19sp-4





小木田 敦也(オリックス)投手のルーキー回顧へ







 小木田 敦也(23歳・TDK)投手 173/83 右/右 (角館出身)
 




「元々こんなものでは?」 





 秋田の角館高校から、県内では知られた存在だった 小木田 敦也 。TDKに進んでからは、1年目から公式戦で活躍。2年目には、150キロを超す真っ直ぐで翌年の有力な指名候補と目されていた。しかし、肩の故障などもあり指名が見送られ、以後それほどパフォーマンスが落ちているとは思われないものの、指名がなく社会人5年目を迎えていた。


(投球内容)

 ドラフト会議後に行われた都市対抗本戦・西部ガス戦では、先発して 5回を投げて7安打・2四球・5三振・4失点とピリッとしない内容だった。しかし、NTT東日本戦ではリリーフで登場し、1イニングをビシッと抑えて面目躍如。やはりこの選手は、ゲームメイクする先発よりも、完全にリリーフタイプなのではないのだろうか。

ストレート 148~150キロ ☆☆☆★ 3.5

 コンスタントに150キロ近い真っ直ぐを投げ込んで、ボールの勢い・キレには中々のものがあります。それほど細かいコントロールがあるわけではないのですが、ストライクゾーンにはコンスタントに集めて来る感じ。実際2300回転がNPB投手の平均と言われる回転数の中、力を入れた時には2500回転前後の真っ直ぐを投げ込めます。

 気になると言えば、ボールの勢いの割に見やすいフォームなので、その点で一辺倒になると打ち返されてしまう恐れがあります。そのため、ボールの勢いが多少落ちる先発だと、持ち味が出にくいのではないのでしょうか。

変化球 スライダー・カーブ・スプリットなど ☆☆☆★ 3.5

 110キロ台のカーブにはブレーキがありますし、120キロ台後半のスライダーにはカーブよりも落差はありませんが、曲がりながら沈む軌道を描きます。さらに小さく沈む140キロ近いカットボールなのか? スプリットなのか 見分けの難しい球もあります。明確に縦に鋭く落ちる球はないのですが、タイミングを狂わせたり、的を絞らせない質の好い変化球を持っています。以前は、結構フォークのように、縦に結構落ちる球も持っていました。この球がスプリットなのかもしれませんし、故障する中で封印しているのかもしれません。

その他

 牽制もまずまず鋭く、クィックも 1.05秒前後と素早い。間を使ったり微妙出し入れをしてくるような投球術ではないのですが、投げっぷりがよく投球以外の部分も器用こなせる運動神経の高さがあります。

(投球のまとめ)

 特に高卒2年目ぐらいのパフォーマンスと、今が目に見えて何か変わったという感じではありません。多少球種が増えて多彩になったのかなという印象はありますが、それ以上に故障の不安が薄れたことが指名の大きな要因だったのかもしれません。


(投球フォーム)

 では今度は、フォームを分析して考えてみましょう。ノーワインドアップから、勢い良く足を引き上げてきます。軸足一本で立ったときに、膝がピンと真っ直ぐ伸びて立っており力みが感じられるフォームで気になると言えば気になります。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 地面に向けて足をピンと伸ばすので、マウンドでは突っ立った形になります。以前はそこからお尻がグ~と一塁側に沈み込んでいたものの、今は沈まずに前にそのまま足を逃がす形に。身体を捻り出すスペースはとれていないので、カーブやフォークには適さない投げ方ではあります。

 それでも「着地」までの地面の捉えは早すぎることはなく、身体を捻り出す時間はある程度確保。以前ほどカーブやフォークを投げようとすると窮屈なフォームになっていますが、それ以外の変化球を投げるのには曲がりもキレも好い球を投げられる下地はあります。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めている。また、フォーム全体が縦に並進して来る外人投げなので、左右のコントロールのブレはし難いのではないのだろうか。

 足の甲の地面への押しつけができず浮いてしまっているので、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい傾向に。それでも「球持ち」が良く押し込むことで、ボールが抜けるのを防げるようになってきている。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻が落とせないフォームになっても、カーブなどは結構使ってきています。それでも縦の変化は、落差や負担を軽減させるスプリットにすることで、肘への負担は少なくなっているのではないのでしょうか?

 腕の送り出しを見る限り、肩への負担は感じられません。それでも肩の故障に悩まされたのは、力投派で疲労を溜めやすい傾向にあったからかもしれません。現在、この肩の問題が完全に払拭されたのかはわかりません。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは適度に作れているので、極端に合わされやすいということは無さそう。しかし、ボールの出どころは見やすい傾向にあり、そのため甘くない球でも打ち返されてしまったり、縦の変化球を見極められ振ってもらえない可能性はあります。

 腕はしっかり振れているのですが、体型的な問題なのか? 投げ終わったあと、身体に巻き付いて来るような粘っこさはありません。ボールには適度に体重を乗せては投げられているとは思うのですが、足の甲が完全に地面から浮いてしまっているので、下半身のエネルギー伝達は遮断されています。そのため、上体や腕の振りによってキレを生み出していることになります。そのへんも、負担がかかりやすい要因なのかもしれませんが。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」に課題を感じます。故障のリスク・制球を司る動作は平均的といった感じで、将来的に武器になるほどの変化球を習得できるかも微妙です。むしろ決め手はないけれど、各変化球の曲がりは好いので、速球を魅せてつつそういった変化球で交わす投球が持ち味になってくるのかもしれません。


(最後に)

