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阿部 剣友(巨人)投手のルーキー回顧へ







阿部 剣友(札幌大谷3年)投手 200/98 左/左 





 「そっぽを向かない岡島秀樹」





 2メートルの身長から、まるで巨人やメジャーでも活躍した 岡島 秀樹 を彷彿とさせるフォームで投げ込んでくる 阿部 剣友 。オフにもレポートを行った選手だったが、昨年のセンバツから大きな変化が合ったのか? 考えてみたい。


(投球内容)

 大きなテイクバックをとって、結構上下動の激しいフォームから投げ込んできます。

ストレート 常時135~MAX142キロ ☆☆★ 2.5

 函館柏陵戦の投球を見る限り、常時135キロぐらいに見えました。この試合の最速は、観戦していたスカウトのガンで142キロまで到達したと言います。手元でグ~んと伸びるとか、ピュッと切れる感じの球ではなく、重い球がグワ~ンと投げ込まれる感じです。

 とにかく高めに抜ける球もあり、コントロールはかなり粗いです。それでも試合中盤ぐらいまでは、カウントを悪くしても四球を出さずに踏ん張っていました。返って荒れ球で、的が絞り難いという感じでしょうか。

変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆ 2.0

 神宮大会では見た時は、ストレートが暴れてもスライダーでカウントを整えていた印象でした。しかし、夏の大会の模様をみると、圧倒的にストレートの割合が多かったです。元々スライダーもストライクこそ取れますが、曲がりとしてはたいしたことはありません。まして、フォークだかチェンジアップだか小さく沈む球もありますが、この球もまだまだ精度は低そうです。

その他

 クィックは、1.15秒弱ぐらいと平均的で、昨年と同じぐらい。今回は牽制など確認できなかったが、モーションは大きくても適度に鋭いものを神宮大会では魅せていた。フィールディングは課題だと本人もコメントしていたが、苦手意識もあり無難に処理していたように見えた。

(投球のまとめ)

 昨春に比べて、ボールの威力・投球内容共に、大きく変化した感じは受けませんでした。むしろ変化球でカウントを整えていたのを、随分とストレートで押すピッチングをして来るのだなといった印象。何か良くなったから指名に漕ぎ着けたというよりは、やはりこの日本人離れたスペックでありながら、左腕から投げ込んでくるといった稀少価値を評価しての指名ではなかったのだろうか。


(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から何か変化があったのか見てみたい。セットポジションから、足を引き上げる勢いがあり、高い位置まで引き上げてくる。静かに「間」を取りながらというよりは、フォームの勢いで抑え込もうというリリーフタイプなのかと。軸足の膝もピンと伸び切ることがなく余裕があり、軸足一本でたった時にバランス良く立てていた。

<広がる可能性> ☆☆★ 2.5

 引き上げた足が地面に向けて伸びているので、お尻の三塁側(左投手の場合)への落としは甘さが残る。カーブやフォークといった捻り出して投げる球種が投げられないことはないと思うが、キレや落差に関しては鈍ってしまう可能性がある。

 「着地」までの粘りは、淡白で粘りなく地面を捉えてしまっている。。そのため、身体を捻り出す時間は物足りず、変化の大きな変化球の習得は厳しくなる。この点では、むしろ昨春の方が足を逃がす意識があり、地面を捉えるまでの時間を稼げていた印象だ。投球がストレート中心になり、変化球がイマイチになったのは、この辺の動作の影響があったのかもしれない。

<ボールの支配> ☆☆★ 2.5

 グラブは最後まで身体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。そのためボールは、ある程度両サイドへ散っている。しかし、足の甲での地面への捉えは浅く、浮き上がろうとする力を抑え込めていない。したがってボールは、高めに集まりやすい。また「球持ち」も浅く、ボールを押し込めていないのでボールが高めに抜けてしまったり、細かいコントロールがつけ難いのではないのだろうか。また腕が外旋してブンと上体を振るので、どうしてもコントロールはつけ難くなってしまう。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻の三塁側(左投手の場合は)の落としには甘さが残るが、カーブやフォークが投げられないほどではないかもしれない。しかしそういった球種も殆ど見られないので、窮屈になる機会も少なく負担は大きくはないのではないかと。

 腕の送り出しを見ても、角度に無理を感じられないので、肩への負担も少なくは見える。ただし腕が外旋してブンと振るので、そういった意味では肩で投げていて負担がかかっているようにも見える。ただし全身を使って投げるというよりは、明らかに大きな身体を持て余して使い切れていない感じなので、疲労を溜めやすいということは無さそうだ。

<実戦的な術> ☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りに欠けタイミングは合わされやすい部分はあるものの、ボールの出どころは隠せていて球筋は読まれ難い。まして荒れ球でかつ、この巨体だけに打者としては、けして対峙しやすくはなさそうだ。

腕が投げ終わったあと身体に絡んでくるような粘っこさがないので、打者からは空振りを誘い難いのでは? またボールにしっかり体重を乗せる前にリリースを迎えてしまっており、打者の手元まで活きた球は投げられていない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」においては、「開き」以外の部分には大きな課題を抱えいてる。故障のリスクこそ平均的だが、制球を司る動作や武器になる変化球の習得という意味では、将来的に不安が残るフォームだということ。そういった意味では、スペックは規格外ではあるものの、大成させることは容易ではないだろうと考えている。


(最後に)

