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立野 和明(日ハム)投手のルーキー回顧へ



立野 和明(21歳・東海理化)投手 181/78  右/右 (中部大第一出身) 
 




 「半即戦力」





 3月のスポニチ大会のときの寸評では、上位指名は揺らがないものの、まだプロの世界を想定すると絶対的なものは感じられない と評価した 立野 和明 。あれから4ヶ月、立野はトヨタの補強選手として、都市対抗の舞台で先発を任されていた。


(投球内容)

 ランナーがいなくても、セットポジションから勢いよく足を引き上げてきます。こういう動作を見ていると、先発よりもリリーフ向きなのかなと思える部分があります。

ストレート 常時145キロ前後~MAX148キロ 
☆☆☆★ 3.5

 平均して145キロ前後~速いときには150キロを超えてくるような球速を刻んできます。打者の手元まで勢いの落ちない適度に伸びのあるボールを、安定して投げ込んできます。そのボールを両サイドに大まかに散らせて来るのが、この投手の持ち味。しかし時々高めに抜けたりと、制球を乱すことがあります。

 またMHPS横浜戦でもそうだったのですが、このストレートも押し切るほど絶対的なものがないのも確か。社会人レベルでそうなのですから、プロの一軍打者ならばファールで粘ったり、甘い球をしっかり捉えられることも少なくはないでしょう。現状プロの打者相手に、球威でねじ伏せるほどでもなければ、空振りを誘うというほど抜けた速球ではないということです。

変化球 スライダー・フォーク・カーブなど
 ☆☆☆ 3.0

 どの球でもカウントを取ることができますが、まだこの球を投げられば空振が取れるといった絶対的な変化球はないように見えます。都市対抗のMHPS横浜戦では粘られ、緩いカーブでなんとかリズムを取り戻そうとするものの、最後まで修正できずに4回で降板しました。そのため、自分のリズムで投げられないときの、脆さを露呈しました。

その他

 クィックは、1.15~1.25秒前後と平凡で、スポニチ大会よりも遅かったです。これはあえて、投球に集中するためにクィックのスピードを落としていたのかもしれません。牽制は適度な鋭さがあり、けして下手ではありませんでした。

 ボールを長く持って「間」を作ろうともしたのですが、都市対抗では時間がかかりすぎてボーク扱いに。まだまだ投球術も、発展途上といった感じでした。

(投球のまとめ)

 投球の印象は、スポニチ大会で見た時とほとんど変わりませんでした。そのときの寸評にもある通り、素材としては魅力は感じられるものの、まだ即戦力として計算するのには厳しいといった中途半端な位置づけ。1年目から短いイニングでの登板やローテーションの谷間ぐらいならば任されるかもしれませんが、先発に定着するとかそういったレベルにはないように思います。

 あえて一年ぐらいファームで漬け込んで、2年目以降の飛躍に期待するといったタイプかもしれません。高卒3年目の社会人投手は、ある程度の完成度とまだ成長が見込めるということで人気になりますが、だいたいは中途半端な位置づけのまま伸び悩みます。まさに現状は、そういった過去の選手とだぶります。


(投球フォーム)

 オフシーズンに作成した「本当に凄いやつ」ではフォーム分析をしましたが、スポニチ大会のレポートではしませんでした。今回改めて、昨年のフォームと比べて技術的な変化があったのか考えてみたいと思います。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばし、お尻は一塁側に落とせている。したがって体を捻り出すスペースが確保できており、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種も無理なく投げられる。

 「着地」までの粘りは平均的で、体を捻り出す時間は並。一通りの変化球は投げられるが、将来的に武器になるような球まで覚えられるかは微妙。この辺は昨年とほとんど変わっておらず、決め球を未だに見出だせていないままである。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。したがって左右のブレが抑えられ、両サイドへのコントロールはつけやすい。

 その一方で、足の甲の地面への押しつけは浮きがち。したがって浮き上がろうとする力を抑え込めず、力を入れて投げるとボールが上吊ったり抜けたりしやすい。ボールは前で放すことはできているので、ある程度は高低のコントロールも制御できていはいるのだが。このへんも、昨年と全く変わってはいない。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻は一塁側に落とせているので、体を捻り出すスペースも確保され窮屈になることがない。そのためカーブやフォークといった球種を投げても、肘への負担は少ないだろう。腕の送り出しを観ていても、無理に角度をつけることなく肩への負担は少なそう。それほど力投派というほどでもないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。この部分も、昨年から変わっていなかった。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平凡で、打者としてはタイミングは比較的合わせやすい。さらにボールの出どころも早く見えがちなので、いち早くコースや球種が見破られやすいということ。こうなると、コースに投げた球でも踏み込まれたり、縦の変化などに手を出してくれなく恐れがある。実際に、そういった傾向が投球には見られる。

