20dp-13
大道 温貴(八戸学院大4年)投手 178/83 右/右 (春日部共栄出身) | |
高校生の時から 大道 温貴 は、滑らかなフォームから投げ込む正統派として目立っていた。その一方で、筋の良さを感じさせる投手ながらも、まだ身体芯やボールの力強さが物足りないものが感じられた。しかし最終学年になり、そのへんはだいぶ解消されつつあるのではないのだろうか。 (投球内容) 唯一行われた秋季リーグ戦では、6試合に登板して 2勝2敗 。しかし、防御率は0.25(リーグ1位)で、圧倒的な安定感を誇っていた。観戦したのは、東北の各リーグを制したチームが集った、東北地区優勝決定戦・対東北福祉大戦だった。 ストレート 常時145キロ前後~MAX92マイル・148キロ ☆☆☆★ 3.5 昨年まで常時140キロ前後~中盤ぐらいだった球速が、この秋は常時145キロ前後~後半へと大きくパワーアップしていた。立ち上がりからビシッとミットに収まるボールの勢いは確かだったが、ストレートが高めに抜けたりと球筋が定まらず苦しんだ。欲しいところでストライクが取れず、本当の意味でのコントロールや立ち上がりの悪さを露呈した。それでも3イニング目ぐらいからは、球筋が定まってきて手がつけられないようになってゆく。元来は、両サイドにしっかりボールを散らせてくるタイプなのだろう。 変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5 最大の武器は、スライダーのブレーキ・曲がりの大きさにある。この球が外角一杯に決まると、右打者としては容易には打てない。またこのスライダーを、左打者の内外角に使い分けて来る。他にもチェンジアップ系の球もあるのだが、この球の威力・精度はあまり高くない。現状は、速球とスライダーを中心に、たまにカーブやカットボールなどを織り交ぜて来るといったスタイルなのだろう。 その他 クィックは0.95~1.05と素早く、牽制も適度に鋭い。まだ「間」を上手く使うなどの余裕はないが、コース一杯に集めたり、内角を厳しく突いたりはできる。 (投球のまとめ) 下級生から回転の良いボールは投げていたものの、球威・球速という意味ではまだ物足りない感じがしました。しかし、この福祉大との試合を観る限りは、立ち上がりから延長戦に入るまで、威力を増したストレートが最後まで勢いが落ちない投球でした。 立ち上がりに不安定さが感じられ、本当の意味での制球力や悪いときの修正が効くのかの不安は残りましたが、3イニング目ぐらいから徐々にエンジンがかかってきた感じの本格派。一年目からプロのローテーションを担えるかは微妙ながら、数年後はローテーションの一角を任されるようになっても不思議はない。 (投球フォーム) オフシーズンにフォーム分析を行っているので、今回は残した成績から考えてみましょう。この秋の成績は 36回 18安 9四死 60奪 防 0.25(1位) という内容でした。 1、被安打は投球回数の80%以下 ◎ 被安打率は、50.0% と、非常に安定しています。地方リーグとはいえ、基準が70%台のところを、50%に留めているのは素晴らしいです。ボールの威力が突出し、相手に的を絞らせないということができていたということでしょう。 2,四死球は、投球回数の1/3(33.3%)以下 ◎ 四死球率は25.0であり、投球回数の1/3どころか1/4に抑えられています。四死球で、自滅するような危ういタイプではありません。あとは、立ち上がりにボールが定まらないのを、いかに乗り越えられるかではないのでしょうか。 3、奪三振は、1イニングあたり0.9個以上 ◎ 奪三振は、1イニングあたり1.67個と右投手としては破格です。特にスライダーのキレが素晴らしく、この球はプロでも充分通用するであろう切れ味があります。 4、防御率は1点台以内 ◎ 防御率1点台どころか、ラストシーズンには0点台も前半という圧倒的な内容でした。入学以来、毎シーズン規定投球回数を満たしてきた選手ですが、防御率が0点台になるのは初めてであり、それも0点台の前半。いかにラストシーズンが、図抜けた内容だったのかが伺えます。 (成績から考える) 全てのファクターが、基準からかなり離れての圧倒的な数字で満たしていたことがわかります。この成績を観てしまうと、開幕ローテーションも担えるほどではないかと思えてしまうほどです。まぁ即そういったことが可能なのかには疑問が残りますが、シーズン途中には先発の機会をもらえたり、2,3年目にはローテーションに定着する可能性を感じさせます。 (最後に) ドラフト3位で、近未来のローテーション候補を獲得できたことは大きのではないのでしょうか。まだ本当の意味でのボールの力や制球力が、安定して出せるほどかには不安が残ります。イメージ的には、高梨 裕稔(山梨学院大-日ハム4位-ヤクルト)を大学の時に見たイメージに似ています。むしろ内容的には、もうワンランク、この大道の方が大学の時点では上なのではないかと。そういった意味では、3位ぐらいでの指名は美味しかったののではないのでしょうか。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2020年秋 東北優勝決定戦) |
大道 温貴(八戸学院大3年)投手 178/78 右/右 (春日部共栄出身) | |