 若くして、これだけのパフォーマンスを示してきながら指名されないで来たのは、肩への不安という部分があったのが大きかったのかもしれません。しかし、現在のパフォーマンスは肩を痛める以前とも変わらない勢いを維持はできています。肩の問題を払拭できているのかには疑問も残るので、登板過多になったときは心配です。しかしもう本人も、社会人でやり残したことも少ないでしょうから、故障が再発しようとも、やれるとこまでやってみるという気構えで、球団も本人もプロ入りに踏み切ったのかもしれません。

 そういった意味では、長きに渡って活躍できるかには不安は残ります。しかし、短期的に爆発的な活躍や貴重な役割を果たせるかもしれないので、この順位であれば有りなのではないのでしょうか? 数年後というよりは、一年目から結果を残して欲しいタイプですし、能力を遺憾なく出せる状態ならば、中継ぎとして一軍で活躍しても全然不思議ではないと評価します。


蔵の評価: (下位指名級)


(2021年 都市対抗)










 小木田 敦也(20歳・TDK)投手 173/78 右/右 (角館出身)
 




 「投げっぷりが良い」





 今年の社会人は、高卒3年目を迎える選手に人材が多いという。そんな中、この 小木田 敦也 も、3年目のシーズンを迎えようとしている。すでに昨夏の都市対抗で、全国デビューを経験。高校時代にはなし得なかった、全国の舞台を経験した。


(投球内容)

 ガッチリした体格から、グイグイと速球を投げ込んでくる。その投げっぷりの良さこそが、この投手の真骨頂。

ストレート 常時145~150キロ 
☆☆☆★ 3.5

 リリーフで投げれば、コンスタントに140キロ台後半を連発。都市対抗の三菱重工神戸戦では、150キロを東京ドームで記録。全体的にボールが高めに抜けがちなのは気になるものの、勢いと球威のある球を投げ込んでくる。また右打者にも左打者にも、外角一杯に集めることができる。ボールの質としては球威型で、それほど打者の空振りを誘うタイプではないのだが。

変化球 スライダー・フォークなど 
☆☆☆ 3.0

 小さく横滑りスライダーで、確実にカウントが整えられるのが強味。また追い込むと、フォークを使って来る。このフォークはかなり確率で落ちるのだが、打者に意外に見極められてしまっていたのは気になった。

その他

 牽制もまずまず鋭く、クィックも 1.05秒前後と素早い。間を使ったり微妙出し入れをしてくるような投球術は感じないが、マウンド捌きがよく投球以外の部分も器用こなせる運動神経の高さがある。

(投球のまとめ)

 速球の球筋が高いので粗っぽい速球派と思いきや、変化球でしっかりカウントが取れるなど四死球で自滅する危うさは薄い。変化球のキレ・精度も悪くなく、角館高校時代からの技術とパワーがうまく調和した投球は健在だった。現状は短いイニング向きだと思うが、意外に面白い速球派と思えるものを持っている。





(投球フォーム)

今度は、フォームの観点から考えてゆきたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆ 4.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、お尻の一塁側への落としは甘く見える。しかしその後、グ~とお尻が落ちてゆくのでそれほど問題はないのでは。したがってカーブやフォークを投げても、窮屈にはならないのではないのだろうか。

 また「着地」までの粘りはよく、うまく前に足を逃がすことができている。そのためキレや曲がりの大きな変化球の習得も可能であり、武器なる球を身につけて行ける可能性が高い。


<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後までしっかり内に抱えられているため、両サイドの投げ分けは安定しやすい。右打者にも左打者にも、外角一杯に投げ込めているのは印象的。

 足の甲での地面への押しつけができず浮いてしまっているのは気になり、ボールが上吊ってしまうのはそのせいではないのだろうか。ボールは前で放せているなど、「球持ち」が良く想像以上に指先の感覚には優れているようだ。あとはもう少しボール押し込めるようになれば、低めへの球も増えてくるのではないのだろうか。


<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 最初からお尻が落ちるフォームではないが、体を捻り出すスペースが確保できており、カーブやフォークといった球種を投げても肘への負担は少ないのでは?

 腕の送り出しも、上から投げ込んでくる割には無理は感じない。したがって肩への負担も、それほど大きくはなさそうだ。ただし力投派なので、消耗は激しそう。疲労からフォームを崩し、故障に繋がらないように注意したい。


<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは作れているので、けして合わせやすいフォームではなさそう。ただし踏み込んだ足は開いて「着地」しているのもあり、体の「開き」は早く球の出処は見やすい傾向にある。そのためコースを突いたはずの球がはじき返されたり、フォークが見送られてしまうことが多いのも、このせいだと考えられる。

 腕は強く振れているが、「開き」が早いことで効果が下がっている。ボールにはしっかり体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで勢いと球威のある球が投げ込めている。


(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」に大きな欠点があるものの、それ以外は優れている。

 足の甲の押し付けができないぶんボールが上吊りやすいものの、コントロールは全体に安定。故障のリスクもさほど高くはなく、将来的にも投球の幅を広げて行ける可能性を秘めている。全体的には、実戦的なフォームだと言えるのではないのだろうか。



(最後に)

 
力と技を上手く兼ね備えた選手であり、今後の飛躍が期待される若手投手。けして今後の将来性がといったタイプではなく、経験豊富でマウンド捌きも良い完成度の高いタイプなのだろう。今年もその存在感を示せれば、3位前後での指名があっても全然不思議ではないはず。社会人の中でも、楽しみな若手投手の一人ではないのだろうか。


(2018年 都市対抗)