 振り下ろした腕は体に絡んで来るなど勢いがあり、空振りは誘いやすい。しかし先にあげたように、ボールの出どころが見やすいので、その効果は薄いと考えられる。ボールにしっかり体重を乗せてからリリースはできているので、打者の手元まで勢いや球威の落ちない球は投げられている。

(フォームのまとめ)

 以前ほどシュート回転して、中に中に甘く入る傾向は修正されている。その反面、ボールの出どころは早く見えるようになっており、容易に空振りを誘えなくなっているような気がする。そのへんは、当日の状態で微妙に変わってくるのかもしれない。

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」においては、「着地」までの粘りと「開き」の動作に改善の余地が残されている。下半身を強化し股関節の柔軟性を養えれば、もっと粘っこい投球も可能になるのではないのだろうか。

 故障のリスクは低く、足の甲が地面を押し付けるぐらいの下半身の使い方を覚えられれば投球も変わってきそう。ただし将来的に、武器になる変化球を習得して、劇的に投球を改善できるのかには疑問が残る。技術的には、昨年からほとんど変わってはいなかった。



(最後に)

 技術的にも、実際の投球をみても、春先からいや昨年から大きな成長は感じられなかった。現状は短いイニングならば1年目から一軍である程度やれるかもしれないが、ローテーション投手に育てるには一年ぐらいファームで育成する必要があるかもしれない。そういった時間的・戦力的に余裕のある球団が、獲得すべき選手ではないのだろうか。

 評価的には、外れ1位~2位の間ぐらいには消えるとは思うが、1年目からそう多くは望めないということ。またそれほどスケールで圧倒するほどの素材でもないので、それならば高校生を指名した方が良いのではないかと思うのだが。少なくても1位の12名となると、少々物足りない印象は否めない。特に昨年から大きな上積みを感じれないで一年間来てしまったことは、残念でならない。年齢的に上積みも期待したい素材なのに、この一年間で大きな上積みが見られなかったことに不安を感じる。



蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2019年 都市対抗)










立野 和明(21歳)投手 181/78  右/右 (中部大一出身) 





 「まだ絶対的ではない」





 今年のドラフト会議において、上位指名は揺らがないであろう 立野 和明 。高卒3年目の彼は、適度なまとまりと、適度なボールの力を持っているが、まだプロの世界を想定すると絶対的なものは感じられない。そんな彼の、現在の立ち位置を考えてみた。


(投球内容)

均整の取れた体格から投げ込む、オーソドックスな右の上手投手。

ストレート 常時145キロ前後~140キロ台後半 
☆☆☆★ 3.5

 球速的には先発でも、常時145キロ前後~140キロ台後半をハマスタのガンで叩き出していた。秋の日本選手権では、大阪ドームのガンで150キロを越えてきていた。またこの試合でのマイガンの最速は、91マイル(146キロ)を記録。打者の手元まで、勢いの落ちない適度な勢いと勢いを感じさせる真っ直ぐを投げ込む。プロの打者圧倒するほどのものはまだないが、平均して質の良いボールは投げられていた。

 秋からの成長は、両サイドにボールが散っていたこと。日本選手権のときには、ボールの勢いはあったものの、真ん中近辺に甘く入ってくるボールが目立っていた。勢いで社会人の野手は打ち損じてくれていたが、プロの一軍打者は見逃してくれないだろうと思っていた。そういった球が、この試合では見られなかったことに好感が持てた。

変化球 スライダー・フォーク・カーブなど 
☆☆☆ 3.0

 スライダー・フォーク・カーブなどを、適度に投球に織り交ぜてきます。どの球でもカウントを取ることができますが、まだこの球を投げられば空振が取れるといった絶対的な球種はないように見えます。スライダーが最大の武器で、この球を中心にカウントを整えてきます。観戦した試合では、フォークなどの落差は日本選手権ほどは感じられず。余裕があるとブレーキのあるカーブをアクセントに混ぜてきたり、ツーシームだかチェンジアップ系の球もあるなど球種は一通りあります。

その他

 クィックは、1.05秒前後とまずまず。フィールディングや牽制に関しては、まだよくわかりません。特に微妙なところで出し入れできるコントロールとか、投げるタイミングを変えるなど器用なことしてきません。あくまでも枠の中に、変化球を織り交ぜつつ投げ込んでくるといった感じでしょうか。

(投球のまとめ)

 ものすごくスケールで魅了するとか、そういったタイプではありません。適度なボールの勢いと投球のまとまりがあり、まだ伸び代を残していそうな素材と若さがあることも加味されての上位指名候補です。したがって現時点では、いきなりプロで大活躍するとか、そういった領域には達していません。プロで1,2年経験する中で、さらに伸びてくることを期待しての上位指名候補です。


