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佐藤 直樹(ソフトバンク)外野手のルーキー回顧へ







佐藤 直樹(21歳・JR西日本)外野 178/85 右/右 (報徳学園出身) 





 「身体能力は高い」





 都市対抗の時に一度寸評を作成したが、ソフトバンクから1位指名された 佐藤 直樹 のプレーを改めて日本選手権で確認してみた。それほど印象はその時と変わらなかったのだが、もう少し細かい部分がわかってきて、自分の中のイメージも固まってきた。


走塁面:
☆☆☆☆ 4.0

 都市対抗の時に計測した一塁までの到達タイムは、右打席から4.23秒だった。これでも充分にプロでも俊足レベルだったのだが、日本選手権でのショートゴロのタイムが4.08秒を記録。これを左打者に換算する 3.83秒ぐらいとなるので、プロでも最上位クラスの脚力となる。さすがソフトバンクが1位指名しただけあって、走力が極めて高いのが印象的。

 都市対抗や日本選手権だけでなく、それ以外の映像も幾つか確認してみた。出塁すると積極的に盗塁を試みる姿勢は確かで、走力を売りにしているのは間違いない。ただし高卒1年目から都市対抗予選に出場し、3年間で14試合に出場。しかし走塁を、一度も決めたことがないのだ。プロ・アマ交流戦やオープン戦などでは積極的に走る選手なのに意外な数字ではあるのだが、ようはプレッシャーのかかる場面・大事な試合では走って来ないということ。ここに1つ、プロ入り後乗り込えないといけない大きな壁があることが伺える。走力は確かなので、緊迫した場面でも走る勇気と技術をプロ入り後身につけなければならないということなのだろう。

守備面:
☆☆☆★ 3.5

 脚力があり、プロでも上位クラスの肩があるのは間違いない。その一方で、打球勘やキャッチングにはまだまだ荒削りというか、プロで鍛えないと行けない余地があるということ。身体能力はA級でも、守備でも技術的には粗いことがわかる。プロの指導で、何処まで能力を活かせるようになるのか注目してきたい。現時点では、守備はけして上手いというレベルにはない。

(打撃内容)

 日本選手権では緒戦で敗れてしまったが、打ったヒットは左投手のチェンジアップを抜かれてライトフライが外野手と内野手の間に落ちたポテンヒットのみ。あとは、ピッチャーゴロやショートゴロなどだった。都市対抗の時同様に、まだ脆い・粗いという印象は短期間で拭えていない気がする。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 両足の揃えたスクエアスタンスで、グリップを高めに添える強打者スタイル。腰は適度に据わりつつ、少しスクエアで立ってもクロス気味の形になる。したがって両眼で前を見据えるや全体のバランスとしては、どうしても平凡になってしまう。しかし都市対抗の頃に比べると、だいぶ好い感じの構えになってきている。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下る時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。典型的なアベレージヒッターに観られる仕掛けであり、この選手は対応力重視スタイルなのだと感じられる。都市対抗の頃は「平均的な仕掛け」だったので、若干全体の始動を早めて、打率を残したいという意志の現れだったのかもしれない。

<足の運び> 
☆☆☆ 3.0

 足を軽く上げて回し込み、真っ直ぐから少しインステップ気味に踏み込んでくる。始動~着地までの「間」は充分取れているので、速球でも変化球でもスピードの変化に幅広く対応できる。真っ直ぐ~インステップ気味に踏み出すことを考えると、意識は外角寄りに若干重きを置いている可能性が。

 何より気になるのは、踏み込んだ前の足が外角のさばく時でもブレてしまうということ。上半身の振りに対し、下半身が負けてしまっているのだ。こうなると外に逃げて行く球や低めの球への対応は厳しく、外角でも高めの球を払うようにしか打てなくなる。

 ステップが狭いことも影響しているかもしれないが、元来引っ張る打撃を得意としているからではないのだろうか。それでもあらかじめ右方向への意識がある時は足元がブレない時もあるので、まだまだ打ち損じが多く打撃が安定しないのは、意識次第でスイングが安定していないことに原因があるのではないのだろうか。

<リストワーク> 
☆☆☆ 3.0

 打撃の準備である「トップ」の形は早めており、速い球には対応しやすいのではと。バットの振り出しは、少し遠回りに回ってくるので、確実性は高くない。それでもバットの先端であるヘッドは残そうという意識はあるので、変な当りでもフェアゾーンに飛ぶ確率は高いのかもしれない。

 また内角の球に際しても、懐が窮屈でけしてバットの抜けが好いタイプではない。それでもステップを狭めて腰の回転を促すなど、ボールとの距離さえ確保できれば思いっきり引っ張りたいタイプだと考えられる。

 スイングの弧は大きく取れる選手だが、ボールに角度を付けて飛ばす感じではないので、それほどオーバーフェンスは現状期待できない。二塁打・三塁打が多いとか、引っ張った打球は強烈だとかそういったタイプではないのだろうか。あとは身体は強いので、うまく巻き込めた時には本塁打が出るのではないのだろうか。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げは静かで目線の上下動は少ない。しかし体の開きが我慢できないのは、どうしても気になる部分。軸足は地面から真っ直ぐ伸びて安定しており、軸回転ではスイングできている。内モモの筋肉も強そうなので、強烈な打球を生み出せる原動力になっている。

(打撃のまとめ)

