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河野 竜生(日ハム)投手のルーキー回顧へ







河野 竜生(21歳・JFE西日本)投手 174/75 左/左 (鳴門出身) 





「悪くはない」 





 春のスポニチ大会で見た時は、思ったほど完成度は高くなく、絶対的なものはないと思った 河野 竜生 。しかし都市対抗予選では、3試合・23イニングを投げて自責点0。本戦でも、新日鉄広畑戦で先発し、7回2/3イニングで2失点と試合を作った。高卒3年目にして、チームのエース・社会人上位の実績・実力を兼ね備えているのは間違いない。

(投球内容)

 一度引き上げた足を止めて、再び動き出すという二段モーション。この動きにより打者のタイミングをズラしたり、フォームにメリハリをつけているのではないのだろうか。

ストレート 常時130キロ台後半~145キロ 
☆☆☆ 3.0

 スポニチ大会の時に書きましたが、ピュッと腕を鋭く振ってキレを生み出すというよりは、下半身を使って球威のある球を投げ込んでくるといったタイプです。予選では23イニングで31奪三振と投球回数を遥かに上回る奪三振でしたが、本戦では10イニングで7奪三振と、ガンガン空振りを誘うタイプには見えません。両サイドにボールを散らせて、打ち損じを誘うタイプではないのでしょうか。

 スポニチ大会では全体にボールが高い感じがしましたが、この都市対抗では全体に高いというよりも、時々高めに行く球があるという感じではありました。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ 
☆☆☆ 3.0

 スライダーでカウントを整えられますし、同様にチェンジアップやカーブも織り交ぜてきます。目先をかえるという意味では使えるのですが、打者を仕留めるといった絶対的な変化球はありません。コンビネーション投手に見えますが、実際はストレート中心に投球が組み立てられ、苦しくなるとストレートで押すピッチングになります。それでいて打者を仕留めきるほどの絶対的なストレートの持ち主でもないので、一定レベル以上の打線相手だと苦しくなる要因ではないのでしょうか。スポニチ大会のレポートにも触れましたが、結構良いところに投げた変化球でも、打者についてこられる傾向があるのも気になります。

その他

 牽制はまずまず鋭いですし、フィールディングの動きも悪く有りません。春先は1.05~1.15秒とクイックも素早かったのですが、この都市対抗では1.3秒台と走者よりも投球リズムが狂わないことを重視していて投げていたようです。クィックが、けしてできない選手ではありません。

(投球のまとめ)

 変化球でカウントを整え一通り投げられ、速球も140キロ台中盤ぐらいまで出せるという基準レベルのスピード能力もあります。高校時代から好投手として知られて、経験も豊富でマウンド捌きにも優れ試合を作れます。ただし巧みな投球術だとか繊細なコントロールがあるわけではなく、思ったよりもクレバーというよりは気持ちを全面に出す力投派の側面があります。

 変化球で仕留めきれないと思うと、ムキになって力でねじ伏せようとしますが、プロの一軍打者をそれで仕留められるかと言われると現状疑問です。左腕でそこそこピッチングはできますが、5,6勝前後といった感じで、左腕がいない球団が先発の5,6枚目・谷間のローテーションぐらいに狙うタイプではないかと思います。すでにある程度完成はされているので、年齢は若いですが上積みが何処まで望めるかは微妙でしょう。


(成績から考える)

フォーム分析などは、春のスポニチ大会でも行ったので、都市対抗での成績を見て考えてみたいと思います。

2試合 10回 9安 2四死 7振 防 5.40

 この数字が、今の河野の実力を如実に現しているのかなと思い、予選の数字をあえて無視して本戦だけの成績を元に考えたいと思います。

1、被安打は投球回数の80%以下 ✕

 10イニングで9安打と、被安打率は90%。サンプルが少ないから参考にならないだろうという人もいるかもしれませが、実際試合を見ていてもそんな感じに見えてきます。絶対的なボールがないので、いろいろな球を織り交ぜて打ち損じを誘うという投球なので、まさに彼の現在の力を現している数字なのだと思います。

