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佐藤 蓮(上武大4年)投手 188/102 右/右 (飛龍出身) | |
静岡の飛龍高校時代から、その分厚いから投げ込まれるボールに光るものがあった 佐藤 蓮 。有り余る才能を待ちながらも、上武大4年春までリーグ戦の登板はなし。まさに、この秋の1シーズンの実績だけで、プロ入りを決めたと言っても過言ではない。高校時代の素材の良さを残しつつ、球速を10キロぐらい引き上げたいう感じの投手になっていた。 (投球内容) 4年秋の横浜市長杯・創価大戦では、1回1/3イニングで7四死球とボールが制御できず。この時はランナーを背負った場面からの登板だったので、セットポジションから投げ込んでいました。しかし普段は、ワインドアップからゆったりとしたモーションで投げ込んできます。 ストレート 常時140キロ台後半~150キロ台中盤 ☆☆☆★ 3.5 迫力の体格から投げ込まれるボールは、コンスタントに150キロ前後を記録します。キレや伸びというよりも、重い力のある球質で詰まらせるのが持ち味。しかしコントロールは不安定で、リーグ戦でも18イニングでも7四死球と、四死球率は 38.9% と危ういことがわかります。 横浜市長杯では、ランナーがいる場面でいきなりセットポジションから。それもクィックでの投球というのも、本当の制球力がない彼にとっては持ち味を出し難い状況だったのは確かなのでしょう。それでもプロを想定すると、リリーフでの登板が期待されるタイプだと思うので、その点では言い訳のきかないのは確かだと思います。この制球力の不安定さは、これからも彼についてまわる問題ではないのでしょうか。 変化球 カーブ・フォークなど ☆☆★ 2.5 この選手の投球を観ていると、緩いカーブとフォークが多く、スライダーはあまり観られない気がします。これは高校時代もそうで、このカーブでカウントを整えられると、投球がグッと楽になるのではないのでしょうか。フォークもストンと落ちるときもありますが、ちょっとチェンジアップ気味に沈むことが多く、相手に的を絞らせない働きは期待できます。しかし現状は、まだまだ決め球としては弱い気がします。 リリーフであればフォークと速球のコンビネーションというも成り立ちますが、プロの打者相手に緩い・速いだけでは苦しいので、カットボールなどでも、球速のある変化で楽にカウントを整えられる球種の習得は不可欠になってくるのではないのでしょうか? それかフォークでカウントも取れる、あるいは空振りも奪えるという、使い分けができるレベルまで精度を引き上げられるかだと考えられます。 その他 クィックは、1.0秒前後と高速です。逆に早く投げようという意識が強くなりすぎて、制球を乱す要因になっているのかもしれません。高速クィックは、制球を乱しやすいので。高3年の時などは、野手(一塁)などの起用が主だったので、ボール処理などは下手ではないと思います。牽制などは、確認できませんでした。 (投球のまとめ) 高校時代から、恵まれた体格と高い将来性を感じさせる素材型でした。大学では、期待どおり球速を10キロ程度伸ばしてきた点は高く評価できます。しかしこれだけのボールを投げながら、公式戦デビューが最終学年になったのは何故か? それは、投げてみないとわからない不安定さがあったからだと考えられます。その悪い部分が、横浜市長杯ではモロに出てしまった感は否めません。 (投球フォーム) 今度はフォームの観点から、今後の可能性や未来像について検証して行きたいと思います。元来はワインドアップで振りかぶり、ゆったりと投げ込んでくるフォームです。軸足一本で立った時には、膝には力みは感じませんがバランスとしては平均でした。 <広がる可能性> ☆☆ 2.0 引き上げた足を地面に向けて伸ばすフォームで、お尻の一塁側への甘さを感じます。むしろクィックで投げた時の方が、足をうまく逃し一塁側に落ちているようにすら見えます。そういった意味では、カーブやフォークという球種を投げられないことはないものの、曲がりや変化は鈍りやすいのではないかと考えられます。 「着地」までの粘りを観ても、ワインドアップの時はあっさり地面を捉えて淡白です。むしろクィックで軸足に体重を乗せないで投げた時の方が、足をうまく逃して身体を捻り出す時間は確保できていました。いずれにしても、カーブやフォークを武器にする投手としては、今のフォームには適さないのではないかと。むしろスライダーやチェンジアップ・それにカットボールやツーシーム・スプリットなど、速球に近い球速の小さな変化のほうが彼には合っているのではないのでしょうか。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで身体の近くにあり、外に逃げようとする力を抑え込み、軸がブレ難いのではないかと。そのため両サイドへの投げ訳は、比較的つけやすく見えます。足の甲での地面の捉えもできているので、ボールがそこまで高めに抜ける感じではないと思いますが、制御できないときもあるのでそうとも言えません。 「球持ち」も良い時は前で放せているように見えるのですが、指先の感覚が悪いのか?リリースが不安定なのか? 制球に不安があるのは間違い有りません。大学生ですが、フォーム固めの段階から指導し直さないといけない可能性があります。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻の落としが不十分な割に、カーブやフォークといった捻り出して投げるボールを多く使ってきます。そのため窮屈になりやすく、肘への負担は少なくないのではないのでしょうか。 その一方で、腕の送り出しには無理は感じられません。したがって肩などへの負担は、少ないのではないかとみます。また元来は力投派というよりは、むしろ大きな身体をまだ充分活かしきれていないタイプだけに、疲労を溜めやすいということもないのではないのでしょうか。 <実戦的な術> ☆☆ 2.0 「着地」までの粘りも淡白で合わされやすい上に、ボールの出どころもやや早く見えます。それだけ球筋がいち早く読まれやすく、コースを突いた球でも踏み込まれたり、縦の変化球が見極められる危険性があります。 また速球派の割には、まだ腕の振りが充分ではない。特に投げ終わったあと、身体に絡むような強さや粘りが感じられません。こうなると、変化球と速球の見分けはつきやすく、空振りを誘い難いのでは? ボールにもまだ充分体重を乗せてからリリースできていないのか? 投げ終わったあとに地面を強く蹴り上げるような体重移動は観られません。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、すべての点でまだ物足りません。別の言い方をすれば、これだけ未完成で、これだけのボールを投げられるのはロマンの塊だとも言えます。 制球を司る動作は、悪くない割に不安定。お尻が落とせない割に、カーブやフォークを持ち球にし負担が心配されること。またそれ以外の変化球の習得に関しても、けして将来的に明るいとは言えません。そういった意味では、育成力が問われる素材であり、現時点でも素材型高校生レベルの技術だと言っても過言ではないのではないのでしょうか。 (最後に) この技術で、これだけの球速・球威のあるボールを投げられることを考えると、将来的に150キロ台中盤~160キロ級のボールが投げられるようになっても不思議ではありません。ただしそれを可能にするだけの制球力の習得や、その球を活かすだけの変化球やフォーム技術を習得できるのか?といった部分に不安を残します。 入団した球団が、球界でも指折りの投手育成力のある阪神だというのは明るい材料。規格外の選手に育て上げられるのか? それとも持ち味を活かせず伸び悩むのか? 予測は極めて困難です。個人的には現時点では、不安の方が多いという評価で、やや辛いものになってしまいました。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2020年秋 横浜市長杯) |