20dp-18
長谷部 銀次(24歳・トヨタ自動車)投手 184/80 左/左 (中京大中京-慶大出身) | |
今年の都市対抗では、二度のワンアウト満塁からの登板を無失点に抑えてみせた 長谷部 銀次 。その存在感を改めて強く印象づけたのだが、大会3試合目の登板となった東京ガス戦ではヒットや四球でワンアウトも取れず降板している。 (投球内容) ランナーを背負ったピンチの時に、リリーフで起用される場面が目立ちます。今年の都市対抗では、3試合(1回1/3) に登板し、1安打・2四死球・1失点で、結果的には自責点0で抑えている。 ストレート 常時145キロ前後 ☆☆☆★ 3.5 細かいコントロールは気にせずに、ガンガンストライクゾーンめがけて投げ込んでくる力投派。勢いのある真っすぐは、球速以上に打者としては厄介で、特に右打者内角クロスを突く球筋が最大の武器です。その一方で、本当の制球力がないので、どうしても四死球などの不安は拭えません。慶大時代からボールの威力には目を見張るものはあったものの、リーグ戦で活躍できなかったのはそのせいでしょう。 変化球 カーブ・スライダー・フォークなど ☆☆☆ 3.0 曲がりながら沈むスライダー・もっと緩いカーブ、さらに縦に沈むフォーク系の球があります。しかしリリーフだと、変化球よりも力で押す投球が中心になります。変化球のキレ・曲がり自体は悪くないのですが、精度という意味では物足りなく、本当の意味で頼れる変化球がないのも不安定な要因になっているのではないのでしょうか。 (その他) クィックは、1.05~1.20秒ぐらいと、基準は満たすレベルにあります。牽制も適度に鋭いものを持っていますし、気持ちを全面に出した攻撃的なピッチングスタイルです。少し気持ちが乗り過ぎると、体が前に突っ込む癖が顔を覗かせるときがあります。 (投球のまとめ) ランナーを背負った場面でも、動じることなく相手を力でねじ伏せられる投球は爽快です。しかし、本当の制球力・変化球がないので、じっくり観られたとき、粘られた時に根負けしないのかは気になる部分です。いずれにしてもプロを想定すると、リリーフでの起用が前提になるのではないのでしょうか。 (成績から考える) オフシーズンに取り上げた「本当に凄いやつ」の時にフォーム分析を行っているので、今回は今年度のここまでの公式戦の成績から傾向を考えて行きたい 6試合(2先発) 10回1/3 11安 8四死 7三 防 5.23 1,被安打は投球回数の80%以下 ✕ 力でねじ伏せられるボールの威力がありながら、意外に被安打が多いのは気になる。それだけ、甘く入った球を打ち返されることが多いのではないのだろうか。投球回数を上回っているということは、社会人レベルでも苦しくなることが多いということ。 2,四死球は、投球回数の1/3(33.3%)以下 ✕ 四死球率も、77.4% と極めて高い。三振が多く奪える選手でも、40%ぐらいまでが目安だろう。より狭いストライクゾーンであり、さらに打力も圧倒的に上がるプロの打者相手だと、余計コントロールで苦しむ危険性がある。 3,1イニングあたりの奪三振は、0.8個以上 ✕ 1イニングあたり 0.62個 と奪三振率も平凡であることがわかる。これは、真っすぐの力で圧倒はできるものの、武器になるほどの変化球がないことを物語っているのかもしれない。 4,防御率は1点台 ✕ リリーフでの起用が多めなので、僅かな失点が数字を悪化しやすい。逆に昨年の公式戦では、4試合で 4回1/3 イニングで自責点はなかった。しかし他のファクターが示す通り、今年のような 防御率 5点台 になっても、おかしくはない数字が残っている。 (成績からわかること) 真っすぐの威力や強気のマウンドさばきからも おっ! と思わせるものがある選手なのだが、サンプルが少ないとはいえ残した成績からみると、全てのファクターが基準を満たしておらず、この点は注意したい。 (最後に) それだけに、都市対抗の最初の2試合だけをみると、充分に指名級だと思うかもしれない。しかし、3試合目の登板をみると、かなり危うさがあることは認識する必要がありそうだ。ウチの球団ならば、欠点を改善できるという確かな方針がある球団が指名すべきではないのだろうか。名門・トヨタの選手だけに、なかなか下位指名とはゆかないかもしれない。実際、勢いのある左のリリーフ候補としての魅力や、そのボールの勢いをみていると、指名は4位前後ぐらいになるかもしれない。しかし私自身の評価は、少し下げて評価したい。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2022年 都市対抗) |
長谷部 銀次(23歳・トヨタ自動車)投手 184/80 左/左 (中京大中京-慶大出身) | |