 昨春のセンバツ大会で見た時は、まだ未熟ではあっても、一年あれば面白いかなと思ってみていた。しかし、この一年の変化を見る限り、大きな成長は感じられなかった。むしろ「着地」までの粘りがなくなり、変化球のキレ・精度も鈍っていたのではないかというマイナス面すら見え隠れした。そのへんは、プロ入り後修正・改善できるレベルだとは思うが、そこからプロで通用するレベルまで引き上げるとなると、相当な成長・改善・育成力がないと厳しいということ。育成枠での指名でもあるので、 を付けられないのは当然だが、その中でもかなり難しい素材なのではないかとみている。しかし、あの 岡島 秀樹 を育て上げた球団だけに、他球団よりも可能性を感じさせる指名であることもまた確かなのである。


(2020年夏 南北海道大会)

 








阿部 剣友(札幌大谷2年)投手 198/90 左/左 





 「意外にまとまってる」





 メジャーにもいった、岡島秀樹(東山-巨人など)を彷彿とさせるフォームから投げ込む大型左腕。大きな身体を持て余し気味に投げるフォームではあるが、想像以上にまとまった投球を魅せていた 阿部 剣友 。 果たして、この投手の今後の可能性について考えてみた。


(投球内容)

 198センチの規格外のサイズから、グラブを上に突き上げ大きなテイクバックをとって投げ込んできます。昨春のセンバツでは、明豊相手に先発し、3回2安打1失点で試合を作ってみせた。

ストレート 常時130キロ前後~138キロ 
☆☆★ 2.5

 球速こそ130キロ前後~MAXで138キロと驚くほどのものはなかったが、ズシリと重い球質で明豊打線の打者達もバットが押し戻されて詰まっていた。またコントロールはまだストライクゾーンの枠の中に投げ込むだけといったアバウトなものだったが、3イニングで四死球は0。本人も試合後のインタビューで、コントロール重視で投げたとコメント。一冬越えて常時135キロ前後~最速で140キロ台を越えて来るようだと、かなり厄介な投手になっているのではないのだろうか。

変化球 スライダー・フォークなど 
☆☆☆ 3.0

 持ち球はスライダーとフォークとのことだが、フォークに関してはストレートが引っかかったのか? フォークだったのかよくわからかったし滅多に投げてはこなかった。しかしスライダーに関しては、しっかりのこの球でカウントが整えられるので、ストレートがアバウトでも四死球を出さないで投球を組み立てることができている。

その他

 クィックは、1.15秒弱ぐらいで基準以内。自らフィールディングなどが課題だとコメントしていたが、牽制もモーションは大きいものの鋭いものを投げていた。そういった意識は持てているので、思ったよりできていた。

(投球のまとめ)

 球速以上にボールに力があり、スライダーでもカウントが整えることができていた。自分の欠点を冷静に判断し、それに取り組む意欲が感じられるなど、ただ漠然と投げるだけの投手ではないところに可能性を感じさせる。高校の間にプロ入りできるレベルまで引き上げられるかは微妙だが、素材としては昨春の投球を見る限り可能性を感じさせる大型左腕だった。


(投球フォーム)

 全身を持て余し気味に見えるフォームではあるが、彼に何が足りないのか考えてみたい。セットポジションから足を引き上げる勢いや高さは並ぐらいで、軸足の膝には力みは感じられないのは好い部分ではないのだろうか。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足が地面に向けて伸びているので、お尻の三塁側(左投手の場合)への落としは甘さが残ります。カーブやフォークといった捻り出して投げる球種が投げられないことはないと思いますが、キレや落差に関しては鈍ってしまう可能性があります。

 前にはそれなりにステップさせて、「着地」までの時間を稼ごうという意識は感じます。身体を捻り出す時間としては並程度で、今後もスライダーやチェンジアップに、球速のある小さな変化を中心にピッチングの幅を広げてゆくタイプかと。空振りを誘うような、武器になる変化球の習得は微妙です。


<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。しかし足の甲の地面への捉えがつま先のみで浮きがちなので、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。また「球持ち」が浅くボールが押し込めていないので、どうしてもボールが低めに集まり難く、指先の間隔も悪くなる。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻の落としは甘いものの、そこまで神経質になるほどでは。ましてカーブやフォークといった捻り出して投げる頻度も少なそうなので、窮屈になる機会も少なそう。

 腕の送り出しにも多少の無理は感じられるものの、これも極端というほどではない。全身ロスの多いフォームで負担もそれなりにあるのだろうが、力投派でもないので悲観するほどではなさそうだ。


<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは、平均的で特に合わせ難いわけでも合わされ難いわけでも無さそう。しかしボールの出どころは隠せている上に、巨体から投げ下ろしてくる迫力や角度は打者にしては厄介なはず。

 腕も適度に振れており、フォームやボールには勢いが感じられ空振りも誘いやすいのでは? ただストレートは球威型で詰まらせるタイプであり、変化球も現状空振りを誘えるほどの曲がりはしていない。また全身を持て余して見えるのは、ステップがまだ充分取れておらず、ボールにしっかり体重を乗せてリリースできていないからだと考えられる。そのため球威はあるが、打者の手元までの伸びは感じられない。


(フォームのまとめ)

 フォームの4大要素である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」と「体重移動」に課題を残している。股関節の柔軟性を養いつつ下半身の筋力強化をして、リリースの安定と前にグッと乗ってくるようなフォームに改善して行きたい。

 故障のリスクはさほど感じられなかったが、制球を司る動作や将来的に武器になる変化球を習得して行けるのかという不安は残る。岡島秀樹の場合は、左腕特有の大きなカーブという武器があったのも、プロで活躍した大きな要因だった。そのため阿部にも、これは!という球が欲しい。



(最後に)

 高校の間に指名圏内に入るのかと言われると、昨年の時点では微妙かなといった印象は持っている。しかし、最終学年での成長次第ではその可能性は感じられた。特に問題意識が高く、それに向かって努力できる才能を持っていそうな選手に見えたので、そういった部分にも期待して、今後も見守って行きたい。



(2019年春 センバツ大会)