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伊藤 大海(日ハム)投手のルーキー回顧へ







伊藤 大海(苫小牧駒沢大4年)投手 176/82 右/左 (駒大苫小牧出身) 





 「瞬間的な爆発力は屈指」





 この一瞬の凄みという意味では、今年のドラフト候補の中でも屈指ではないかと思われる 伊藤 大海 。ただし、トータル的な観点でみると、どうなのか? という疑問は正直残る。その疑問は、ラストシーズンの投球をみても払拭することはできなかった。


(投球内容)

 中背の体格から投げ込んでくるので、結構ボールが平面的でタイミングがあってしまうとスコーンと飛んでゆく印象があります。長身の角度のある投手のように、打ち損じをしてくれる確率は低いように思います。

ストレート 常時145キロ~93マイル・150キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 非常にキレ型の球質で、空振りを誘える速球です。しかし上記に書いたように、角度を感じないのと球威があるタイプではあるので、しっかり捉えられると長打をされやすい傾向にあります。ですからこの投手のストレートは、よほど切れてないと長いイニング・長いシーズン好調を維持するのは難しいタイプだと言えるでしょう。

 ボールは両サイドに散らすことができ、コーナーにビシッと決めることができます。しかし真ん中~高めのゾーンに集まる傾向が観られ、切れている時はそれでも空振りが誘えるもののキレが鈍った時が怖いなといった印象は残ります。

変化球 スライダー・カーブ・カットボール・フォーク・チェンジアップなど 
☆☆☆ 3.0

 大きく横滑りする、スライダーとのコンビネーションです。時々緩いカーブやフォークのような縦の変化球なども観られますが、基本はこのスライダーを内外角に使い分けることでピッチングを組み立ててきます。そのため、速球とスライダーという単調な印象を受けてしまいます。

その他

 クィックは、1.15~1.30秒ぐらいと、けして素早いとは言えません。その割に、牽制は記憶にありません。フィールディングの動き自体は良く、その点では問題はないます。

(投球のまとめ)

 自分のペースで投げられている時は、爆発力のある投球を魅せます。しかし自分のペースが崩れると、ボールが制御できなくなるときもあるので、そういった相手と対峙したときにはどうなのかな?という意味では、再び全国の舞台で観てみたかった気がしました。今回観戦した試合は、彼の大学ラスト登板となった試合だったと思うのですが、最近にないリズムに乗りきれない試合だったのではないのでしょうか。緩いカーブや縦の変化も確かにあるのですが、先発よりもリリーフでエネルギーを爆発させる方が私は適している印象を受けます。もし1年目の活躍を考えるならば、リリーフから入る方が良いのではないのでしょうか。



(投球フォーム)

ランナーがいなくても、クィックのように軸足をすぐに折って投げ込んできます。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻は一塁側にしっかり落ちてくるフォームで、身体を捻り出すスペースを確保。そのためカーブで緩急を効かせたり、フォークのような縦の変化を投げるのにも無理はありません。

 「着地」までの粘りも適度に作れており、身体を捻り出す時間も確保。キレや曲がりの大きな変化球の習得も期待でき、すでにスライダーの曲がり幅が大きいのが特徴となっている。いろいろな球を投げられる下地はあるのだが、あまり上からしっかり叩く腕の振りではないので、縦の変化の落差にやや欠けるところがある。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは内にしっかり抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。そのため、両サイドへの投げ分けはつけやすい。足の甲の地面への捉えはできているものの、その時間が短いので充分に浮き上がろうとする力を抑え込めていないのかもしれない。「球持ち」もイマイチで、ボールを押し込めていない。そのため球筋は、真ん中~高めに集まることが多いのは気になる。ただし、四死球で自滅するような、そういった危うさではないように見える。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は落とせるフォームなので、カーブやフォークといった捻り出して投げる球でも窮屈になることは無さそう。そういった意味では、肘への負担は少ないのでは。

 また腕の送り出しをみると、多少ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩が下がる傾向にあるものの、大きく肩に負担がかかるといったほどではないだろう。またけして力投派でもないので、疲労は溜まり難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは作れており、球の出どころも隠せている。そのため、タイミングは合わせやすいフォームではないはず。

 振り下ろした腕が意外に身体に絡んで来ないなどの物足りなさが残るのは気になるが、ボールも適度に体重を乗せて投げられているように見える。しかしその割には、ボールがキレ型の球質になっているのは何故なのだろうか?


