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木下 幹也(巨人)投手のルーキー回顧へ







木下 幹也(神奈川・横浜高3年)投手 185/85 右/右 
 




 「少し迫力が出てきたが」





 185センチの恵まれた体格から、ワインドアップで大きく振りかぶって投げ込む 木下 幹也 。しかし実戦での投球は130キロ台中盤ぐらいと、おもいのほか物足りなかった下級生時代。彼を見ていると、こんなものではないだろと常に思っていた。そんな木下の、最後の夏をみた。


(投球内容)

 下級生の頃から、名門横浜高校において安定感ではNO.1でした。そのため大事な試合では、この木下が任されたきた経験豊富なピッチャーです。確かに安定感はありましたが、そのぶん大胆さに欠けるところがあります。

ストレート 常時135キロ前後~140キロ強ぐらいか ☆☆★ 2.5

 最終学年に入り、最速が152キロまで伸びたという話だった。しかし夏の初登板であった 戸塚高校戦 の模様を見る限り、常時135キロ前後~140キロ強ぐらいに見えてあまり変わった感じはしない。たまに力を入れた時の球が、140キロ台中盤ぐらいまで出たかもとは思わせる球もあったが、ほとんどは140キロ前後だったのではないのだろうか。このストレートの勢いを見ていると、高校からドラフト指名される右投手としては、若干物足りないぐらいのレベルだった。

 それ以上に気になったのが、全体的にボールが高めに集まる点。ポンポンとストライクゾーンには投げ込んで来るものの、昨夏から思ったほど細かい投げ分けをしてくるタイプではありませんでした。しかしここまで全体的に、ボールが高めに集まっていたかな?と思う部分はあります。けして四死球で自滅するタイプではないのですが、これはレベルの高い打者には打ち返されてしまうのではないかと思えます。ただしこの夏の初戦だったので、力が入り気味で制球を見出していた可能性があります。このへんは、もう少し二戦目以降は改善されてくると思う部分はあります。

変化球 スプリット・カーブなど ☆☆☆ 3.0

 昨夏までは、いろいろな変化球を投げ込むも絶対的なボールがない感じでした。しかしこの戸塚戦の投球を見ていると、変化球のほとんどはスプリットだかチェンジアップなどの落差の小さな沈む球とのコンビネーション。しかも落差はそれほどでもないので、この球で空振りを誘うところはほとんど観られませんでした。昨年から時々ブレーキの効いたカーブを織り交ぜていましたが、この球をたまに投げるぐらいで、純粋なスライダー系の球は観られなかった気がします。

その他

 クィックは、1.1~1.2秒ぐらいで平均的。牽制は適度に鋭く、フィールディングの動きなどもまずまずといった感じがします。特別間を使って相手を焦らすとか、微妙なコントロールの出し入れをするようなタイプではありません。しかし豊富なマウンド経験を活かし、テンポ良く相手を追い込んで行きます。

(投球のまとめ)

 現状は、昨夏よりも全体的球速は引き上がってきているものの、絶対的なものは感じられません。この投手は、現在の能力よりもプロに混ぜてみたら、実は凄かったなんてタイプかもしれませんし、これからの伸び代がありそうという意味で評価されるべきタイプではないかと。成長曲線としては、非常に緩やかな上昇を続けてきているといった感がしました。


(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から、その変化をみてみましょう。ワインドアップで勢い良く高くまで足を引き上げ、軸足一本で立った時のバランスには非常に優れています。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 お尻は一塁側に落ちているので、体を捻り出すスペースは確保できているように見えます。したがってカーブやフォークといった球種を投げ得るのには無理は感じません。

 ただし「着地」までの粘りはもう一つで、体を捻り出す時間に粘りが欲しいところです。今のままだと、キレや曲がりの大きな変化球の習得は厳しく、決め手に欠ける投球は改善されないかもしれません。むしろ「着地」までの粘りは、昨夏の方が良かったのではないかと思えるほどです。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑え込めています。したがってブレは小さく、両サイドへのコントロールはつけやすいのではないかと。足の甲でも地面を捉えており、浮き上がろうとする力も抑えられています。これならばもっと低めにボールが集まりそうですが、全体的にはボールが高いです。

