20kp-3
小林 樹斗(智弁和歌山3年)投手 182/85 右/右 | |
今年の高校生で、昨年全国屈指のポテンシャルと絶賛してきた 小林 樹斗 。しかしこの投手が文句なしの1位候補になるためには、先発でしっかりアピールすることが必要だと言ってきた。しかし最終学年になっても、彼はリリーフでの起用であり、先発投手としてのアピールができないまま終わってしまった・・・。 (投球内容) 確か2年春の選抜大会では、先発としても登板していた記憶がある。しかし最後の夏は、リリーフとしての登板しか確認できなかった。というのも、リリーフだと150キロ級の迫力満点のボールを投げ込むものの、先発だと底の浅さを露呈しまうところがあったからだ。そのへんが、どうなっているのか? 最終学年に確認したかったポイントだったのだが。 ストレート 140キロ台後半~MAX151キロ ☆☆☆☆ 4.0 ズシリと重い球威と勢いを感じさせるボールで、常時150キロ前後の球速を刻んできます。右打者には両サイドにボールを散らせつつ、左打者にはややアバウトになる傾向が見られます。それでも、四死球で自滅するような危うさはありません。どちらかというと、空振りよりも詰まらせる感じの球質ではありますが、ちょっとボールの質としては松坂大輔の高校時代を彷彿とさせます。 気になるのは、ボールの質・コントロール・球速共にA級である一方、ボールの出どころが見やすく合わされやすいフォームだということ。そのためボールの割には、打ち返されてしまう危険性をはらんでいます。 変化球 スライダー・フォーク・カットボールなど ☆☆☆ 3.0 小さく横滑りする120キロ台後半のスライダーに、140キロ弱のカットボールなどでカウントを整えてきます。その他フォークなど沈む球があるのですが、この球は見極められてあまり手を出してもらえません。このへんは、先程あげたボールの出どころが見やすいため効果が薄いと考えられます。したがって現状では、カウントを稼いだり目先を変えることはできるものの、相手を仕留めるほどの変化球は持ち合わせていません。今後いかに、縦の変化に磨きがかけられるかではないのでしょうか。 その他 クィックは1.1秒前後とまずまずで、牽制は観られないのでよくわかりません。フィールディングは積極的に捕りゆく姿勢が観られるなど自信はあるようですが、慌てて悪送球するときもあるので冷静に処理して欲しいところ。 (投球のまとめ) 球威・球速・ボールの質・コントロールと揃うなど、速球に関してはA級の素材です。その一方で、ボールの割に球の出どころが早く、効果が薄いのが気になるところ。変化球でもカウントを整えられますが、現状打者を仕留められるほどの球はありません。プロで活躍するためには、縦の変化にいかに磨きがかかるかではないのでしょうか。 (投球フォーム) それでは、将来的に武器になる変化球などを習得して行けるのかフォームを検証して行きます。セットポジションからグンと足を引き上げ、軸足一本で立った時には膝に余裕がありバランス良く立てています。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 お尻はバッテリーライン上に残ってしまうフォームで、身体を捻り出すスペースは充分とは言えません。したがって、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適さないフォームです。 それでも前に大きくステップしてくるので、身体を捻り出す時間は確保できています。カーブやフォークといった球種以外ならば、武器になる変化球を習得できても不思議ではありません。今後の彼の取り組みや、相違工夫に期待したいところです。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0 グラブは内に抱えられていないものの、最後まで身体の近くにあります。そのため外に逃げようする遠心力を抑え込めていて、大きくは軸がブレないと考えられます。ましてフォーム全体が、外国人のように縦に推進するフォームなので、両サイドへのコントロールは安定しやすいと考えられます。しかし現在は、左打者への制球に課題を残します。 足の甲の地面の捉えが少しまだ浅いので、もう少し重心が沈むと力を入れて投げても低めに集まって来るのではないのだろうか。それでも「球持ち」自体は良いので、ボールを押し込めるようになれば低めにも良い球がゆくようになりそう。