸びがもっと良くなるように思います。 (フォームのまとめ) フォーム自体は、昨年とあまり変わっていませんでした。今回の不調は、コロナなどで調整が上手くゆかなかったのかもしれません。フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点はありません。ただし、まだどの動作ももっと粘りのあるものにできると思うので、そのへんは今後の努力次第かと。制球を司る動作・故障のリスクも悪くなく、投球の幅もまだまだ広げて行けそうです。 (最後に) 県大会の途中の試合を見た時は、コントロール悪くまだまだでした。しかし決勝戦では、ボールの走りこそ不十分だったものの、元来の制球力を取り戻しつつあったように感じます。そういった意味では、パフォーマンスの低下が何処かが痛かったということでなければ、それほど悲観する必要はないように感じます。繊細なコントロール・厳しい攻めができる投球術、元来のボールの伸びを取り戻せるとすれば、充分に本会議で指名できるぐらいの力の持ち主だったと思います。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2020年夏 福井大会) |
笠島 尚樹(敦賀気比2年)投手 177/71 右/左 | |
2年夏の甲子園で、左打者の内角ギリギリのところを攻める絶妙なコントロールが圧巻だった 笠島 尚樹 。両サイドに投げ分ける指先の感覚は、今年の高校生でも屈指の技術があるのではないのだろうか。 (投球内容) かなりサイドハンドに近い、スリークォーターです。 ストレート 常時140キロ前後~145キロ ☆☆☆★ 3.5 左打者の両サイドに、しっかり投げ分けることができるコントロールは安定している。そのため腕が下がり気味に出てくるフォームでも、左打者を苦にしないところが素晴らしい。また球質がズシリと重いので、甘く中に入ってきた球でも容易には打ち返されない球威がすでにある。 しいて言えば、腕が下がって出てくるフォーム故に、右打者の内角へ投げようとするとコントロールが甘くなって真ん中近辺に入ってしまうことが少なくないこと。そのへんの投げミスが、大事な場面で裏目に出なければと思う部分はある。右打者には横の角度を活かせるので、どうしても打たれたくない時はあまり内角を突く意識を弱める慎重さも持ち合わせたい。 変化球 カーブ・スライダーなど ☆☆☆★ 3.5 変化球は、110キロ台の緩いカーブ。それに120キロ台のスライダーがほとんど。他にシンカー系の球もあるようだが、富島戦の模様を見る限りはよくわからなかった。しかしカーブにしてもスライダーにしても、ストレート同様に両サイドに散らすことができ、コマンドやキレにも優れている。あとは、シンカー系をうまく使えるようになれば、手がつけられなくなるのではないのだろうか。 その他 クィックは、1.15秒前後と平均的。牽制やフィールディングについてはよくわからなかったので、今後のチェックポイントとしたい。しかしランナーが出てからも、落ち着いて投球ができている。精神的にも、揺らがないタイプなのではないかという印象は受けた。 (投球のまとめ) もう少し腕が下がっていましたが、元巨人の 斎藤 雅樹 を彷彿とさせるピッチングでした。今のコントロールとキレを維持しつつも、さらに全体の出力をあげ、シンカーの精度を高めて行けたら、とんでもない投手になるかもしれませんね。春季大会から、その動向が気になる存在です。 (投球フォーム) 今度は、フォームの観点から考えて行きましょう。ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 サイドハンド気味なフォームでも、前に身体を折るのではなくお尻一塁側に沈ませるタイプのスリークォーターです。そのためカーブやフォークを投げるのにも、無理のないフォームではないのでしょうか。 「着地」までの粘りも適度に作れており、身体を捻り出す時間もある程度確保できています。そのため曲がりの大きな、武器になる変化球の習得も可能なフォームではあります。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力も抑えられています。そのため軸のブレが少なく、両サイドへのコントロールも安定しやすい特徴があります。 足の甲がしっかり地面を捉えていないのですが、これは重心が高いからではなく膝小僧が先に地面を捉えているからだと考えられます。そのため浮き上がろうとする力を、けして抑えられていないわけではなさそうです。また「球持ち」も悪くなく、特に指先の感覚にはとても優れているように感じます。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻を落とせるフォームなので、身体を捻り出すスペースが確保できており、カーブなどを投げても肘への負担は少ないと考えられます。腕の振りからしてフォークは適さないフォームだと思うので、シンカー系の球を上手く使って行きたいところです。 腕の送り出しをみても無理はなく、肩への負担も少ないのではないかと考えています。さほど力投派でもないので、疲労を溜めやすいとかいうことも無さそうです。 <実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0 「着地」までの粘りも適度に作れていますし、ボールの出どころも平均的で見やすいことがありません。フォームが直進的ではないので、特別合わされやすいということも無さそうです。 投げ終わった後も、腕が身体に絡んできます。適度にフォームにも勢いがあるので、打者の空振りも誘えます。ボールにも適度に体重を乗せてからリリースできており、上半身の振りでキレを生み出すというよりも、下半身を使って重い球を投げることができています。そのため打者の手元まで、勢いと球威のある球を投げ込めています。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」に、大きな欠点は見当たらない。全体的にどの動作も平均的なので、最終学年では各動作にさらに粘りが出てくると面白い。制球を司る動作に優れている上に、故障のリスクも少ないフォーム。将来的に、武器になる変化球を習得しても不思議ではないフ構造であり、器用さも併せ持つ。技術的には、かなりハイレベルな高校生だと言えるであろう。 (最後に) 土台となるフォームや現時点での投球技術は、全国の高校生でもトップクラス。さらに出力をあげ、縦系の変化球が加わると手がつけられなくなりそうだ。個人的には、非常にその成長を期待している一人です。 (2019年夏 甲子園) |