(投球フォーム)

 オフに作成した「本当に凄いやつ」でフォーム分析をしたので、技術的な説明は動画で行う予定です。後日作成しますので、この部分はもう少しお待ちくださいませ。


(最後に)

 昨秋に比べ、目に見えて大きな成長を遂げたといった感じはしませんでした。しかし今年も、健在ぶりを確認できたということに今は素直に喜びたいところです。偶然なのか修正されたのかはまだわからないのですが、昨秋見られた中に中に甘く入ってくるというボールは、スポニチ大会での投球を見る限りは見られませんでした。そこが修正されているとすれば、ワンランク制球部分での成長が見られているということでしょう。評価を定めるのは都市対抗予選や本戦でになると思うのですが、現時点での内容でも充分に上位指名の評価はできます。あとは、何処までプロを想定して実戦力を高められるかではないのでしょうか。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2019年 スポニチ大会) 









 立野 和明(20歳・東海理化)投手 181/77 右/右 (中部大一出身)
 




                     「ボールそのものは素晴らしい」





時々ヒヤッとするほど甘いゾーンには入ってくるのだが、投げ込まれるボール1つ1つには素晴らしいものがある 立野 和明 。そういったボール自体は、今年の社会人でも現時点では一番ではないかと思うだの。


(投球内容)

均整の取れた体格から投げ込む、オーソドックスなフォーム。

ストレート 145キロ前後~150キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 手元まで勢いの落ちないストレートは、コンスタントに145キロ前後~150キロ級を記録。ボールの質が良いので、打者の空振りを誘う。時々真ん中近辺に甘く入ってくることも多いのだが、勢いがあるので社会人レベルならば打ち損じてもらえる。しかしこれが、プロの一軍打者だとそうはゆくかには疑問が残る。

変化球 スライダー・フォーク・ツーシーム・カーブなど 
☆☆☆★ 3.5

 球種は多彩だが、投球の軸となっているのはスライダー。このスライダーの切れ・ブレーキがよく、カウントを整えることができる。また追い込むと、落差のあるフォークでも空振りを奪える。その他にも、ツーシームやカーブなど、相手の的を絞らせない多彩な球種を持っている。

(投球のまとめ)

 ストライクゾーンの枠の中ではアバウトだが、日本選手権の室蘭シャークス戦では12回を投げて僅か1四死球と無駄な走者は出さない。制球甘さがプロで通用するものなのかは判断に悩むが、ボールそのものはドラフト上位級。フォークも使えるので、短いイニングなら一軍ではどうかなど、この一年間は即戦力になりえる投手なのか見極めてゆきたい。


(投球フォーム)

 今後の将来性について、フォームを分析して考えてみたい。ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んでくる。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばし、お尻は一塁側に落とせている。したがって体を捻り出すスペースが確保できており、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種も無理なく投げられる。

 「着地」までの粘りは平均的で、体を捻り出す時間は並。一通りの変化球は投げられるが、将来的に武器になるような球まで覚えられるかは微妙。それでも現時点で、スライダーやフォークなどのキレや落差も悪くない。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドへの投げ分けは安定しやすいはず。しかし実際は、ストライクゾーンの枠の中でのコントロールはアバウト。足の甲も地面から浮いてしまっており、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。それでもなんとか四死球を少なくすることができているのは、「球持ち」がよく指先の感覚で、ある程度制御できているからではないのだろうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻は落とせているので窮屈になることがなく、カーブやフォークといった球種を投げても肘への負担は少ないだろう。腕の送り出しを観ていても、肩への負担は少なそう。それほど力投派というほどでもないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平凡で、それほど打者が苦になるフォームではないだろう。球の出どころも平均的で、より甘く入らないコントロールが求められる。それでもシュート回転して中に入ってくる球も多く、プロレベルだと打ち損じしてくれるか心配。

 腕はしっかり振れて勢いがあるので、打者としては誘われて空振りしやすい。足の甲の地面への押しつけは浮いてしまってはいるが、しっかり前には体重が移っており、打者の手元までの勢いは悪くない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」と「体重移動」には問題ないが、「着地」と「開き」にはまだ改善余地が残されている。ここに粘りが出てくれば、もっと実戦的な投球が期待できそう。

 故障のリスクが少ないのは良いことだが、足の甲の押し付けが浮いてしまうでのコントロールの不安定さ、将来的に武器になるような変化球を習得できるのかは微妙だろう。


(最後に)

 ボール1つ1つは素晴らしいので、あとは細かいコントロールなど細部の追求が何処までできるかではないのだろうか。そのへんがしっかりして来られるようだと、充分に上位12名の中に入ってきても不思議ではない。少なくても上位候補の一人として、一年間追いかけてみる価値はありそうだ。


(2018年 日本選手権)