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小谷野 楽夕(24歳・JR東日本)投手の個別寸評へ







小谷野 楽夕(日本大3年)投手 183/79 右/右 (日大三出身) 





 「東都二部屈指の素材」





 先発でもコンスタントに140キロ台後半を刻む 小谷野 楽夕 。昨秋こそ1試合の登板に留まったが、復活すればドラフト上位指名も意識できる能力を秘めている。そんな今年のブレイク候補について、今回は考えてみた。


(投球内容)

 均整の取れた投手体型で、真上から投げ込むというよりもスリークォーター気味の腕の振りです。

ストレート 常時145キロ前後~MAX149キロ ☆☆☆★ 3.5

 球速はコンスタントに140キロ台中盤~後半を刻むスピード能力があり、そのボールも両サイドに散らすことができます。けして球威型ではないのと、比較的合わされやすいフォームをしているので、甘く入ると打ち返されてしまう危険がはあります。東都二部通算で、被安打率は82.4%。しかしよりレベルの高い一部の打者相手だと、そうは簡単には仕留められない気がします。

変化球 カットボール・スライダー・カーブ・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5

 そのためこの投手は、あくまでもストレートを魅せておいての変化球を多く交えるコンビネーションタイプ。ブレーキの良いカーブで緩急をつけつつ、カットボールのような小さな変化でカウントを整えこの球が有効です。チェンジアップだけでなくフォークのような沈む球などもあり、球種は実に多彩です。2部の成績ではありますが、1イニングあたり0.85個の三振を奪えており、これは先発投手としては基準以上でしょう。

(投球のまとめ)

 ボール1つ1つの威力は素晴らしいのですが、四死球率が39.7%とややアバウトです。目安は、投球回数の1/3(33.3%)以下であり、時々甘い球があり二部でも絶対的な成績は残せておりません。規定投球回数に達したのは、2年秋の7位(防御率 3.38)のみ。あとはもっと低い防御率に抑えられているシーズンもありますが、投球回数自体は少なめです。

 昨秋の登板は僅か1試合ということもあり、高校時代から不安だった肘の状態が芳しくないのかもしれません。秋唯一投げた国士舘大戦では、3回を無安打1四球・4奪三振で抑えてみましたが、果たして最終学年で能力をしっかり示すことができるのかがポイントだと言えるでしょう。ポテンシャル的には、間違いなくプロ級だと評価します。





(投球フォーム)

 今度はフォームの観点から、その可能性について模索したいと思います。セットポジションから、スッと足を引き上げてバランスよく立ちます。

<広がる可能性> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻は一塁側にしっかり落とせるので、身体を捻り出すスペースを確保。そのためカーブやフォークといった球種を投げるのも、無理のないフォームです。

 「着地」までの粘りもあり、身体を捻り出す時間も確保。そのためキレや武器になる変化球の習得も、期待できるフォームではあります。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。そのため、両サイドへのブレが少なくなりやすい。足の甲でも地面をしっかり捉えており、浮き上がろうとする力も抑えられている。ボールが低めに集まりやすくするのに効果的で、球持ち自体も悪くない。その割に制球がアバウトなところがあるのは、腕の振りが身体から離れて外からブンと振られる傾向が強いから。こういう投手は、どうしてもブレが大きくなりコントロールがアバウトになりがちに。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻は落とせるフォームなので、カーブやフォークといった球種を投げても窮屈にはなり難い。そのため肘への負担は少ないと思うのだが、高校時代から肘への不安を感じていたようなのでそのへんは気になる材料。

 腕の送り出しにも無理はなく、肩への負担も少ないと考えられる。ただし投げ終わったあと帽子が飛ぶほどの力投派の側面があり、疲労は溜めやすい恐れがある。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはそれなりにあり、けしてタイミングが合わされやすいわけではないように思う。その一方で、ボールの出どころはスリークォーターだけに、やや見やすい傾向があるのかもしれない。そのためいち早く球筋が読まれ、甘くない球でも痛打されたりする危険性はある。

 振り下ろした腕は身体に絡み適度な勢いがあるので、空振りは誘いやすいかと。体重を乗せてからリリースもできているので、打者の手元まで生きた球が投げられている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」に若干課題があるのではないかと。しかしフォームの構造上、これを無理に抑えようとすると逆効果が起きてしまうリスクはある。

 制球を司る動作・故障へのリスクが低く見えるが、実際には多少アバウトなところがあり、肘に不安を抱えていた時期もあったと訊く。将来的に武器になる変化球の習得も期待でき、すでに現時点で多彩な球種を操ることができている。フォームとしては悪くないと思うが、それが=パフォーマンスに繋がっているのかは微妙な気もする。


(最後に)

 まず最終学年においては、持っている能力を一年間ちゃんと示せるかがポイントになるのではないかと。もしそれができれば、充分に指名圏内に入ってくる力があるのは、すでに下級生の頃からのパフォーマンスで確認済みです。あとは、そこからプラスαが望めるようならば、上位指名候補に浮上して来ても不思議ではないとみています。ぜひ春季リーグ戦から、東都二部に確認しに行きたい投手でした。


(2019年 春季リーグ戦)