コロナ感染前に最後にみたオープン戦であった仙台大戦で観たのが、この 長谷部 銀次 だったと記憶している。豊富な慶大投手陣の中に、まだこんな逸材が隠れていたのかと驚かされた。しかし、彼はその後も勝ち星をあげることなく、大学生活を終えた。トヨタ自動車に進んでからは、都市対抗の大舞台にルーキーながらあがることになる。 (投球内容) 日本選手権と都市対抗という、2大大会にリリーフながら登板。都市対抗では、ピンチの場面で登板し球威で相手をねじ伏せるピッチングが光った。 ストレート 常時145キロ前後 ☆☆☆★ 3.5 球速は常時145キロ前後で、角度と球威を感じさせる球質です。慶大時代にあまり重要なところを任されて来なかったのは、かなりボールのバラツキが顕著で制球に不安定さがあったから。都市対抗でも2イニング目に四球を出して降板しましたが、あまりボロが出ない前に交代したといった感じです。制球が粗いを、何処まで改善できているのかは微妙です。 変化球 スライダー・カーブ・カット・フォーク ☆☆☆★ 3.5 曲がりながら沈むスライダー、緩いカーブ・カットボール気味な球を交えながら、フォークのような縦の変化球もありそうです。曲がりながら沈むスライダーには威力があり、カットボールなどでもカウントが整えられるようになってきました。変化球1つ1つの曲がりは良いので、あとは精度がもう少し高められればと感じます。 その他 クィックは、1.1~1.2秒ぐらいと、大学時代よりも投げ急がないように注意しているようです。気持ちが勝ると、体が突っ込むところがあるようなので。牽制も適度に鋭いですし、大きな欠点は見あたりません。アウトにすると吠えるように、意外に気持ちを全面に出すタイプなのかもしれません。 (投球のまとめ) ボールの力と角度が感じられる投手で、真っすぐの威力は指名級です。あとは、コントロールや変化球の精度を、何処まで高めて来られるかではないのでしょうか。現状は、リリーフ候補として見るべき人材ではないかと思います。この一年で、どのぐらいアピールできるかに懸かってきそうです。 (投球フォーム) 今度はフォームの観点から、その可能性について考えてみましょう。セットポジションから足を引き上げる勢いはそれなりで、それほど高い位置まで引き上げてはきません。軸足の膝が伸びて力みがちなのは気になり、あまりバランスのとれた立ち方ではありません。故に、体がツッコミやすい原因を作っているようにも見えます。 <広がる可能性> ☆☆★ 2.5 引き上げた足を地面に向け、さらにピンと伸ばすことがありません。したがってお尻はバッテリーライン上に落ちてしまい、体を捻り出すスペースを確保できず。故に、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適さない投げ方です。 「着地」までの地面の捉えも平凡で、体を捻り出す時間も平均的。そのため変化球の曲がりも平凡になりがちですが、スライダーの曲がりは大きく悪く有りませんでした。今後いかに、武器になる変化球を身につけて行けるかが課題でしょう。 <ボールの支配> ☆☆ 2.0 グラブの抱えも少し甘いので、外に逃げようとする遠心力も充分には抑え込めてはいません。したがって軸にブレが生じ、両コーナーへの制球もアバウトになりがち。 足の甲での地面の捉えも浅く、浮き上がろうとする力も抑えられていません。故にボールは上吊りやすく、腕も外旋してブンと振られる感じで、制球はどうしてもアバウトになってしまいます。 <故障のリスク> ☆☆ 2.0 お尻が落とせない割に、カーブやフォークも投げてくるので窮屈になりがち。そういった意味では、肘への負担も多少なりとも生じるのではと。また腕の送り出しにも角度をつけようとし、さらに腕が外旋することもあり肩への負担もそれなりにあるのではと。腕も強く振れる分、疲労も溜めやすい恐れがあります。故障には、充分に注意して欲しい投げ方です。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りもそれほどでもなく、ボールの出どころも平均的。打者としては、そこまで打ち難いフォームなのかは微妙です。むしろ、ボールの角度と球威で押し込むタイプなのでしょう。 腕は強く振れているので、打者としては吊られやすく空振りは誘えるのは良いところ。しかし、前の足が突っ張り気味で、前にしっかり体重が乗り切ってリリースできているかには疑問が残ります。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」や「体重移動」などの部分では不安が残ります。それでも、球威のある力強いボールは投げられているのですが。制球を司る動作・故障のリスクが高い上に、将来的に武器になるほどの球を身につけられるかは不安がと。かなり、リスキーな素材であることは間違い無さそうです。 (投球のまとめ) 左腕から、実に力強いボールを投げ込んでくる貴重な存在です。リリーフタイプとして面白いとみることもできますが、制球や実戦力の部分で不安が残ります。この辺を、この一年でいかに改善しアピールできるかに懸かっているのではないのでしょうか。面白い素材ではあると思いますが、どう転ぶかには不安が残る素材型であることは否めませんでした。 (2021年 都市対抗) |
長谷部 銀次(慶応大3年)投手 183/76 左/左 (中京大中京出身) | |