2,四死球は投球回数の1/3以下 ◎

 10回を投げて四死球2個ということは、四死球は20%。それほど繊細なコントロールがあるわけではないが、ストレートも変化球も両コーナーに散らすことができ、変化球でもしっかりカウントが整えられるので四死球で自滅するような危うさは観られない。

3、奪三振は1イニングあたり0.8個以上 △

 1イニングあたりの奪三振は、0.7個。しかし予選では、23イニングで31個と遥かに投球回数を遥かに上回っている。これは申し訳ないが、予選と本戦でかなり相手レベルの差が大きかったことも要因かと。ましてそれ以上の打力を誇るプロの打者には、より厳しい数字になるのではないのだろうか。都市対抗の1イニングあたり0.7個という数字は、リアルにプロでもその数字~それ以下になりそうとの印象を受けた。速球で押し切るほどではないし、変化球で仕留められるほどの球がないから。丁寧にコースを突いて、打ち損じを待つというスタイルに見える。

4、防御率は1点台 ✕

 予選では自責点0と完璧な内容だったが、本戦では初戦の新日鉄広畑戦が7回2/3イニングで2失点、続く東芝戦でも先発して2回1/3で4失点して早々降板している。春先から書いているように、まだまだ社会人レベルを圧倒できるほどの領域には達していない。

(成績からわかること)

 安定した制球力があることからも、ある程度試合を壊さないまとまりはありそう。しかし被安打・奪三振・防御率をみても、全国大会ではそこまで絶対的な内容ではなかった。そのへんが、実際の投球でボールを観ていても感じられること。この少ないサンプルでも、現状の彼の能力をよく反映したものとなっている気がする。


(最後に)

 現状の位置づけだと、1位としては物足りないけど2位ならアリかなといった感じ。しかし先発左腕が補強ポイントのチームならば、外れ1位で指名して来る球団があっても不思議ではない。今年は、左腕で上位を意識できる選手が非常に少ない。まして、ある程度一年目から一軍ということを考えると、少々物足りなさはあるが補強ポイントを優先したい球団は、そういった判断をして来るのではないのだろうか。

 あとは、プロ入り後どのぐらい伸びしろが残っているかではないのだろうか。高卒3年目と若いが、私はそれほどそういった部分での上積みには乏しいのかなといった印象はうけている。個人的には中位ぐらいの内容だけれども、左腕の稀少価値と高卒3年目の若さも加味されて上位指名(1位・2位)の間には消えそうだ。



蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2019年 都市対抗) 









 河野 竜生(21歳・JFE西日本)投手 174/81 左/左 (鳴門出身)





「絶対的ではない」 





 今年の大学・社会人のサウスポーの中でも、実戦力ではNO.1ではないかと位置づけられる 河野 竜生 。年が明けた最初の公式戦である、東京スポニチ大会で最新の投球を確認してきた。しかしその投球を見る限り、まだプロで1年目から大活躍するような、絶対的なものがないことがわかってきた。


(投球内容)

ボールの勢い・球威という点では、前日取り上げた・浜屋 将太(MHPS横浜)左腕とは明らかに違います。

ストレート 常時140キロ台~MAX147キロ 
☆☆☆ 3.0

 意外に生で見てみると、上半身や腕の振りでキレを生み出すタイプなのではなく、下半身を使って体重を乗せてくる来る球威型のフォームをしていること。球速は、ハマスタガンでコンスタントに140キロ台~MAX147キロまで到達。私が計測した中では、88マイル(141キロ)までが最速でした。しかし佐藤旭(東芝)と対峙した時に明らかに力で抑え込もうとして147キロを記録しましたが、このときは球速を計っていなかったので90マイル(145キロ)ぐらいは出ていそうな迫力でした。

 ボール自体はまだまだキレ型の範疇に入る印象ですが、両サイドに投げ分けるコントロールがあります。気になったのは、全体的にストレートの球筋が高いこと。その浮いた球を結構スコンスコン弾き返されていたのは、プロの世界ではより顕著になるのではないかという不安はよぎりました。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど 
☆☆☆ 3.0

