20dy-18





栄枝 裕貴(阪神)捕手のルーキー回顧へ







榮枝 裕貴(立命館大4年)捕手 180/81 右/右 (高知高出身) 
 




 「自分の感性を大切に」





 とかく送球ばかりが注目されがちな 榮枝 裕貴 。しかし、キャッチングを含めたディフェンス面や打撃技術など、優れた資質を兼ね備えている。ただしここから先の世界では、型にはまることなく、自分で自分に合ったものを選択して行ける感性・感覚が一流選手になれる別れ道になるのではないのだろうか。


(ディフェンス面)

 それほど細かいところまで意識がゆくという感じではないのですが、適度に周りに指示を出せる司令塔といった感じがします。特にキャッチングを観ていると柔らかさがあり、それでいてミットがブレない捕球ができます。ワンバウンドするような球にも、スッと自然にミットが下から出せますし、打球への反応やフットワークも好いです。そのためボールまわしもスムーズで、守る方とはしては守りやすい捕手なのではないかと思います。

 スローイングも、地肩に頼ることなく捕ってから素早く、しっかり型を作って投げるので球筋が安定しています。1.8秒前後で投げられるスローイングは、プロに混ぜても最上位クラスになるのではないのでしょうか。リードやきめ細かさという部分ではまだまだこれからですが、ディフェンス全般には充分にプロの素材だと評価できます。ちなみに高校時代は、ミットを持っていない方の腕が構えた時に身体の陰に隠れていなくて、ファールで怪我をしないかと心配だったのですが、その点は大学でしっかり修正されていました。


(打撃内容)

 チームの正捕手になったのは、最終学年から。それだけに、1シーズン通してどのぐらいの打撃成績を残せるのか気になっていました。唯一行われた秋のリーグ戦では、10試合 0本 6打点 4盗塁 打率.256厘 という成績に。確認した関西大戦では、5番打者として出場。捕手ですが、4盗塁を残すなど脚力があるところも見逃せません。

<構え> ☆☆☆☆ 4.0

 前の足を軽く引いてカカト浮かせつつ、グリップは平均的な高さで構えます。腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランス取れており、力みもなく好い構えだと思います。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下る時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、対応力を重視したアベレージヒッターに多く観られる始動のタイミングです。高校時代よりも、幾分始動を早めて動作に余裕をもたせるようになってきました。

<足の運び> ☆☆☆☆ 4.0

 足を引き上げ回し込み、ほぼ真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」も取れており、速球でも変化球でもスピードの変化には幅広く対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも打ちたいタイプなのでしょう。

 踏み込んだ前の足はしっかり地面を捉えてブレないので、逃げてゆく球や低めの球にもついて行けます。高校時代からオーソドックスな足の使い方で、大きな欠点は見当たりません。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形に入るのは自然体で力みはないのですが、立ち遅れないように注意したい。バットの振り出し自体は、上から振り下ろして来るものの、構えた時に投手側にバットを傾けて過ぎているために、ヘッドが遠回りしてインパクトまでスムーズに振り抜け無い。もう少しバットの傾きを減らした方が、ヘッドの出がスムーズになるように思える。

 それでもインパクトの際にはヘッドが下がらないので、広い面でボールは捉えられフェアゾーンには飛びやすい。ただしあまりにヘッドが下がらないことを意識しすぎているのか? スイングのスムーズさが損なわれており、それよりも自分が振り抜きやすいスイングでしっかり振れることを意識した方がいいのでは?と思えてしまう。

<軸> ☆☆☆☆★ 4.5

 足の上げ下げはそれなりだが、目線の上下動は非常に小さく安定。身体の開きも我慢でき、振り終わったあとも軸足が地面から真っ直ぐ伸びて安定している。軸が安定していて、調子のムラは少ないのではないのだろうか。

(打撃のまとめ)

 ヘッドスピード自体も鋭いし、技術的にもしっかりしている。そういった意味では、打撃の潜在能力も悪くないようには見える。しかし、早いカウントでも甘い球をあっさり見逃し、追い込まれてボール球に手を出してしまうなど、打席でのアプローチにはもう少し工夫が欲しい気がする。またあまりに型にこだわり過ぎて、自分が振りやすい形でまだ振れていない感じで、自分の感性や感覚を大事にすることも必要なのではないのだろうか。


(最後に)

 なんとなく観ていると、同じ関西学生リーグに所属していた 小林 誠司(同志社大-巨人)の大学時代を思い出します。ただし小林は、捕手としては曲者でその点まだ 榮枝 には、そこまでの嫌らしさはプレーに感じられません。そういった部分を、プロで磨けられれば、プロでも正捕手である 梅野 隆太郎 を脅かす存在になってゆくのではないのでしょうか。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2020年 秋季リーグ戦)










榮枝 裕貴(立命館大3年)捕手 179/79 右/右 (高知高出身) 





