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水上 由伸(四国学院大4年)投手 176/82 右/右 (帝京三出身) | |
帝京三時代から、投打に可能性を感じさせる選手だった 水上 由伸 。四国学院大に進んでからも順調にパワーアップを遂げ、コンスタントに145キロ~150キロ級を投げられるまでに成長。しかし私が見る限り、この選手の良さはむしろ変化球ではないかと思うのだ。 ストレート 常時145キロ前後~MAX150キロ ☆☆☆ 3..0 コンスタントに140キロ台後半を連発するストレートには、適度な勢いと威力を感じます。しかしストレート自体は結構暴れるのか?コントロールがイマイチ。また高校時代から、球速の割に合わされやすい傾向がありました。4年秋の成績でも、35イニングで31安打と、被安打率は 88.6% と地方リーグとしてはやや高い数字にあります。今でも合わされやす傾向と甘く入るアバウトさは、変わっていないのではないかと思います。 変化球 スライダー・カットボール・フォークなど ☆☆☆★ 3.5 この暴れるストレートを主体にしても、この秋は 35イニングで5四死球と四死球率 14.3% と非常に低い数字になっています。その要因は、カットボールで楽にカウントを整えられるようになったこと。そして追い込むと、大きく曲がりながら沈むスライダーで空振りが奪えたり、フォークのような縦の変化球で三振が奪える強味があります。奪三振は、35イニングで34奪三振とほぼ投球回数と同数の三振が奪えていました。 その他 クィックは、1.00~1.05秒ぐらいと素早いです。牽制は軽く挟んでくることが多いのですが、時には鋭いものも交え平均レベルにはありそう。フィールディングは確認できませんでしたが、高校時代は三塁などもやって打撃センスが光る選手であり、動きが悪いということはないと思います。 (投球のまとめ) ストレートが暴れ、多少合わされやすいところは今も残っているように感じます。しかし140キロ台後半で押せるボールには威力を感じますし、何より変化球が良いです。カウントを整えられるようになり、三振を奪える球種も2つ持っている。そういった一つ一つのボールは、充分にプロ級の素材なのではないのでしょうか。 (投球フォーム) 今度はフォームをみて、何処まで実戦的なのか考えてゆきます。ランナーがいなくてもセットポジションから投げ込み、足を引き上げる勢いは並で、その高さはそれなりといった感じです。軸足一本で立ったときにも、膝には力みは感じられずバランスもそこそことれていて悪くはありません。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻の一塁側への落としには甘さが残ります。カーブやフォークといった球種は投げられますが、充分なキレや落差が確保できるのかは微妙でしょう。 また「着地」までの粘りは平凡で、身体を捻り出す時間は並ぐらい。そういった意味では、変化球のキレや曲がりに関しては心配です。それでもスライダーやフォークなど空振りを誘えるキレがあるので、そのへんはあまり気にしなくて良いのかもしれません。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力は抑え込めています。今年の投球を見る限り、ボールは両サイドに散らすことができています。また足の甲での地面の捉えもできており、ボールも暴れながらも高めに抜ける球は少ないように見えます。リリースに関しては押し込み等どうなのかと、あまり指先の感覚はどうなのかな?と思える部分はありますが、大まかに狙ったところにはボールが集められるようになってきています。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻の落としに甘さは残るものの、カーブやフォークの頻度もそれほど多くはありません。そのため窮屈になる機会も少なく、大きな負担というほどでは無さそうなので、肘への負担はそれほどでもかなとみています。 多少ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている方の肩は下がり気味で、送り出しには負担は感じます。しかし極端というほどではないので、肩への負担もケアに注意すれば悲観するほどではないのではないのでしょうか。けして力投派というほどでもないので、登板過多にならなければ疲労も溜まり難いと考えています。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは平均的で、打者としてはタイミングがとり難いフォームではないだろう。しかしボールの出どころは隠せているので、コントロールミスをしなければ痛手は喰らい難いのでは? 逆にこのボールの威力・フォームで被安打が多いということは、コントロールミスはそれなりにあるからとも言えるのかもしれない。 腕の振りは適度に振れており、勢いがあって空振りも奪えている。しかしリリースをみると、充分に体重を乗せてから投げられているかは微妙で、打者の手元までの勢いやボールの質という意味では、若干物足りなく見える。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」以外の「着地」「球持ち」「体重移動」にはまだ物足りず、改善の余地が残されている。しかし当初心配していた、制球を司る動作や「開き」の早さみたいなものは、想像より遥かに良かった。 また故障のリスクもさほどではなく、決め手不足が心配されるフォームながら、実際にスライダーとフォークといった空振りを誘える変化球があり、その点も問題ない。むしろ課題は、ストレートの方にあるのではないのだろうか。 (最後に) ボールの勢いだけでなく、変化球も悪くない。制球の不安やボールの出どころの問題も解消されているようで、その点でもだいぶ評価できるのではないのだろうか。高校時代は、大学で野球をやるのならばまとまりのある投手、さらに上のレベルを意識するのであれば野手ではないかとみていた。しかし大学で続けてきた投手として、プロに入れる水準まで引き上げられたのは見事としか言いようがない。育成会議の5位指名ではあるが、個人的には本会議で指名されても良かったのではないかと評価したい。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2020年 秋季リーグ戦) |