 オフに作成した「本当に凄い奴」でも書いたのですが、あくまでも速球主体の投球の中に変化球を織り交ぜて来るといったピッチングスタイル。スライダー・チェンジアップ・カーブなどコンビネーションに馴染ませては来るものの、打者の空振りを誘うような絶対的な球種があるわけではありません。しいていえば速球よりも、左打者に対し外に逃げるスライダーで三振を奪うケースが多いということ。変化球は、両サイドに集まることが多くヒットの多くはストレートでした。しか良いところに決まった変化球にも、意外に打者がついてきていたのが引っかかります。

その他

 左腕らしく、牽制はまずまずの鋭さ。クィックは、1.05~1.15秒ぐらいでまとめられ、昨年よりも全体的に0.05秒程度速くなっていました。フィールディングの動きも良く、投球以外の能力に優れたタイプだと言えるでしょう。マウンド捌きも良く、経験豊富なサウスポーといった感じがします。

(投球のまとめ)

 シーズン最初の大会だったからなのか? それとも調子自体がイマイチだったのか? もう少し、完成度の高い投球を魅せてくれるのではという期待がありました。しかし意外に速球が簡単にはじき返されたり、ボールが高かったりと、この辺は即戦力を期待するのには不安が残りました。


(投球フォーム)

 オフに作成した「本当に凄いやつ」でもフォーム分析をしているので、動画を使って今年度のフォームを説明したいと思っています。完成したらこちらに貼りますし、ブログなどでもお知らせしたいと思います。今しばらく、お待ちくださいませ。


(最後に)

 高卒3年目の若手投手ですが、素材としては完成された選手。今後の伸び代に期待というよりも、素直に今の能力で判断すべき選手だと思います。その割に、今回のスポニチ大会では詰めの甘さを感じさせる登板となりました。

 なかでも印象的だったのが、前の2打席でいずれも安打を浴びていた 佐藤 旭(27歳・慶応大出身)外野手には力でねじ伏せに行った場面。この日最速の147キロを記録したのも、佐藤選手との3度目の打席の時した。クレバーなタイプなのかと思いきや、良い意味で熱い男、悪く言えばムキになる一面があるのだと感じました。ストレートで真っ向勝負しにいったのですが、3打席目もストレートをはじき返され、セカンド横を抜けて行きガックリしていました。

 高卒3年目の若さに加えサウスポーということを考えれば、ドラフトでも外れ1位から2位以内には消えることになるでしょう。しかし本当の意味で即戦力になりえるのか? あるいは今後一軍でバリバリに活躍できるのか? と言われると今回の観戦では疑問が残ってしまった登板でした。 その点で、若干辛めの評価に今回はとどめたいと思います。順調にゆけば、都市対抗などの舞台で再度確認することになると思いますが、課題が改善されていることを期待しております。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2019年 東京スポニチ大会)


 








 河野 竜生(20歳・JFE西日本)投手 174/75 左/左 (鳴門出身)
 




                        「NO.1左腕」





 今年のドラフト候補の中でも、大学・社会人でNO.1左腕とも言える存在なのが、この 河野 竜生 。その完成度の高いピッチングは、プロでも即戦力の期待が高まる。


(投球内容)

 体は大きくないが、コンパクトなフォームから投げ込んで来る実戦派サウスポー。鳴門高校時代から甲子園などで活躍し、洗練されたマウンド捌きには定評があった。

ストレート 常時140キロ前後~140キロ台中盤 
☆☆☆★ 3.5

 球速的には140キロ前後~140キロ台中盤ぐらいと、ドラフト候補としては際立つ球威・球速ではない。しかしピュッと打者は差し込まれやすく、5キロ以上は打席で速く感じられているのではないのだろうか。コントロール自体は、ストライクゾーンで大まかに投げ分ける程度で、それほど精度が高いといったほどではない。18年度の都市対抗・日本選手権の大舞台では、34回イニングで9四死球と、四死球率は26.5%(基準は33.3%以下)と、四死球でで自滅するタイプではないのだが。

