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牧 秀悟(DeNA)二塁手のルーキー回顧へ







牧 秀悟(中央大4年)二塁 178/83 右/右 (松本第一出身) 
 




 「良い意味であまり変わっていない」





 3年時から、大学ジャパンで4番を務めてきた 牧 秀悟 。特に試合を観る感じでは、目に見えて今年になって何か変わった印象はない。しかし、昨年並のパフォーマンスを示せれば、充分に上位指名を意識できる力を持っていた。


走塁面:☆☆☆ 3.0

 一塁到達タイムは、右打席から4.3秒前後。これを左打者に換算すると、4.05秒前後に相当し 中~中の上 ぐらいです。リーグ戦でも毎シーズン1,2個の盗塁を記録していましたが、唯一行われた秋季リーグ戦では3盗塁を記録しました。けして、足を売りにする選手ではありませんが、けして動けない選手でも無ければ、走塁を蔑ろにするようなプレーヤーではありません。

守備面:☆☆☆ 3.0

 グラブさばきが上手いとか、守備範囲が凄いとか、そういった上手さは特に感じられません。しかし、打球の処理は丁寧で、雑なプレーをしないところは良いところ。肩も悪い選手ではありませんし、二塁でも許容レベルぐらいの選手にはなれると思います。仮に守備でアドバンテージを見出すならば、三塁あたりではないかとは思います。しかし打力のあるセカンドは、実に貴重な存在なので、できればセカンドで活躍欲しい一人です。


(打撃内容)
 
 生粋のアベレージヒッターでも、天性の長距離砲でもありません。パワフルな打撃はしますが、甘く入った球を逃さず叩く、好機に強いポイントゲッタ です。ラストシーズンでは、10試合 2本 8打点 打率.333厘 でした。しかしこの打率は、全体で3位の高打率でした。パッとみ、昨年との違いがわからなかったので、フォームを分析して考えてみましょう。

<構え> ☆☆☆☆ 4.0

 前の足を軽く引いて、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスとまずまずです。打席では集中力が感じられ、少し固そうに見える構えですが、腕を軽く動かして揺らいで力まないようなく工夫も見られます。

<仕掛け> 平均

 投手の重心が沈みきったあたりで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。この仕掛けは、ある程度の確実性と長打力をバランスよく兼ね備えた、中距離打者や勝負強さを売りにするポイントゲッターに多く見られます。まさに、彼のプレースタイルと合致しているのではないのでしょうか。 この始動のタイミングも、昨年から同じです。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を引き上げて回し込み、真っ直ぐ踏み込んできます。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプなのかと。

 昨年からの成長は、踏み込んだ前の足がしっかりブレずに止まるようになったこと。これにより、外に逃げてゆく球や低めの球にも、開きを我慢してついて行けるようになりました。昨年は、上半身の強い振りに対し下半身が受け止めきれない場面が見られました。しかし今は、上半身と下半身のとのバランスの取れたスイングになっています。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形をつくるまでは自然体で、力み無くボールを呼び込めています。あとは、バットを引くのが遅れないようにだけ注意したいところです。バットの振り出しは、それほどインパクトまで遠回りにはなりません。インパクトの際にも、バットの先端であるヘッドも下がらず、広い面でボールを捉えられています。インパクト後も、スイングの弧が大きくしっかり振り切れています。彼の良さの一つに、インパクト時の押し込みが素晴らしさがあります。そのため、力を一点に集約され強烈な打球を生み出せます。

 それでも、それほどボールを遠くに運ぶという打者には見えません。元々内角の球に対しては、上からインサイドアウトにバットが出てくる選手なので、引っ張って長打に結びつけるのが上手い選手。昨年は内角は良くても、外角に少し弱さがありました。しかしそのへんも、内外角満遍なく打てるスイングに変わりつつあります。打てる球を逃さないスタイルから、厳しい球にもある程度対処できる幅は出てきたように感じます。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げはありますが、目線の上下動は大きくはありません。身体の開きも我慢でき、軸足の内モモの筋肉にも強さが感じられます。ここが、強烈な打球を生み出す原動力になっています。

 少しスイングあとに、軸足が前に傾いてツッコミガチなっている。この点は、昨年からあまり変わっていない。ステップを狭めにとるために、腰の回転は促せる反面、打撃の幅は狭くなりがちなのではないかと少し気になる部分ではあった。

(打撃のまとめ)

 踏み込んだ足元が、インパクトの際にブレずに止まるようになったのが最大の成長かと。また真ん中~内角寄りの球を引っ張るのが得意だった打撃が、外角の球に、開きを我慢してスイングできるようになってきました。そういったコースに対する対応力は、昨年よりも増した印象があります。

 あとは、ステップが狭く早く地面を捉えがちなので、もう少し着地まで間が取れると、緩急への幅も広がってくるのではないかと思われる。打てる球を逃さないだけでなく、自分の打てる球をもう少し広げて行きたいところは残っている。


(最後に)

 人間的にもナイスガイであり、強打者でありながら丁寧さを忘れないところは良いところ。プレーに手抜き感がなく、安定した高いレベルのプレーが期待できそうだ。けして凄みのある素材ではないが、獲得して後悔はさせない、そういった選手ではないかと。2割8分・20本打てる、強打の二塁手に育つことを、期待してやまない。