 その理由として考えられるのは、リリース時のボールの押し込みが不十分な可能性が。ここがイマイチなので、高めへの抜け球が多いのではないかと考えます。この辺は昨年の寸評でも指摘しており、あまり改善されていないのではないかと思います。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻は一塁側に落とせている上に、握りの浅めのスプリットにカーブをたまに投げる程度。そのため窮屈になる機会も少なく、肘への負担はさほど大きくはないのでは? ただし現在、必要以上に縦の変化への依存が多くなっているので、そのへんが気がかりでしょうか。

 リリースに角度が感じられる割に、腕の送り出しには無理が感じられません。それほど力投派というよりは、まだ大きな身体を活かしきれていないといったタイプなので、疲労を溜めやすいということはないのではないのでしょうか。昨年に比べると、腕の送り出しに無理が感じられなくなったことで、肩への負担は軽減されているのではないのでしょうか。

<実戦的な術> ☆☆★ 2.5

 「着地」までが淡白で比較的合わされやすいフォームであり、ボールの出どころもあまり隠せているフォームではありません。全体的にボールも高めに集まることを考えると、レベルの高い相手に狙い打たれる危険性は感じます。

 腕は適度に振れており身体に絡んできますが、ボールが見やすいのもあるのか? 空振りが誘えないのは気になります。ボールへの体重の乗せも発展途上なので、打者の手元までの勢いも物足りなく感じられます。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」までの粘りに欠け、「体重移動」にも物足りなさが残ります。特にこのへんは、昨夏の方が良かったぐらいです。

 コントロールを司る動作は悪くない割に全体的に高いのですが、故障のリスクは高くないように見えます。しかしこの部分も、縦の変化球を多く混ぜることで負担は増している可能性はあります。将来的に武器になる球を身につけられるかは、今のフォームのままだと厳しいかもしれません。実戦的な投手に見えますが、実はまだまだ発展途上のフォームであることが伺えました。


(最後に)


 安定した精神面、秘めたる潜在能力がありそうという部分では、プロ志望であるならば下位指名あたりならばアリなのかなと思いはあります。ただし課題も多く、まだまだなことを考えると、ワンクション置いて大学などで資質を伸ばしてからでもプロ入りは遅くはないのではないかという思いも強いです。一応  は付けますが、この選手は進学して4年間の成長を促したいという思いの方が強い選手ではありました。ただし高校時代で魅せていたパフォーマンスとは全然違うものを、半年後ぐらいには示すようになるかもしれません。


蔵の評価: (下位指名級)


(2020年夏 神奈川大会)








木下 幹也(横浜2年)投手 185/85 右/右  
 




「こんなものじゃないだろ」 





 高校時代の 藤平 尚真(楽天)のような、恵まれた体格を生かしてダイナミックなフォームで投げ込んでくる 木下 幹也 。しかしそのフォーム・体格からして、球速が135キロ前後というのはなんとも物足りない。最終学年で、果たしてその才能が爆発するのか注目したい。


(投球内容)
 
下級生の時から、横浜高校の中でも安定感という意味では一番の存在で大事なところを任されてきました。

ストレート 常時135キロ前後~140キロ台前半 ☆☆★ 2.5

 ボールの質が悪いとか制球力が悪いとかいうことではなく、ドラフト候補の右投手としてしては少々球速が物足りなく感じます。このへんがコンスタントに140キロ前後~中盤ぐらいまで出せるようになれば、高校からのプロ入りも充分に意識できるのではないのでしょうか。ストライクゾーンではあまり細かい投げ分けはなく、枠の中に投げ込んでくる感じ。しかし、四死球で自滅するようなタイプではありません。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 絶対的な変化球があるわけではないのですが、球種は多彩です。緩いカーブを投げられるセンスもありますし、スライダーやチェンジアップなどを織り交ぜつつ、時には沈む球も織り交ぜてきます。そういったいろいな球を投げられる、センスみたいなものは感じます。あとは、何か投球の軸となると球種を見出したいものです。