惚れ惚れするような、滑らかな体重移動や腕の振りから投げ込む 大道 温貴 。しかし実際観ていると、何かが物足りなく感じるのだ。その何かを、今回は考えてみたい。 (投球内容) それほど身体が大きいわけではないが、ワインドアップで振りかぶり投げ込んでくる本格派。 ストレート 130キロ台後半~MAX145キロ ☆☆☆ 3.0 球速は常時140キロ前後~中盤ぐらいで、右投手のドラフト候補としては平均的。しかし非常に回転に優れ、打者の手元までしっかり伸びてくる球を投げ込んでくる。またその球を、しっかりコースに投げ分けるコントロールも有している。ただしボールがキレイな反面、球威という意味ではまだ物足りない。プロレベルの打者相手にするには、もうワンランク打者のバットを押し返すようなボールの力が欲しい気がする。 変化球 スライダー・ツーシーム・フォーク・カーブなど ☆☆☆ 3.0 右打者の外角低めに集められる、スライダーだかカットボールのような球が最大の武器。この球は、左打者の内角にも積極的に使ってくる。その他にも追い込むると、ツーシーム系の球やフォークだかの沈む球も持っている。まだこの球精度・落差は発展途上だが、今後精度が上がってくると大きな武器になりそう。また腕の振りの柔らかさを活かした、カーブなどもたまにも投げて緩急をつける。空振りを狙って奪えるほどの変化球には欠けるが、変化球は一通り投げられそれを活かすセンスを持っている。 その他 クィックは 1.1秒台とまずまず。それほどランナーが出たあと「間」などをうまく使う印象はないが、右打者の外角のギリギリのところにボールを集めたり、左打者の内角を厳しく突くなど、そういった投球の繊細は感じられる。 (投球のまとめ) 指先までしっかり力を伝えられる、センス溢れる投球は惚れ惚れする。まだ成長途上を印象づけられるが、身体が強くなってボールに強さが出てくると、プロでもローテーションを任されるまでになるのではないのだろうか。そういった青写真を描きやすい素材であり、それがどの段階で現実味を帯びてくるか? 最終学年で即戦力を計算できるまでになるのか? それともプロ入り後数年後をイメージさせるかで、指名順位も変わってくるのではないのだろうか。 (投球フォーム) この惚れ惚れするようなフォームが、実際実戦的なのか将来性が高いものなのか検証してみたい。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 意外にお尻はバッテリーライン上に残りがちで、身体を捻り出すスペースを充分確保できているのかは微妙。したがってカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種に適しているのかには疑問が残ります。 しかし「着地」までの粘りは悪くなく、適度に身体を捻り出す時間は確保。武器になるほどの大きな変化を望めるかは微妙ですが、多彩な変化球を投げられる器用さと、それを可能にする土台はあるのではないのでしょうか。 <球の行方> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで内にしっかり抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため軸がブレ難く、両サイドへのコントロールも安定している。 足の甲も地面を捉えており、浮き上がろうとする力を抑えることができている。もう少しリリースでボールが押し込めるようになると、安定して低めにも球が集まってきそうだ。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻は落とせておらず、カーブやフォークといった球を投げるのには窮屈になって負担がかかりやすい。現時点ではカーブの頻度が少なく、縦の変化球もフォークでなければそれほど肘への負担などはナーバスになることはないのかもしれないが。 腕の送り出しに関しては、無理なく投げ込めているので肩への負担は少なそう。さほど力投派でもないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。心配な点で言えば、球威・球速の物足りなさから、無理に自分の能力以上のものを出そうとして負担がかかる時がどうだろうかということ。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは適度にあるのだが、ボールの出どころが少し見やすいのが気になる。そのためコースを突いた球が読まれて、打ち返されるケースは結構あるのではないかと考えられる。特に現時点では、球威や球速で打ち損じを誘うというほどではないので。 それでも振り下ろした腕は身体に絡むなど、腕の振りに勢いは感じられる。それだけ速球との見極めも難しく、空振りを誘える可能性を秘めている。またボールにしっかり体重を乗せてからリリースできているので、打者の手元まで生きた球が投げ込めている。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」と「開き」にもう少し粘りというか我慢が効くようになると嫌らしさが出てきそう。お尻が落とせないことで窮屈になるリスクは感じられるものの、それ以上に自分の能力に以上に無理に速い球を投げようとして負担が増す場合が怖い気がする。 コントロールを司る動作も悪くなく、投球を広げて行けるだけの変化球を投げるセンスと土台は構築されている。何処かが突出しているフォームではないが、トータルバランスに優れたフォームとなっている。 (最後に) 実際の投球でもフォームでも、まだ絶対的なものが感じられない。その最大の理由は、ストレートの球威・球速がまだ物足りないという部分。そこが改善されれば、一気に上位候補へと浮上して来るだろう。そしてそのためには、体幹を強くするのが一番ではないのだろうか。身体の芯がビシッとしてくれば、これに天性のセンスが加わり、プロでも先発を任される可能性を秘めた投手になって行くのではないのだろうか。その成長をみるのが、今から楽しみな投手です。 (2019年 松山合宿) |