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佐藤 宏樹(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ







佐藤 宏樹(慶応大3年)投手 179/73 左/左 (大館鳳鳴出身) 
 




 「力投派左腕」





 全身を振って、思いっきり投げ下ろしてくる 佐藤 宏樹 。秋のリーグ戦では、早慶戦の1試合に登板したのみで終わっている。肘痛からの回復に戸惑っているが、最終学年では能力爆発と行くのだろうか?


(投球内容)

 1年秋のシーズンでは、9試合に登板し防御率1.03で最優秀防御率に輝く。以後のシーズンでは、肘痛などもあり多くの登板はしていない。

ストレート 常時 145キロ前後~147キロ ☆☆☆★ 3.5

 ボール自体はかなりバラついて粗っぽいのだが、左腕から145キロ超えるようなボールをバシバシ投げ込んで迫力が感じられる。荒れ球ゆえに的が絞り難く、相手としては厄介なタイプ。1年秋のシーズンの時には、26回1/3イニングで8四死球と投球回数の1/3以下に抑えるコントロールも魅せていた。

変化球 スライダー・チェンジアップ ☆☆☆★ 3.5

 大きく曲がりながら沈むスライダーのキレが素晴らしく、この球でカウントを稼いだり空振りを誘ったりできるのは大きい。チェンジアップも投げるが、投球においてはほとんど観られない。速球とスライダーという圧倒的な球種があり、リリーフの時はこれだけでも好いという考えなのかもしれない。

その他

 クィックは、1.1~1.2秒前後と平均的。牽制もまずまず鋭いが、特に間を使ってとか微妙なところに投げて出し入れするとか、そういった投球術のうまさは感じられない。あくまでも勢いとボールの威力で勝負するタイプなのだろう。

(投球のまとめ)

 速球とスライダーの2つの球種は、プロでも十分通用する球ではないのだろうか。しかしコントロールはかなり荒れ荒れで、じっくり見られた時にはどうだろう?という疑問が残る。また肘痛の問題を未だ不安を抱えているのか? 登板が少ないのは気になる。プロ入りするためには、リーグ戦である程度投げられるところを実証しないと、なかなか指名しずらい状況にはある。


(投球フォーム)

 ランナーがいなくても、セットポジションから勢い良く足を引き上げてきます。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 お尻の落としは、やや甘さは残すものの全く三塁側(左投手の場合)に落とせていないわけではない。そのためカーブやフォークといった球種を投げられないわけでは、フォームの構造上は無さそうだ。

 「着地」までの足の逃し方も悪くはなくく、身体を捻り出す時間もそれなり。絶対的な変化球を習得できるのかは微妙だが、現状スライダーの曲がりが素晴らしいので、その点はあまり気にしなくて好いだろう。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内にしっかり抱えられており、外に逃げようとする遠心力は内に留められている。そのため左右の軸のブレは抑えられ、両サイドにはボールは散りやすいのではないのだろうか。

 問題は足の甲の押し付けが浅いので、浮き上がろうとする力を抑え込めずボールが上吊りやすいこと。「球持ち」も悪いとは思わないが、ボールを押し込むまでには至っていないようだ。そのため力を入れて投げると、ボールが抜けてしまうことも少なくない。

<故障のリスク> ☆☆★ 2.5

 お尻の落としに甘さは残すものの、それほどひどくない上にカーブやフォークなども見られないので気にすることはないだろう。しかし腕の送り出しに関しては、グラブを持っている肩が大きく下がり、ボールを持っている肩が上がっており肩を中心に負担の大きなフォームになっている。

 まして力投派でもあるので、疲労を溜めやすく疲労を溜めやすいフォームになっているのではないのだろうか。しかしこのダイナミックさが無くなってしまうと、この投手の魅力も半減してしまうというジレンマがある。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りもそこそこで、ボールの出どころも隠せている。そういった意味では、荒れ球も相まって打ち難いタイプではないのだろうか。

 その一方でダイナミックに身体を使っている割に、腕が投げ終わったあと身体に絡んで来ないのは気になる材料。またボールにしっかり体重が乗り切る前にリリースを迎えているので、どうしても上半身を強く振ることで勢いを出すというフォームになってしまっている。それがまた、執拗に身体に負担をかけているのかもしれない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」と「体重移動」に課題があることがわかった。そのへんが、勢いはあるが一辺倒な投球に見える大きな要因ではないかと。足の甲の押し付けやリリースの押し込みができないことで、ボールが上吊る点。腕の送り出しに無理があり、力投派で負担の大きなフォームなど、リスクの高い素材型といった印象は受ける。


(最後に)

 確かに左腕でこれだけのボールを投げられるという魅力はあるものの、故障への不安や制球の課題などもあり高い順位での評価はし難いのが現状。その辺の不安を、最終学年のパフォーマンスでいかに払拭できるかに懸かっている。プロ側としては、魅力を感じる左腕だとは思うので、内容次第では中位ぐらいでの指名があっても不思議ではなさそうだ。


(2019年秋 リーグ戦)