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寺西 成騎(日本体育大3年)投手  186/85 右/右 (星稜出身)
 




 「素質開花か?」





 星稜高校の下級生時代から、その才能を嘱望されてきた 寺西 成騎 。奥川 恭伸 を擁して全国準優勝した次の年に、飛躍が期待された最終学年。しかし、肩痛を発症して満足のゆく内容を残せなかった。日体大進学後も、1,2年生時は故障の回復に励んでいた。故障が癒えた昨年、その才能を開花させ始めたのだ。


(投球内容)

 3年春のシーズンでは、5勝0敗 で最優秀防御率に。続く秋は、リリーフでの登板も多く、最速153キロを記録するまでにパワーアップを遂げていた。高校時代思い描いた姿に、少しずつ近づいている。

ストレート 140キロ~150キロ 
☆☆☆★ 3.5

 神宮大会の慶大戦で、先発として登場。先発時の球速は、140キロ~MAX147キロぐらいと驚くような球速ではない。それでも球質が良く、ズバッと良いところに決められると打者は手も足も出ない。右打者には両サイドに散らすことができるが、左打者には意外にアバウト。しかし、
左打者の方がボールが見難いのか? 反応が遅れているのが興味深かった。リリーフだと、150キロ前後のボールで力でねじ伏せに来る。

変化球 カット・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 
小さく横にズレる、カット系のボールでカウントを整えてきます。またチェンジアップのような変化をするフォークとのコンビネーション。主に、これらの球と真っすぐとのコンビネーションでカウントを整えてきます。リリーフで力でねじ伏せに来る時以外は、それほど奪三振が多い選手ではありません。そのため、狙って空振りが誘えるほどの変化球は無いように思います。

その他

 
クィックは、1.05~1.10秒ぐらいとまずまず。適度に鋭い牽制や、それなりに動きの良いフィールディングを魅せる。特にボールをじっくり持ってとか、微妙な出し入れをするとか、そういった投球術はあまり感じられなかった。

(投球のまとめ)

 
真っ直ぐの質が良いのが特徴で、その一方で使える球種が少なく単調になりやすかったり、投げるタイミングが一定の部分があり、その辺にもう少し幅が出てくると良いのかなといった気はします。リリーフ時のボールの見栄えがする選手なので魅力はあるのですが、過去に肩を痛めた経緯を考えると、先発で間隔を開けての登板の方が、肉体的には良いのかもしれません。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から考えてみましょう。セットポジションから、足を引き上げる勢いは静かで高さも控えめと静かな入りのフォーム。軸足一本で立ったときには、膝がピンと伸びがちで、トの字 の形になっている。こうなると、突っ込みやすくなるか、この体勢でもバランスを保とうとして、余計なところに力が入りやすくなる。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 
それでも甘さは残すものの、お尻は一塁側に適度には落とせている。したがって、カーブやフォークといった球種を投げられないことは無さそう。また、「着地」までの地面の捉えも並ぐらいで、体を捻り出す時間も平均的。現状のフォームだと、球種は多彩でも決めになるような大きな変化は厳しいかもしれない。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 
グラブ最後に後ろ解けてしまっていて、外に逃げようとする遠心力を充分に抑え込めていない。ゆえに軸がブレやすく、特に左打者への制球力はアバウトになりがち。足の甲での地面の捉えはできているので、力を入れてもボールは上吊り難い。「球持ち」もまずまずで、四死球で自滅するタイプでは無さそうだ。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 
お尻の落としに甘さは残すが、それほど窮屈というほどではないだろう。そういった意味では、カーブやフォークを投げられないことはない。ただし今後、フォークの頻度が増えて来ると多少心配な部分は残る。

 腕の送り出しにも無理は感じられず、肩への負担は少なそう。高校時代もさほど肩への負担が大きいそうでない割に肩を痛めていた経緯があるので、油断はできない。またリリーフでない限り、それほど力投派でもないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 
「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出処も並ぐらいに見える。そういった意味では、打者が特別苦になるような感じではない。しかし、慶応打線の左打者達が、思わず立ち遅れていたのは、球質の問題だけだったのだろうか?

 腕はしっかり振れて体に絡んで来るので、ストライクゾーンからボールゾーンに外れてゆくボールを身につけられたら、もっと三振が奪えるのではないかと思えてくる。「球持ち」は悪くないのだが、投げ終わったあとに
一塁側に重心が流れるように、リリース時までに力をロスしてしまっているのは残念。

(フォームのまとめ)

 
フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点はないものの一塁側に重心が流れるなど、「体重移動」に改善を求めたいのと、あと全体的にまだ粘りが足りない部分も残る(「球持ち」は良くなっているけど)。制球を司る動作も悪くなく、肩痛に悩まされてきたフォームではあるが、それほど負担は大きそうには見えないのだが ・・・ 。武器になるほどの変化球が習得できるかは微妙だが、多彩な球種で相手を翻弄する、そういったことは可能なフォームではないのだろうか。全体的には、まずまず実戦的な形ではまとめられている印象は受ける。


(最後に)

 
実際の投球を見ている限り、少し先発だと単調で底の浅さを感じてしまう部分がある。その一方で、リリーフだと球速が上がるので、そういった部分が薄まる印象。ただし、肩を痛めていた経歴を考えると、できれば先発で勝負できる投手に育った方が良いのではと思う。その辺は悩ましいところだが、上手く最終学年過ごせば、上位指名でのプロ入りも意識できる素材ではないのだろうか。


