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渡部 健人(西武)内野手のルーキー回顧へ







渡部 健人(桐蔭横浜大4年)三塁 176/112 右/右 (日本ウェルネス出身) 
 




「打球に角度がついてきた」 





 
日本ウェルネス時代に、こんなぽっちゃり体型の選手がショートを守っているのを初めてみたと強烈な印象を残してくれた 渡部 健人 。チームでは抜けた存在だったが、まさか4年後ドラフト1位でプロ入りすることになるとは、その時思いもしなかった。その後も何度か見る機会があったが、体型の割には打球が上がらない中距離タイプ。亜細亜大にいたブーちゃんこと 中田亮二(中日入団)を右にしたような打者だと思っていた。しかし最終学年の渡部は、かなりの確率で打球が上がる打者へと変貌していた。


走塁面:☆☆☆ 3.0

 この体型でありながら、一塁までの到達タイムは右打席から4.3秒前後のタイムを叩き出していて驚いた。これを左打者に換算すると、4.05秒前後に相当。ドラフト指名される打者の、平均以上のタイムに相当するからだ。それまでは、頑張っても4.6秒~5秒台で駆け抜けることが多かった。しかし最終学年になってからは、アウトになっても最後まで力を抜かず全力で走り抜ける姿勢にも頭が下がる。盗塁をバシバシ決めるようなタイプではないが、たまに意表をついて盗塁を決める、そういった走力は充分あるとみて良さそうだ。

守備面:☆☆☆★ 3.5

 高校時代から、ショートの守備も悪くなかった。三塁手となった現在では、球際でのグラブさばき、そして送球も安定して上手い。横の動きはけして広いとは言えないが、自分が届く範囲の球に関しては、安定して処理できる能力を有している。プロでも、三塁手としてやって行ける素材ではないのだろうか。


(打撃内容)

 センター中心に、どの方向にも強い打球を飛ばせます。本塁打は、センターからレフト方向に、引っ張る打球が多いようには感じますが。この秋は、8本・23点 打率.436厘(2位)という驚異的な成績を残し、3年間で積み上げた本塁打が10本だったのに比べると、いかに最終学年に打球が上がるようになったか実感させられる。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップの高さは高めに添えられている。腰の据わり具合・全体のバランスとしては並だが、両眼で前を見据える姿勢は良く、球筋を錯覚を起こすことなく追うことができている。打席でも力むことなく、リラックスして構えられている。

<仕掛け> 平均的

 投手の重心が沈みきったあたりで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く見られる仕掛けです。昨年までは、「早めの仕掛け」だったことを考えると、幾分始動を遅らせて、引きつけて叩けるようになったのではないのでしょうか。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足をしっかり引き上げて、真っ直ぐ踏み出しています。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプなのでしょう。

 踏み込んだ前の足はしっかり止まっており、逃げてゆく球や低めの球にも食らいついてついて行くことができます。昨年までは、地面から足が離れるのが早く、逃げてゆく球や低めの球に対し開きが我慢しきれない傾向が目立った。彼の打撃の成長の一端が、この下半身の安定からも伺うことができる。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形をつくるのは自然体で、力みなくボールを呼び込めている。バットの振り出しは、けして内から出てくるようなインサイドアウトではない。それでも外の球を叩くには、大きなロスは感じられない。

 インパクトの際にもバットの先端であるヘッドが下ることなく、広い面でボールを捉えられている。そしてスイングの前が大きく、強烈な打球が飛んでゆく。それほどインパクトを見る限り、打球に角度を付けているとかフォロースルーを効かせているようには見えないが、本人なりにバレルゾーンを意識して打球を強く叩くことを考えているのかもしれない。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げはしっかりする割に、目線の上下動はそれほど大きくはない。身体の「開き」も我慢できており、開きが早くなるのを抑えられるようになってきた。気になるのは、足元が少し窮屈な点。そのため内角をさばく時は、軸足を後ろにずらして身体のスペースを確保しながらスイングをしている。懐に、あまり余裕がないからだろう。

 したがって脇をたたんで内角寄りの球をファールすることはできても、このゾーンの球をヒットゾーンに打ち返すのはあまり上手くないように見えた。そのへんがプロのデータが揃った時に攻められる可能性があり、本人がいかに対処できるかに懸かっている。

(打撃のまとめ)

 始動を若干遅らせることにより、ボールを手元で呼び込めるようになってきた。また足元がしっかりすることで、開きを我慢できたことが大きな成長だと考えられる。またスイング軌道自体はあまり変わっていないようには見えたが、バレルゾーンを意識したスイングを心がけているのか?打球が下級生の頃より角度がつくような打球が増えたのが長打に繋がったのではないのだろうか。


(最後に)

