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宇田川 優希(仙台大4年)投手 184/95 右/右 (八潮南出身) | |
結局、最終学年での 宇田川 優希 を確認できたのは、春の慶応大とのオープン戦のみで終わってしまった。しかし残した成績や話を訊く限り、最終学年の宇田川選手は、目に見えてその後も良かったわけではなかったようなのである。特にスカウトが終結した、東北福祉大との直接対決。なぜかエースの宇田川は第一戦で先発せずに、第二戦での先発だった。多くのスカウトが肩透かしを食った形で、そのへんも最終チェックができなかった球団もあり、育成枠まで残る要因になったのではないのだろうか。 (投球内容) 大きな体から投げ下ろしてくるスタイルは、何処と無く「大魔神」こと、佐々木主浩(元ベイスターズ)を彷彿させる雰囲気があります。 ストレート 140キロ~140キロ台中盤 ☆☆☆★ 3.5 普段のまっすぐは、140キロ前半から力を入れた時に140キロ台中盤を記録するということが多くなっていました。下級生の時のような、150キロ近い速球をビシバシ投げ込むという凄みのある感じとは少し違う気がします。全体的にボールのバラツキが多い選手で、細かくコースに投げ分けるという感じではなく、ストライクゾーンの枠の中に力のあるボールを投げ込むといった感じです。 それでも指にかかった時のボールの勢い・球威は確かで、球速以上に威力がありますし、秘めたる能力はまだまだあるといった余力は感じさせます。 変化球 スライダー・フォーク・カーブなど ☆☆☆ 3.0 主な変化球は曲がりながら沈むスライダーで、この球でカウントを整えてきます。追い込むとフォークを積極的に使うのですが、この球が見極められて振ってもらえません。あくまでも、そういった球もあるといった感じです。さらに緩いカーブもたまに投げますが、投球の主はスライダーで、この球と真っ直ぐとのコンビネーションとみて良さそうです。三振は、高めに勢いのある真っ直ぐとスライダーで奪っているケースが目立ちます。 その他 クィックは、1.0~1.2秒ぐらいとバラツキがあり、これは意図的に投げるタイミングを変えたり、状況に応じて使い分けているかは不明です。ベースカバーへの入りなどは悪く有りませんが、フィールディングや牽制に関しては未だによくわかりません。 (投球のまとめ) 四死球で自滅するという危うさはあまり感じないのですが、ボールが先行することが多く少々リズムが悪いなと感じられる部分はあります。もっさりしている投手なので、調子が悪いとキレが悪くダルく見えます。その一方で、ウエートを活かし指にかかった時のボールの迫力には見るべきものがあります。そういった球が安定して投げられるようになれば、上位指名も間違いなかった素材ではなかったかと今でも思います。 (成績から考える) オフにフォーム分析をしたので、最終学年の成績から何か大きな変化があったのか考えてみたいと思います。ちなみに、唯一行われた秋季リーグ戦では 5試合 2勝1敗 32回2/3 23安 15四死 42三 防御率 2.20(3位) といった内容で、可もなく不可もなしといった感じでしょうか。 1,被安打は投球回数の80%以下 ◯ 最終学年での被安打は、70.6% と、充分に基準をクリアできています。しかし、70%以下の絶対的な領域ではないのと、最終学年までの3年間では、67.1% だったことを考えると、誤差かもしれませんが、若干数字を落としています。 2,四死球は投球の回数の1/3以下 ✕ 四死球率は、46.0% と、基準である投球回数の1/3(33.3%)以下と大きな隔たりがあります。実は通算の四死球は30個で、その半数の15個を最終学年の1シーズンで記録したものです。そのため最終学年までの3年間では 19.7% とかなり少なく、最終学年ではフォームのバランスを乱して恐れがあります。ですから最終学年の内容は評価できませんが、フォームの修正がプロ入り後できれば、充分に許容範囲の制球力を取り戻しても不思議ではありません。 3、奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 ◎ 32回2/3イニングで、42奪三振と、1イニングあたり 1.29個で、完全に投球回数を上回っています。