20kp-1
高橋 宏斗(中京大中京3年)投手 183/84 右/右 | |
甲子園の交流大会が始まる前に行われた・愛知県の独自大会。試合終盤に登場してきた 高橋 宏斗 の外角低めに決まる速球を見て、高校NO.1はこの投手だと強く実感させられた。甲子園では制球に苦しみ、この時ほどの内容ではなかった。それでも勝負どころでは、底から湧き上がるような最高のボール投げ込めるあたりに、今年の目玉になりうる素材だと確信した。 (投球内容) 少し上半身が勝ったようなフォームで、高校時代の 松坂大輔 を思い出せる投球です。 ストレート 常時140キロ台後半~MAX154キロ ☆☆☆☆ 4.0 手元でグ~んと伸びるとかピュッと切れて空振りを誘う球というよりも、球威と勢いを兼ね備えた相手を詰まらせる類のボールです。全体的に高めに集まることが多いのですが、要所では打者の外角低めにズバッと決まって相手にバットを振ることを忘れさせます。高低のバラツキは顕著ですが、両サイドには散っていて痛手は喰らい難いと言えます。 変化球 スライダー・カットボール・スプリット・ツーシームなど ☆☆☆★ 3.5 スライダーの曲がりは大きく、思わず大きくストライクゾーンを外れていっても手が出てしまうほど曲がります。それだと曲がりすぎるからと、曲がりの小さなカットボールで上手くカウントなどを整えることもできています。またツーシームのような球やスプリットのような沈む系の球もあり、ストレートだけでなく多彩な球種とのコンビネーションで相手を打ちとりにきます。 その他 牽制は適度に鋭く走者を刺すこともできますし、クィックも1.05秒前後と素早いです。フィールディングなども鍛えられており、投げること以外も高いレベルでまとまっています。 間を使うとかそういった意識は感じられませんが、内角を厳しく突いたり、勝負どころではズバッと外角低めに決められる大胆さも兼ね備えています。 (投球のまとめ) 疲れが溜まっていると、ボールが微妙に決まらない収まりの悪さが顔を覗かせます。それでも要所では、その日一番のボールを投げ込めるように、メリハリがついた投球ができています。けして 奥川 恭伸(星稜-ヤクルト)ほどの完成度は感じられませんが、それに近いレベルに達しつつあるように感じます。また将来的には、彼を越えてきても不思議ではありません。特に勝負師として、きっちりチームを勝利に導けるといった、ここ一番での精神力は、奥川 を凌ぐものがあるのではないのでしょうか。そのへんがプロの世界では、大きく活躍を後押ししてくれる可能性があります。 (投球フォーム) ノーワインドアップから、足を上げる勢いや高さは並ぐらい。軸足の膝がピンとのびがちで、少し力みが感じられる立ち方なのは気になります。 <広がる可能性> ☆☆ 2.0 お尻はバッテリーライン上に残りがちで、全体的に縦推進のフォームです。身体を捻り出すスペースは充分ではないので、カーブやフォークといった捻り出して投げるボールには適しません。 「着地」までの粘りもイマイチなので、身体を捻り出す時間も淡白。そのためキレや曲がりの大きな変化球の習得は難しいのですが、腕の振りなどが上半身が強靭なので、スライダーやチェンジアップは大きく変化しそう。縦系の変化球の落差は厳しく、今後は球速のある小さな変化を中心にピッチングの幅を広げてゆくことになるのではないのでしょうか。 <ボールの支配> ☆☆★ 2.5 グラブが内に抱えられないので、外に逃げようとする遠心力が抑え込めず、左右のコントロールが乱れやすいフォームです。また足の甲でも地面を捉えられず浮いているので、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。また腕がスリークォーター気味なのだけれども、肘を立てて振れていないので、ボールが抜けやすいのも確かです。しかしその割に、ボールがある程度制御できているのは何故か? 1つは、フォームが縦推進なのでグラブの抱えを行わなくても軸のブレが少なく済んでいるから。これは、上原浩治(元巨人)などもそういった感じのフォームでした。もう一つこういった投手でも制球がつく理由は、「球持ち」が良いこと。ボールを長く持つことで、指先で微妙なコントロールがつけやすいから。