20kp-45





松本 遼大(日ハム)投手のルーキー回顧へ




松本 遼大(岩手・花巻東3年)投手 187/92 右/右 
 




 「素材としては面白い」





 夏の岩手大会でも、プロ注目の 松本 遼大 は、敗戦目前の僅か2イニングの登板でこの夏を終えた。大会前にはプロのスカウトを集結させて順調さをアピールしていたはずだが、何かしら一頓挫あったのかもしれない。しかしその僅かな投球でも、素材の片鱗は示してくれた。


(投球内容)

 恵まれた体格から、滑らかな体重移動で投げ込んで来る姿には、投手としての筋の良さが感じられる。

ストレート 140~MAX146キロ ☆☆☆ 3.0

 適度な勢いと球威の感じさせるストレート投げ込み、このストレートの質という意味ではドラフト指名を意識できるものがあります。ストレートは適度に暴れて細かいコントロールはないのですが、ストライクゾーンの外に外に散るので、痛手は喰らい難いのではないのでしょうか。

変化球 カーブ・スライダー・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 緩いカーブに、曲がりながら沈むスライダー。さらにフォークのような、沈む球も持っています。その他にもカットボールのような球やツーシーム的なボールも織り交ぜているようにも見えました。この球を投げれば打者を仕留めきれるという絶対的なボールはないものの、スライダーでしっかりカウントを整えられますし、他の変化球で相手の的を絞らせない投球はできていました。特にそういった球が、甘く入ってくることもありません。

その他

 牽制やフィールディングの場面は観られませんでしたが、クィックは1.1~1.2秒ぐらいと平均的。特に細かいことができるわけでは無さそうですが、極端に不器用な投手とか大きな欠点があるようにも見えませんでした。

(投球のまとめ)

 現時点では、これは! という絶対的な武器はありません。しかし素材の良さを感じられ、ストレートでも変化球でも全体の底上げが期待できるのではないのでしょうか。この夏は僅か2イニングの登板にとどまりましたが、夏の大会前には多くのスカウトが視察に訪れるなど、能力はすでに実証済みなはず。登板が少なかったことが指名に大きく影響するかと言われれば、原因次第でしょう。特に、肩・肘などに不安が出たというのであれば、微妙な位置づけの存在だけに指名は見送られるかもしれません。


(投球フォーム)

 今度はフォームの観点から、その将来性を考えて行きます。ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。足を引き上げる勢い高さは平均的ですが、軸足一本で立ったときのバランスは悪く有りません。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 お尻はバッテリーライン上に落ちてしまっていて、身体を捻り出すスペースは充分確保できているとは言えません。そのため、カーブやフォークといった捻り出しだして投げる球種には適さない投げ方には見えます。

 「着地」までの粘りはそこそこで、身体を捻り出す時間は適度に確保。したがって、適度にキレや曲がりの大きな変化球の習得も期待できそうです。しかし、武器になるほどの絶対的な球種を手に入れられるかはこれからの努力次第かと。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力は抑え込めています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすいかと。足の甲での地面への押しつけも悪くないように見えるのですが、まだボールを押し込めていない部分があるのか、時々高めに抜けたりする球も観られます。リリースが、もう少し我慢できるようになると変わってきそうです。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻がしっかり落とせていないので、カーブやフォークなどを投げると窮屈になって肘などへの負担が大きなフォームだと考えられます。投球において、それほどカーブやフォークを投げていないので、現状の頻度であればそこまで悲観することは無さそうですが。

 腕の送り出しを観ていても、無理な感じはしません。そのため、肩への負担などもそれほどではないのでは。 脱力しているという感じではありませんが、それほど力投しているといったほどでもないので、疲労の蓄積は平均的なフォームではないのでしょうか。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りはそこそこで、身体の開きは平均的。特に打者が苦になるフォームではないが、コントロールを間違わなければ痛手は喰らい難いのではないのだろうか。実際この投手は、ボールが外に外に散るタイプなので、その点はあまり心配しなくても良さそう。

 腕は適度に振れていて、空振りは誘いやすいのでは?と。ただし「開き」が実際打者からみたら、意外に見やすい可能性もあり(微妙な位置)、そのため縦の変化球などを見極められている可能性も考えられる。またボールには体重を乗せてからリリースできているようには見えるが、最後一塁側に重心が流れて地面の蹴り上げも極めて弱い。それだけ力が逃げてしまい、ダイレクトにボールに伝えきれていないのではないかと思える。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」や「体重移動」を今一度検討して見る必要はあるかもしれない。コントロールを司る動作はまずまずで、今後はもっと安定してくる可能性は高い。故障のリスクや武器になる変化球の習得は微妙だが、各動作の追求次第ではそれを可能にできる下地はあるとみた。


(最後に)

 まだ絶対的なボールはないものの、ポテンシャル・筋の良さもあり、全体の能力を引き上げられる可能性を秘めている。そういった意味では、下位~育成あたりであるならば、高校からのプロ入りも可能ではないかとみている。個人的にも指名リストには入れないものの、育成あたりの指名ならば充分ありの素材ではないのだろうか。


(2020年夏 岩手大会)