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嘉手苅 浩太(ヤクルト)投手のルーキー回顧へ






嘉手苅 浩太(日本航空石川3年)投手 191/106 右/右 
 




 「プロ側の評価は高そう」





 迫力のボディーから繰り出されるボールが魅力の 嘉手苅 浩太 。超大型ながら、意外に器用なところがあり、投手らしい投手といった細やかさを感じさせる投手だった。


(投球内容)

ノーワインドアップから、静かな入っくるフォームです。

ストレート 常時140キロ台~MAX145キロ ☆☆☆ 3.0

 力を入れて投げなくても、コンスタントに140キロ台を叩き出せる余力があります。ボールの質も、ズシリと重いというよりも結構手元でキレる感じで空振りを誘えます。ストレートは真ん中~高めに集まりがちですが、両サイドには適度に投げ分けることはできていました。しかしイニングによって内容にバラツキがあり、気持ちの浮き沈みは結構あるのかもしれません。

変化球 スライダー・チェンジアップ・フォーク? ☆☆☆ 3.0

 スライダーを使ってカウントを整えてきますが、結構曲がり過ぎてボールゾーンにハズレてしまうことも少なくありません。その他にもチェンジアップだかフォークのような球を左打者に使ってくるのですが、打者の空振りを誘うといったほどではないです。ストレートとの緩急やカウントを整えるのには使えるものの、まだ武器になるほどの変化球はありません。比較的変化球は、低めに集まるところは好いところではあるのですが。

その他

 クィックは、1.10~1.15秒ぐらいと基準以上。牽制は鋭く、フィールディングの処理も無難にこなしていました。マウンドを外すことも多く、大型でも繊細というか慎重で投手らしい一面を覗かせます。

(投球のまとめ)

 マウンドさばきを観ていても、投手らしい投手といった感じがしました。微妙なコースを突いたり、細かい駆け引きが上手いわけではないのですが、そういったものを身につけられるセンスや器用さは持ち合わせていそう。気になるのは、簡単に四球を出してしまったりと、気持ちの波は結構激しそうなのが気になるところです。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から今後の可能性について検証してみます。足を引き上げる勢いや高さは平均的ですが、軸足一本で立った時は力みなくバランス良く立てていました。

<広がる可能性> ☆☆★ 2.5

 お尻は完全にバッテリーライン上に残ってしまっていて、身体を捻り出すスペースは確保できていません。そのためカーブやフォークのような、捻り出して投げる球種には適さない投げ方です。

 前に軽くステップはしていますが、着地までの粘りは平均的。身体を捻り出す時間はそこそこですが、スライダー・チェンジアップの他に、カットボール・ツーシーム・スプリットなど小さな変化で、投球の幅を広げてゆくことになるのではないのでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで身体の近くに留めているので、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。したがってフォーム全体が縦推進で動く外人投げなのも相まって、左右のコントロールは乱れ難いタイプではないかと考えられます。

 足の甲でも地面をしっかり捉えて投げられているので、浮き上がろうする力も抑えられています。まだそれでも速球など高めに集まりがちなので、このへんはリリースでもう少しボールを押し込めるようになると、低めにも好い球が行きそうです。「球持ち」自体は良く、指先まで力が伝えられるようになれば、細かい制球力もつくようになるのではないのでしょうか。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻が落とせないフォームでなので、カーブやフォークなどを投げようとする窮屈になり負担が大きくなります。縦の変化がフォークだと少し気になるのですが、基本は速球とスライダー中心のピッチングなので、現状は肘を痛めるといったほどかは微妙です。

 腕の送り出しに関しては、無理を感じません。そのため、肩を痛めるとかそういったことも無さそう。けして力投派でもないので、疲労を溜めやすいということもないのではないのでしょうか。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 着地の粘りは平均的ですが、縦推進のフォームなので身体開きは普通でも球筋は読まれやすい恐れがあります。また、縦の変化球なども見極められる危険性があります。

 腕は適度に振れており、その点では空振りを誘いやすい勢いはありそう。しかしボールが見やすいので、そういったことが効果に現れ難い恐れがあります。ボールに体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで勢いは衰えません。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」は普通でもややボールが見やすい危険性を感じます。制球を司る動作には非常に優れていますが、故障のリスクや将来的に武器になるほどの変化球を習得できるかは微妙です。投げミスの少ない投球で、ボールを微妙に動かすグランドボーラー的な投球が合っているかもしれません。それでも「体重移動」や「球持ち」自体は好いので、質の好いフォームシームも使い分けられる投手になるかもしれません。


(最後に)

 なかなかこのサイズの日本人がいなかったので、過去の選手と比較するのは難しい規格外の逸材です。まだまだ気持ちのムラや技術的な課題はあるものの、投球に余力があり、適度な器用さも併せ持つ興味深い選手です。指名となると5位前後ぐらいになるのかなと観ていますが、個人的にも、 を付けてみたいと思わせてくれる選手でした。こういった選手が、どのように育ってゆくのか?大変に興味が惹かれます。


蔵の評価: (下位指名級)


(2020年夏 甲子園交流戦)