実際高橋投手も、「球持ち」は良く前でしっかりボールを放せています。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻が落とせないので、カーブやフォークといった球種には適しません。またカーブも見られませんし、沈む球も握りが浅いスプリットということで、肘への負担は少ないのではないかとみています。 腕の送り出しには無理は感じられず、肩への負担も少ないのでは? 普段はそれほど力を入れて投げていないので、疲労も溜め難いのではないかと。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りがないので、打者としては球速ほどには苦にならないフォームではあるように思います。また身体の「開き」といった観点でも平均的で、疲れが溜まってくると肘が下がってボールが見やすくなるきらいがあります(甲子園ではそんな感じでした)。 腕は強く振れて勢いがあるので、変化球などはつられて空振りは奪えます。「体重移動」がイマイチの割に重い球を投げられるのは、「球持ち」が良いのである程度体重を乗せてからリリースできているから。それでも下半身の使い方が下手なので、手元でグ~ンと伸びる球にはなりづらいところがあります。このへんは、高校時代の 松坂大輔 と良く似ています。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、やはり「着地」と「体重移動」に課題を残すものの、「球持ち」の良さで補えている部分が大きいです。 制球を司る動作には課題がありますが、故障のリスクは少なめ。今後武器になる変化球を習得できるかは疑問が残り、今のようにいろいろな球を駆使して的を絞らせない投球を目指すことになるかもしれません。 (最後に) プロに入れば、一年目の後半には一軍を経験。2年目ぐらいからは、バリバリローテーションで投げられる可能性があります。しかし大学などに進んだ場合、2年生ぐらいにはアマで吸収するものがなくなり、目標を見失って惰性で過ごすそういった先輩を多く見てきました。特に彼の場合は、すでにある程度のレベルまで来ているので、その可能性はかなり高いです。 本人が大学で何をやりたいのか? それは、今じゃないと行けないのか? その辺も含めて納得のゆく決断をして欲しいところです。将来的にプロ野球選手になりたい という目標を持っているのであれば、高校からプロに入った方が私は良いと思っています。いずれにしても、今年の大学・社会人など含めても、この選手が今年のNO.1だと評価します。 蔵の評価:☆☆☆☆☆ (目玉に相応しい) (2020年夏 甲子園交流試合) |
高橋 宏斗(中京大中京3年)投手 183/79 右/右 | |
この秋の神宮大会で、NO.1投手として注目された 高橋 宏斗 。神宮大会を制して、センバツ出場も濃厚だと言えよう。間違いなくセンバツでも話題になる存在になる一人だが、一体どのような投手なのか考えてみた。 (投球内容) 明徳義塾戦の模様をみたが、立ち上がりはワインドアップで投げていたものの、コントロールが定まらないと判断したのか? 試合途中からノーワインドアップに切り替えるなど機転をきかせて投げていた。 ストレート 常時145キロ前後~MAX148キロ ☆☆☆★ 3.5 先発でも常時145キロ前後を投げ込むスピード能力は確かで、ボールの勢い・球威ともに一定のレベルにはある。気になるのは、ボールが全体的に高いことでストレートのコマンドが高くないこと。それでも右打者にも左打者にも、インハイを意識的に突いているように見えた。ボールの質という意味ではまだ高校生のそれではあるが、一冬越えて身体ができてきたら、どの程度変わってくるのかは興味深い。順調に伸びてゆけば、センバツでは150キロ台の王台も夢ではないのだろう。 変化球 スライダー・カットボール・ツーシーム ☆☆☆ 3.0 ストレートが暴れる一方で、小さく横滑りするスライダーでしっかりカウントを整えられる。どれがカットボールなのかは見分けが難しいのだが、140キロ台前半ぐらいの球がカットボールだったのだろうか? 追い込むとシュート回転して沈む球があり、これがツーシームなのだろう。