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伊藤 海人(巨人)外野手のルーキー回顧へ







伊藤 海斗(酒田南3年)外野 187/88 左/左  





 「一番わからない」





 今年の指名選手の中で、ドラフト後最も参考資料が少なかったのが、この選手でした。私自身確認できないまま終わった選手で、ドラフト後映像を探したもののその少なさに驚かされた。下級生の頃から名前は訊いていたが、むしろ将来性では大型左腕の方ではないかと噂されていた 伊藤 海斗 。果たしてどのような選手なのか、私自身考えてみた。


(守備・走塁面)

 残念ながら、守備・走塁に関しては、全くわかりません。ただし所作を見ている限りは、大型過ぎてあまり動きは良さそうには見えないこと。実際守備・走塁の話が出くることは殆どなく、強打者としての打撃に特徴がある選手だと訊きます。

 大型左腕としても勢いのある球を投げるので、地肩はかなり強そう。ただし左打ちなので、一塁手か外野ということで使い方が限定されそうです。プロでは肩を活かして右翼ができるのか? あるいは打力を活かして左翼あたりを担うことになるのでしょうか?


(打撃内容)

 「アナコンダ」の異名を持つ強打者で、高校通算36本塁打の長打力と打球の速さに定評があります。私が確認できた映像では、右中間にホームランを放ったものと三振をする場面のものでした。少々撮影箇所に角度がついているので、細かい部分がわかりずらくフォーム分析をしていることをご了承くださいませ。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 前の足を軽く引いて、グリップは高めに添えた強打者スタイルに見えます。腰はあまり座らず、全体のバランスや両眼で前を見据える姿勢は並ぐらいではないのでしょうか。ただしこの体格でグリップを高く構えますから、投手としては結構威圧感を感じる構えになっていそうです。

<仕掛け> 遅すぎ

 投手がリリースを迎える頃に動き出す、「遅すぎの仕掛け」を採用しています。日本人がここまで遅いタイミングで動き出すと、一定レベルのキレや球速のある投手の球には苦労することが予想されます。動作自体がシンプルなのは良いのですが、若干始動のタイミングを早めることが求められるのではないのでしょうか。

<足の運び> 
☆☆☆ 3.0

 足をすり足気味に動かしつつ小さくステップし、真っ直ぐから少しアウトステップ気味に踏み出しているように見えます。始動~着地までの「間」がないので、狙い球を絞って叩く 点 のスイングになっています。真っ直ぐからアウトステップ気味に踏み込んでいるように、外角への意識を持ちつつも内角の球を引っ張ることを重視しているのではないのでしょうか。

 踏み込んだ足元も、インパクトの際にはなんとかブレずに我慢できています。そのため逃げて行く球や低めの球にも、ある程度は喰らいついて粘ることはできているように見えます。ただし地面から足が離れるのが早いので、現状はセンターからライト方向への打球が多いのではないかと考えられます。レフト方向へも強く打ち返せるようだと、率も残るようになりそうです。

<リストワーク> 
☆☆☆ 3.0

 早めに打撃の準備のための、「トップ」の形は作れています。始動が遅すぎても、ある程度はここで修正できています。バットの振り出しは少し遠回りに出てくるのですが、まだまだロスの大きなスイング。それでもインパクトの際にはヘッドは下がっていないので、しっかりタイミングが合えばフェアゾーンの中にボールは飛びやすいのではないのでしょうか。

 インパクト後は大きな弧を描き、フォロースルーも高い位置まで引き上げてゆくので打球は遠くに運べます。タイミングが合えさえすれば、破壊力のある長打が期待できそうです。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げは小さいので、目線が上下動が少ないのは良いところ。身体の「開き」はある程度我慢でき、軸足も真っ直ぐ伸びて軸回転でスイングできています。比較的調子の波は、少ないのではないのでしょうか。

(打撃のまとめ)

 始動が遅すぎたり、バットが遠回りに出てくる傾向があり、確実性には課題があるように感じます。しかしその割には持っている当て勘も悪く無さそうですし、タイミングを合わせられるようになれば比例して長打も増えて来そうです。


(最後に)

 守備・走力にアピールできるものがあるかは疑問ですが、いかに打撃で存在感を示せるかなのでしょう。それだけに一塁なり左翼あたりという、外国人とのポジション争いが予想される中で、競争を勝ち抜けるかが鍵になります。それでもあえてこういった選手を本会議の中で指名したところをみると、球団側の評価の高さが伺えます。果たしてその期待に応えられるほどの逸材なのかどうか? ぜひ来年は直に確認してみたいと思わせてくれる選手でした。3位の 菊田 拡和(常総学院)と同様に、和製大砲になりえる素材を獲得したいという、球団の意欲が強く感じられる指名でした。