変化球 スライダー・カーブ・ツーシーム・チェンジアップなど 
☆☆☆ 3.0

 投球の主体はあくまでも速球中心ながら、合間にスライダー・緩いカーブ・ツーシーム・チェンジアップを時々織り交ぜ、相手に的を絞らせない。どれか絶対的な変化球があるわけではないが、どの球でもうまくコンビネーションに馴染ませることができている。特に、甘いゾーンに入ってくるとかそういったことはない。そのため被安打も34イニングで22本と、被安打率は64.7%(目安80%以下)と、非常に低い。

その他

 牽制は、適度に入れて来る感じ。クィックは、1.1~1.2秒ぐらいと平均的だが、左投手としては速い方だろう。高校時代からマウンド経験が豊富で、マウンド捌きやマウンド度胸に優れている。

(投球のまとめ)

 ピンポイントにズバッと良いところに決めてくるといった感じではないが、球速以上のストレートを魅せつつ、変化球を散らせて打ち損じを誘うタイプ。それでも34イニングで28奪三振であり、1イニングあたり0.82個 と、先発投手の基準である0.8個を上回っている。

 凄みのある素材ではなく、また今後の上積みがどのぐらい残っているのかには疑問が残る。20歳ではあるが、そういったプロ入り後のプラスαを期待する選手ではなく、今の力が素直にプロで通用するかで判断すべき選手ではないのだろうか。


(投球フォーム)

 果たして今の技術で、プロで活躍できるのか? まだ改善すべきところは残されているのか? 考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足は地面に向けて伸びており、お尻はバッテリーライン上に残されています。そのため体を捻り出すスペースは確保されておらず、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適さないフォームです。

 また地面を捉えるまでは淡白で、粘りが感じられません。したがって体を捻り出す時間は短く、キレや曲がりの大きな変化球の習得は厳しいのではないのでしょうか。すなわちカットボールやツーシーム・スプリットなど、小さな変化でピッチングを広げて行くことが求められます。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは内に抱えられ、両サイドへの投げ分けはしやすいはず。しかし足の甲での地面への押しつけは浅く、力を入れて投げるとボールは上吊りやすい。しかし彼の場合さほど高めに抜けないのは、「球持ち」が良いことでボールをうまく制御できているからではないのだろうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は落とせていないものの、カーブやフォークといった球種をあまり投げないので悲観することはないだろう。腕の送り出しを観ても、肩への負担は少なそう。それほど力投派でもないので、疲労も溜め難いと考えられる。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りが短めのため、ボールが見えないところかピュッと出てくるようなギャップを作ることはできている。また体の「開き」は抑えられており、打者としてはタイミングが計り難いのではないのだろうか。

 腕はしっかり振れており、適度に勢いがあるので空振りは誘いやすい。ボールにも適度に体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで生きた球が投げられている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」に課題を抱えている。ただし彼の場合、「着地」までの粘りを作らないことで、瞬時にボールを出てくるというフォームにもなっているので、それが=悪いことばかりとは言い切れない。

 制球を司る動作、故障へのリスクもそれほど高くはなく、しいて言えば体を捻り出す時間がないぶん、これはという決め球になるような変化球の習得は今後も厳しいかもしれない。あくまでもストレートを主体に、球速のある変化を中心に投球の幅を広げて行くことになりそうだ。


(最後に)

 いますぐ一軍に混ぜても、左の先発として7,8勝ぐらいは計算できるぐらいの投球ではないのだろうか。ここから二桁はできるだろうといった凄みが出てくるのかは微妙だが、そういったものが出てくるようならば上位12名の中に入ってくるだろう。いずれにしてもゲームメイクできる先発型左腕は貴重なことからも、順調に今のままの技量を維持しても、外れ1位~2位ぐらいの間では消えてしまいそうだ。

 現状は、最も大学・社会人の左腕でも、プロ入り後の青写真が描きやすい投手。そういった計算がたつ存在として、高い評価でドラフトを迎えるのではないのだろうか。しかしまだ20歳、今の投球内容に満足することなく、その上を追求して頂きたい。


(2018年 日本選手権)







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