20dp-1
山崎 伊織(東海大3年)投手 181/71 右/左 (明石商出身) | |
現時点で、今年の高校~社会人含めて全ての候補の中で、総合力NO.1といえるのは、この 山崎 伊織 ではないかとみている。彼の何処が優れているのか? 今回は考えて行きたい。 (投球内容) 公称・181/71 という体格からも、ドラフト候補としてはけして身体が大きいわけではない。実際の投球も、スケール感溢れる投球というよりは、球のキレとコントロールなどを含めた総合力で勝負して行くタイプ。 ストレート 常時145~150キロ強 ☆☆☆☆ 4.0 ボールの球威・球速で圧倒するというよりも、キレとコントロールで勝負するタイプです。それでも先発をすれば、常時145~150キロを安定して叩き出し、その球も空振りを誘えるキレがあります。キレ型投手なので甘く入ると怖いという側面がありそうですが、この選手はストレートの投げミスが非常に少ない。臭いところを突いてボールになることはあっても、甘いところに入って打たれるケースは非常に少ないと言えるでしょう。普段は外角中心に投球を組み立てるのですが、高校ジャパンの壮行試合でも魅せたように、左打者の内角をガンガン攻める厳しさも併せ持っています。 変化球 スライダー・カットボール・チェンジアップなど ☆☆☆☆ 4.0 速球の能力だけでなく、変化球のレベルも高いのが特徴。小さく横にズレるカットボールのような球でカウントを整えてきます。スライダーは縦に鋭く落ちるフォークのような役割を果たす球があり、この球が決め球に。逆に左打者にはチェンジアップ系の球を結構使ってきますが、この球の精度・キレは並みなので、チェンジアップなどの左打者に対する変化球が、今後課題になってくるのではないのでしょうか。変化球をしっかりカウントを整えられて、縦の変化球で空振りを奪えるという投球を、すでに確立できています。 その他 クィックは、1.1秒前後と基準以上でなげこみ、フィールディングの動きも落ち着いていて安定しています。牽制はかなり鋭く、本人も自信を持っているのではないのでしょうか。 特に「間」を意識するとか言うことはないのですが、外角ギリギリのところを突いて来るなど、そういった繊細さはあります。 (投球のまとめ) 凄みを感じる投手ではないのですが、技術的に非常に高いレベルでまとまっている。そして、攻めの厳しさというものを持っているということ。そういった意味では、4年春の上茶谷(DeNA)や森下(明治大)と、同ランク~それ以上の能力はすでにあるのではないのでしょうか。プロの先発投手としても、一年目から二桁前後。リリーフならば、いきなりセットアッパーやクローザー級を務められる可能性は感じます。 (投球フォーム) 今度は、フォームの観点から考えてみましょう。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 お尻の一塁側の落としに甘さはあるものの、身体を捻り出すスペースが確保できていないわけではありません。そのため、カーブやフォークの効果は別にして負担が大きいということは無さそう。 「着地」までの前への足の逃しは良く、適度に身体を捻り出す時間は確保できています。キレや曲がりの大きな変化球を習得することは、期待できるでしょう。実際縦スラに関しては、フォークの代わりに使えられる落差があります。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで身体の近くに留まり、外に逃げようとする遠心力は抑え込めています。したがってブレは少なく、両サイドへのコントロールはつけやすいと考えられます。 気になるのは、足の甲が地面から浮いてしまっている点。そのため浮き上がろうとする力を抑え込めない可能性があるのですが、リリース際にボールを押し込めているのか? 高めに抜ける球はほとんど見られません。したがって、あまり気にしなくても良いのではないのでしょうか。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻はある程度一塁側に落とせているので、カーブやフォークを投げても窮屈になるということは少なそう。実際にはカーブやフォークを投げて来ない投手なので、肘への負担は少ないだろうと考えている。しかし秋のシーズンは抜群の内容だったものの、神宮大会を賭けた関東選手権で肘を痛め、神宮大会では登板できずに終わっている。 腕の送り出しにも無理は感じないので、肩への負担は少ないのでは?とは見ている。それほど力投派でもないので、消耗も少なくフォームを崩す心配も少ないのではと。ただし肘痛が慢性的にならないのかは? 今後見極める意味で大事な要素になりそうだ。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りはあるので、打者としては合わせやすいフォームではないのだろう。身体の「開き」も平均的で、球の出どころは見やすいわけでは無さそうだ。 腕はしっかり振れて勢いがあるので、速球でも変化球でも空振りが誘える。しかし足の甲が地面から浮いてしまっているので、下半身のエネルギー伝達は充分とは言えないのは気になる材料。上半身や腕の振りでキレを生み出すことができるが、下半身のエネルギー伝達が遮断されてしまっているので、球威のある球を生み出すのは難しいのかもしれない。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」こそ粘れているが、「球持ち」「開き」「体重移動」は平均的な気がする。このへんは、まだフォームに伸び代があると前向きに捉えたい。 制球を司る動作は足の甲が浮いている点、故障のリスクは実際に肘を痛めているのは気になる部分ではある。将来的に武器になる変化球の習得という部分では、すでに武器になる縦の変化球を持っているので特に気にしなくても良さそうだ。フォーム技術としては平均的であり、まだ良くなる要素は残されている。そのため完成度の高い投手に見えるが、技術的には発展途上の投手なのだ。 (最後に) ボールの威力、制球力・変化球・攻めの厳しさなど、総合力は今年の候補の中で屈指の存在ではないかと位置づけている。しいて心配の点をあげるとすれば、昨秋に痛めた肘の状態だ。これが、2020年度のシーズンに影響しないのか?という部分。今シーズン彼が欠けるような事態になれば、ドラフト戦線に与える影響力は計り知れない。順調にゆけば、上茶谷(東洋大)や森下(明大)ランクからそれ以上が期待でき、1位指名が有力視される一人だから。いずれにしても今後の成り行きを、注意深く見守って行きたい。 (2019年 大学選手権) |