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小深田 大翔(楽天)遊撃手のルーキー回顧へ







小深田 大翔(24歳・大阪ガス)遊撃 168/67 右/左 (神戸国際大付-近畿大出身) 





 「もう少し見たかった」





 今年の都市対抗では、優勝したJFE東日本と緒戦で当り、僅か1試合のみでドームをあとにした 小深田 大翔 。福田 周来(NTT東日本-オリックス)以来の素材として期待していただけに、正直もう少し見ていたかった気がする。大学・社会人の先輩には、現在阪神のレギュラーとして活躍する 近本 光司(阪神)を間近に見てきたことも大きなはず。


走塁面:
☆☆☆★ 3.5

 走力は、一塁までの塁間を3.9秒台で走れプロでも俊足レベル。近本のように、プロで足を売りにできるほどかと言われると、そこまで絶対的なものは感じられない。それでも隙きをみて、走ることができる選手。環境に慣れれば、徐々にその能力を発揮してくるかもしれない。

守備面:
☆☆☆★ 3.5

 細かい動きができる選手で、ニ遊間選手に求められるスピード感も感じます。バウンドの合わせ方も上手いですし、守備範囲も広い。プロで不動のショートとして信頼されるかは微妙ですが、ニ遊間で勝負して行ける選手ではないのでしょうか。守備・走塁に関しては、1年目から一軍に混ざってやって行けるぐらいのレベルにはあるように思えます。


(打撃内容)

 小柄ながら、全く非力感はありません。外角の球を強く叩けなかった近本あたりと比べると、外への不安はありません。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 ほぼ両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップを高めに添えます。背筋をしっかり伸ばし、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスは平均的でしょうか。少し気になるのは、全体に構えに力が入り過ぎていて、少し固い印象を受けます。

 昨年までは、後ろ足に体重を預けるスタイル。しかしその辺は、かなり変わっていました。

<仕掛け> 遅すぎ

 投手の重心が沈みきって前に行く段階で、ベース側につま先立ち。本格的に動き出すのは、リリース直前という「遅すぎる仕掛け」を採用しています。ここまで遅い始動は、木製バットを握ってプロレベルの球に日本人が対応するのには厳しいので、個人的には否定的な見方で見ています。昨年も遅かったのですが、ここまで遅くなかったように思います。また一度つま先立ちする動作はなく、ギリギリまで引きつけてから打ちに行くというスタイルでした。タイミングのとり方では、個人的には昨年の方が良かったように感じます。

<足の運び> ☆☆☆ 3.0

 リリース直前に小さくステップして、真っ直ぐから少しベース側に踏み込んできます。始動~着地までの「間」がないので、狙い球を絞り、その球を逃さないことが求められます。真っ直ぐ~ベース側に踏み出すので、真ん中近辺~外角寄りの球への意識が強いことがわかります。その反面、内角の捌きには窮屈さがあります。

 踏み込んだ足元が、インパクトの際にもブレないで我慢できています。そのため、低目や逃げて行く球にも食らいつくことができます。また内角は窮屈なのですが、ステップが狭めで真ん中~甘めの内角球を引っ張って巻き込むのも嫌いではないはず。今年の都市対抗でも、唯一のヒットは一二塁間を引っ張って破る当りでした。


<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 あらかじめグリップを、「トップ」に近い位置まで引いて構えます。そのぶん始動の遅さを補うことができますが、こうなるとリストワークに遊びがなくなり、柔軟な打撃がし難いという弊害が生まれます。

 それでいてバットの振り出しは、けしてインサイドアウトで振り抜くような最短距離で出してくるわけではありません。むしろ外角の球に対しては、バットのしなりを活かし強く振り抜くことを重視しています。このへんは、プロ向きだと言えるのではないのでしょうか。

 バットの先端であるヘッドも下がっていませんし、広い面でボールを捉えることができます。打球は上がり難いですが、フェアゾーンにボールを落ちる確率は高まります。スイング自体は非常に強く鋭いので、この点ではプロの投手の球でも力負けするようなことはないのではないのでしょうか。


<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げは小さいので、目線の上下動はそれなり。体の開きも我慢でき、軸足にも粘りが感じられます。

(打撃のまとめ)

 体が小さくても全く非力さを感じることはないのですが、全体的に打てるポイントが限られていて、柔軟性に欠けるところは気になります。そういった意味では、対応力という意味ではプロでも苦労するのではないかという不安は残ります。特に始動が遅すぎる点も、プロのスピード・キレに対し差し込まれる場面は出てくる恐れはあります。打撃に関しては、数年かかるようにも思えます。


(最後に)

 守備・走塁は即戦力が期待できますが、打撃に関しては不安な点があります。社会人の野手として頭一つ抜けた存在だった 近本 に比べると、社会人の有望株の一人という範疇からは抜け出せていないようにも感じます。ニ遊間を担えるというアドバンテージはありますが、その点では近本よりはワンランク・ツーランク劣る評価になるのではないのでしょうか。

