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入江 大生(DeNA)投手のルーキー回顧へ







入江 大生(明治大4年)投手 187/84 右/右 (作新学院出身 
 




「成長中」 





 作新学院時代から、将来性の高い投手として期待してきた 入江 大生 。しかし3年間の通算勝ち星は2勝と物足りなく、可能性は感じられるものの、一ドラフト候補に過ぎなかった。しかし8月に行われた春季リーグ戦で、成長した姿を披露。一気に上位候補と位置づけられるようになり、続く秋季リーグでの好投で1位候補の評価を決定づけた。最終学年で赤丸急上昇した男の、現在地を考えてみる。


(投球内容)

 ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。ラストシーズンでは、8試合に登板して 3勝1敗 防御率 2.35(4位) という内容で、明大のエースとして活躍ししました。

ストレート 140キロ台後半~150キロ台前半 ☆☆☆★ 3.5

 先発をしても、コンスタントに140キロ台後半のストレートを投げ込んできます。ボールの勢いや質という意味でも悪くないのですが、まだまだ力で相手を圧倒するような凄みみたいなものはありません。ボールは適度に散っていて、投げミスも少ない制球力も魅力。しかし秋は、31回1/3イニングで11四死球と、四死球率は 35.1% と、基準である投球回数の1/3を若干上回ってしまいます。むしろ8月に行われた春季リーグの方が細かい制球力は良く、12イニングで3四死球と投球回数の1/4程度におさめていました。実際見ていても、春季リーグは右打者外角いっぱいにバシバシ良いところに決められていました。防御率が1.50と良かったのも、春は秋より細かいコントロールがついていたからだと考えられます。

 もう一つ気になるのは、意外にその外角一杯のストレートを打者が苦になくはじき返していたこと。被安打は27本で、被安打率は 86.3% と、即戦力で活躍するには70%台は残しておきたかったところす。そのへんは、ボールの力で圧倒するほどの絶対的なものがまだなかったり、意外に合われやすいフォームに原因があるのではないかと考えられます。

変化球 カットボール・フォークボール・スライダー・カーブなど ☆☆☆★ 3.5

 130キロ台中盤の小さく横にズレる球が、カットボールだと思われます。その球を右打者外角いっぱいに集めたり、左打者の内角を突くのに使ったりできます。他に120キロ台のスライダーも別にあるのですが、現状あまり使ってくることはない。まして、緩いカーブなども滅多に観られません。その代わりカットボールともう一つ、チェンジアップのような小さく沈むフォークがあります。この球は空振りを誘うというよりも、左打者の外角でカウントを整えたり、引っ掛けさせることに多く使ってきます。あまり右打者には使って来ないので、むしろ右投手でも左打者への投球の方が的が絞られ難いように感じます。

 それでも奪三振は36個奪えており、春季リーグに続き投球回数を上回ってきました。それほどストレートで圧倒しているイメージがないので、変化球で結構三振が取れているのではないのでしょうか。

その他

 クィックは、1.0~1.05秒ぐらいで素早くまずまず。牽制は走者を刺すような上手さがある一方、フィールディングは丁寧に落ち着いてボールを処理してきます。間を意識して投げるタイミングを変えるなどの意識は薄そうなものの、好調時には外角いっぱいのところに集められる繊細なコントロールは持ち合わせている。

(投球のまとめ)

 個人的には、8月の春季リーグの時の方が秋季リーグよりも内容は良かったのではないかと感じた。ただし速球派にしては、変化球や制球力も許容範囲にあり、さらに今後良くなって行ければチームの大事なところを任されるだけの素材だとは強く実感している。しかしそのためには、初年度よりも2年目、3年目と経験や段階を積んでゆくことで、そういった投手に育ってゆくのではないかとみている。イメージ的には、斎藤隆(東北福祉大-大洋)が入団した時の指名に良く似ている。


(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から将来像を考えてゆきたい。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは並ぐらい。軸足一本で立った時に力みは感じられないが、バランスとしても平均ぐらいだろうか。