 最後まで緩めない走塁への姿勢にも芽生え、守備でもも確かなものを持っている。さらに打球にも角度が付くようになって、右打ちの三塁でありながら、長打も放つことができる理想のスラッガーへと変貌した。こういった選手が欲しい球団にはたまらない人材であり、評価が最終学年になって急騰したことも納得がゆく。ただし指名となると3位前後ぐらいかなと思っていたので、1位指名されたのは正直驚きだった。まぁ上記に上げた稀少性を考えたら、この評価が妥当だったことを今後証明してくれるのかもしれない。いずれにしてもまた一人、西武に楽しみな打者が入った、そう実感させられる指名ではないのだろうか。


蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級)


(2020年 秋季リーグ戦)










渡部 健人(桐蔭横浜大3年)三塁 175/110 右/右 (日本ウェルネス出身) 
 




 「長距離打者ではないと思うけれど」





 175/110 という おかわり君体型なので、どうしても長打を期待したくなる 渡部 健人。しかし中田亮二(亜大-元中日)同様に、本質的には中距離・ポイントゲッタータイプではないかと思うのだ。果たしてその辺どうなのか? 詳しく考察してみたい。


(守備・走塁面)

 高校時代に、こんなぽっちゃり体型の選手が、ショートを守っているのを初めてみたと驚かされた。その体型とは裏腹に、動きが軽快で、想像以上に上手かったのを覚えている。昨年6月の大学選手権のときには、サードを守っていた。相変わらず動きは良いのだが、難しい体勢からだと送球が乱れることも多かったり、ポロポロしてボールが手をつかなかったりと、動きは悪くないがミスは多かった。現状プロの三塁手としては、ちょっと荷が重い気はする。

 中田亮ニは、体格の割に結構足が速かった。しかしこの渡部は、中田選手より守れるかわり足は遅い気がする。右打席から、4.6秒台ぐらいで、左打者に換算しても4.4秒台ぐらい。走力に関しては、プロでも最も遅い部類にはなってしまうだろう。


(打撃内容)

 大学選手権の中京学院大戦では、右中間スタンドに無理なく本塁打。リーグ通算でも、ここまで10本塁打を放っている。大学2年の春・秋のシーズンでは、4割以上を残し圧倒した。しかし3年時は、春・秋共に2割台前半に低迷している。本塁打は、毎シーズン1本~3本ぐらいをコンスタントに放っている。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは高めに添えられている。腰は据わらず、全体のバランスとしては並みぐらい。それでも両眼で前を見据え、リラックスして立てているのは良いところ。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下る時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。対応力を重視した、アベレージヒッターに多く見られる仕掛けです。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を引き上げて、ベース側に踏み込んできます。始動~着地までの「間」は充分あり、速球でも変化球でもスピードの変化には幅広く対応。インステップして踏み込んで来るように、外角への意識が強い打ち方となっている。

 踏み込んだ前の足は、いち早く地面から離れるタイプ。そのため、本当は引っ張りたいタイプなのではないのだろうか。それでも身体がキレないせいか? 結果的にセンターから右方向への打球が多くなるのかもしれない。いずれにしても逃げて行く球や低めの球に対しては、あまり強くないのではないかと考えられる。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力みなくボールを呼び込めています。バットの振り出しも、インサイド・アウトではなく、バットのしなりを活かしたスイング軌道。それほど、遠回りは出てこない癖のない軌道。インパクトの際には、バットの先端であるヘッドは下がらず、広い面でボールを捉えられます。それだけフェアゾーンにボールが飛びやすい打ち方です。けしてボールに角度をつけて飛ばすとか、フォロースルーを使って打球を運ぶとか、そういったタイプではありません。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げはあるものの、目線の上下動は小さめ。身体の開きは、いち早く地面から足が離れるので充分とは言えません。しかし軸足は地面から真っ直ぐ伸びて安定しており、また内モモの筋肉の強さも感じます。調子の波は小さく、強烈な打球を生み出す原動力になっているのではないのでしょうか。

(打撃のまとめ)

 もう少し踏み込んだ前の足がしっかり止まるタイプかと思ったら、そうでもないのは若干気になりました。それ以外の動作は、癖がなくシンプルだと感じます。スイングを見る限りは、ボールを飛ばすタイプではないように思います。あくまでも、肉体のパワーが尋常ではないので、スタンドインすることが多いのでしょうが、強烈な打球が野手の間を抜けて行くタイプかと。


(最後に)

 サードの動き自体は悪くないと思うので、鍛えれば おかわり君 レベルのサードにはなッても不思議ではないと守備はみています。ただしよほど最終学年に打撃で圧倒しないと、なかなかドラフト指名となると厳しいかもしれません。持っている潜在能力はこんなものではないと思うので、最終学年でいかに眠っている才能を引き出すことができるかではないのだろうか。いずれにしても、あまりホームランを期待して、獲得するタイプではないように思う。もし指名するのであれば、その辺を納得の上指名欲しいと願います。


(2019年 大学選手権)