20kp-56





加藤 翼(中日)投手のルーキー回顧へ






加藤 翼(岐阜・帝京大可児)投手 179/75 右/右 
 




 「見方が一変した」





 岐阜大会で150キロ台を連発していた時は、確かに球は速いけれど制球はめちゃくちゃで投球にもムラっ気が激しく、正直良いとは思わなかった 加藤 翼 。しかしプロ志望合同練習会で魅せた内容で、少しこの選手の見方が変わってきた。


(投球内容)

 ノーワインドアップから投げ込むフォームで、イメージ的には 山本由伸(オリックス)に似た感じのフォームです。

ストレート 145~MAX153キロ ☆☆☆☆ 4.0

 スピード能力・瞬間的な爆発力という意味では、全国の高校生でもトップクラスのものがあります。しかしボールは高めに抜けることも多く、制球はめちゃくちゃという感じで正直評価していませんでした。しかし合同練習会では、低め膝下にズバッと最高の球が決まったりもしていたので、もう少しフォームやリリースが固まってくれば、そういった球が安定して出せるのではないかと思い始めた。ボールの質自体も、回転数が多くまともにコースや低めに決まれば容易のは捉えることができないものがありますので。

変化球 スライダー・ナックルカーブなど ☆☆★ 2.5

 基本的には横滑りするスライダーとのコンビネーションで、この球でカウントを整えてきます。たまにナックルカーブを使ってアクセントにしています。他にもカットボールやチェンジアップなどもあるようですが、正直よくわかりませんでした。現状は、圧倒的にストレートへの依存度が高いと言えます。

その他

 牽制は非常に鋭く、クィックも1.05~1.15秒ぐらいと基準以上。そういった、投球以外の動作は結構機敏な選手に見えます。しかし細かい駆け引きとかそういったところにセンスを感じさせる選手ではなく、現状は力任せに相手をねじ伏せにゆくタイプだと言えるでしょう。

(投球のまとめ)

 ボールのバラツキが顕著で、投球にもムラを感じます。そういった意味では、出してもみないとわからない危うさは強く感じます。しかし最後の最後で、最高のボールが良いところに決まるのは良い投手に観られる共通点。合同練習会では、ボールとは判定されましたが、膝下一杯に最高のボールを決めていました。また153キロの最速を記録した県大会でも、それは最後に投じたボールだと記憶しています。そういった要所に能力を発揮できるという意味では、この選手の可能性を感じさせてくれます。





(投球フォーム)

 ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いや高さは平均的。軸足の膝にはさほど力みは感じられず、軸足一本で立ったときのバランスは悪くなかった。もう少し、力んで投げるフォームを想像していたのだが。

<広がる可能性> ☆☆★ 2.5

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に落ち、外人のような、突っ立って投げるフォームです。そのため身体を捻り出すスペースは不十分で、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦に鋭く落ちるボールには適さない投げ方だと言えるでしょう。

 「着地」までの粘りは平均的で、地面を捉えるのが早すぎるということはありません。しかし現状のままだと、これは!という変化球の習得は厳しいかもしれない。スライダーやチェンジアップを磨く他に、カットボール・ツーシーム・スプリットなど、球速のある小さな変化でピッチングの幅を広げてゆくことになるのではないのだろうか。

<ボールの支配> ☆☆ 2.0

 グラブは内にしっかり抱えられないので、外に逃げようとする遠心力が抑え込めていない。そのため軸がブレやすく両コーナーへの制球はアバウトになりやすいのだが、縦推進のフォームではあるのでボールは左右に散らすことはできていた。

 気になるのは、足の地面の捉えが浅いこと。そのため浮き上がろうとする力を抑え込めず、ボールが高めに集まりやすい。それでもボールの質が良いので高めで空振りが奪えるのは救い。現状「球持ち」も並であり、時々低めに素晴らしい球がゆくので、ボールが安定して押し込めるようになると、この高低の課題も改善して行けるかもしれない。

<故障のリスク> ☆☆ 2.0

 お尻は落とせないフォームなものの、カーブやフォークといった球種を使う頻度も少ないので、それほど現状は気にしなくても良いのかも。しかしボールを持っている肩は上がり、グラブを持っている方の肩など極端に角度を付けて投げ下ろして来るので、腕の送り出しに無理が感じられ、肩などへの負担は大きいのではないかと。また力投派でもあるので、消耗度も高く疲労を溜めやすい恐れも高い。

<実戦的な術> ☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りは並で、ボールの出どころは少し見やすい。そのため打者としては、比較的合わせやすいタイプなのではないかと。しかしボールが見えてからが、イメージよりもボール自体が凄くキレてくるので、そのギャップで打者が戸惑うというタイプなのかもしれないが。

 腕は強く振れるものの、球持ちが浅く身体に腕が絡んで来ないのは正直気になる。フォーム全体に粘りがなく、淡白な印象を受けてしまう大きな要因ではないかと。また充分体重を乗せきる前にリリースを迎えており、この辺が変わってくるとキレだけでなく球威なども伴ったボールが投げられるようになるのではないのだろうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点で言えば、「開き」を中心にまだ改善の余地があるフォームだと言えるでしょう。しかし取り組み次第では、それぞれがもっと粘り強くなれる余力は残されており、それが伸び代だとも言えます。しかしそれ以上に、制球を司る動作・故障のリスク・将来的に武器になる球を習得できるのかという部分には不安があって、それらが原因で伸び悩むリスクもかなり高いフォームではないかと思うのだ。


(最後に)

 ハマったときのボールの威力・爆発力は、今年の高校生の中でもトップクラスだと評価できます。しかし精神面・技術面・制球力などの不安要素があり、その能力を活かせるかどうかは、かなり微妙な素材だとは思います。

 それでも県大会で見た時は全然だと思ってみていたので、合同練習会で魅せた低め膝下にビシッと決める投球や、要所で魅せる最高のボールには可能性を感じずにはいられません。県大会では下位指名レベルかなとも思ったのですが、練習会での内容は中位指名を意識できる内容でした。トータルで良い部分悪い部分も考慮すると、4位前後ぐらいの指名になるのではないかというのが、最終的な評価とさせて頂きました。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2020年夏 プロ志望合同練習会)