20dp-25


 




大曲 錬(西武)投手のルーキー回顧







大曲 錬(福岡大・準硬式4年)投手 179/78 右/右 (西日本短大附出身) 





「まとまりのある正統派」 





 球速が出にくいと言われる準硬式のボールで、150キロを越えると話題になった 大曲 錬 。しかしその投球は、豪腕というよりも適度にまとまりのある好投手といった感じがする。昨年に引き続き、今春の投球の模様が確認できたので考察してみたい。


(投球内容)

セットポジションから、落ち着いて自分のペースで投げ込んできます。

ストレート 140~150キロ ☆☆☆★ 3.5

 直に見ているわけではないですし、準硬式のボールのせいなのか? あまり速くは見えません。普段は140キロ前後~中盤ぐらいで、ランナーを背負った場面などになると力を入れて、145~150キロぐらいを投げ込んでいるのではないのでしょうか。コントロールもストライクゾーンの外角中心には集めてきますが、物凄くピンポイントで集めて来るわけでもありません。したがって高めに甘く入る球もあれば、やや審判のストライクゾーンも広めに感じられます。この日は150キロを記録したと言われていますが、実際のところ硬式のボールよりは5キロ程度は遅く見えてしまう感じがしました。

変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0

 右打者に対しては、結構曲がりの大きなスライダーを投げてきます。また左打者に対しては、チェンジアップを使って組み立ててくるというのは昨年と変わらないのでは? それほど変化球の精度・キレというものに特別なものは感じられなかったので、やはり投球の中心はストレートといった感じがします。このへんは、硬式球で投げた時にどの程度のキレや曲がりをするのか気になるところではあります。

その他

 クィックは、1.0~1.1秒ぐらいとまずまず。牽制は、昨年同様鋭いものは見られませんでしたが、入れるタイミングは悪く有りません。フィールディングも、落ち着いてボールを処理していました。

 速球の力加減を状況次第で変えるなど、投球センスに優れたメリハリのある投球を見せてくれます。

(投球のまとめ)

 凄みのあるボールを投げ込むというよりも、適度にまとまりと強弱をつけた投手らしい投手との印象を受けます。このボールの威力・変化球のキレ・制球力で、実際プロの打者相手にどの程度やれるのかはかなり掴みづらいとしか言えません。硬式球でこの球速、投球を見せれば上位指名だったと言われる素材ですが、果たしてどうでしょうか?


(投球フォーム)

 昨年もフォーム分析をしましたが、何か変わった部分があるのか検証してみたいと思います。ランナーがいなくても、セットポジションからスッと足を引き上げてきます。軸足一本でたった時に、膝から上がピンと伸びがちですが、全体のバランスとしては平均的でしょうか。

<広がる可能性> ☆☆☆☆ 4.0

 引き上げた足をピンと高い位置で伸ばされており、お尻の一塁側への落としはできています。そのため身体を捻り出すスペースは確保できており、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種を無理なく投げられます。

 「着地」までの粘りもまずまずで、上手く足を前に逃がすことができています。したがって身体を捻り出す時間も確保でき、曲がりの大きな武器となる変化球の習得も期待できます。現在でも、スライダーの曲がりは大きいものがありますし、将来的に縦の変化にも磨きがかかる可能性は感じられます。

<ボールの支配> ☆☆☆☆★ 4.5

 グラブは内に最後まで抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。そのため軸はブレ難く、両サイドへの投げ訳はしやすいと考えられます。足の甲でもしっかり地面を捉えられており、浮き上がろうする力も抑えられていま。ボールを高めに浮くのを防ぐことができ、球持ちも良いので繊細なコントロールも期待できます。しかし実際の投球は、そこまで細かいコントロールがある感じはしないのですが・・・。

<故障のリスク> ☆☆☆☆★ 4.5

 お尻は落とせている上に、カーブやフォークといった球種は観られません。縦の変化も、チェンジアップや握りの浅いスプリットだそうで、その点で肘への負担は少ないと考えられます。

 また腕の送り出しを観ても、肩に負担があるようには見えません。けして力投派でもないので、疲労も溜め難く故障に繋がり難いと考えられます。

<実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りも作れているので、「イチ・ニ~の・サン」の 「ニ~の」タメによって打者はタイミンがとり難くなっています。ボールの出どころもある程度隠せているので、その点でも心配有りません。

 腕も適度に振れて勢いがあるので、打者の空振りを誘いやすいはず。またボールにしっかり体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで活きた球が投げられます。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、全てに欠点がなく高いレベルでまとめられています。故障のリスクも低ければ、制球を司る動作・投球の幅を広げて行けることも期待できます。投球フォームとしては、お手本にしたいほど完成度の高いフォームとなっています。特に昨年と比べても、一つ一つの動作の甘さを、かなり改善して来られて隙きが無くなりつつあります。


(最後に)

 動作の割には、実際の細かい制球力や変化球の精度・キレという意味では発展途上の部分は残しているように思います。また硬式球への適応やプロのレベルの高さを加味すれば、ある程度の完成度は誇っていても、1年ぐらいファームで漬け込んだ方が良いのかもしれません。

 しかし、準硬式の選手ということを抜きにしても間違いなく好素材ですし、ピッチングセンスに優れた投手だと言えるでしょう。順調にゆけば、一年目からある程度一軍を経験し、2年目以降はローテーションに入って行っても不思議ではないと思います。充分に本会議で指名されるだけの、力の持ち主だったのではないのでしょうか。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2020年 春季リーグ戦) 