(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作においては、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の中、特に「球持ち」にもう少し粘りが欲しい気がする。制球を司る動作や故障のリスクはそれなりといった感じだが、今後もっと良い変化球をプロで身につけても不思議ではない。淡白そうなフォームに見えるが、けしてそういったことは無さそうだ。


(最後に)

 球種が少ないわけではないものの、中背でキレ型のせいか? イニングを重ねるとどうなのだろうという疑問は残ってしまう。レベルの高いところでやってゆくには、まずはリリーフで経験や自信をつけて行き、徐々に先発への適正を高めてゆくというのが良いのではないのだろうか。瞬間的な爆発力は、今年の候補の中でも屈指の存在だけに、リリーフならば一年目からクローザーを任される存在になるかもしれない。


蔵の評価:
☆☆☆☆ (1位指名級)


(2020年秋 北海道優勝決定戦)









伊藤 大海(苫小牧駒沢大3年)投手 176/80 右/左 (駒大苫小牧出身) 





 「奪三振マシーン」





 大学ジャパンの守護神として活躍し、3年春のシーズンには52イニングで97奪三振奪うなど、驚異的な奪三振率を誇る投手です。この秋のドラフト会議においても、有力なドラフト1位候補として位置づけられています。


(投球内容)

 ランナーがいなくてもセットポジションから投げ込み、軸足に体重を乗せることなクィックのようにそのまま重心を落として投げます。

ストレート 145~150キロ台前半 
☆☆☆☆ 4.0

 リリーフならばコンスタントに145~150キロ台前半を叩き出します。ボールは回転の良いキレ型なので球威はありませんが、勢いとキレを感じます。両サイドに散らすコントロールもありますが、全体的に真ん中~高めに集まりやすい傾向にあります。2年生の6月に行われた大学日本代表選考平塚合宿では、死球・四球・ヒット・押し出し で失点するなど、力んでボールが制御できないところがありました。普段のコントロールは非常に良いのですが、自分のペースで投げられない時の精神的な脆さみたいなのはあるのかもしれません。またストレートの三振は、空振りよりもむしろズバッとコースに決めた時の見逃し三振こそ彼の真骨頂なのではないのでしょうか。

変化球 スライダー・カーブ・フォーク など 
☆☆☆★ 3.5

 横滑りスライダーでしっかりカウントを整え、縦のスライダーやフォークなど縦の変化球でも空振りを誘えます。そして余裕があると、非常にブレーキの効いたカーブもあり、この球もピッチングに大きなアクセントになっています。三振を取るコツみたいなものを、自分なりに掴んでいるのではないのでしょうか。

その他

 クィックは、1.15秒前後と平均的。フィールディングも、落ち着いて冷静に処理できていました。

(投球のまとめ)

 結構気持ちで投げる部分があるのか? 乗っている時とそうでない時の差が、激しいタイプなのではないかと感じます。最終学年で、そういったムラがどうなのかは気になります。また驚異的な奪三振を誇る選手ですが、意外に空振りではなく見逃しさでの三振が目立ちます。それでも変化球は空振りが奪えるので、ストレートに対応されてもどうにかできる引き出しは持っているように感じました。


(投球フォーム)

今度はフォームの観点から、この選手の可能性について考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は甘さは残すものの、ある程度一塁側には落とせている。そのため身体を捻り出すスペースはある程度確保できているので、カーブで緩急を利かしたりフォークのような縦の変化球を投げるのにもそれほど無理は感じない。

 「着地」までの粘りも適度に作れており、身体を捻り出す時間も確保できている。武器になる変化球も習得できる可能性があり、キレや曲がりの大きな変化も期待できそうだし、現時点でもそういった投球ができている。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで身体の近くに留まり、外に逃げようとする遠心力を内に留められる。そのため軸のブレが少なく、両サイドへのコントロールはつけやすい。

 しかし足の甲での地面への押しつけは浮いてしまっていて、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。それでも四死球が少ないのは、「球持ち」が良くボールを指先でコントロールできるからだろう。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻はある程度落とせるので、カーブやフォークといった球種を投げても負担は少なめなのだろう。またそういった球種の割合も、けして多くはないので神経質になることはない。

 腕の送り出しも、さほど無理は感じられない。したがって肩への負担は、それほど大きくはないとみている。ただしかなりの力投派なので、疲労は溜めやすいのではないのだろうか。そこからフォームを崩して故障をする、そういった危険性は捨てきれない。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りも作れており、ボールの出どころも隠せているように見える。そのため打者からは、特に合わせやすそうには見えない。

 腕の振りは非常に強く勢いがあるので、打者は吊られて空振りを誘いやすいはず。足の甲が地面から浮いてしまうので、どうしても下半身のエネルギー伝達は遮断され球威のある球が投げられない。あくまでも上半身や腕の振りでキレを生み出してゆくタイプなので、調子を長く維持するのが難しい。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、足の甲が地面から浮いてしまうことでの「体重移動」に課題を残す。それでも故障のリスクはさほど高くなく、コントロールを司る動作も悪くない。また将来的にも、武器になる変化球を習得して行ける可能性も感じさせる(現時点でも高いレベルにあるが)。速球派ではあるが、実戦力も兼ね備えたフォームだと言えよう。


(最後に)

 すでに好調時に投げ込まれるボールは、ドラフト1位級であることは誰もが認めるところ。問題はこの投球を、いつも安定して出せるのか? プロの長いシーズンを通して発揮できるのか? といった部分ではないのだろうか。良い時の爆発力は間違いないが、そうじゃない投球こそ、今年のチェックポイントでもある。そういった精神的な部分に成長が見られるのか? 一年間追いかけて見極めて行きたい。


(2019年 日米大学野球)