少しドロンとした変化なので何処まで空振りを誘えるかは微妙だが、すでに2年秋の時点で狙って落とせるレベルにはあるようだ。粗っぽい投球が破綻しないのは、しっかり変化球でストライクが取れるからなのだろう。 その他 クィックは、1.0~1.1秒ぐらいで素早く投げ込むことができている。牽制もまずまず鋭く、フィールディングの動きやベースカバーへの入りも悪くない。投球以外の部分には、かなり優れている。 投球において「間」を使って投げ込むとかいうことはないが、ランナーがいなければ比較的ゆったりしたモーションで投げ込んでくる。 (投球のまとめ) 来年の1位候補とかそういった印象は受けなかったが、センバツではドラフト候補としてマークされる存在であるのは間違いない。ただし粗っぽい部分も多く、その辺を夏までに何処まで解消できるだろうか? フォーム分析をして行き、問題点を考えて行きたい。 (投球フォーム) 真上から投げ下ろすというよりも、少しスリークォーター気味な腕の振りとなっている。 <広がる可能性> ☆☆ 2.0 お尻はバッテリーライン上に残ってしまい、身体を捻り出すスペースは確保できていない。そういった意味ではカーブで緩急を利かしたり、フォークのような落差のある球には適していない。 「着地」までの粘りも淡白で、身体を捻り出す時間が確保できていない。将来的に、武器になるようなキレのある変化球を習得できるのには疑問が残るフォームではある。しかしカットボールやツーシーム、それにスライダーなどを上手く使うことで、このフォームの欠点を上手く補えてはいる。 <ボールの支配> ☆☆ 2.0 グラブは最後まで抱えられておらず、外に逃げようとする遠心力を抑え込めずにいる。そのためフォームがブレやすく、両サイドへの制球もアバウトになりがち。足の甲も投げる際に地面から浮いてしまうので、力を入れて投げると浮き上がろうとする力を抑えこめずに高めに抜けてしまうことが多い。球持ち自体は悪くないのと、フォームが全体的に直線的で左右への動きが小さいことで、アバウトでも四死球で自滅するほどにはコントロールを乱さないで済んでいるのではないのだろうか。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻は一塁側には落とせていないが、カーブやフォークといった捻り出して投げるボールは使って来ない。そういった意味では窮屈になる機会も少なく、肘への負担は少ないと考えられる。 腕の送り出しには無理がないので、肩への負担も少ないだろう。ただし上半身で投げる力投派ではあるので、疲労は溜まりやすいのではないのだろうか。そこからフォームを崩し、故障に繋がるといった危険性は秘めている。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りがなく合わされやすそうなフォームな上に、動きも直線的でボールが見やすい感じはする。それでもボールの出どころは隠せているので、コントロールミスをしなければ痛手は喰らいずらいのかもしれない。 腕は強く振れており、身体にも絡んでくる。フォームに勢いはあるので、空振りは誘いやすいのでは。ボールへの体重の乗せは発展途上であり、まだまだ不十分。そのため打者の手元まで、生きた球が投げ込めていない。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」で言えば、「着地」と「体重移動」といったエネルギー伝達の動作に課題がある。制球を司る動作にも大きな課題があるが、故障のリスクはそれほどでもない。また将来的に武器になる球を習得できるかは微妙ではあるが、フォームの欠点を理解しそれに合った球種を選択して使っている点には好感が持てる。技術的には課題も多いのだが、そこを理解し上手く向き合ってピッチングに繋げている。 (最後に) ドラフトの目玉だとかそういった位置づけでは考え難いが、ドラフトの有力候補として考えるには興味深い選手ではないのだろうか。粗っぽいコントロールとフォームではあるが、それとどう付き合いパフォーマンスに繋げて行けるのかは興味深い。すでに2年秋の時点で、ドラフト候補に入れられるレベルにあるという意味では、今後も一年間かけて追いかけて行きたい一人ではないのだろうか。 (2019年 神宮大会) |