通算でも 1.30個 を誇っており、三振のペースはほとんど変わっていませんでした。 4、防御率は1点台以内 △ 本格的に先発を任されるようになった3年春のシーズンには、0.64 でリーグ2位の好成績をあげます。しかし、3年秋には2.39(3位)、そして最終学年では 2.20(2位) と、リーグで圧倒的というほどの数字は残せていません。 (成績からわかること) この選手の成績をみると、リーグ戦に登場し始めた頃や本格的に先発を任されるようになった3年春ぐらいまでは、かなり圧倒的な内容をリーグ戦で示していましたし、実際凄みのある球を投げていたのだと思います。しかし、3年秋と4年秋の投球をみると、少しその投球に陰りが見えて、リーグ戦でも絶対的ではなかったのかなと。 ボールの勢いも、その時に比べると迫力が落ちたのではと思う部分はあります。微妙に体の状態だか、フォームの狂いが生じ調整できていなかったのではないかと考えられます。 (最後に) ただし、そのパフォーマンスの低下が、何処かが痛かったからという理由でなければ、プロの指導・環境で短期間に改善されても不思議ではありません。すなわち、上位指名クラスの迫力溢れる投球を取り戻せるのに、そうは時間がかからないのかと。ましてオリックスは、近年球速を引き上げられる指導法を確立しつつあるので、彼のポテンシャルを大いに引き出されて、常時150キロ台~中盤ぐらいを、連発できても不思議ではないかと思います。そういったことが可能なだけの素材であることと、まだまだ余力を感じさせることを考えると、育成枠での指名となってしまいましたが、高く評価しないわけには行きません。これだけの素材を、この順位で獲得できたのは、非常に大きいのではないのでしょうか。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2020年 春季オープン戦) |
宇田川 優希(仙台大3年)投手 184/95 右/右 (八潮南出身) | |
分厚い体格から角度良く投げ下ろして来る姿は、東北福祉大時代の 佐々木 主浩(大洋)を彷彿とさせる。後に「大魔神」として、球界を代表するクローザーとして、日米股にかけての大活躍。そんな偉大なる仙台の先輩と比較したくなるのが、この 宇田川 優希 なのだ。 (投球内容) ランナーがいなくても、セットポジションからゆったりと投げ込んできます。 ストレート 常時145キロ前後~MAX148キロ ☆☆☆☆ 4.0 春のオープン戦で見たときは、まだ余力を感じさせながらも92マイル・148キロを記録。もっと暖かくなれば、150キロ前後も連発できそうに見えました。球威・勢いも感じさせる迫力のある球で、ボールの威力は確かです。時々高めに抜けたり甘く入る投げミスはありますが、それでもアマレベルならば打ち損じてくれるだけの威力があります。ボールは大まかに、両サイドに散らせる程度。四死球は非常に少ないのですが、ストライクゾーンの枠の中では結構アバウトです。 変化球 スライダー・フォーク? ☆☆☆ 3.0 曲がりながら沈むスライダーとのコンビネーションがほとんどで、この球でカウントを整えてきます。他にも追い込むとフォークがありますが、それほど頻度は多くありません。大魔神・佐々木も、プロ入り後にフォークに磨きをかけ絶対的なものをしたように、宇田川もフォークを本当の意味でモノにするのはプロ入り後なのではないのでしょうか。 その他 クィックは1.2秒前後と平均的で、牽制はよくわからなかったが、ベースカバーはそれなり。「間」を意識して投げるというよりは、淡々と自分のリズムで投げ込んできます。 (投球のまとめ) 現状は、黙々と威力のある球をストライクゾーンに向けて投げこんでくるといったシンプルなもの。リーグ戦で優勝したり全国大会で活躍するためには、そこからもうワンランク深みのある投球を追求できるかに懸かっています。そういった、ただ投げるだけのピッチングから脱却できるのかが、今年のチェックポイントではないのでしょうか。 (投球フォーム) 今度は、フォームの観点から彼の将来像について考えてみましょう。一つ大きな特徴として言えるのは、外国人やサイドハンドの投手に多く見られるような、一塁側にステップするアウトステップをする傾向が強いフォームだということ。