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赤上 優人(西武)投手のルーキー回顧へ



赤上 優人(東北公益文科大4年)投手 177/80 右/右 (角館出身)
 




「そこまで制球が悪くは見えないのだが・・・」 





 赤上 優人 の投球の模様を、昨年・今年と観てきてそう感じてしまう。しかし、残した成績を観ていると、想像以上にコントロールが悪い。好不調の波が激しいのか? 本質的な部分なのか? そのへんは、なかなか生で観てきた選手ではないので掴めないものがあった。


(投球内容)

 ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。この秋の成績は、7試合に登板して 4勝1敗 防 2.31 という成績でした。昨年より調子が上がって来ないという話でしたが、最後はそれなりに調子を取り戻していたのかなといった成績に。ただし、今回参考にしている映像は、今年の春のものです。

ストレート 常時140~140キロ台中盤 ☆☆☆★ 3.5

 普段は140キロ前半ぐらいの球速で、勢いは感じますがそこまで速いわけではありません。そして、力を入れた時に140キロ台後半を記録して来るといった感じでしょうか。ボール自体は適度に両サイドに散っており、それでいて四球を連発するといった感じには見えません。しかし昨秋もそうだったのですが、今季も 39イニングで18四死球と、投球回数の半分近い数の四死球を出すというのは、アマとしては非常に多いと言えます。この傾向は、下級生の頃からほぼ変わっていませんので、そういった投手だということなのでしょう。

 被安打は、39イニングで27安打。被安打率は、69.2% と少なめです。地方リーグの数字なので、圧倒的だとは思わないものの、70%台以下なので、リーグの中ではボールの威力が抜けていたことがわかります。39イニングで46奪三振と、投球回数を遥かに上回る奪三振を奪えるのは、下級生の頃から変わらない傾向でした。

変化球 スライダー・カーブ・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 昨年見た時は、ストレートの威力はさすがでした。しかし、変化球のキレ・精度という意味では物足りないものを感じました。しかし、今年の投球をみると、カーブでしっかりアクセントを効かせカウントを整えたり、追い込むとフォーク系の縦の変化球で三振を奪え、中間球であるスライダーなどでもストライクが取れていました。

その他

 牽制は、モーションは大きめですが鋭くターンできます。クィックも、1.15秒前後で投げ込め基準レベル。マウンドさばきも、ガンガン投げ込んでくる力投派に思いきや、意外に間をとって落ち着いて投げ込んでいました。

(投球のまとめ)

 昨年ほどの内容ではなかったと言われていましたが、3月のオープン戦での内容は悪く有りません。しかし目に見えて大きく成長した感じはありませんでしたが、変化球は良くなったように見えました。フォークの精度・落差が何処まであるのかは微妙な感じでしたが、やはりストレートで空振りを取れる球質というのは大きいのではないかと。

 ガンガンゆく時にはガンガン行けるだけの力技もできますし、先発で落ち着いて「間」を使って投げるという芸当もできます。これからの上積みは微妙ですが、現時点である程度形はできている選手なのではないかとみています。


(投球フォーム)

 今度はフォームの観点から、何処まで実戦的で上積みが望めそうなのか考えてみます。セットポジションから、スッとそれなりの勢いで足を引き上げます。軸足の膝がピンと真上に伸び気味で、立ち方としては極端ではないですが直立気味になってしまっています。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を地面に伸ばし、あとから一塁側に深く落ちてくるという感じで遅いです。したがって身体の捻り出すスペースとしては甘さが残り、カーブやフォークを投げられないことはないのですが、少しブレーキや落差が鈍くなる恐れがあります。

 それでも「着地」までの足の逃し方は良く、適度に身体を捻り出す時間を確保できています。曲がりの大きな変化球の習得も期待できるフォームでありますが、現状はそこまで絶対的な変化球はない感じです。それでも多彩な変化球を、一定レベルで扱う器用さはあります。

<ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後身体の後ろに持ってゆかれがちですが、最後まで身体の近くにはあります。そのため軸はブレ難く、両サイドへの投げ分けもつけやすいのではないかと。また足の甲でも地面をしっかり捉えているように見えるので、浮き上がろうとする力を抑えられています。小柄な速球派の割には、ボールが高めに抜けるという場面は少ないのかと。

 「球持ち」も前で放せているように見え、指先まで力を伝えられているのではないかと。それなのに、何故四死球が多いのか?そういった制御ができない時があるとか、制御できなくなると全然入らなくなるという極端な投球をするのかもしれません。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さが残る部分があり、それでいてカーブやフォークを結構使ってきます。その点で多少キツくなりがちですが、そこまで悲観するほどではないように思えます。

 また腕の送り出しにも無理が感じられず、肩への負担も少ないのでは? 普段はそれほど力投して投げている感じでもないので、疲労も溜め難いのではないかと考えています。

<実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りも適度に作れ、「イチ・ニ~の・サン」の「ニ~の」粘りがタイミングを狂わせています。ボールの出どころも隠せており、三振がお多いのもこういった動作の粘りが大きいのかと。

 また腕の振りも良く勢いがあるので、打者の空振りを誘いやすい。ボールにもある程度体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで勢いの落ちない球が投げられています。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、全ての部分で高い技術になっています。また故障のリスクはさほど高くなく、投球の幅や決め手もまだまだ良くなって行ける可能性があります。気になるのは、動作的に制球がもっと良くて良いと思うですが、思いのほかコントロールが悪い点。ここの改善こそが、今後の大きなポイントになるのではないのでしょうか。


