20kp-33





松本 隆之介(DeNA)投手のルーキー回顧へ







 松本 隆之介(横浜3年)投手 188/84 左/左
 




「そんなに変わっていなかった」 





 試合ができない間に、最速152キロまで球速を大幅に伸ばしたと評判だった 松本 隆之介 。しかしこの夏の投球を見る限り、昨夏とそれほど球速は変わっていないのではないかと思えた。果たしてどのへんが変わったのか? オフシーズンに作成した寸評をと比較しながら、考えてみたい。


(投球内容)

手足の長いスラッとした投手体型から、ノーワインドアップで投げ込んできます。

ストレート 常時135~140キロ台前半 ☆☆☆ 3.0

 球速的にはドラフト候補としては平均的でしたが、ボールの出どころが見難くコースにビシッと突き刺さる球でした。そのため驚くようなボールではないものの、打者は差し込まれやすいのではないのでしょうか。繊細というほどのコントロールではないものの、両サイドにはある程度投げ分けられる制球力があります。あまり欲しい時にストライクが取れないタイプだったのですが、今は四死球で自滅するような危うさは薄れた感じはします。むしろこの一年での成長は、球筋がハッキリしてきて制球力が上がったことではないのでしょうか。

変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0

 特別スライダーの変化に特徴はなく、使って来る割に精度も高いとは言えません。またチェンジアップ系の球も、沈むというよりは少し逃げる感じでツーシーム的な変化をする。他にも100キロ台の緩いカーブやフォークのような沈む球もあったと思うが、この夏の登板ではよくわからなかった。いずれにしても相手を仕留めきれるほどの変化球はなく、その精度もそれほど高くない。むしろコントロールがしっかりつくのは、ストレートの方なのではないのだろうか。

その他

 牽制に関しては、昨年同様によくわからず。ランナーが出ても、滅多に入れて来ないのではないのだろうか。クィックは、1.0~1.05秒ぐらいとまずまずで、フィールディングの動きは良い選手である。

 特別「間」を上手く使うとか、微妙なコースを出し入れするような繊細な投球術は観られない。淡々と、両コーナーに散らせて来る。

(投球のまとめ)

 まだまだ投げているだけといった感じで、凄みを感じさせるほどでもなければ、繊細さや嫌らしさなど特別ものがあるわけでもない。昨年から感じるのは、何か掴みどころのない投手といった印象で、プロの指導によりまだ伸びそうな余力を感じさせるというところが、彼の魅力なのではないのだろうか。


(投球フォーム)

 投球自体に大きな変化は感じられなかったものの、投球フォームは以前と比べてどうだろうか? ノーワンドアップからスッと高い位置まで引き上げられ、軸足一本で立った時のバランス取れている。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻はバッテリーライン上に残りがちで、甘さを残している。カーブやフォークといった球が投げられないほどではないと思うが、キレや落差はボヤけて不十分になってしまうかもしれない。

 「着地」までは、前にステップできており適度な粘りは感じられる。その割にステップが狭めには見えるが、身体を捻り出す時間はある程度は確保できている。ただし現状もそうであるように、武器になるほどの変化球を習得できるのかは微妙だろう。

<ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため軸はブレ難く、両コーナーへの投げわけはつけやすい。また足の甲での地面の捉えは、しっかり捉えているように見える。昨年は浮いていたのを考えると、この点は大きく技術的に改善できている。高めに抜ける球も、だいぶ減ってきているのではないのだろうか。「球持ち」もよくなり、ある程度手元でコントロールがつけられるようになってきたのでは? また身体ができてくれば、もっとブレの少ない投球フォームになりそうだ。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻の落としも甘さを残すものの、カーブやフォークなど捻り出して投げるボールを投げられないことはない。またこの夏は、そういった球もほとんど観られず、窮屈になって肘に負担がかかることはなかったのではないのだろうか。

 また腕の送り出しを見る限り、肩への負担も感じなられない。フォーム自体もけして力投派ではないので、疲労を溜めやすいということも無さそうだ。昨年の方が肩への負担が感じられるフォームではあったが、そのへんもよくなっていた。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りもそれなりで、ボールの出どころも隠せている。そのため打者としては、見えないところからピュッと出てくる感じで、球速以上に差し込まれやすいのではないのだろうか。

 腕の振りも投げ終わったあと身体に絡んで来るような粘りは感じられるので、あとは勢いと鋭さが増してくればもっと空振りが奪えそう。体重を乗せてからリリースできているようには見えるものの、まだ線が細いのと時々投げ終わったあとバランスを崩し、ダイレクトにボールに力を伝えきれていないことがある。この辺も発展途上ではあるが、昨年よりも良くはなってきている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」に関しては、「着地」や「体重移動」がよくなり、必然的にフォーム全体にも良い影響を及ぼしている。ただしまだ肉体的に技術的にも発展途上であり、もっとよくなれる余地が残されている。

 足の甲の押し付けができるようになり制球力は安定し、故障のリスクも軽減されていた。決め手に欠ける部分は依然残るが、そのへんも今後の意識とプロの指導でどんどん良くなってゆくのではないのだろうか。課題を見つけ、それに真摯に取り組んできたことが伝わってくる。


(最後に)