人材きらめく慶応投手陣において、またこの春新たな逸材が浮上してきた。その男の名前は、長谷部 銀次 。左腕から繰り出す速球は、140キロ台後半を記録。ボールの力で言えば、今年のサウスポーでも指折りの存在であるのは間違いない。 (投球内容) かなり上下動の激しいフォームといった感じのスリークォーター。 ストレート 常時140キロ台~148キロ ☆☆☆☆ 4.0 特に立ち上がりは力むのか? ボールが上吊っていました。かなりばらつきが顕著なので、最終学年までにリーグ戦の登板が1試合に留まったのも頷いてしまいます。それでもボールの力は確かであり、コンスタントに140キロ台を越えてきて、私のマイガンで90マイル(145キロ)を記録。またよそのガンでは、148キロまで到達。ボールの勢い・球威は確かで、そのへんは間違いな串名級だといえるでしょう。 変化球 スライダー・チェンジアップ? ☆☆☆★ 3.5 左のスリークォーターなので、スライダーのキレ・曲がりには優れています。また高速で小さく沈む、チェンジアップも効果的。>一つ一つのボールは良いので、あとはこれをいかに上手く制御できるか? スライダーでもカットでも良いのですが、確実にカウントを稼げるようになると、もっと一つ一つのボールが生きてくると思うのですが。それができないのが、この選手の最大の課題なのかもしれません。 その他 クィックは、1.0~1.1秒ぐらいと、左投手としてはかなり速い部類です。牽制も鋭いですし、容易には盗塁を許さないのではないかと思います。逆にただでさえ制球に不安があるので、そちらに気をとられ過ぎて制球を乱さなければと思うところはあります。現状は、勢いで押すリリーフタイプとみて良さそうです。 (投球のまとめ) ボールの威力だけで言えば、今年のサウスポー候補の中でも上位といえるでしょう。しかしコントロールが不安定でもあり、豊富な慶応投手陣においては、何処まで登板機会を得てアピールできるかが気になります。またチーム内には、同じくボールの威力は一級品も制球に課題がある 佐藤 宏樹 もおり、現状の扱いはこちらの方が優先される状況にはありそうです。 (投球フォーム) ランナーがいなくても、セットポジションから勢い良く高い位置まで足を引き上げて来る力投派。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 お尻はバッテリーライン上に残りがちなので、体をひねり出すスペースは充分ではありません。したがってカーブやフォークといった捻り出して投げる球種よりも、スライダーやチェンジアップに、高速で小さく変化するボールに適したフォームだと言えるでしょう。 「着地」までの粘り自体は、けして悪く有りません。武器になるほどの威力のある変化球を習得できるかは微妙ですが、上記にあげたような変化を中心に、投球の幅を広げてゆくことは期待できそうです。 <ボールの支配> ☆☆ 2.0 最初に上下に大きく動くことで、高低のブレが生じやすいフォームです。さらに足の甲での地面の捉えが浅いので、どうしても力んで投げるとボールが上吊ってしまいがち。 グラブは抱えられているものの、最後後ろに抜けてしまったりと外に逃げようとする力を充分に抑え込めているかは微妙。それ以上にコントロールを乱す要因として考えられるのは、腕が体から離れてブンと遠回りで振られるために、左右のブレも激しくコントロールが定まり難いという要因が考えられます。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻は落とせないものの、カーブやフォークといった球種も投げないので、窮屈になる機会は少ないのでは? したがって肘などを中心に、負担はあまり気にしなくても良いのではないかと。 腕の送り出しも無理な角度はないので、肩への負担は小さいように見えます。しかし外旋する腕の振りでブンと投げるので、肩への負担は少なくないのではないのでしょうか。まして力投派なので、疲労も溜めやすく登板過多になった時は心配な部分はあります。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りも悪くはなく、タイミングが合わせやすいということはないのでは? ましてや球の出どころは隠しせていて球持ちも良く、腕が遅れて出てくる感覚に陥るのでは? 荒れ球でもあり、打者としては嫌なタイプの左腕ではないのでしょうか。 腕は振れて勢いがあるので、空振りを誘いやすいはず。ボールへの体重の乗せは、踏み込んだ足がブロックしてしまい充分体重が乗せきれているとは言えないので、発展途上といった感じでしょうか。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、思った以上に「球持ち」と「開き」は我慢できているものの、「体重移動」に課題を残すことがわかりました。 故障のリスクや今後ピッチングの幅を広げて行けるかは微妙なラインですが、一番気になるのはやはり制球を司る動作。かなり特殊なフォームをしており、これをいじるのは確かな指導力がある人じゃないと難しいかもしれません。ただし打ち難いという意味では優れているので、ストライクゾーンに集まれば容易には打たれないのではないかと思える部分はあります。 (最後に) かなり特殊なメカニズムをしており、決まれば簡単には打ち返されないのではないかと思います。しかし逆に打者とすれば、無理には打ちには行かず、四球を選んだりカウントを取り来た球を狙い撃ちした方がとじっくり構えられると厳しいように感じます。その辺を何か、確実にカウントを稼げるような球が持てると全然投球内容が変わってくるのではないのでしょうか。現状は、ボールの威力は一級品も、下位指名~育成あたりで指名があるかないかぐらいの位置づけではあるように思います。 (2020年 オープン戦) |