将来的には、制球に不安のない速球派になれそうだ。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻が落とせない割に、フォーク系の球を結構投げてくる。したがって窮屈になりやすく、肘などに負担がかかりやすいのは気になる材料。また将来的にも、落差のあるフォークやブレーキの効いたカーブを習得できるのかには疑問が残ります。 それでもボールの送り出しを見る限り、肩への負担などは少なそう。リリーフでも力投派というほどでもなく、それでも150キロ級を連発できるエンジンの大きさを持ち合わせている。そのため、比較的疲労は溜め難いのではないのだろうか。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは作れているのでタイミングは合わされ難く見えるものの、ボールの出どころが早く見えているので、球筋がいち早く読まれやすい。したがってコースを突いたような球でも、打ち返されてしまったり縦の変化を振ってもらえない危険性がある。 腕は強く振られて勢いがあるので、打者の空振りも誘えそうなもの。しかしボールが見やすいので、その効果も薄れてしまう。ボールにはしっかり体重を乗せてからリリースできているので、打者の手元まで力の落ちない球威のあるボールが投げ込めている。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」に大きな欠点があるのは明らかだ。しかし「開き」を無理に抑えようとすると腕が振れなくなるので、グラブを斜め前に出すなどしてボールをフォームの流れの中で隠す工夫が欲しいところか。 制球を司る動作に優れているが、お尻が落とせない割に縦の変化を使うので肘への負担なども心配になる。またカーブやフォーク系の習得には不安が残るので、いかに違う球種でそれらを代用できる術を模索するほうが私は良いではないかと。それを可能にするだけの、フォームはしているので。そのため将来的に、このボールのみやすさと縦の変化の問題が、この選手の大きな鍵となってくる。 (最後に) 先発でゲームメイクするよりは、現状はリリーフでの活躍をイメージしてしまう。しかし実際には、安定したコントロールがある上に、縦系の習得への不安を考えると、実はリリーフよりも先発の方が適正は高いのかもしれない。いずれにしても課題を改善させて行ける自信がある球団が、上位で指名すべき素材ではないのだろうか。個人的には大変好み選手であるのだが、先発でのアピールに欠けたり課題を克服して行けるのかには不安も残り、1位指名級という評価にまでは至らなかった。ぜひプロの世界では、私の不安を払拭して驚かせて頂きたい。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2020年夏 甲子園交流戦) |
小林 樹斗(智弁和歌山2年)投手 181/78 右/右 | |
秘めたるポテンシャルでは、今年の高校生世代で屈指のものがあるとみる 小林 樹斗 。あくまでもポテンシャルではと前提条件が付いてしまうのは、先発をするとパフォーマンスを低下したり、先発での実績が充分ではないからなのだ。 (投球内容) 夏の甲子園では、ワインドアップから振りかぶって投げていました。しかし秋の近畿大会では、セットポジションで投げ込んでいたように記憶します。 ストレート 140~MAX148キロ ☆☆☆☆ 4.0 ズシリと重い球質でありながら、しっかり手元まで来る回転の良さも感じます。それほど細かいコントロールがあるわけではないのですが、大まかに両サイドに散らせます。また先発になると、140キロ前後とガクンとボールの勢いが見劣るようになるので、先発時でも一定のボールの質を保てるのかが、これからの鍵になるのではないのでしょうか。 変化球 スライダー・フォーク など ☆☆☆★ 3.5 小さく横滑りするスライダーを、低めに集めてカウントを整えます。追い込むと、縦スラのような沈む球を投げますが、挟んでいるように見えるのでフォークなのでしょう。この球の精度がイマイチまだわからないのですが、安定して落とせるのであれば有効な武器になりそうです。現状変化球でしっかりストライクが取れて、空振りが奪えるという基本的な部分はクリアできています。 その他 フィールディングは、焦ってそこまで慌てなくても思う部分はあるものの動き自体は良く積極的です。