<広がる可能性> ☆☆★ 2.5

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻の一塁側への落としは不十分。そのため身体を捻り出すスペースは充分ではなく、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適しません。特にフォークなどを多く使ってくるのですが、落差が鈍いのはこのせいなのかもしれません。

 それ以上に気になるのが、「着地」までの粘りがなくあっさりと地面を捉えてしまうこと。身体を捻り出す時間が確保できないので、キレや曲がりの大きな変化球が習得し難い傾向にあります。こういった投手は、スライダーやチェンジアップの他、カットボールやツーシーム・スプリットなど球速のある小さな変化でピッチングの幅を広げてゆくことが求められます。彼もカットボールを中心に投球を組み立てているので、そのへんは正解なのではないのでしょうか。

<ボールの支配>> ☆☆☆ 3.0

 グラブは内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を抑えることができている。そのため軸がブレ難く、両サイドへの投げわけは安定しやすい。しかし足の甲での地面の抑えが浮きがちなので、ボールが高めに集まりやすい。リリースでもボールが押し込めていないので、高めに抜けてしまうことも少なくない。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻が落とせない割に、縦の変化球が多いのは窮屈になって肘に負担がかかりやすい。ただし沈みの浅い変化球が、フォークではなくスプリットだとすると、負担は多少軽減されているのかもしれない。また腕の送り出しを見る限り、肩への負担は少なそう。それほど力投派でもないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 球の出どころはある程度隠せているものの、「着地」までの粘りがイマイチなので打者に苦になく合わされやすい。腕の振りは悪くないと思うが、まだボールにしっかり体重を乗せてからリリースできているというほどではないので、打者を圧倒するような球威や勢いが生まれ難い。逆にそれでもこれだけのボールが投げられることを考えると、ここが良くなればまだまだ凄みのある球が投げられるようにもなるのだろう。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」こそ悪くないが後の動作にはもっと粘りが欲しい。故障のリスク、制球を司る動作・将来的に武器になる変化球を身につけられるかと言われると微妙であり、伸び悩む危険性も否定できない。それでも伸び代は残されているので、今後の取り組みや意識次第では格段にストレートが良くなっても不思議ではない。


(最後に)

 斎藤隆も2年目に8勝こそしたが、本格化したのは入団6年目だった。そのため1年目は一軍での登板機会はあるだろうが、多くは望めないかもしれない。斎藤隆ほど時間はかからないと思うが、勝負は2年目以降だと考えるべきだろう。性格的にはプロ向きだと思える選手でもあり、将来的にはローテーションの中心やリリーフならばクローザー・セットアッパークラスになっても不思議ではない器の持ち主。その才能が花開いてゆく過程を、ぜひ見届けてゆきたい。


蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級)


(2020年 秋季リーグ戦)










入江 大生(明治大3年)投手 187/82 右/右 (作新学院出身) 





「ボールの威力は森下級」 





 ボールの力だけならば、1学年上の 森下 暢仁(広島1位)にもヒケを取らない 入江 大生 。作新学院時代は、投手兼一塁手として活躍し、今井達也(西武1位)と共に全国制覇達成に貢献した。当時から才能は高く評価されていたが、明大に進学。リーグ戦ではリリーフでの登板だが、徐々にその才能を開花させつつある。最終学年での内容次第では、充分にプロ入りの可能性を秘めた素材だと言えよう。


(投球内容)

 ノーワインドアップからスッと足を引き上げ、少し前に倒れ込むような感じで重心を落として来るフォームです。

ストレート 常時145~150キロ 
☆☆☆★ 3.5

 コンスタントに140キロ台後半を連発できる能力があり、その勢いは確か。この秋も22イニング登板して、被安打は僅か10個(被安打率45.5%)と球威で圧倒できている。その反面、決まって欲しいところに微妙に決まらないなど、コントロールの粗さも気になるところ。22イニングで四死球は8個(四死球率は36.4%)と、このコマンドの差が森下との大きな違いとなっている。ボールは低めの膝下にビシッと決まる時もあるが、結構高めに抜けるなど安定しない。

