19sp-8


 




松岡 洸希(西武)投手のルーキー回顧へ







 松岡 洸希(19歳・BC武蔵)投手 179/83 右/右 (桶川西出身)
 




「身体に絡みつくように」 





 かつてヤクルトのクローザーを務めていた、林昌勇 を彷彿とさせるような、柔らかい腕の振りが際立つサイドスロー。私の経験上、腕がしなって出てくるようなサイドスローに対しては、NPBの各打者は想像以上に苦労する。そういった意味では、この 松岡 洸希 は大変興味深い投手なのだ。


(投球内容)

ワインドアップで、しっかり振りかぶって投げてきます。

ストレート 常時140キロ~MAX90マイル・145キロ 
☆☆☆ 3.0

 球威・球速という意味では、NPBのドラフトにかかる選手としては平均的。しかし先に述べたように腕がしなって出てくるので、打者はタイミングが合わせ難いし、ボールも手元までしっかり伸びてくる。したがって、空振りを誘える球質なのだ。コントロールはかなりバラツキがあるので、そのへんをどうみるか? ここまでのリーグ戦では、12回2/3イニングで14四死球と投球回数を上回っているのは多すぎ。

変化球 スライダー 
☆☆ 2.0

 変化球は、観戦した試合ではスライダーのみといった感じ。サイドだけに曲がり自体は大きいし鋭いのだが、球離れが早くうまく制御できていなかった点は気になるところ。それでも12回2/3イニングで13奪三振を奪うなど、投球回数を上回っている。

その他

 クィックは1.20秒前後と平均的。野球センスに優れるというよりは、身体能力に優れているタイプではないのだろうか? 微妙な駆け引きをできるタイプには見えないが、リリーフ投手らしく投げっぷりは悪くなかったし、各動作の動きは俊敏だった。

(投球のまとめ)

 リーグ戦では12回2/3イニングで12安打と、投球回数とほぼ同数の被安打を食らっている。さらに四死球はそれを上回るといった内容なので、防御率も 6.39 と実績は伴っていない。しかしBCリーグで最もNPBに近い男とも言われるゆえんは、高卒1年目の若さと素材としての魅力にある。結局DeNA打線をヒット1本こそ打たれたが、アウトは全て三振できりぬけた。





(投球フォーム)

サイドスローなので、通常のフォーム分析には当てはまらないので簡単に。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆ 4.0

 サイドハンドでもお尻をしっかり一塁側に落とせるフォームで、身体をひねり出すスペースは確保している。そのためカーブやフォークといった、捻り出して投げる球種でも無理はないのだが、腕の振りが横振りだけにフォークはどちらにしても厳しいだろう。

 「着地」までの粘りもよく、身体を捻り出す時間も確保。そのためキレや曲がりの大きな変化球の習得も期待できそうには思えます。ましてあの柔らかい腕の振りをみると、まだまだ良い変化球を教えればマスターできそうではあります。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの狂いは少ないはず。しかしリリースが不安定のせいなのか? ボールはかなりバラツキます。特に制御できないのは、ストレートよりもスライダーのコントロール。逆にサイドで曲がりすぎて、その精度が低い可能性もあります。

 足の甲の地面への押しつけは、抑えられているのですが短いです。そのため充分に浮き上がる力を抑え込めず、ボールが上吊りやすいのかもしれません。しかしそれ以上に気になるのは、球離れも悪さ。このリリースの不安定さが、一番コントロールのアバウトさに繋がっているのではないのでしょうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻は一塁側に落とせていて、身体をひねり出す時間を確保。またカーブやフォークなどの球種も見られないので、基本的に肘への負担は少ない。逆にサイド故に、別のところに負担がかかっている可能性が。

 腕の送り出しも、サイド故に肩への負担は少なそう。かなり力投派なので、疲労を溜めやすい傾向にはあるのだろうが。サイドハンドでも、比較的身体への負担は少ないタイプだとみている。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りがあり、打者としては腕の振りのしなりも相まってタイミングが合わせ難いように見える。サイドの割には、前の肩の開きも抑えられており、むしろ見えないところから来る感じなのかもしれない。それでもリーグでは、投球回数とほぼ同数程度の安打を打たれているのは、球質やフォームというよりも根本的にコントロールが甘いからなのだろうか?

 腕の振りはよく、投げ終わったあと身体に絡んでくる。したがって腕の振りに勢いがあり、打者の空振りは誘いやすい。また投げ終わったあとは、地面を強く蹴り上げて来るように、前にしっかり体重は乗ってきている。したがって、打者の手元まで勢いのある球が投げられている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に「球持ち」に課題がある。このへんの指先の感覚やリリースが安定して来ると、制球を司る動作も悪くないので改善されそう。故障のリスクもさほど大きくなく、良い変化球も習得できる可能性を秘めている。実際の投球は荒れあれだが、土台となるフォームの技術は低くない。それだけに、グッと良くなる可能性は秘めていると判断する。


(最後に)

 現状は、本会議の終わり~育成あたりの指名が予想される。恐らくこの選手は、まず今年のドラフトで指名されるのではないかという気がするのだ。即戦力とは言えないが、数年ファームで鍛え上げれば一軍でも期待が持てる素材ではないかと。当然どの球団も、そういった手応えを感じるだろう素材だから、本会議の間に指名しないと獲れないかもしれない。個人的にも、指名リストに名前を残してみたいと思わせてくれる選手だった。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2019年 BCリーグ選抜)