その他

 クィックは、1.1秒台と基準レベルであり、牽制も鋭く上手いです。ベースカバー含めて、フィールディングもまずまず。横浜高校らしく、そういった部分はしっかり鍛えられていいます。

(投球のまとめ)

 コントロール・制球力・投球術 など、投球の基礎的な部分はしっかりできています。あとは、このひと冬の間に、いかに出力を引き上げられるかにかかっているのではないのでしょうか。現状の投球内容は、藤平というよりも高校時代の 柳 裕也(明大-中日)に近いものを感じます。

(投球フォーム)

 今度はフォームの観点から、その可能性について模索してゆきたいと思います。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側への落としはまずまずで、身体を捻り出すスペースは確保できています。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球を投げても無理は感じません。

 「着地」までの粘りもそれなりで、身体を捻り出す時間もある程度確保。武器になるほどの変化球が習得できるかは微妙ですが、多彩な球を操れる土台は持っています。また体格にも恵まれ角度のある投げ方なので、フォークなど縦の変化球を武器にはできそう。あるいは、いろいろな球を投げられるセンスと器用さはありそうです。

<ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑え込めています。したがって軸がブレ難く、両サイドへのコントロールもつけやすいフォーム。現状はまだそこまで投げ分けはできていませんが、身体がしっかりしてリリースが定まってくると、狙ったところに集められるようになるしょう。

 足の甲での地面への捉えもしっかりできているので、浮き上がろうとする力を抑えることができ、高めに抜ける球も少ないです。まだ低めに集められるというほどではないので、リリースでさらに押し込めるようになるとそのへんも変わってきそう。「球持ち」も悪くないのですが、そこまで指先の感覚が良いというほどでもないように感じます。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻は落とせているでので、カーブやフォークといった捻り出して投げるボールでも窮屈になることは少ないでしょう。したがって肘への負担も、少ないと考えられます。

 ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩は下がるぐらいに角度をつけているのは気にはなりますが、その送り出しの過程をみていると負担が大きいようには見えません。それほど力投派でもないので、疲労も溜めやすいということも無さそうです。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りも適度にありますし、ボールの出どころも平均的な感じ。それほど嫌らしいフォームではないものの、甘いところに投げなければ痛手を喰らいやすいということはないはず。

 腕はしっかり身体に絡んできて適度な勢いは感じられるので、打者の空振りは誘いやすいのではと。 ボールにある程度体重を乗せて投げられているの、打者の手元まで球威は悪く有りません。ただしステップが狭めなのか? 投げ終わったあと一塁側に流れてしまいます。そのため作り出したエネルギーをロスしてしまって、ダイレクトにボールに伝えられないのはもったいないです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、まだ良くなる余地が残されています。股関節の柔軟性を養いつつ下半身を強化するなどして、土台をしっかり構築できればもっと粘っこさがフォーム全体に出てくるのではないのでしょうか。

 コントロールを司る動作も良いですし、故障のリスクもさほど高くは見えない。将来的にもいろいろな球種を磨き、投球の幅を広げて行ける土台があると言えます。素直に肉付けできれば、良い先発型の投手に育つのではないのでしょうか。


(最後に)

 本当の意味で才能が開花するのが高校の間なのか、大学へ行ってからなのかでプロ入りのタイミングも変わってきそうです。現状は大学タイプなのかなと思える反面、持っているスペックや素材の良さはありますから、春には見違えるほどになっているかもしれない。そのへんを春季大会で、ぜひ見極めてみたいものです。個人的には、かなり期待している投手です。


(2019年夏 神奈川大会)