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五十幡 亮汰(日ハム)外野手のルーキー回顧へ







五十幡 亮汰(中央大4年)中堅 171/67 右/左 (佐野日大出身) 
 




 「歴史的に速い」





 普通に真っ直ぐ走らせたら、過去のプロ野球選手含めても一番速いのではないかと思われる 五十幡 亮汰 。中学時代は、全国大会で100メートル・200メートルで優勝。この時、今をときめく短距離走者である、サニーブラウン に勝ったことで知られている。そういった短距離界のホープが、高校から野球を選択したというのは、まさに歴史的な快挙とも言えよう。さらに、その走力を存分に生かしたプレーは魅力的だ。


走塁面:☆☆☆☆★ 4.5

 一塁までの塁間は、コンスタントに3.8秒前後を刻んでくる。このタイムは、プロ野球界でも間違いなくトップクラス。一塁までの塁間も速いが、それ以上に二塁打・三塁打のスピード感は群を抜いている。特にインステップして踏み込んでから走り出す選手なので、一歩目のスタートが遅れる選手でもある。それでも球界トップクラスの脚力を出せる能力は、頭一つ抜けた走力の持ち主だと言えよう。

 昨秋9盗塁を決め盗塁能力にも磨きがかかったが、今年唯一行われた秋季リーグでは10試合で5盗塁と平凡。盗塁センスや能力が低いとは言えないが、いきなり球界トップクラスかと言われると、このへんはまだ学ばないと行けないことことも少なくはないだろう。彼の場合求められるのは、相手に徹底マークされても盗塁を決められるかどうか? そういった次元を、あえて求めたくなる。

守備面:☆☆☆☆ 4.0

 前後・左右共に、この異次元の脚力を活かして守備範囲が広い。打球の一歩目の勘の良さや反応、球際のキャッチングがそこまで優れているかどうかは、まだ特別なものは感じられなかった。また昨年は中継まで緩く返球するのが気になった、しかしそのへんはだいぶ今年は改善されていた。また遠投では、低く鋭い返球はプロでも売りにできるレベル。肩への認識は、私が過去抱いていたものが誤りだったことを痛感させられた。将来的には、名手となり得る資質を持っていることは間違いない。


(打撃内容)

 打撃に関しては、けして箸にも棒にもといった感じではあるものの、何か特別のものを感じるかと言われると疑問は残る。一割台に低迷するシーズンこそ殆どなかったが、3割5分を越えるような爆発的な数字を残したこともない。この秋も、10試合で .308厘と大学野球としては平凡な数字で終わっている。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 前の足を軽く引いて、グリップを高めに捕手側に引き気味に添えている。腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスは、それなりといった感じ。一見少し固そうに見える構えなのだが、微妙にバットの先端を動かし揺らぐなど、自分のリズムでは打席に立てています。

<仕掛け> 平均

 投手の重心が下がりきったところで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く見られる仕掛けです。昨秋は「遅めの仕掛け」だったので、若干始動のタイミングを早めて、動作に余裕をもたせました。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を軽く上げて、ベース側に踏み込んできます。始動~着地までの「「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。ベース側に踏み込んで来るように、外角への意識が強いようです。

 また踏み込んだ足元は、インパクトの際にブレずに我慢。逃げてゆく球や低めの球にも、喰らいついてゆくことはできています。気になるのは、左打ちの足を売りにする打者がインステップして踏み込んでしまうと、どうしても最初の一歩目が遅れて率が残り難い傾向に。長打を売りにするような選手は良いのですが、彼のように足を活かしたいタイプならば、せめて真っ直ぐ踏み出すぐらいで良いのではないのでしょうか。

<リストワーク> ☆☆☆☆ 4.0

 「トップ」に近い位置にはグリップを添えていますが、そこから更に少し後ろに引くので「トップ」を作るのは自然体です。逆に動作が、立ち遅れないように注意したい。

 バットの先端であるヘッドが多少投手方向に倒れすぎな感じなので、バットの出が悪いです。振り出し自体にはそれほどロスは感じられず、インパクトの際にもバットの先端であるヘッドも下がらずに広い面でボールを捉えています。インパクト後のスイング軌道も大きく、最短距離で捉えるというよりもある程度バットのしなりを活かそうという意識はあるようです。

 内角の球に対しも、脇を閉じて対応できて下手ではありません。ただし現状は、かなりインステップして踏み出すぶん懐が窮屈になり、あまりフェアゾーンにしっかりした打球が飛ばせない印象があります。

<軸> ☆☆☆☆ 4.0

 目線の上下動は小さく、錯覚を起こすなくボールを追うことができています。身体の開きは我慢でき、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて軸は安定してスイングできています。調子の波は、比較的小さいのではないのでしょうか。

(打撃のまとめ)

 外角の低めの球でも捉えることができ、打球も想像以上にしなりを生かしたスイングで飛んで行きます。どうしても内角が窮屈など、打てる幅が偏っている分確実性はさほど高くはありませんが、ミート力が低いとか、ひ弱な感じは薄れてきました。当てようというよりも、強く振り抜くことに主眼が置かれたスイングです。