(最後に)

 技術的にもかなりの水準にあり実戦的なのだが、そのぶん伸び代が残されているのかと言われると疑問が残ります。できれば早期に支配下を勝ち取り、2年目ぐらいには一軍に定着して欲しい選手です。それだけの資質は充分あると思うのですが、やはりコントロールが鍵を握るだろうということ。ここをクリアできれば、育成枠でも貴重な存在へとなって行けるのではないのでしょうか。残念ながら、試合をしっかり見られた選手ではないので評価付けはできませんでしたが、限りなく  を付けてみたいと思わせてくれる選手でした。


(2020年 春季オープン戦)










赤上 優人(東北公益文科大3年)投手 173/67 右/右 (角館出身) 
 




 「意外に多彩なのでは?」





 150キロ前後の速球で、ガンガン押してくるイメージが強かった 赤上 優人 。しかしその投球をじっくり観てみると、意外に持っている球種は多彩なのではないかといった気がしてきた。果たして、どのような選手なのか? じっくりと考察してみた。


(投球内容)

 上背は170センチ前半と小柄だが、JR東日本との練習試合で150キロ台を連発し一躍注目される存在になりました。

ストレート 常時145~150キロ強 
☆☆☆☆ 4.0

 リリーフならば、コンスタントに150キロ前後を連発できるボールの勢い・威力は確かです。一見粗っぽく見える投球ですが、適度にボールは両サイドには散っています。そのためストレートに関しては、荒れ球でもあり対応され難いのではないかとみています。ただし投球回数の半分ぐらいの割合で四死球を出しており、ボールがじっくり見られた時にどうなのか?といった疑問は残ります。

変化球 スライダー・カットボール・チェンジアップ・カーブなど 
☆☆☆ 3.0

 冒頭でも述べたように、球種自体は多彩に見えます。ただし精度・キレという意味ではもう一つで、武器になるほどの球があるかは疑問です。確実にカウントを取れる変化球がないからこそ、この四死球の多さなのではないかと。3年生になってから、投球回数を遥かに上回る奪三振を奪えるようになっているのですが、これがストレート以外の球で奪えているかは気になります。どれも空振りを誘うというよりは、タイミングをズラす、芯を外す的な球種が多いからです。

その他

 牽制は、モーションは大きめですが鋭いです。クィックも1.15秒前後で投げ込めているので、基準レベル。そういった運動能力の高さは、感じられる選手です。マウンドさばきも、もっとガンガン投げ込んでくる力投派なのかと思っていましたが、意外に間をとって落ち着いて投げ込んでいました。





(投球フォーム)

今度はフォームの観点から、この選手の可能性について模索したいと思います。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足をピンと伸ばすことなく重心を沈ませてくるものの、ある程度一塁側にはお尻を落とすことができている。したがってカーブやフォークといった球種を投げても、窮屈になるといったほどではないだろう。ただし将来的に、絶対的なブレーキや落差が生じるようになるかには疑問が残ります。

 「着地」までの粘りも、適度には作れている。そのため多彩な球種を操れる下地はできているので、あとは武器になるほどの変化球を習得できるかが課題になるのではないのだろうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱える時と、後ろに抜けてしまっている時がある。恐らくこれは、ストレートを投げる時は勢いを重視してグラブを抱えないで投げる。変化球の時には、グラブを抱えるようにと意識的に使い分けているのではないかと。フォーム後半の動作なので、動作の違いで球種がわかってしまうかどうかは不明。

 また足の甲ではしっかり地面を捉えているので、小柄な力投派ながらボールが高めにまで抜けてしまうことは少ない。全体的にストレートの球筋が高いように見えるので、もう少しリリースで押し込めるようになると低めに集まりそう。変化球の精度や制球の粗さからも、指先の感覚は悪い方ではないのだろうか。動作的には、そこまでコントロールが悪そうなフォームではないのだが。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻はある程度落とせているので、カーブやフォークといった球種を投げても、窮屈になるといったほどではないのでは。また腕の送り出しも無理はなく、思ったほど力投派でもないことを考えると故障のリスクは低いのではないかとみている。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りも適度に作れているので、けして合わされやすいということは無さそう。ボールの出どころも隠せており、球筋が読まれやすいということも無さそうだ。ただしグラブの抱えに違いが見られるので、そこから球種が読まれないかは若干気になる部分。

 腕はしっかり振れており、勢いがあるので空振りを誘いやすいはず。ボールにしっかり体重を乗せてからリリースできており、打者の手元までも生きた球が投げられている。150キロの球速に見合った、ボールの勢いが感じられる。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、全てに大きな欠点は見当たらない。小柄な力投派と思いきや、技術的にはしっかりしたものを持っている。故障のリスクは低いのは、今後もリリーフで使われる可能性が高い選手であることを考えると明るい材料。

 動作の割に実際の制球力がかなり悪いのと、多彩な球種を投げるのは可能でも変化球のキレ・精度の点で改善が望めるかは微妙なところが気になる材料ではないのだろうか。


(最後に)

 いまや地方リーグとはいえ、150キロを投げられる投手は珍しくなくなりました。しかし実際の球速ほど、ボールの勢い・活かし方が伴っている選手はまだ少ないと言えます。そういった意味ではこの選手は、正真正銘の150キロ右腕といった感じがします。コントロールと変化球の精度に改善の余地はありますが、ドラフト候補として一年間追いかけてみる価値はありそうです。


(2019年 春季リーグ戦)