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佐藤 奨真(ロッテ)投手のルーキー回顧へ







佐藤 奨真(専修大4年)投手 177/78 左/左 (関東一出身) 
 




 「あの佐藤がプロ入りするとは」





 関東一高時代にはエースナンバーは背負っていませんでしたが、まとまりのある投球をする左腕としてレポートを作成したことがあった 佐藤 奨真 。確かに高校生レベルでは良いサウスポーではあったが、まさかプロ入りするまでの投手になるとは、当時思ってもみなかった。あれから4年、佐藤はどのような進化を遂げてきたのだろうか?


(投球内容)

 ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。何か大幅にパワーアップして、ピッチングスタイルが変わったとかそういったことはなさそうです。ポンポンと、テンポ良く投げ込んでくるまとまりのある好投手。

ストレート 常時135キロ前後 ☆☆ 2.0

 球速は常時130キロ台中盤ぐらいで、頑張って140キロ強ぐらい。ドラフト指名される左腕としても、かなり球速の面では劣っているのではないのだろうか。高校時代から投球にまとまりはあったものの、それほど繊細なコントロールがあるタイプではなかった。そのへんは、4年秋のシーズンにおいても40回2/3イニングで14四死球であり、四死球率は 34.5% と、投球回数の1/3以上なところからも伺われる。それでも両サイドに散らすコントロールはあり、打者の内角を積極的に突いて来る攻めの投球は観られる。

 高校時代は、球速の無さよりも、置きに来るような球で訴えかけてくるようなものに欠けていた。その点は、幾分解消されてきているのではないのだろうか。ストライクゾーンにポンポン投げ込んでくるが細かいコースの投げ分けはなかったのも、だいぶストライクゾーンを広く使ってコースに散らすようにはなってきている。

変化球 カットボール・スライダー・チェンジアップ・カーブなど ☆☆☆★ 3.5

 高校時代は、カーブ・スライダー を投げ込んでいた記憶が。しかし今は、速球との見分けの難しいカットボールで微妙に芯を外す投球が目立つ。それにスライダーなど織り交ぜたり、チェンジアップなども使って来るといった感じだろうか。そういった球を低めやコースに投げ分ける技術はあり、空振りを奪えるような絶対的な武器はないものの痛手は喰らい難い。40回2/3イニングで30奪三振なので、1イニングあたり0.74個と数字の上でも多くはない。基本は、コースや低めに丹念に集めて打ち損じを誘うというスタイルなのだろう。

(投球のまとめ)

 高校時代よりも、コースの投げ分けやカットボールなどで投球の幅を広げてきた印象はある。しかし驚くほど球速が上がったとか、何か大きな武器を得たわけではなく、ベースとなるものはそれほど変わっていないのではないかと。

 ただしマウンドさばきが良く、ポンポンと投げ込むリズム感があり、そういった部分で元となっているものは投手らしく優れている。あとは、プロ入り後持っているものを今後何処まで広げて行けるかではないのだろうか。そのためにはどうしたら良いのか? 技術的な観点から考えて行きたい。


(投球フォーム)

 セットポジションから、足を静かにあまり高くは引き上げては来ません。また軸足一本で立った時に真っ直ぐ立ち気味なのですが、膝にあまり力みの感じられない珍しい立ち方です。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻の三塁側(左投手の場合は)への落としには甘さが残ります。したがって身体を捻り出すスペースは充分とは言えず、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種の変化は鈍くなりがち。

 しかし「着地」までのタイミングは適度に粘れており、身体を捻り出す時間はある程度確保。武器になるほどの変化球は習得できていませんが、キレや多彩さはある程度確保できているようには見えます。

<ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで身体の近くに留めることができており、外に逃げようとする遠心力を抑え込めています。そのため軸がブレ難く、両サイドへの投げ訳もしやすいのではと。また足の甲の地面の捉えもできており、浮き上がろうとする力を抑え込めています。したがってボールも、低めに集まりやすいのではないかと。「球持ち」や指先の感覚も悪く無さそうで、コントロールで自滅することは少なそうです。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻の落としに甘さは残すものの、カーブやフォークといった球種も滅多に観られないので悲観するほどではないでしょう。元々投げられないほどでは無いフォームですので、多投しなければ肘への負担も少ないのではないかと考えられます。

 気になるのは、グラブを持っている肩は下がりボールを持っている肩が上がる傾向にあること。したがって腕の送り出しに無理が生じやすく、肩への負担は少なくないのでは? しかし元来それほど力投派でもないので、疲労は溜め難い消耗の少ないフォームではあります。よほどの登板過多にならなければ、そこまで故障のリスクは高くないのではないのでしょうか。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地までの粘りはそれなりで、極端に合わされやすいフォームではないかと。またボールの出どころもある程度隠せているので、投げミスをしなければ痛手は喰らい難いと考えられます。ただし極端にボールにキレがあるとか球威がある投手ではないので、それだけ当たれば飛んでゆくリスクは常に抱えています。

 腕の振りは、適度に身体に絡んでおり悪くないように見えます。またボールへの体重の乗せも、適度に乗せてからリリースできているように見えます。高校時代は、膝小僧に土が着いてしまうほどに深かかったので、体重が後ろに残りやすく置きに来るような球でした。その点は、だいぶ大学で改善されてきたのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、どれも一定レベルの水準にあり大きな欠点は見当たりません。コントロールを司る動作には優れ、あとは肩への負担と武器になる球をいかに身につけられるかではないのでしょうか。技術的には、比較的高いレベルでまとまっている気がします。


(最後に)

 元々持っているマウンドさばき・テンポの良さがあり、あとはどれだけそれを活かすピッチングができるかでしょう。さすがにプロの一軍を意識するのであれば、球威・球速・球質・細かい制球力・決め手など総合力で物足りませんから、プロで何かを掴まないと厳しいと思います。指名順位が示す通り、本会議で指名されるほどの魅力は感じられず、 は付けられませんでした。あそこを変えてあげられればという何かを掴んでの指名ではあると思うので、ロッテの育成力と本人の意欲に期待し見守りたいところです。


(2020年 秋季リーグ戦)








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