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武藤 敦貴(楽天)外野手のルーキー回顧へ







 武藤 敦貴(都城東3年)中堅&投手 178/73 左/左
 




 「天才肌の巧打者」





 ドラフト戦線であまり話題になることがなかった 武藤 敦貴 。しっかりフルスイングするのに、高いミート力を兼ね備えた興味深い素材だった。名前はそれなりには知られていたが、ここまで高い評価をされてのプロ入りには驚かされる隠れた逸材についてお伝えしたい。


(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、左打席から3.95秒前後とかなりの俊足です。実際盗塁技術がどの程度あるのかはわからないのですが、純粋に走力というものを持っているのは間違い無さそう。

 また中堅手としての打球勘やキャッチングなどは、破れた夏の小林西戦を観ているだけではあまりわかりませんでした。何か投手が外野をやっているようにも見えなくはないのですが、ポジションニングを変えて考えてプレーする選手との話。最終学年ではヘルニアの影響で、投手としてよりも野手としての出場が主だったようです。試合後半からマウンドに上がり、左腕から135キロぐらいの球を投げていました。そのため地肩自体は、それなりに強いものと思われます。

 試合を観た感じでは、投手が投げない時に外野を守っているという感じには見えました。これから野手に専念した時に、この高い身体能力をいかに活かそうとするかではないのでしょうか。守備や走塁に関しては、技術的にはプロに入ってからといった感じがします。


(打撃内容)

 左のスラッとした好打者で、ボールになるような低めの球にも手が出てしまう打者なのですが、その球を当ててしまうミート力があります。選球眼が悪いと観るか、ボール球を当ててしまうような天才と観るかは意見が別れるかもしれません。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップを下げて構えます。それほど腰の据わりは良くないのですが、両眼でしっかり前を見据えられているのは良いところ。特に、打席でリラックスして構えられているところには好感が持てます。

<仕掛け> 平均

 投手の重心が下がりきったところで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。このタイミングで始動する選手は、ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた、中距離打者や勝負つよいポイントゲッターに多く観られます。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を軽く引き上げ回し込み、軽くベース側に踏み込んできます。始動~着地までの時間はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。ややベース側に踏み込んで来るように、外角への意識が若干強いように感じられます。

 踏み込んだ前の足は、インパクトの際にはある程度は踏ん張れています。しかしまだ上半身の強い振りに対し、それを受け止める下半身の筋力は若干弱め。このへんのバランスが取れて来ると、打ち損じも減ってゆくのではないかと考えられます。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」を作るのは自然体で、力みなくボールを呼び込めています。ただしグリップ奥に入り過ぎているので、内角の球にはバットが出にくいのではないかと思えます。バットの振り出しも、けしてインサイド・アウトではなく、外の球をしなり生かしてさばくタイプ。インステップも相まって、内角のさばきはどうなのか気になります。

 外の球に対しては、バットの先端であるヘッドも下がらずに払うようなスイングをしてきます。スイングの弧は大きく、思いっきりフルスイングしてきます。非凡なのは、これだけフルスイングをしてもかなりの確率でボールに当てられる高いミートセンスには非凡なものが感じられます。あとは天才故に、ボール球にも手を出してしまいドツボにはまらないことを祈るばかりです。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げは小さいので、目線の上下動は少なめ。したがって球筋を、錯覚を起こすことなく追いやすい。かなり強振して来る選手なので、それを支える下半身がしっかり受け止められるかが今後の課題かと。軸足は地面から真っ直ぐ伸びているので、キレイな軸回転でスイングはできているのですが。

(打撃のまとめ)

 まだ筋力的にも技術的にも、改善してゆかないと行けない部分は少なくはないと思います。しかし持っている資質は、かなり高いものがありそうで、それが磨かれて研ぎ澄まされた時にどのぐらいの打者になるのかといった期待値はかなり高いです。夏の宮崎大会準決勝・小林西戦では、ライトスタンド中段にホームランを放つなど、甘く入ればスタンドインのパンチ力も秘めています。


(最後に)

 恐らく高校までは、自分は投手なのだという意識が強かったのではないのでしょうか? 今後は、自分が野手として勝負してゆくなのだという意識を持ち、しっかり割り切って取り組めるかに懸かっています。

 走塁にしても守備にしても打撃にしても、まだまだ発展途上。持っている潜在能力はかなり高そうなので、それを上手く引き出すことができれば、逸材揃いの楽天の外野陣の中でも異彩を放っても不思議ではありません。ドラフト戦線では無名の選手ではありますが、けして4位の評価が高すぎるといことは無さそうです。化けたらイチローとは言わないまでも、チームの看板選手になっても不思議ではない素材でした。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2019年夏 宮崎大会)