大曲 錬(福岡大・準硬式3年)投手 179/74 右/右 (西日本短大附出身) 
 




 「投球にメリハリがある」





 準硬式に所属するプレーヤーながら、ドラフト指名が有力視されているのが 大曲 錬 。球速が出にくいと言われる準硬式の世界においても、コンスタントに145キロ前後を投げ込めるスピード能力は確か。さらに投手としても、非常にメリハリの効いた投球ができるのが印象的だった。


(投球内容)

 典型的な先発タイプであり、けして力いっぱい投げて抑え込むタイプではありません。適度に強弱をつけながら投げる、典型的な先発投手といった感じがする。

ストレート 常時145キロ前後~150キロ 
☆☆☆★ 3.5

 ボールの違いこそあれ、コンスタントに145キロ前後は出ていそうな勢いのあるボールを投げ込んできます。そういったボールを力みのないフォームから、安定して投げ込んでるくるところに能力の高さを感じます。ボール外角に集まりやすいのですが、高めに浮くことが多いのは多少気になります。硬式球を握った時にどのようなボールになるのかはわかりませんが、高めで空振りを誘えていた球がファールで粘られたり痛打される危険性がないとは言えません。少なくても、物凄く迫力のある球を投げるといった凄みを感じさせるタイプではないからです。

変化球 スライダー・チェンジアップなど 
☆☆☆ 3.0

 投球を確認する限り、右打者には外に逃げるスライダーとのコンビネーション。左打者には、チェンジアップとのコンビネーションで投球を組み立てているように見えます。右打者からも左打者からも変化球で空振りを奪えていましたが、プロのレベルの打者相手だとどうでしょうか? 特に左打者に対しては、若干投げ難そうにしている感じがしました。

その他

 牽制はそれほど鋭いものは見られませんでしたが、入れるタイミングが上手く見えます。クィックも1.05秒前後~1.10秒ぐらいとまずまず。フィールディングも、落ち着いてボールを処理していました。投球も落ち着いて投げられており、野球センスの高さや総合力の高さを感じます。

(投球のまとめ)

 素材に凄みを感じるというよりも、投手としてのセンスの良さを感じさせる先発タイプ。速球・変化球と適度なレベルにあり、準硬式選手でも3位前後ぐらいの力はあるのではないかと感じました。特に大きな欠点は見られず、硬式球への対応や高いレベルへの順応には多少時間はかかるかもしれませんが、1年ぐらいあれば総合力に優れた選手なので一軍も見えて来る気がします。


(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点からその可能性について考えてみましょう。ランナーがいなくても、セットポジションからスッと足を高い位置まで引き上げてきます。軸足がピンと伸びて立ってしまうのですが、上手くバランス良くは立てています。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を地面に伸ばしているので、お尻の一塁側の落としには甘さは残します。それでもカーブやフォークを投げるのに窮屈になるといったほどではないと思いますが、キレや変化を多少鈍らせる恐れはあります。

 「着地」までの地面の捉えに粘りがあり、身体を捻り出す時間は確保できています。そのためカーブやフォークといった球種以外ならば、キレや曲がりの大きな変化球の習得も期待できそうです。特に現時点でも、スライダーのキレには見るべきものがあります。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後に身体の後ろに抜けがちですが、それほど身体から離れていません。そのため軸のブレは小さく済み、両サイドのコントロールは悪く有りません。足の甲の地面への捉えは短いのか? 力を入れて投げるとボールが高めに抜けやすいように感じます。「球持ち」自体は前で放せており、四死球で自滅するようには見えませんが。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻の落としには甘さはあるものの、カーブやフォークを投げても肘への負担は少ないのではないかとみています。またそういった球種は、ほとんど投げないようです。腕の送り出しを見ても無理がないので、肩への負担も少なそう。けして力投派ではないので、疲労も溜め難いのではないのでしょうか。故障のリスクは少なく、練習を積んで行けるタイプかと。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りも作れている上に、ボールの出どころも隠せていて合わされやすいということはないと思います。あとは、高めに浮くことが多いので、そういった投げミスを少なくすることでしょう。

 腕も適度に振れており、速球と変化球の見極め困難。ボールにもしっかり体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで勢いの落ちない質の良い真っ直ぐが投げられています。ゆったりと始動しますが、フィニッシュには躍動感を感じます。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」でも、全てにハイレベルにまとまっています。故障のリスクも少ないですし、カーブやフォークといった球種以外ならばキレのある変化球を投げられる下地もあります。高低への制球力に課題は残しますが、四死球で自滅するような危うさはありません。全体的には、非常に実戦的でセンスの高さを感じます。


(最後に)

 1年ぐらい硬式球や高いレベルの順応に時間を要すれば、2年目ぐらいには一軍でローテーションを担える可能性がある素材ではないのでしょうか。ドラフトでも3位前後ぐらいは期待しても良さそうな内容であり、準硬式の選手をとっても責任を追うだけの覚悟のあるスカウトや球団があるかに懸かっています。下位指名や育成あたりで、とりあえず面白そうなので指名してみるかとか、そういったレベルの選手ではありません。ある程度、計算のできる選手として高い順位で獲得すべき選手ではないのでしょうか。


(2019年 リーグ戦)