 タイミングを合わせるのが下手というよりも、足元が動いてしまったり、バットが遠回りに出てくることでミスショットが多いというのが気になる。現状は、外角に逃げて行くスライダーか低めにボールを集めておけば痛手は喰らわないだろうという印象。またそれでいて、内角も窮屈なので打てる範囲はかなり狭い。そのため率は残り難いだろうという印象は、都市対抗の時と変わっていない。


(最後に)

 打撃に関しては、構えや始動のタイミングを変えて来るなどの変化は感じられたものの、根本的な部分では変わった印象はうけなかった。ゆえに一位指名になったのは、都市対抗以後急激に良くなったからということでは無さそうなのだ。

 その一方で、都市対抗の時より速い一塁到達タイムを叩き出し、プロでも俊足レベルだと思っていた脚力が球界最上位クラスの走力があることを私自身が知った。そういった走力に関する印象が変わり、また現状を変えてゆこうという本人の意欲は短期間でも感じられたので、評価は都市対抗の時よりもワンランク引き上げることにする。ただし打撃に関しては、一軍で通用するまでには数年かかるのではないのだろうか。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2019年 日本選手権)








佐藤 直樹(21歳・JR西日本)外野 177/78 右/右 (報徳学園出身) 





 「対応力が課題」





 今年の場合、大学・社会人含めて極めて右の外野手が不足している。そんななか指名が現実的なのが、この 佐藤 直樹 。強肩・俊足の身体能力に加え、振れるのがこの選手の最大の魅力なのだ。その一方で、対応力という部分では課題を残す。


(守備・走塁面)

 都市対抗の時に計測したタイムが、右打席から4.23秒。これを左打者に換算すると3.97秒に相当するので、プロに混ぜても俊足の部類。さらにそのタイム以上に、出塁すればすかさず盗塁を仕掛けて来るなど、走力を全面に出したプレースタイル。足は、プロでもアピールできるポイントなのだろう。

 都市対抗では、JFE西日本の補強選手としてセンターとして出場。JR西日本では、ライトを守っていた印象が強い。打球勘やキャッチングなどはまだ改善の余地はあるのかなと思える部分はあるものの、守備範囲の広さ・肩の強さは合格ラインではないのだろうか。プロでも上位クラスの、強肩の持ち主だという気がする。

 そういった意味では、技術的な部分は発展途上でも、脚力・地肩はプロの素材といった感じがする。





(打撃内容)

 センターからレフト方向への打球が目立つが、右中間方向にも強く打ち返すことができる。粗っぽいというか脆いというか、確実性という部分が改善して行けるかが課題ではないのだろうか。大きな弧を描いたスイングで思いっきりバットを振れる選手であり、まともに捉えると長打を連発できる破壊力のあるバッター。

<構え> 
☆☆★ 2.5

 前の足を軽く引いて、グリップを高めに添えバットを後ろに方向け寝せてボールを待ちます。後ろ足に体重を預けつつ、腰の据わり具合は悪くありません。しかし全体のバランス、両眼で前を見据える姿勢という意味では少し悪いように見えます。

<仕掛け> 平均的

 投手の重心が沈みきった底の時点から動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と長打力を意識した、中距離打者や勝負強さを武器にするポイントゲッターに多く見られる仕掛けです。彼のプレースタイルを見ていても、そういった感じがします。

<足の運び> 
☆☆☆ 3.0

 足を軽く引き上げて回し込み、真っ直ぐ~幾分ベース側に踏み込んできます。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応します。

 気になるのは、インパクトの際に踏み込んだ前の足が動くことが多いこと。こうなると外に逃げてゆく球や低めの球について行くのが厳しくなります。それでもあらかじめセンターから右方向への打球を意識しているときは、足元も我慢できていることも多いのですが。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 あらかじめ「トップ」に近い位置にグリップを置いているので、速い球に立ち遅れる心配はありません。スイング軌道にもそれほどロスはなく、外の球に対してはヘッドも上手く立てて拾えています。気になるのは、内角の捌きです。懐が窮屈なので、ある程度身体とボールとの距離がないと捌けないタイプです。引っ張るのは好きな選手なので、立ち位置などを工夫して改善していって欲しいところです。

 スイングの弧が大きく、ヘッドスピードも非常に速い。まともに当たれば、強烈な打球、あるいは長打で外野手の間や頭の上を超えてゆくような打球も充分期待できます。あとは、いかにそういった打球の確率を高められるかではないのでしょうか。

<軸> 
☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げは小さいので、目線が上下動しないように見えます。しかし自分からボールに突っ込んでいってしまうところがあるのか? 目線は思ったより安定していません。身体の開きも我慢できている時とそうじゃない時もあり、軸足の形含めて不安定なのも頷けます。それでも軸足の内モモの筋肉は発達しており、強烈な打球を生み出す原動力になっています。

(打撃のまとめ)

 守備・走力だけでなく、打撃でもプロの素材だと思います。しかしまだ安定感・確実性に欠けるので、プロでも1,2年はファームで育成といったことになるのではないのでしょうか。即戦力というよりは、素材の好い野手を獲得するという色彩が強いのかと思います。


(最後に)

 即結果を求めるというよりも、数年後にどうなっているのかという期待感が大きなタイプかと。俊足・強肩・パンチ力を含めた打撃はプロ級の素材なので、高卒3年目の若さを加味すれば充分に指名されると思います。個人的には下位指名級だと思いますが、右打ちの外野手が不足していることを考えると、中位(3位~5位)あたりでの指名は充分想定できるのではないのでしょうか。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2019年 都市対抗)