牽制・クィックなどは今回よくわからなかったので、選抜に出場したらじっくりチェックしてみたいポイント。 (投球のまとめ) 2年生の時点で、春・夏の甲子園で先発を経験済み。けして先発投手としての適性もないわけではないが、爆発的な投球はリリーフ時限定されている。そういった投球を、先発でもできるだけの体力・筋力をこの冬の間に養えるのかが上位指名の大きなポイントになりそうだ。MAXでの投球では、中森 俊介(明石商)以上のものがあり、現時点では全国で屈指のレベルにあるとみて好いだろう。 (投球フォーム) 今度はフォームの観点から、今後の可能性について考えて行きたい。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 お尻はバッテリーライン上に残っているので、カーブで緩急を利かしたりフォークのような捻り出し投げる球種を投げるのにはスペースが足りません。 しかし前に足を逃がすのは上手いので、「着地」までの時間は稼げています。そのためカーブやフォークといった球種以外ならば、好い変化球を習得できる可能性は感じます。気になるのは、スライダー以外の持ち球がカーブやフォークといった点。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブを内に抱えられていないので、外に逃げようとする遠心力を内に留めてはいません。そのため軸がブレやすく左右のコントロールを中心に乱れやすいフォームではあります。それでもフォームが縦推進で進む感じなので、その影響は受け難いのではないかとも思えます。 足の甲では地面を捉えていて、浮き上がろうとする力を抑え込むことはできています。速球派ですが、ボールが上吊るというのは見られません。「球持ち」もまずまずで、ボールを押し込めていると考えられます。低めに速球やスライダーを集められるところが、彼の好いところだと評価できます。 <故障のリスク> ☆☆★ 2.5 お尻が落とせないフォームで体を捻り出すスペースが確保されていないのに、持ち球にフォークやカーブなどがあるのは気になります。現在のように依存度がそれほど高く無ければ問題ないと思いますが、今後使用頻度が増える時には窮屈にならないように注意したいところ。そうしないと、肘などに負担がかかりやすくなります。 腕の送り出しも極端だとは思わないのですが、角度をつけて投げ下ろして来るので、肩への負担が少ないとは言えません。結構腕を強く振る力投派でもあるので、力投しなくても一定の球威・球速を叩き出せるだけの馬力を身につけたいところか。そうしないと無理がたたって、故障の原因にもなりかねません。一塁側に投げ終わった流れるように、股関節が固い可能性も考えられ、ここからも故障につながらなければという不安もあります。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは作れているので、打者から合わされやすいということはないと思います。ボールの出どころは平均的で、それほどわかりずらいというほどではないのですが。ただしフォームも直線的なことを考えると、球威・球速が落ちてしまうと打者は苦になく打ち返されてしまう危険性は秘めています。 腕は強く振られており勢いがあるので、打者の空振りを誘いやすいはず。前に上手く足を逃しているように見える割に、投げ終わったあと一塁側に重心が流れるなどステップの幅が想像以上に狭いのは気になる材料。あれだけ重い球を投げられているのでボールにしっかり体重が乗っているのかと思いきや、まだまだ発展途上であることがわかります。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、もう少し「開き」と「体重移動」が良くなると手がつけられなくなる可能性があります。左右のコントロールのブレと体に負担のかかるフォームと、どう向き合ってゆくのかが今後の課題ではないのかと。技術的には、まだまだ発展途上の選手だとわかりました。 (最後に) 瞬間的な爆発力は素晴らしいのですが、それを先発時にあるいは安定して引き出せるようになるのかが鍵になるといえるでしょう。資質的には全国の高校生の中でも、私が知る限り屈指のものがあります。その才能を素直に発揮できるようになれば、上位指名(2位以内)で消える存在になるのではないのでしょうか。今は、選抜の舞台で成長した姿が見られることを祈っております。 (2019年 秋季近畿大会) |