 ボールに目に見えての大きな変化は感じられなかったものの、制球力がよくなってきたのと、フォームにかなり改善が観られたことは今後に繋がってゆくのではないのだろうか。投球のパフォーマンス的には3位前後ぐらいかなという感じではあったが、プロで大きく化ける可能性は感じさせる素材だった。将来性の高いサウスポーが欲しい球団によって高く評価されて、2位か3位ぐらでは指名されるのではないのだろうか。現在の内容よりも、将来性を思い描いて評価してみたい選手だった。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2020年夏 神奈川大会)









松本 隆之介(横浜2年)投手 186/84 左/左 
 




 「軟投派のイメージ」





 1年時からその才能が注目されてきた 松本 隆之介 。しかし一学年上の 及川 雅貴(阪神)が速球派の投手ならば、どちらかというと変化球を多く使う軟投派のイメージが強かった。しかし最終学年になり、球速を152キロまで伸ばしているのだという。まるで別人のような投手に成長しているのかもしれないが、2年時の 松本 のピッチングを振り返り、今後の可能性などについて考えてみた。


(投球内容)

 手足の長い投手体型で、ノーワインドアップから投げ込んできます。2年春のセンバツ・明豊戦で、全国デビュー。2回1/3イニングで、5安打・1失点の内容だった。その時の登板を元に、今回は考えてゆこう。

ストレート 135~MAX141キロ ☆☆☆ 3.0

 球速は135~140キロ台前半ぐらいと驚くほどのものはなかったが、ビシッとした球筋で球速以上に感じさせるものがある。それほど細かいコントロールはない感じで、外角中心にボールを集めてくる。ただし荒れ荒れというタイプではなく、なんとなく欲しいときにストライクが決まらない、収まりが悪いといった感じの投球だった。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0

 変化球は、100キロ台のカーブ、120キロ前後のスライダー、それに小さく外に逃げるチェンジアップ、それにたまに130キロ台のフォークらしきボールを投げ込んでくる。特に絶対的な球種はないのだが、右打者外角に小さく逃げるツーシーム気味のチェンジアップが一番コントロールが好いボールではないのだろうか。左腕でも、右打者を苦にしないタイプなのだろう。逆にカーブ・スライダーのキレ・精度には特別なものはなく、左打者をさほど得意にしていないのではないのだろうか。

その他

 クィックは、1.0~1.05秒と素早く、フィールディングのなどの動きも好い。牽制はよくわからなかったが、そういった部分はしっかり鍛えられていそうな感じはする。特に微妙な駆け引きなどや細かい制球力はないが、淡々と自分のボールを投げ込んでくる。

(投球のまとめ)

 ちょっとボールの収まりの悪いコントロールと、凄みのあるボールを投げ込むわけではないので、前評判ほどピンと来たことがあるタイプではなかった。しかしそんな投手でも、MAXで152キロまで投げられるようになっているとしたら、全然イメージは変わってきそうだ。ぜひ最後の夏に、成長した姿を確認してみたい。


(投球フォーム)

 ノーワインドアップから、高い位置にまで足を引き上げてきます。軸足一本で立ったときに膝から上がピンと伸び切ってしまい力みは感じられますが、全体としてはバランス良く立てています。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばせているので、お尻は三塁側(左投手の場合は)にある程度落とせています。したがって身体を捻り出すスペースは確保できており、カーブやフォークといった変化球を投げるのには無理はありません。

 しかし「着地」までの粘りがなくあっさり地面を捉えてしまうので、身体を捻り出す時間 が物足りません。そうなるとキレや曲がりの大きな変化は期待しずらく、小さく変化するボールを中心にピッチングの幅を広げてゆくことになるのではないのでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつきやすい。むしろ気になるのは、足の甲での地面の捉えが離れてしまい、浮き上がろうとする力を抑えられていない。力を入れて投げようとすると、ボールが高めに集まりやすい。「球持ち」もそれほど深いとか指先の感覚が特別好いわけではないので、大崩れこそしないがアバウトなコントロールになりがちなのだろう。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻はある程度落とせているので、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種を投げていても、窮屈にはなり難い。そのため肘への負担も、けして大きくは無さそう。

 ボールを持っている肩は上がり、グラブを持っている肩は下がりがちだが、送り出しに無理は感じられない。そのため肩への負担という意味でも、神経質にならなくても好いのは? またけして力投派でもないので、疲労も溜めやすいというほどではないように思える。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りがないので、打者としては イチ・ニ・サン のタイミングで合わしやすい。しかしボールの出どころは隠れているので、コースを突いた球や縦の変化球の効果ある程度期待はできそう。

 腕の振りは好く、投げ終わったあと身体にも長い腕が絡んでくる。気になるのは、ボールにしっかり体重を乗せてリリースできていないので、打者の手元まで訴えかけるようなボールが来ない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」や「体重移動」といったストレートに大きな影響を与える動作に課題を残す。故障のリスクはさほど高くないように見えるが、制球を司る動作は平凡で今後武器になるほどの変化球が習得できるのかが微妙なフォームではあるということ。軟投派に見えた投球も、それほど実戦的ではないように思える。


(最後に)

 それほど絶対的な変化球やコントロールがあるわけではないので、ストレートの出力がどのぐらい上げて来られるかに懸かっているのではないのだろうか。最速で150キロを越えてくるということは、コンスタントに左腕から145キロ前後を連発できるまでにはなっている可能性もあり、そうなると一気にドラフト候補としての地位も着実なものになっているかもしれない。果たしてどのぐらいの投手になっているのか? 神奈川でも、この夏一番の注目ポイントになりそうだ。


(2019年春 センバツ大会)