変化球 スライダー・チェンジアップ・フォークなど 
☆☆☆ 3.0

 右打者外角低めには、しっかりスライダーでカウントを整えられる。また左打者には、内外角にボールを散らしつつ外角低めにチェンジアップを集めてカウントを稼ぐ。また時々少しドロンとしたフォークを投げるのだが、この球が結構しっかり落ちるので空振りを誘えていた。速球派でも、けして変化球レベルが低いわけではない。

その他

 クィックは1.05秒前後で投げ込めるなどまずまずで、ボール処理なども落ち着いてさばけている。牽制は結構上手く、積極的にランナーが出ると挟めて来る。

 細かい出し入れや、間をうまく入れて相手のタイミングをずらそうとするとか、そういったきめ細やかさはありません。このへんはリリーフ投手らしく、ボールの力で勝負しに行きます。

(投球のまとめ)

 速球にしても変化球にしても、1つ1つのボールは悪く有りません。またボールも高めに抜ける球は多いものの、適度に両サイドには散っているのは明るい材料。時々中にも甘く入ってきますが、ボールに力があるので大学レベルの相手ならば打ち損じしてくれることも少なくありません。常にボール先攻で投球が苦しくなることが多いので、ストライク先攻で投球できるようになるかが、この選手のプロ入りへの鍵になるのではないのでしょうか。


(投球フォーム)

今度はフォームの観点から、この選手の可能性について考えて行きましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 軸足一本で立った後に、前に倒れ込むように重心を落としてきます。そのためお尻はバッテリーライン上に残ってしまい、体を捻り出すスペースが確保できません。この体勢でカーブやフォークといった球種を投げようとすると、どうしても負担のかかる投げ方になります。

 それでも「着地」までの粘りはそれなりで、体を捻り出す時間は悪くありません。カーブやフォークといった球種以外ならば、ピッチングの幅を広げてゆくことは期待できそうです。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができます。このため左右の軸がブレ難く、両サイドへのコントロールは安定しやすくなります。

 その一方で、足の甲が地面から浮いてしまっています。こうなると浮き上がろうとする重心の力が抑え込めず、力を入れて投げるとボールは高めに抜けやすくなっています。それでもボールを前で放すなど球持ち自体は悪くないので、ある程度ボールを指先で制御することはできています。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻が落とせないフォームなので、フォークあたりを多投すると窮屈になり肘への負担が心配になります。しかし現時点では、フォークの割合は少ないので、それほど気にしなくても良いのではないかと感じます。

 腕の送り出しを見る限りは、肩への負担も少なそう。腕を強く振ってくるタイプではありますが、フォーム全体はそれほど力投派というほどでもないように見えます。そのため疲労を溜めてフォームを崩すというリスクは、それほど高くはないのではないかとみています。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りもある程度ある上、ボールの出どころのみやすさも平均的。苦になるほどのフォームではないと思いますが、合わせやすいわけではないのではないのでしょうか。そのへんは、被安打の少なさにも現れているかと。

 腕を強く振れており、フォームに勢いがあるので空振りは誘いやすい。ボールにも適度に体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで球威や勢いの落ちないボールは投げられている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」においては、「球持ち」も「体重移動」も良く、大きな欠点はありません。さらに「着地」までの粘りが出て、「開き」が遅れるようになると厄介なフォームだと言えそうです。

 足の甲の押し付けが浮いてしまうことで高めに抜ける球が多いのは気になるものの、故障のリスクや将来的に投球の幅を広げられるという意味では標準的でしょうか。今後は、緩急や縦の変化をいかにして生み出してゆくのかが鍵になると思います。


(最後に)

 作新学院時代に感じたとおり、素材の良さは光ります。まだその能力を存分にというほどではないので、最終学年になって自覚が何処まで目覚めるかにも懸かっています。先発をやって持ち味が出るかは微妙ですが、リリーフならば興味深い人材であるのは確かです。森下にあって入江にないものは、やはりストライクを先攻させるだけの制球力。常に投手が有利な状況で勝負できた森下に比べると、入江は自らと戦ってしまっている場面が多い。この点を最終学年に変化が見られるのか注目したい。


(2019年 秋季リーグ戦) 









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