 けして、プロで即レギュラーを取れるほど特別なものは感じられませんが、全く打撃が通用しないということもないのではないのでしょうか。ただし打撃に関しては、あまり感性を感じさせてくれる選手ではないので、何処まで自分の打撃を膨らませて行けるのか? 打つことで苦労して、伸び悩む危険性は否定できません。


(最後に)

 盗塁の技術・守備ではキャッチング・打撃では内角のさばきを中心とした打撃の幅など、まだまだ物足りないところは否めません。ただし、その辺を目をつぶってでも我慢して起用するのか? しっかり結果を残せるようになってから、一軍で起用するのかはわかりません。打撃の能力が何処にあるのかは掴みづらいのですが、一軍でも2割5分ぐらい打ってくれるようだと、守備や走塁でお釣りが来るぐらいの選手だと思います。2年目ぐらいから、躍動する姿を期待してみたいものです。


蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級)


(2020年 秋季リーグ戦)










五十幡 亮汰(中央大3年)中堅 172/67 右/左 (佐野日大出身) 





 「サニーブラウンに勝った男」





 五十幡 亮汰 のことを語られる時に、枕詞のようにこの形容が付いてくる。むしろ私から言わせれば、中学時代に100メートルと200メートルの世界で、全国2冠に輝いたほどの有望なアスリートが、よく野球を選択してくれたという思いが強い。その評判どおり、とにかく足が速いのだ。


走塁面:
☆☆☆☆★ 4.5

 実際走りだす前から相手にプレッシャーの賭けられる走力があり、一塁までの塁間をコンスタントに3.8秒台で走り抜けられる脚力がある。しかしその絶対的な脚力の割に、シーズンの盗塁は2,3個と結果を残せないシーズンが続いた。しかし3年秋のシーズンで9盗塁を決めるなど、ようやくプレーの中でその脚力を思う存分に活かせるようになってきた。

守備面:
☆☆☆★ 3.5

 この脚力を活かした守備範囲は、かなり広い。ただし打球勘や球際での強さがそこまであるのか?と言われると、私は現状そこまで特別なものは感じない。そして強肩だと言われているが、私はプロを想定するとむしろ肩は弱い部類なのではないかと思う時がある。守備に関しては、最終学年に何度か生で確認してその強さを見極めて行きたい。実に送球が、弱々しく見えるのだ。





(打撃内容)

 外角低めの厳しい球に対し、当てられる技術がある。2年秋のシーズンでは、東都リーグでも打率.342厘をマーク。ひ弱さは感じられるものの、当てること自体上手く脆さは感じられない。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 前の足を軽く引いて、グリップは高くあらかじめ捕手側引いて添えられている。腰の据わり自体は良く、両眼で前を見据える形もできている。しかし全体のバランスとしてはあまりしっくり来ない感じで(本人がそれが良いのならば良いが)、まだビシッと決まってこない感じはする。

<仕掛け> 遅め

 投手の重心が沈みきって、前に移動する段階で動き出す「遅めの仕掛け」を採用。ギリギリまでボールを見定めてから動き出すタイプで、彼の場合は生粋のスラッガーではなく天性のニ番打者なのではないのだろうか。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を軽く上げて、真っ直ぐ~インステップ気味に踏み込んで来る。始動~着地までの「間」がないので、狙い球を絞ってその球を逃さず叩く「鋭さ」が求められる。どちらかというと、意識は外角寄りなのではないのだろうか。

 踏み込んだ前の足がブレずに、止まっているところは良いところ。そのため低めの球や外角の球に対し、開きを我慢して左方向にきっちり流すことができている。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、始動が遅いぶん速い球に立ち遅れないようにしたい。バットの振り出しは、インサイドアウトではなく、バットのしなりを活かしたスイング。そのため当てにゆくというよりもきっちり振って来るので、捉えた打球は想像以上に飛んでゆく。

 逆に内角の球をどうやってさばくのだろうという興味もあり、この辺は最終学年でのチェックポイント。

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げが小さく、目線の上下動が非常に小さい。身体の開きも我慢できているし、軸足も粘り強く使えている。しいて気になる点をあげるとすれば、かなり足元が窮屈そうなので打撃の幅が狭そうなのと内角をうまくさばけるのだろうか?という疑問は残る。

(打撃内容)

 外角低めの難しい球でも当ててしまうミート力があったり、踏み込んだでバットのしなりをいかしたスイングなので打球も想像以上に飛んでゆく。けして足を活かして、ボテボテの打球を打って内野安打を稼ごうという打撃にはなっていない。

 当てるのは上手いものの、やはり本当に速く強い球への対応や内角のさばきがどうなのか?というのが、今年のチェックポイントとしてみたい。


(最後に)

 守備でも上記で述べたように、打球勘・球際での強さ・肩などについては、最終学年で注意深く見極めて行きたいポイント。またマークされる中で、どのぐらい盗塁を決められるのかも楽しみなところだろう。

 まぁ走力に関しては、今のアマ球界でも屈指のものがあるのは間違いない。それにプロを想定した守備や打撃が、どのぐらい追いついて来るかではないのだろうか。いずれにしても大学からプロ入りする可能性は、かなり高いとみて良いのではないのだろうか。


(2019年 神宮大会)