20dy-23





若林 楽人(西武)外野手のルーキー回顧へ







若林 楽人(駒沢大4年)中堅 177/74 右/右 (駒大苫小牧出身) 





「まるでグリエル」 





 振り払うようなスイングは、かつてDeNAにも所属していた「キューバの至宝」 ユリエスキ・グリエル を彷彿とさせる 若林 楽人 。この秋、野手としては最も株をあげた一人ではないのだろうか。


走塁面:☆☆☆★ 3.5

 一塁までの到達タイムは、右打席から4.25秒前後。これを左打者に換算すると、4秒前後という俊足です。2年春からリーグ戦に出場するようになったのですが、その間にシーズンで記録した盗塁数は 1~4個 ぐらいと、けして圧倒的な数字ではない。しかし元々の走力に加え、積極的にガンガン攻めるプレースタイルの選手だけに、プロで走塁への意識・技術・意欲を高められれば、足を売りになするような選手になっても不思議ではない。

守備面:☆☆☆★ 3.5

 この脚力を活かした、広い守備範囲の持ち主です。打球への勘や落下点までの目測などは悪くなく、ダイビングキャッチで好捕するなど球際でも強いプレーを魅せます。肩もまずまず強いのですが、少々送球に雑な面が観られるなど粗い部分が残ります。しかしこちらも、今後の取り組み次第では守備でも存在感を示せる可能性を秘めています。

 現状は、走力・守備力 ともに上手いレベルにまでは達していない荒削りな感じがします。しかし元々の走力・地肩などもあり、攻撃的なプレースタイルの選手だけに、守備・走力でもアピールできるレベルになっても全然不思議ではないアスリートタイプです。





(打撃内容)

 この秋は、4本塁打・10打点 と大爆発のシーズンとなりました。それでも打率.310厘と、けして大学野球としては高い打率ではないように、確実性に課題を残します。

<構え> ☆☆☆ 3.0

 前の足を引いてカカトを浮かし、グリップは高めに添えて肘を胸に付くように身体に近づけて捕手側にバットを引いて構えます。腰をしっかり据えるというよリも背筋を伸ばし、バランスは並ぐらい。しかし両眼では前をしっかり見据えられており、癖のある個性的な構えではあります。

<仕掛け> 平均

 投手の重心が沈み込み底に到達するあたりで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と対応力を兼ね備えた、中距離打者や勝負強さを売りにするポイントゲッターに多く観られる始動です。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を軽く上げて、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもそれなりに対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプなのでしょう。

 踏み込んだ前の足は、インパクトの際にもある程度止まって我慢できています。そのため逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことはできると思いますが、払うような感じでスイングしています。ひょっとすると膝が硬く、低めの球を苦手にしている可能性があります。

<リストワーク> ☆☆☆ 3.0

 構えた時からバットを引いており、打撃の準備である「トップ」を作るのは早めです。そのため速い球に、立ち遅れる心配はありません。その一方で、あらかじめグリップを捕手側に引いて構えていると、リストワークが硬くなって柔軟性に欠けるきらいがあります。彼の打撃が粗くみえる要因の一つに、この部分の力みが大きいのかもしれません。特徴としては、非常にトップの際に深くバットを引いて構えられているということでしょうか。これによって弓矢の弓を強く引くがごとく、大きな反発力を生み出せます。

 バットの振り出しに関しては、けしてインサイドアウトに内からバットが出てくるわけではありません。それでも外の球に対しては、ドアスイングというほどではなく、大きなロスというほどではないように思います。インパクトの際にもヘッドはそれほど下がっておらず、打ち損じが多そうというほどでもないようには見えます。

 また内角をさばくときも、肘を身体につけるぐらいたたんでスイングできており、バットの出が良い方ではないのですが、甘めの内角球ぐらいならば引っ張って巻き込める技術がありそうです。打球も、どの方向にも大きなのを飛ばせますので。それほど技術で運んでいるというよりは、やはり肉体のポテンシャルが高いからという感じはしますが。

<軸> ☆☆★ 2.5

 足の上げ下げはそれほどでもないのですが、自分からボールを追いかけてしまうのか? 頭は結構動いているように見えます。身体の開きはなんとか我慢できているものの、軸足の形が崩れてスイングしており、この辺が打撃の波が激しい要因になっているのかもしれません。

(打撃のまとめ)

 かなり癖のある打撃をする選手なので、それを修正できるコーチがいるのかどうか? というのも気にはなります。技術よりは、感覚でプレーしている感じなので、確実性に課題を残します。その一方で、非常に好調時には爆発的な打撃をする特徴があります。特に西武みたいな球団に入ったことは、彼にとってプラスに働くのではないのでしょうか。


(最後に)

 走攻守全てに荒削りで、確実性が課題が残る選手だと思います。しかしその潜在能力は高そうで、うまく引き出すことができれば三拍子揃った一流選手になれる可能性があります。タイプ的には、駒大の先輩である 江越 大賀(阪神)に近いと思いますが、一度調子が崩れると長く引きずる彼に比べると、結構イケイケという感じの選手でマインド的にはプロ向きだとみています。西武の分厚い打線に入っても、数年後には存在感を示して行けそうな楽しみな素材ではないのでしょうか。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2020年 秋季リーグ戦)