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足を地面に伸ばしがちなので、お尻への一塁側への落としはできていません。しかしフォーム後半にしたがって、徐々に一塁側へは落ちてきます。甘さは残すものの、カーブやフォークが投げるのに無理があるというほどではないように思います。 「着地」までの粘りは並みで、身体を捻り出す時間が充分というほどではありません。こうなるといろいろな変化球が投げられないわけではないのですが、武器にするほどの切れや変化を身につけられるかは疑問が残ります。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後までしっかり内に抱える意識は無さそうなのですが、結果的には近くに留まっています。そのため外に逃げようとする遠心力はある程度抑えられ、フォームの左右のブレは大きくはなさそう。そのことが、ある程度両サイドに散らせるコントロールに繋がっているかもしれません。 ただし足の甲での地面への押しつけは浮きがちなので、浮き上がろうとする力を抑え込めずボールが抜けてしまうことも少なくありません。それでも「球持ち」は比較的良く、上手く押し込める時に低め膝下にゆくことも少なくありません。現状は、その再現性が低いので高低のバラツキは大きいのでしょう。このフォームでも四死球が少なく済んでいるので、「球持ち」がよく手元である程度ボールを制御できているからではないのでしょうか。 <故障のリスク> ☆☆★ 2.5 お尻の落としに甘さはあるものの、カーブやフォークが投げられないというほどではありません。またフォークへの依存度もそれほどではないので、現状肘への負担は少なめなのではないのでしょうか。 しかし気になるのは、執拗に腕を高い位置から振り下ろして来る腕の送り出しです。ボールを持っている方の肩は上がり、グラブを持っている方の肩が下がってしまい、肩への負担は相当なものだと考えられます。それでもこの投手、実は腕の振りがさほど良くありません。力投派でもないので、疲労は溜め難いのではないかと見ています。いずれにしても、身体のケアには充分気をつけて欲しいフォームです。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りは平凡で合わせ難いフォームでは無さそうなのだけれども、ボールの出どころは隠せているので甘く入らなければ痛手は喰らい難いのではないのでしょうか。実際にはボールの勢いが勝っているので、甘い球が来ても打ち損じてくれているいる部分は大きいかと。そのへんが、レベルの高いところに混ざった時にどうでるのか見てみたいところです。 振り下ろした腕があまり絡んで来ないように、フォームに勢いがないのは空振りを誘うという意味では気になる材料。アウトステップすることでエネルギーをダイレクトにボール伝えきれていないロスは感じられますが、それでも球持ちが好いことである程度重心をボールに乗せて投げることはできています。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」にもう少し粘りが欲しいのと、アウトステップすることでのエネルギーロスは気になる材料ではあります。ただしここをいじってしまうと全然フォーム全体が変わってくるので、安易にいじらない方が好いとも思えます。 足の甲の押し付けが浅くボールが上吊りやすいのと、肩への負担が大きなフォームであり、かつ将来的に武器になる変化球を習得できるのかは微妙なフォームであるのは確かです。フォームの観点から言うと、かなりリスキーな素材だと言えるでしょう。 (最後に) 投球の迫力・ボールの威力は確かなものの、技術的にはリスクの高いフォームをしているという、この両方を天秤にかけてどうみるかではないのでしょうか。順調に最終学年も能力の違いを魅せてくれれば、1位指名が有力は選手なのは確かでしょう。最終学年のあたりから投球が大人しくなってしまった先輩の 馬場皐輔(阪神)のようにはならず、最終学年も攻め続けて欲しいところです。大学球界屈指のロマン枠として、今年一年間ワクワクしながら見守って行きたいです。 (2019年 春季リーグ戦) |