 「控え捕手ながら全日本候補」





 在籍する立命館大では、3年秋まで控え捕手だった 榮枝 裕貴 。それでも強肩ぶりが買われ、秋の全日本代表・松山合宿に招集されるなど、期待の大きさが伺われる。学生球界屈指とも言われる強肩捕手で、実際どのような位置づけになりそうなのが考えてみた。


(守備面)

 二塁までの送球は、1.8秒前後。それもランナーが滑り込んでところを強く意識した送球で、コントロールも安定。大学に入ってからの捕手としてのプレーが確認できないが、高知高校時代の映像を見直してどんな選手なのか考えてみた。ミットしっかり示す選手で、そのミットを地面につけるような癖はありません。キャッチングもブレることなく捕球し、ボールの勢いに押されることはありませんでした。ただしミットを持っていいない腕が身体の陰に隠れていないので、ファールチップで怪我をしないかと心配です。その辺が、大学では直っているのかは気になります。

 当時の映像を見ると、打球への反応も良く集中してプレーしているのがわかります。またしっかり周りにも指示を出せるなど、司令塔としての役割も果たしていました。しいて気になる点をあげれば、投手との兼ね合いもあると思いますが、内角を執拗に使いたがるリードが目につきました。一見内角を使うと幅広くリードしているように見えるのですが、一つ間違えると痛打を浴びやすいリスキーなリードにもなりがち。よくよく内角を使うときにはその必要性と使うタイミングを考えて使わなければなりません。彼がこれだけの能力がありながら3年生までレギュラーを奪えなかったのは、リードの信頼度というのも一つあるのではないかというのは感じます。そのへんが最終学年において、どうなっているのかは見極めたいポイントではあります。少なくてもスローイングに関しては、入った球団でも1番になれる可能性があります。





(打撃内容)

 3年春の大学選手権では、5番・DHで出場。普段はDHがない関西学生リーグだけに、控えだとどうしても打席が少なくなりがち。それでも通算で4割の打率を残すなど、打力も一定レベルあるのが魅力です。フルでリーグ戦に出場するようになったときに、どのぐらいの打撃成績を残せるのかも注目したいポイントです。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 ほぼ両足を揃えたスクエアスタンスで、前の足のカカトを浮かして構えます。グリップはやや低めに添えて、腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスとしても、それなりといった感じがします。

<仕掛け> 平均的

 投手の重心が沈みきったところで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と長打力をバランスよく兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く観られる仕掛けです。

<足の運び> 
☆☆☆☆ 4.0

 足を上げて、まっすぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。まっすぐ踏み出すので、内角でも外角でも同じように対応したいという意識が感じられます。

 踏み込んだ足元は、インパクトの際にもブレずに止まっています。逃げて行く球や低めの球に対しても、開きを我慢して対応できます。下半身の動きは、非常にシンプルな感じがします。

<リストワーク> 
☆☆☆ 3.0

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力みなくボールを呼び込めています。ただしバットを引くのが遅れがちなので、速い球に立ち遅れる心配があります。またバットの振り出しは、少しインパクトまで遠回りに軌道。そのため、確実性という意味では少しポイントが後ろになりがちでどうでしょうか? 

 それでもインパクトの瞬間にはヘッドが上がってきて、広い面でボールを捉えています。タイミングさえあえば、打ち損じが少なくフェアゾーンに飛びやすいスイングです。けしてスイングの弧が大きいとか、フォロースルーを使ってボールを遠くに運ぶタイプではありません。それほど、長打で魅了するタイプではないように見えます。

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 目線の上下動が少なく、錯覚を起こすことなく球筋を追うことができています。開きも我慢できていますし、軸足も地面からまっすぐ伸びて軸回転でスイング。好不調の波は、比較的少ないのではないのでしょうか。

(打撃のまとめ)

 タイミングの合わせ方と上半身の使い方は平凡ですが、下半身の使い方は実にシンプルで軸も安定しているところは評価できます。スイング軌道をもう少し修正し、トップの形成が遅れないにようにすれば、より打ち損じの少ない打者になるのではないのでしょうか。


(最後に)

 話を訊いている限りは、結構深く考えて一つ一つのプレーに取り組めている印象を受けます。そういった意味では、リード面などもまだまだ良くなる下地があるように感じます。それ以外のディフェンス面に大きな破綻はないので、一定レベルの捕手までは行くかもしれません。あとは、スローイングを全面に出してアピールできるかでしょう。

 打撃も一定レベルにはあり、凄みは感じませんがシンプルで成績を残せる下地はあります。プロでレギュラーを奪うほどの圧倒的なスケールは感じられませんが、大学からのプロ入りは充分意識できる素材ではないのでしょうか。実戦で刺せる捕手が欲しいという球団にとっては、魅力的な人材にうつるかもしれません。


(2019年 大学選手権)