 それでも今年の社会人を見た時に、ある程度打てて守れる選手ということを考えると、この選手はトップクラスの存在。中位(3位~5位)ぐらいの間には、指名してくる球団が出てきても不思議ではないように思います。ただし、1年目からバシバシ活躍できるのかには疑問が残ります。また近本や木浪のように、2年目以降楽しみだねという素材としての奥行きもあまり感じられません。福田 周平(オリックス)のような存在に、なれると良いのですが・・・。個人的には、1年目見たときよりも少しトーンダウンしています。



蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2019年 都市対抗)









小深田 大翔(23歳・大阪ガス)遊撃 168/67 右/左 (神戸国際大付-近畿大出身) 





 「福田周平以来の遊撃手」





 小深田 大翔 は、社会人ではオリックスで1年目からレギュラーを確保した、福田 周平(NTT東日本出身)以来の社会人遊撃手ではないかと思うのだ。守備範囲の広い遊撃守備に、甘い球を逃さない打撃と、極めてそのプレーは完成度が高い。


(守備・走塁面)

 細かいステップが踏める選手で、バウンドの合わせ方が上手いです。非常に守備範囲も広く、かなり打者によってポジションニングを変えてきます。地肩も基準レベルはありそうで、けして弱くありません。大学時代はセカンドの選手というイメージでしたが、ショートトも充分こなせる能力があります。ニ遊間候補らしく、プレーにスピード感があります。守備に関しては、即一軍の試合に混ざっても違和感なくやれるのではないのでしょうか。

 一塁までの塁間は、4.0秒前後で走り抜けることが多いです。プロの走力としては、絶対的なものはなく、中の上~上の下 ぐらいといった感じです。大学時代は毎シーズン1~5個ぐらいの盗塁数でしたが、都市対抗では5試合で3盗塁を決めるなど積極的に盗塁を仕掛けてきます。あとは、精度がどの程度まだ高められるかではないのでしょうか。


(打撃内容)

 高めの甘い球に対し、逃さず振り出す「鋭さ」があります。小柄な選手ですが、転がすというよりもきっちり捉えてくるタイプ。上手くタイミングを合わせるというよりも、甘い球をスパンと振り抜ききます。そのため意外に、外野へのフライが多く、ボールを捉えるミートセンスは確かです。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップの高さは平均的。少し後ろ足に重心をかけつつ、腰の据わりや全体のバランスは並ぐらい。両眼での前の見据えるは、それなりといった感じです。

<仕掛け> 遅め

 投手の重心が沈みきって、前に移動する段階で動き出す「遅めの仕掛け」を採用。ボールをできるだけ引きつけてから動き出すので、長距離打者や生粋の二番打者に多く見られます。彼の場合は、後者だと言えるでしょう。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を軽く上げて、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」は短く、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さない「鋭さ」が求められます。彼の場合、そういった打撃が合っているように思います。

 真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたいタイプ。踏み出した前の足も、インパクトの際に止まってブレません。低めの球にも逃げてゆく球にも食いついてゆきますが、彼の場合は難しい球を上手くさばくというよりも、打てる球を確実に仕留めるタイプかと。  少々ステップが狭いので、前にしっかり体重が移ってゆくのかという意味での打撃に幅があるのかは若干気になります。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 あらかじめグリップを捕手方向に引いて構え、打撃の準備である「トップ」を作るまでに立ち遅れる心配はありません。通常引いて構えてしまうと、リストワークに遊びがなく柔軟性が損なわれやすいです。しかし彼の場合、そういった柔らかさを求めるよりも、甘い球が来たら打ち漏らすことなく叩く振り出しの良さが売りなので、このスタイルでも良いように感じます。

 スイング軌道しも、インパクトまでロスはありません。特にインサイドアウトというほどでもないですし、それでいて遠心力を活かしてというほどでもありません。非常にコンパクトで、癖の無いスイングで振れています。

<軸> 
☆☆☆☆★ 4.5

 足の上げ下げは小さく、目線はほとんど上下動しません。体の「開き」も我慢でいていますし、軸足の形も安定しています。調子の波が少ない、安定感のある打撃が期待できそうです。

(打撃のまとめ)

 打撃を見ていての印象は、非常にコンパクトだということ。そして、甘い球は逃さないという鋭さを持ったタイプだとわかりました。技術的にもすでに完成されているので、今後大きく上積みをというタイプではないようです。いかに今の力で、プロでやれるのかというところで判断すべきではないのでしょうか。


(最後に)

 都市対抗では、新人賞にあたる若獅子賞を受賞。20打数6安打で打率3割と、ルーキーながら最高峰の舞台で存在感を示せました。三拍子まとまった遊撃手として、2年目の今年は大いに注目されるはず。順調にこの一年間を過ごせたら、即戦力を期待できる遊撃手として、上位での指名も検討されるかもしれません。今年の社会人野手では、現時点で最もプロに近い位置にいる選手ではないのでしょうか。


(2018年 都市対抗)