蔵の評価:☆☆☆☆ (1位指名級)


(2020年 秋季リーグ戦)






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牧 秀悟(中央大3年)二塁 178/80 右/右 (松本第一出身) 
 




「典型的なポイントゲッター」 





 天性の長距離砲でも、生粋のアベレージヒッターでもない 牧 秀悟 。ではどんな選手なのか?と訊かれれば、典型的な勝負強さを売りにするポイントゲッターという応えになるだろう。大学JAPANの4番を務め、日米野球ではその役割をしっかりこなすことで株をあげた。


(守備・走塁面)

 一塁到達タイムは、右打席から4.3秒前後。これを左打者に換算すると、4.05秒前後に相当し 中~中の上 ぐらいです。リーグ戦でも毎シーズン1,2個の盗塁を記録しているようなので、全く走る気がないわけでもなければ、動けない選手でもないことがわかります。ただし、プロで足を売りにするとかそういったプレーヤーでは無さそうです。

 セカンドの守備は、なかなか動きも良く丁寧です。難しい球を捕ってから送球が乱れるなど、本当の地肩があるのかは少し疑問を持っています。それでもサードやショートもできる選手なので、弱いということはないとは思いますが。プロでも鍛えれば、 中 ~ 中の上 ぐらいの二塁手ドにはなれるのではないのでしょうか。彼に求められるのは、打てるセカンド 。その期待に、応えうる人材であるのは確かなのでしょう。伊藤友希也(立正大-DeNA)が無理やり二塁をやっていたのとは、少し趣が違うと思います。





(打撃内容)

 難しい球を打つというよりも、甘い球を逃さず叩くタイプの打者ではないのでしょうか。打球は広角に飛ばせ、プロで言えば20本前後を目指す中距離砲だと考えられます。それでも戦国東都において、3年春は打率.400厘で首位打者。3年秋も.364厘でリーグ3位と安定した成績を残し、打点も14点をずつ叩き出した勝負強さが光りました。

<構え> 
☆☆☆☆ 4.0

 前の足を軽く引いて、グリップの高さは平均的でバットを立てて構えます。腰の据わり具合、両眼で前を見据える姿勢、全体のバランスと取れていて、自然体で良い構えではないのでしょうか。

<仕掛け> 平均

 投手の重心が沈みきったところから動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。この仕掛けは、ある程度の対応力と長打力を兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く見られる仕掛けです。まさに、彼のプレースタイルに合致しています。

<足の運び> 
☆☆☆ 3.0

 足を上げてまわし込み、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応できます。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも幅広く対応したいタイプなのでしょう。

 気になるのは、インパクトの際に足元が止まらずに動いてしまうことが多いこと。これによりロスが生じ、甘い球を打ち損じることが結構気になりました。このへんが、引っ張る時以外にはピタッと止まるようになると、いよいよ付け入る隙きがなくなり凄みが出てくるのではないかと思います。現状は、上半身の強い振りに下半身が負けてしまうことが少なくありません。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力み無くボールは呼び込めています。スイングを見ていると、実はインサイドアウトでバットを最短距離で振り下ろして来るタイプ。そのため真ん中~内角寄りの球をうまくたたんでさばくのは上手い選手です。

 その一方で、外角寄りの球に対しては、バットのしなりを活かしたスイングではないので意外に長打は望めないのではという気がします。恐らくセンターバックスクリーンあたりの叩き込む打球は、引っ張る感覚で振ったものがセンター方向に飛んだだけなのではないかと感じました。

 それでもボールを捉えるときは、バットの先端であるヘッドは下がらず広い面でボールを捉えています。ボールに角度をつけて飛ばすというよりも、より広い面積でボールを捉えてフェアゾーンに飛ばすタイプなのではないのでしょうか。ボールを捉えたあとは、大きな弧を描くスイングで、強烈な打球を生み出すことはできています。あくまでも長打は、引っ張る感覚で振った時のものといった気がします。

<軸> 
☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げはそれなりで、目線の上下動も可も不可もなし。身体の開きが充分に我慢できていないことが多いく、そういったときは軸足の形が前に突っ込んだり崩れている。空振りをしても、型が崩れないスイングを心がけたい。

(打撃のまとめ)

 強打者タイプに見えるのだが、意外に対応力重視で確実性を重んじたスイングになっている。その割に足元が不安定なところがあり、甘い球を打ち損じることも少なくない。またそういった打撃が起こりやすいのは、かなり引っ張る打撃を好むので足元を開放する機会が多いからではないのだろうか。引っ張るつもりの球が、意外に外角に来てしまって無理なスイングになってしまったとか、そういったことで打ち損じが起きる要因かもしれません。基本的に、内角寄りの球をうまくたたんで打つのは上手い打者なので。


(最後に)

 プロでショートとなると厳しそうだが、二塁・三塁のならば充分ありだろう。特に二塁手としての適性は確かなので、「打てる二塁手」が欲しいという球団には魅力的な素材ではないのだろうか。最終学年も大きな不調に陥らなければ、2位前後の指名も充分期待できる、上位候補となりそうだ。


(2019年 神宮大会)