(2023年秋 神宮大会)










寺西 成騎(星稜2年)投手 186/84 右/右 





「なかなか本格化しない」 





 U-15でも活躍し、将来を嘱望されてきた 寺西 成騎 。1年夏から甲子園で登板するなど高い将来性を示してきたが、なかなか本格化せずに伸び悩んでいた。2年秋の北信越大会ではチームを優勝に導いたものの、右肩痛もあり神宮大会での登板がないまま終わっている。


(投球内容)

186センチの恵まれた体格を活かし、投げ下ろして来る本格派。

ストレート 常時130キロ台後半~MAX143キロ ☆☆☆ 3.0

 球速は130キロ台後半~秋には140キロ台中盤ぐらいのボールを投げていたように見えます。現時点ではドラフト候補としては平均的な球速ではあるものの、ズシリと厚みのある球質はまだまだ良くなりそうという予感めいたものは感じさせてくれる。夏の甲子園・立命館宇治戦ではコントロールが定まらずわずか2/3イニング投げたのみであったが、秋は主戦として活躍しボールも両サイドに散っていた。そのため、内角を強気に突くことも少なくなかった。

変化球 スライダー・フォーク など ☆☆☆ 3.0

 甲子園ではほとんどストレートしか投げていませんでしたが、秋の北信越大会では先発だということもあり変化球を積極的に使っていました。特に右打者外角には小さく曲がるスライダーでしっかりカウントを整えたり空振りを誘ったり、このゾーンへの制球力は確かです。また左打者には、フォークとのコンビネーションになり、この球の精度・落差はまだ発展途上といった感じはします。

その他

 牽制・フィールディング等は確認できませんでしたが、クィックは1.05秒前後と素早いです。ランナーが出ても、しっかり目配せをして投げられており、投球以外の部分も上手そうには見えました。

(投球のまとめ)

 秋の映像を少し見る限りは、かなり良くなってきたのかなと思える。しかし肩痛のために、神宮大会は登板なく終わってしまった。それだけに、センバツでの登板は楽しみにしていたのだが。まだまだ物足りなさは残すものの、高校からプロを意識できるポテンシャルを持っており、最後の夏のアピール次第では充分に指名圏内に入ってくるのではないのだろうか。


(投球フォーム)

 なかなか本格化しきれない原因も含めて、フォームを分析して考えて行きたい。セットポジションから足を高い位置まで引き上げてきて、軸足一本で立った時のバランスはまずまず。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側への落としに甘さは残すものの、カーブやフォークといった球種を投げられないことはない。ただし曲がり・変化が、充分になるのかには不安が残る。

 それでも前に大きくステップさせることで、身体を捻り出す時間を確保。カーブやフォークといった捻り出して投げる球種以外ならば、キレや曲がりの大きな変化球を取得しても不思議ではない。実際、スライダーのキレは中々良い。

<ボールの支配> ☆☆★ 2.5

 伸び悩みの一番の原因は、制球の不安定さにあった。しかし秋には、32イニングで7四死球と大幅には改善されていた。制球を乱している最大の要因は、グラブがしっかり抱えられず後ろで解けてしまっていること。これにより外に逃げようとする遠心力を抑え込めず、軸がブレやすいからではないのだろうか。

 足の甲では地面を捉えているので、浮き上がろうとする力は抑えられている。ただしリリースの際にボールが押し込めておらず、ボールがショート回転したり高めに抜けやすい傾向が見られる。この点も秋は、だいぶ改善されてきていたのではないのだろうか。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻はある程度落とせているので、カーブやフォークを投げても窮屈にはなり難いとは考えられる。それでも充分なスペースが確保しているわけではないのに、カーブやフォークを結構使うので肘への負担などは考えられる。

 上から投げ下ろしてくる感じはするものの、それほど送り出しに違和感は感じられず肩への負担は少なそうには見える。しかし肩痛に泣かされている部分もあり、それなりに負担はかかっているようなのだ。腕はしっかり振れる力投派の側面はあるので、疲労は溜まりやすいのかもしれない。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは作れているので、合わされやすいフォームではないように思います。しかしボールの出どころはさほど隠せていないので、踏み込んで打たれたり縦の変化を見極められる恐れはあります。それでも秋は、32イニングで23安打と71.9%と低い数字にとどめました。

 腕は強く振れて勢いがあるので、打者の空振りは誘いやすい部分はあるのではないかと。秋は32イニングで42奪三振と、1イニングあたり1.31個と右投手としては破格の奪三振率を誇りました。ボールにも適度に体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで球威のある球が投げられています。もう少しリリースが良くなると、奥川のように球威と伸びを兼ね備えた球質にも鳴ってくると思うのですが ・・・ 。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」と「球持ち」にもう少し粘りが出てくると良いのになと思える部分はあります。秋は制球を司る動作には不安があるものの、実戦では四死球を少なく済ませた。身体への負担はさほど大きくなさそうで、逆に肩痛で神宮大会では登板できなかった。将来的には、良い変化球を習得して行ける下地はあるように感じました。


(最後に)

素材はプロ級だと思いますが、肩への不安からか伸び悩んできたのは確かです。秋はだいぶ良かったようですが、それを全国の舞台で示せなかったのは残念。果たして、スカウトの前で成長した姿を示すことはできるでしょうか?


(2019年秋 北信越大会)